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第二章

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 ゼロスが重々しくうなずいた。

「王国再興に、支障が出るかもしれないということだな」

 俺は首肯する。

「そうだ。アリアスは王国再興の象徴であり、俺はその再興のための軍事上、重要な地位にいる。その二人に信頼関係がないとすれば、問題だろう」

「軍事上の重要な地位か。確か、将軍というのだったな?」

 俺はこれも首肯する。

「まだ正式になったわけではないが、なる予定ではあった」

「それがくつがえると?」

 俺は少しだけ考え、答えた。

「いや、それはないと思う。ティラノレギオンの長は俺だしな」

「ふむ、では将軍にはなるとして、今後どう関係性を築いていくか。また、信頼関係が現在損なわれていることを、敵に知られないようにするために、どういう対策をすればいいかを考えねばならないな」

 俺は苦笑する。

「確かにその通りだな。敵に知られないようにか。正直、そのことは考えていなかったな」

「カズマ自身は特に問題はないと思う。ゴート公爵邸侵入の際にも、その戦闘力に問題はなかったからな。だが、軍全体はどうだろうか。二人の不仲が公となった場合、軍全体の士気は低下するだろう。それは避けるべきだろう」

「そうだな。一応俺は英雄扱いされている。その俺が肝心の王女と不仲だとなれば、大いに士気に関わる。ゼロスの言うとおり、そんな事態は避けなければいけない」

 ゼロスの眉間に深いしわが寄った。

「だがそれは、少しばかり難しそうだな」

 俺はすかさず問いかける。

「不仲を隠すことがか?」

「そうだ。お前はともかく、王女はどうだろうか」

「完全に俺に対して、嫌悪感を丸出しにしていたな」

「王女に事情を説明し、芝居をするように頼んだところで、心内の嫌悪感が顔に出ないとは限らない。それが何らかの公の席であった場合、非常にまずいことになるだろう」

「アリアスは王女だ。当然のように帝王学を学んでいるだろう。ならば、顔に出さない術も会得していると思う」

「ほう、そういうものがあるのか?」

「たぶんな。例えば外交における交渉相手に対して、内心嫌悪感を持っていたとしても、それを顔に表すわけにはいかない。ならば当然、そう言った場合に顔に出さないようにする教育を受けているはずだ」

「ふむ。その帝王学とやらは、そういうことを学ぶのか」

「俺も詳しいわけじゃない。だけど理にかなっているだろう?」

「そうだな。充分有り得ることだと思う」

「なら大丈夫なんじゃないか」

 だがゼロスの表情は、一向に晴れなかった。

 渋面を作って首を傾げている。

「それなら、いいのだがな……」
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