256 / 352
第二章
533
しおりを挟む
「そうだよな……」
俺はぽつりとつぶやくように言った。
「演技でもなんでも構わん。どうにか出来んのか?」
俺は肩をすくめた。
「俺はともかく、アリアスがどうもいけない。顔に嫌悪感が出るんだ」
翁は苦笑した。
「人生経験が足りんの。わしなら反吐が出るほど嫌いな奴とも、笑顔で握手するわい」
俺もつられて苦笑した。
「だろうな。経験が皺に刻まれているみたいだしな」
すると翁は、自らの顔の皺を両手でつまんでおどけた仕草をした。
「そうか?ピンピンに張っておるぞ?」
「手でつまんで伸ばしてるからだろ」
俺たちは笑い合った。
だが事態は深刻だ。
すぐに翁は真顔に戻った。
「ともかく、味方にバレぬようにせにゃならん」
「味方にバレないのが最優先か?」
翁は渋い顔でうなずいた。
「敵はまだなんとでもなろう。だが味方はいかん。寡兵の軍にとっては、士気の低下は大問題じゃ」
俺は翁の言葉を噛みしめた。
「なんとかしないとな。それにしても、あんたは俺たちアルデバラン側の味方をしてくれるのか?」
翁は鼻で笑った。
「当り前じゃろ。すでにわが商会はお前さんたちに投資しておるのじゃぞ?しかもその投資金額は、抜き差しならないくらいの額になっておる」
「そうなのか?」
すると翁が頓狂な顔を作った。
「知らなんだのか?」
「いや、アルフレッドたちが俺たちに肩入れしてくれているのは知っているけど、それはバーン商会全体でのことなのか?」
すると翁が呆れた表情となった。
「あのなあ、世界各地にグランルビーを運んで売りさばいておるのじゃぞ?バーン商会全体が動かずに、そんなことが出来るとでも思っておるのか?」
確かに。世界各地で売りさばくには、かなりの人手がいるだろう。
「そうだったんだな。俺はてっきり、アルフレッドとガッソの権限の範疇でやってくれているものだと思っていたんだがな」
「お前さん、ミラベルトにある商会に顔を出した時、優遇されなんだか?」
「されたな。列に並んでいたところでヴァルトに出会い、貴賓室みたいなところに通してもらったよ。それに支店長のバーブラも呼んでくれた。おかげであんたにもこうして会えた」
「そうじゃろう。わしらがすでにアルデバラン側に大いに賭けておる故じゃ。そしてこの戦、負けるわけにはいかん」
「負けたら大損だからか?」
翁はにやりと口の端を上げた。
「当然じゃろう。わしらは商人じゃぞ。儲けることこそ、正義。負けて大損なんて、わしらの辞書には載っておらんわい」
翁はそう言って呵々と笑った。
俺はぽつりとつぶやくように言った。
「演技でもなんでも構わん。どうにか出来んのか?」
俺は肩をすくめた。
「俺はともかく、アリアスがどうもいけない。顔に嫌悪感が出るんだ」
翁は苦笑した。
「人生経験が足りんの。わしなら反吐が出るほど嫌いな奴とも、笑顔で握手するわい」
俺もつられて苦笑した。
「だろうな。経験が皺に刻まれているみたいだしな」
すると翁は、自らの顔の皺を両手でつまんでおどけた仕草をした。
「そうか?ピンピンに張っておるぞ?」
「手でつまんで伸ばしてるからだろ」
俺たちは笑い合った。
だが事態は深刻だ。
すぐに翁は真顔に戻った。
「ともかく、味方にバレぬようにせにゃならん」
「味方にバレないのが最優先か?」
翁は渋い顔でうなずいた。
「敵はまだなんとでもなろう。だが味方はいかん。寡兵の軍にとっては、士気の低下は大問題じゃ」
俺は翁の言葉を噛みしめた。
「なんとかしないとな。それにしても、あんたは俺たちアルデバラン側の味方をしてくれるのか?」
翁は鼻で笑った。
「当り前じゃろ。すでにわが商会はお前さんたちに投資しておるのじゃぞ?しかもその投資金額は、抜き差しならないくらいの額になっておる」
「そうなのか?」
すると翁が頓狂な顔を作った。
「知らなんだのか?」
「いや、アルフレッドたちが俺たちに肩入れしてくれているのは知っているけど、それはバーン商会全体でのことなのか?」
すると翁が呆れた表情となった。
「あのなあ、世界各地にグランルビーを運んで売りさばいておるのじゃぞ?バーン商会全体が動かずに、そんなことが出来るとでも思っておるのか?」
確かに。世界各地で売りさばくには、かなりの人手がいるだろう。
「そうだったんだな。俺はてっきり、アルフレッドとガッソの権限の範疇でやってくれているものだと思っていたんだがな」
「お前さん、ミラベルトにある商会に顔を出した時、優遇されなんだか?」
「されたな。列に並んでいたところでヴァルトに出会い、貴賓室みたいなところに通してもらったよ。それに支店長のバーブラも呼んでくれた。おかげであんたにもこうして会えた」
「そうじゃろう。わしらがすでにアルデバラン側に大いに賭けておる故じゃ。そしてこの戦、負けるわけにはいかん」
「負けたら大損だからか?」
翁はにやりと口の端を上げた。
「当然じゃろう。わしらは商人じゃぞ。儲けることこそ、正義。負けて大損なんて、わしらの辞書には載っておらんわい」
翁はそう言って呵々と笑った。
32
お気に入りに追加
5,458
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】
早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。