1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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 愛心学院女子自動車部一行は早朝の国道158号を西に向かっていた。岐阜県から福井県に抜け九頭竜湖沿いを走る『美濃街道』と呼ばれる風光明媚な道路だ。

 先頭は響子のシビック【EK4】、続いてまどかのスイフト【ZC32S】、そしてひとみのRX-7、最後尾は睦美が運転するCR-Xとミラージュを乗せた2台積みの積載車だ。茉莉は積載車の助手席に、1年生は先輩の車にそれぞれ別れて乗っている。

「くぅー…くぅー……んぐがっ!」

「は!ごめん先輩!アタシ今思い切り寝てたっしょ!?」

「あぁ、もう一時間くらいぶっ通しで寝てたよ……」
 ひとみのRX-7の助手席でいびきをたてていたのは江梨奈だ。

「あ、先輩見て見て!景色めっちゃ綺麗~!!地元を思い出しちゃうなぁ~」
「私はもう長いこと見続けてるけどな…」
 江梨奈は話題を逸らそうとしたが完全に逆効果だ。

「いいって、気にしてないからよ。朝4時出発だししょうがねぇや。にしても意外だったなぁ、まさかお前が自動車部入ってくるなんてさ」

「え、あぁ…そう思っちゃいますやっぱり?アタシ名古屋出てきたばっかでまだ慣れてないんですよねー。で、語学で同じクラスの美優っちが自動車部興味あるって言うから付いてって、そしたら先輩の運転にハマっちゃったってワケ!」

「ふーん、お前ひょっとして友達少ない?」

「な…!ほ、ほだなごどないべ!」

「はは、こっちの喋りのほうがよっぽど可愛いじゃん!あの喋り方、無理してるの丸わかりだから回りも引いてるんじゃない?」

「ま、丸わがり…!?う、でも気ぃ抜ぐどすぐ方言さ出んだ…」

「だからってあの喋り方はねぇ…普通にしゃべればいいじゃん」

「頑張って…みます…」

そうは言ったが気恥ずかしさからしばらく口も開けず時が過ぎる。気が付けばワインディングロードは終わり辺りの景色もだいぶ開けてきた。

「先輩…アタシ、本当は東京の大学に行きたかったんだよね。でも東京はお金がかかるって親に反対されて。名古屋なら親戚がアパート持ってるからそこに下宿するならいいって。名古屋だって山形に比べたら大都会だろうと思って来てみたら、思ったほどでも無かったって言うか…正直仙台の方が都会でちょっとテンション下がってて……」

「ふーん、そんなもんかね?ま、言ってもお前の住んでるトコ名古屋じゃないしな」

「!?、え、ほんてんだの!?名古屋じゃねぇって!?」

「あー、もうすぐ着くぞー」

「ちょ、先輩、詳しく~!」

「今日は夜もたっぷり時間があるからな、そん時にでも説明してやるよ!」


—雁乃原スキー場—


愛知県からほど近い…と言っても遠征慣れした車馬鹿基準であるが。高速道路を使えば2時間半、経費節約で下道移動した彼女達は3時間半ほどをかけてやってきたのは、恐竜で有名な福井県勝山市にあるスキー場だ。
 上下2面からなるスキー場の駐車場を、オフシーズン中はスポーツ走行用に低料金で開放している。土日ともなればスポーツ走行愛好家が何人も訪れるが、平日であればほぼ貸し切りで使用できる、懐事情が厳しい学生にとって大変ありがたい施設なのだ。

「やったー!一番乗り~!」
 茉莉が積載車から降り、まだ誰も到着していないことを確かめ勝ち名乗りを上げる。

 雁乃原暗黙のルールに1番乗りの人間がコースを作成する権利が得られるというものがある。貸し切りになっていなければ誰でもコースを走る事はできるがコース設定は早い者勝ちなのだ。

「へー、上と下2か所にコースが有るんですね。上の方が広そうですけど下を使うんですか?」
 シビックから降りた亜里沙が全体を見渡して響子に尋ねる。

「上は正方形、下は長方形で一見上の方が広く見えるけど面積は同じらしいわ。それより上は路面の荒れがひどくてコースの外側はゴミだらけなの。それで上はドリフト、下はジムカーナと自然と使い方も分けられてるのよ。大昔は上と下をつないで使ったりもしたみたいだけど」

「よし、それじゃあ茉莉と1年生は車降ろすの手伝って。響子と他の2年はコース設営だ。一休みするのはそれからだよ!」
 昨日の晩、実家の工場から借りてきた積載車へ部車の積み込みをまでして人一倍働いている睦美だが、疲れている素振りは全く見せない。

『ブロロロロロロロ……』
 
 その時、1台の車がコースに上がってくる音が聞こえた。

「あら、意外と早く着いたみたいね」
「どうせ九頭竜かっ飛ばしてきたんだろうな……」

 上がってきたのは真っ赤なシルビア【S14】だ。野太いマフラー、異常についたキャンバー、ところどころひび割れの有るフロントスポイラー。どこからどう見てもドリフト車両である。

「やっほー!みんなー、ひっさしぶりーー!!」
 異様にテンションの高い女性が駐車場に止まるなり運転席から飛び出した。



登場車両紹介
ホンダ シビックSiR【型式 EK4】
神沢響子 所有車両
 1995年に登場した6代目シビックのスポーツグレード。97年に同型をベースにしたタイプR【EK9】が登場したため影が薄いが、1.6Lながら170psを発揮するB16Aエンジンを搭載し、モータースポーツベース車としてタイプR同様長く前線で活躍している。
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