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第二章
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すると小太りの男は、少しはにかんだような笑顔を見せた。
「いやあ、あんたたち悪いひとたちには見えないから」
俺は苦笑した。
「でも、お仲間をかなり、のしちゃったけど」
「そうだね。でも、手加減してくれたんでしょ?ならみんな命に別状はなさそうだし」
すると翁が興味深そうに言った。
「ほう、わかるか。お前さん、案外やるな?」
小太りの男は両掌を俺たちに向け、ひらひらと振った。
「いやあ!そんなことはないよ。わたしは力はあるほうだが、戦いは苦手でね」
「ふむ、確かに力はありそうだな」
翁が小太りの男の腕周りの太さを確認して言った。
小太りの男はまたもはにかんだ笑みを見せた。
「いやあ、照れるね」
「お前さん、名はなんと言う?」
「ロトス。アデミル村のロトスさ」
「アデミル村……聞いたことがないな」
「もの凄い田舎だから、聞いたことがないのも無理はないよ」
「そうか。お前さんは、職業軍人なのか?」
ロトスは首を横に振った。
「いやあ、臨時徴用されたもんだから、仕方なく来たんだ」
俺は意外な言葉を聞いたと思い、問い返した。
「臨時徴用って?」
「数か月前に、急に村に軍人がやってきたんだよ。そんで、村の若い者を徴用するっていうんでね。仕方なくさ。もっとも後方の補給部隊に配属されたからよかったけどね」
「それって、ベルガン帝国ではよくある話なのか?」
ロトスは首をひねった。
「いや、ないんじゃないかな。村の長老たちも、聞いたことがなかったみたいだし」
「それは、今まで前例がなかったってこと?」
「そうだと思うよ。長老たちが知らないくらいだから」
「ロトスの村って結構な田舎だって言ったよな?」
「ああ、ベルガンの西の果てにある小さな村さ」
俺は眉根をキュッと寄せた。
「アルデバラン侵攻のために、そんな辺境の小さな村まで、臨時徴用したってことか」
「そうみたいだね。かなり大規模だったって話だし」
俺は思わず首を傾げた。
「ベルガンってアルデバランと比べたら、かなりの大国だって聞いたけど?」
「そうだね」
「なのに、そんな大規模な徴兵をしたって、おかしくないか?」
俺の問いに、ロトスは困ったような顔をした。
「う~ん、どうなんだろう?わたしはそういうことは疎いから」
俺は、翁と顔を見合わせた。
翁もこれは初耳だったらしい。眉根をギュッと寄せている。
だがこれ以上、ロトスに聞いても何も得られる情報はないと判断したのか、翁は言った。
「いや、面白いことを聞かせてもらったわい。ありがとう」
「いやあ、どういたしまして。それより早く逃げることだよ」
「いやあ、あんたたち悪いひとたちには見えないから」
俺は苦笑した。
「でも、お仲間をかなり、のしちゃったけど」
「そうだね。でも、手加減してくれたんでしょ?ならみんな命に別状はなさそうだし」
すると翁が興味深そうに言った。
「ほう、わかるか。お前さん、案外やるな?」
小太りの男は両掌を俺たちに向け、ひらひらと振った。
「いやあ!そんなことはないよ。わたしは力はあるほうだが、戦いは苦手でね」
「ふむ、確かに力はありそうだな」
翁が小太りの男の腕周りの太さを確認して言った。
小太りの男はまたもはにかんだ笑みを見せた。
「いやあ、照れるね」
「お前さん、名はなんと言う?」
「ロトス。アデミル村のロトスさ」
「アデミル村……聞いたことがないな」
「もの凄い田舎だから、聞いたことがないのも無理はないよ」
「そうか。お前さんは、職業軍人なのか?」
ロトスは首を横に振った。
「いやあ、臨時徴用されたもんだから、仕方なく来たんだ」
俺は意外な言葉を聞いたと思い、問い返した。
「臨時徴用って?」
「数か月前に、急に村に軍人がやってきたんだよ。そんで、村の若い者を徴用するっていうんでね。仕方なくさ。もっとも後方の補給部隊に配属されたからよかったけどね」
「それって、ベルガン帝国ではよくある話なのか?」
ロトスは首をひねった。
「いや、ないんじゃないかな。村の長老たちも、聞いたことがなかったみたいだし」
「それは、今まで前例がなかったってこと?」
「そうだと思うよ。長老たちが知らないくらいだから」
「ロトスの村って結構な田舎だって言ったよな?」
「ああ、ベルガンの西の果てにある小さな村さ」
俺は眉根をキュッと寄せた。
「アルデバラン侵攻のために、そんな辺境の小さな村まで、臨時徴用したってことか」
「そうみたいだね。かなり大規模だったって話だし」
俺は思わず首を傾げた。
「ベルガンってアルデバランと比べたら、かなりの大国だって聞いたけど?」
「そうだね」
「なのに、そんな大規模な徴兵をしたって、おかしくないか?」
俺の問いに、ロトスは困ったような顔をした。
「う~ん、どうなんだろう?わたしはそういうことは疎いから」
俺は、翁と顔を見合わせた。
翁もこれは初耳だったらしい。眉根をギュッと寄せている。
だがこれ以上、ロトスに聞いても何も得られる情報はないと判断したのか、翁は言った。
「いや、面白いことを聞かせてもらったわい。ありがとう」
「いやあ、どういたしまして。それより早く逃げることだよ」
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