1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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 レノアが反射的に叫ぶ。

「何故ですか!」

「決まっている。我を頼りに逃げてきた者を敵に渡すことなぞ、どんな理由があろうともってのほか!武人として、そのようなことは断じて出来ぬ!」

 ゴート公爵は固い決意で言い切った。

 レノアは肺腑の中の空気を一気に吐き出す。

 そして再びゴート公爵とにらみ合う。

「ではお尋ねしますが、公爵は武人として、伯爵をどうお思いか?」

「なに?」

「さきほど申した通り、ゼークル伯爵はか弱き女性たちを拉致監禁し、言語に尽くしがたい恥辱を与えておりました」

 ゴート公爵は苦渋の表情となった。

「む、それは……」

 レノアが畳みかける。

「しかも伯爵は、卑怯にも王女殿下を暗殺しようと画策しました。それも度重なること、三度です。その間、一度たりとも正面から堂々と戦いを挑んできたことはありませんでした。そのことを、公爵はどう思われますか?」

 ゴート公爵は言葉を失った。

 レノアは充分な間を取り、さらに言った。

「公爵ならば、そのような悪辣な手段など、死んでもお取りにはならないでしょう。節度を重んじる武人でいらっしゃいますからね。ですがゼークル伯爵は異なります。何故でしょうか?それはゼークル伯爵が、武人とは程遠い卑怯千万な人物だからです!そのような人物を、何故武人たるゴート公爵が庇護なさるのか!僕には到底理解できません!」

 ゴート公爵は言葉を失ったままだ。

 レノアはまたも充分に間を取ったあと、口を開いた。

「公爵、目を瞑っていてください」

 ゴート公爵が眉根をギュッと寄せた。

「なんだと?」

「目を瞑れば、なにも見えません」

 ゴート公爵はわずかに首を横に傾け、レノアを見る。

「つまり、我に見て見ぬふりをしろと?」

 レノアはにこりと微笑むと、すぐに深々と頭を下げた。

 そして頭を下げきったところで止まった。

 ゴート公爵の眉間に、深いしわが浮かぶ。

 深くお辞儀をしたままのレノアを睨みつける。

 次いで視線を横のゼロスやラーズ族に向け、しばし考え込む。

 レノアは頭を下げたままだ。

 すると、ついにゴート公爵が重い口を開いた。

「いいだろう。我はなにも見ておらん。さっさと行くがよい」

 ゴート公爵はそう言い残すと踵を返し、自らの居室へと戻っていった。

 俺はゴート公爵の広く偉丈夫な背中を見つめ続けるも、居室の扉はゆっくりと閉められた。

 その音を確認してか、レノアがゆっくりと頭を上げた。

「ふう~、なんとかなったみたいだ」

 レノアが大きく息を吐き、額の汗を拭った。

 俺は軽く息を吐き出しながら、苦笑した。
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