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第二章

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「う、うるさい!とにかくみんな!こいつを捕まえられたら、褒美は思いのままだぞ!」

 細身の男は、周囲に向かって大声を張り上げた。

 すると、周りの男たちが色めき立った。

 そして、一歩ずつ俺たちに向かって近づいてきた。

 俺がバーン翁を見ると、平然とした顔で首を左右に倒し、コキコキと鳴らしている。

 やる気十分だ。仕方ない。俺もやるとするか。

 と、最前列を陣取った男が雄たけびを上げて拳を振り上げる。

 だが男はその拳を振り下ろすことは出来なかった。

 バーン翁が瞬時に男を掌底で吹き飛ばしたからだ。

 男は叫び声を上げる間もなく、周囲の男たちを巻き添えにして彼方に消えた。

 だが色めき立った男たちは、それを見てもなお、束になってバーン翁に挑みかかってきた。

 翁の口の端がくいっと上がる。

 次の瞬間、翁は両手で、神速の掌底連打を繰り出した。

 次々に血飛沫を上げて男たちが宙に舞った。

 だがそれでも男たちは目の色を変えて挑みかかる。

 それを翁は、難なくさばいていった。

 俺はそれを横目で苦笑しながら見ていた。

 加勢する必要なんてありゃしない。一分あれば、ここにいる数百人をぜんぶまとめて片付けてしまうだろうな。

 と思っていたら、突然俺に向かって横から拳が飛んできた。

 俺はそれをスウェーバックして躱した。

「なんか用?」

 拳を振るってきた男に向かって、俺は問いかけた。

 すると男は言った。

「貴様も仲間だろう!問答無用だ!」

 男は再び拳を振り上げた。

 面倒だな。

 俺はそう思いつつ、右手を鞭のようにしならせ、手の甲でもって相手の頬をはたいた。

 男の顔は瞬時にぐにゃっと歪み、もげると思うほどに首がくるんと後ろに回った。

 そして首の回る勢いに引っ張られるように身体も回転し、最後に腰がくだけてぐしゃっと床に座り込んだ。

 周囲の男たちがそれを見て怖気づき、一歩あとずさった。

「どうする?まだやる?」

 俺が言うと、男たちはさらに一歩あとずさった。

 俺は肩をすくめて、横を見た。

 バーン翁がひとりで佇んでいる。その周りには誰もいない。

 視線を彼方に向けると、人間が積み上がった山が見える。

 どうやら片っ端から全員吹き飛ばしたらしい。

「終わったみたいだね?」

 俺がそう言うと、翁が鼻で笑った。

「ふん、まだまだこれでも準備運動にもならんわい」

「一応離れたところにまだ百人くらいいるけど、どうする?」

「放っておいていいじゃろう。戦意喪失しておるようだしのう」

 翁が言うように、俺たちからかなり離れたところにいる百人ほどの集団は、戦う気はないようであった。
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