１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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　俺は踵を返して列を離れた。

　ゼロスが仕方がないという顔で立ち上がり、ついて来る。

　そうして俺は、さきほど目の前に立っていたひとの後ろについた。

　その途端、先ほどまで俺がいた列が動き始めた。

　どうやら揉め事が収まったらしい。

　俺は思わず軽く舌打ちをした。

　ゼロスが寝転がりながら喉を鳴らした。

　鼻の次は喉か。楽しんでいるな。

　ふん、だがまあいい。こういうことはよくあることだ。

　落ち着いて待つとしよう。

　すると突然、目の前のひとが振り返った。

　俺よりほんのわずかに背丈が低いが、ほぼ同じ高さで目が合う。

　女性？それもかなりの美形だ。

　切れ長の目に射すくめられ、俺は若干たじろいだ。

　だがすぐに彼女は前を向きなおした。

　ふう……ちょっと焦ったな。

　しかし、後ろから見ると男性のようでもある。なんといっても、格好が男みたいだ。

　白いシャツの形も男物。それに黒いスラッとしたズボンを履いている。

　男装の麗人って感じか。だがより一層特徴的なのは、かなり大ぶりな剣を腰に佩いていたことだった。

　だがまあいい。それよりもとにかく列がまったく動かないんだが……。

　今度は移動した先の列が動かなくなった。

　どうした？さっきまで快調に動いていたろう？

　なのに何故、急に動かなくなるんだ。

　俺は腹立たし気に前を覗き込む。

　だが、やはりよく見えなかった。

　俺は肺腑の中の空気を一気に鼻から吐き出した。

　だがそれで事態が好転するわけもない。

　俺は先ほどまでいた列が快調に進んでいくのを横目に、ひたすら待った。

　……だが一向に動く気配はなかった。

　どうする？ゼロスに順番を取っておいてもらって、最前で起こっている揉め事に首を突っ込みにいくか？

　それとも、再び列を移動するか？

　するとすれば後者だろう。

　揉め事に首を突っ込むのは面倒だ。

　すると目の前の女性が、先ほど同様にその前に立つ白衣のようなものを着た細身の中年男性に声をかけるなり、一緒に列を離れた。

　隣の列に移ったのだ。それにしても美麗な男装の麗人とは似つかわしくない中年男だな。

　いや、そんなことはどうでもいい。よし、俺も移ろう。

　とはいっても、最初に並んだ列に並びなおすのは癪に障る。

　俺は再び、女性を追いかけるようにして、後ろについた。

　今度こそ、今度こそは、進んでくれよ。
　
　祈る気持ちで俺は待った。

　その結果は――――

　またも動きが止まってしまった。

　俺は愕然とした。

　そんな偶然あるのか？

　これで三度目だぞ。

　と、ついさきほどまでいた隣の列が動き出した。

　あ、ありえん……嘘だろ。

　こんなこと、あっていいのか？

　すると、突然前の女性が振り向いた。

　険しい顔で俺を睨みつけるや、言った。

「おい、お前！なんでわたしのあとについて来るんだ！変態か!?」

　な、なんだって!?俺に向かって変態だと？

「別にあんたの後をつけたくってつけたわけじゃない！列が動かないから、結果的にあんたの後をついて移動する形になっただけだ！」