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第二章
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「ちょっと待てよ!本気か?」
「本気も本気。かなりマジじゃ」
俺は脱力仕掛けた。だが、なんとか気を取り直した。
「さっきのレストランの支店に行ってどうするつもりなんだ?投資しているからって、繁盛するかどうか、味を確かめようってんじゃないだろうな?」
すると後部座席で翁が呵々と笑った。
「マイヤーに、あの店の支店などないわい」
俺は眉根を寄せた。
「どういうことだ?マイヤーの町の中心部に支店を出したと言っていたぞ?」
「あれは嘘じゃな。嘘も方便と言うじゃろう」
「ちょっと待て。じゃあなにが本当なんだ?」
「シモン大通りに、マールスという店は確かにある」
「店長がそう言っていたな。それが支店なんだろ?」
「マールスは昔からあるわい」
「ちょっと待ってくれ。話が見えない」
翁は、またも呵々と笑った。
「マールスは昔からシモン大通りにある古い店じゃ。ちなみにマールスにもわが商会は出資しておる」
「つまり……どういうことだ」
バーン翁はにやりと口角を上げた。
「一種の暗号文じゃ。レストランには他に客がいたじゃろう」
「確かに繁盛していたから、隣の席にも人がいたな」
「うむ。わしは店に入ると、店員に案内されるのを待つことなく、まっしぐらに一番奥の席に座ったから大丈夫じゃとは思うが、念のため、店長とははっきりと会話を交わさず、暗号文のようなやりとりをしていたのじゃよ」
「そうだったのか。それで、どういう意味だったんだ?」
「マイヤーのマールスに、ガッソは潜んでいるんじゃろう」
「そういうことだったのか……」
「そういうことじゃ。では、最速で頼むぞ」
バーン翁はそう言うと、呵々と大笑した。
「へいへい。じゃあ揺れるけど、構わないよな?」
「わしは構わん。ゼロスは知らんがな」
するとゼロスが久しぶりに口を開いた。
「わたしも大丈夫だ。気にせずにいてくれ」
「了解。じゃあお望み通り、最速で行くぜ!」
俺は手綱を波打たせ、馬を叩く。
それに呼応して馬車の速度が上がっていった。
その後もリズミカルに手綱で馬を叩く。
速度がどんどん上がっていく。
そうして俺たちは、早々とデガローの港町から離れていった。
「ふむ。なかなかの腕じゃな」
翁が感心したように言う。
「当然だ。俺の手綱さばきは、尋常じゃないからな」
「一時間弱といったところか」
バーン翁の言った通り、俺たちは時計の長針が一周するほどの時間馬車に揺られた結果、目的のマイヤーに到着していた。
「町の中心部を走るシモン大通りに、マールスはあるんだよな?」
「うむ。その先を左に入ってくれ。しばらくすればシモン大通りへと出るよって」
「本気も本気。かなりマジじゃ」
俺は脱力仕掛けた。だが、なんとか気を取り直した。
「さっきのレストランの支店に行ってどうするつもりなんだ?投資しているからって、繁盛するかどうか、味を確かめようってんじゃないだろうな?」
すると後部座席で翁が呵々と笑った。
「マイヤーに、あの店の支店などないわい」
俺は眉根を寄せた。
「どういうことだ?マイヤーの町の中心部に支店を出したと言っていたぞ?」
「あれは嘘じゃな。嘘も方便と言うじゃろう」
「ちょっと待て。じゃあなにが本当なんだ?」
「シモン大通りに、マールスという店は確かにある」
「店長がそう言っていたな。それが支店なんだろ?」
「マールスは昔からあるわい」
「ちょっと待ってくれ。話が見えない」
翁は、またも呵々と笑った。
「マールスは昔からシモン大通りにある古い店じゃ。ちなみにマールスにもわが商会は出資しておる」
「つまり……どういうことだ」
バーン翁はにやりと口角を上げた。
「一種の暗号文じゃ。レストランには他に客がいたじゃろう」
「確かに繁盛していたから、隣の席にも人がいたな」
「うむ。わしは店に入ると、店員に案内されるのを待つことなく、まっしぐらに一番奥の席に座ったから大丈夫じゃとは思うが、念のため、店長とははっきりと会話を交わさず、暗号文のようなやりとりをしていたのじゃよ」
「そうだったのか。それで、どういう意味だったんだ?」
「マイヤーのマールスに、ガッソは潜んでいるんじゃろう」
「そういうことだったのか……」
「そういうことじゃ。では、最速で頼むぞ」
バーン翁はそう言うと、呵々と大笑した。
「へいへい。じゃあ揺れるけど、構わないよな?」
「わしは構わん。ゼロスは知らんがな」
するとゼロスが久しぶりに口を開いた。
「わたしも大丈夫だ。気にせずにいてくれ」
「了解。じゃあお望み通り、最速で行くぜ!」
俺は手綱を波打たせ、馬を叩く。
それに呼応して馬車の速度が上がっていった。
その後もリズミカルに手綱で馬を叩く。
速度がどんどん上がっていく。
そうして俺たちは、早々とデガローの港町から離れていった。
「ふむ。なかなかの腕じゃな」
翁が感心したように言う。
「当然だ。俺の手綱さばきは、尋常じゃないからな」
「一時間弱といったところか」
バーン翁の言った通り、俺たちは時計の長針が一周するほどの時間馬車に揺られた結果、目的のマイヤーに到着していた。
「町の中心部を走るシモン大通りに、マールスはあるんだよな?」
「うむ。その先を左に入ってくれ。しばらくすればシモン大通りへと出るよって」
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