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第二章
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レノアがすかさず図面を出す。
ゴート公爵邸の外枠が描かれた紙だ。枠線の中は白くなっている。
三人はレノアが差し出したペンを受け取り、次々に枠内を埋めていく。
ほどなくして、ゴート公爵邸の見取り図が完成した。
それを見て、レノアが感嘆の声を上げた。
「これは凄い。かなり詳細に書き込まれている。これなら不測の事態が起きても、大丈夫そうだ」
レノアの言葉に、俺もうなずく。
「よくやってくれた。これは最高の見取り図だ」
俺の言葉に、ラーズ族がうれしそうな顔をした。
俺はそこであらためてレノアを見る。
「どうやらゼークル伯爵とワイズマンは、離れた位置に部屋を用意されているようだな」
レノアが応じる。
「僕としたことが、これは予想外だったよ。ただ、館の端と端ってほど極端じゃない。階数は違うが、同じ中央棟だ」
ゴート公爵邸は上空から見た場合、東西に長い長方形の建物だが、中央部分は円形となっていて、南北に大きく突き出ている。
その突き出した円形の中央棟は四階建てであり、そこにゼークル伯爵とワイズマンにあてがわれた部屋があった。ワイズマンは二階の一室に、ゼークル伯爵は四階だった。
「身分が違うから、離れているってところかな」
「たぶんそうだろうね。貴族なんてものは、身分がすべてだ。となれば伯爵であるゼークルと用心棒のワイズマンでは、扱いが異なってもおかしくない」
「なんか腹立つな」
俺は素直な感想を漏らした。
レノアが肩をすくめる。
「仕方ないさ。そういうものだと諦めてくれ」
「わかったよ。ただ問題なのは、ゼークル伯爵の部屋が、ゴート公爵の居室のすぐ近くにあることだ。しかもゴート公爵の部屋の前には、衛兵が立っているそうだ。ちょっと面倒だな」
俺の言葉に、レノアが苦渋の表情を浮かべる。
「できればゴート公爵とは対峙したくないんだが……いずれは味方になってくれる可能性がある御仁だからね」
「しかし、この計画そのものが、ゴート公爵に対しては敵対行為なんじゃないか?」
「それはそうだ。ただ、そうだとしても、物事には度合いがあるだろう」
「度合いか……難しいな」
「僕としては、敵対行為ではあるけども、それほど貴方には敵意はありませんよ~って感じにしたいんだ」
「そうなると、ゴート公爵の居室の目の前で対峙するのは避けたいということか」
「ああ、そうなったらただじゃすまないだろうからね。ゴート公爵は質実剛健。となれば目の前でゼークル伯爵が攫われるのを黙って見ているとは思えない」
「最悪、ゴート公爵と斬り合いが始まるな」
すると、レノアがとても嫌そうな顔をした。
「いやあ~、それは困るな~。そうならないようにしないと……」
ゴート公爵邸の外枠が描かれた紙だ。枠線の中は白くなっている。
三人はレノアが差し出したペンを受け取り、次々に枠内を埋めていく。
ほどなくして、ゴート公爵邸の見取り図が完成した。
それを見て、レノアが感嘆の声を上げた。
「これは凄い。かなり詳細に書き込まれている。これなら不測の事態が起きても、大丈夫そうだ」
レノアの言葉に、俺もうなずく。
「よくやってくれた。これは最高の見取り図だ」
俺の言葉に、ラーズ族がうれしそうな顔をした。
俺はそこであらためてレノアを見る。
「どうやらゼークル伯爵とワイズマンは、離れた位置に部屋を用意されているようだな」
レノアが応じる。
「僕としたことが、これは予想外だったよ。ただ、館の端と端ってほど極端じゃない。階数は違うが、同じ中央棟だ」
ゴート公爵邸は上空から見た場合、東西に長い長方形の建物だが、中央部分は円形となっていて、南北に大きく突き出ている。
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「たぶんそうだろうね。貴族なんてものは、身分がすべてだ。となれば伯爵であるゼークルと用心棒のワイズマンでは、扱いが異なってもおかしくない」
「なんか腹立つな」
俺は素直な感想を漏らした。
レノアが肩をすくめる。
「仕方ないさ。そういうものだと諦めてくれ」
「わかったよ。ただ問題なのは、ゼークル伯爵の部屋が、ゴート公爵の居室のすぐ近くにあることだ。しかもゴート公爵の部屋の前には、衛兵が立っているそうだ。ちょっと面倒だな」
俺の言葉に、レノアが苦渋の表情を浮かべる。
「できればゴート公爵とは対峙したくないんだが……いずれは味方になってくれる可能性がある御仁だからね」
「しかし、この計画そのものが、ゴート公爵に対しては敵対行為なんじゃないか?」
「それはそうだ。ただ、そうだとしても、物事には度合いがあるだろう」
「度合いか……難しいな」
「僕としては、敵対行為ではあるけども、それほど貴方には敵意はありませんよ~って感じにしたいんだ」
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「ああ、そうなったらただじゃすまないだろうからね。ゴート公爵は質実剛健。となれば目の前でゼークル伯爵が攫われるのを黙って見ているとは思えない」
「最悪、ゴート公爵と斬り合いが始まるな」
すると、レノアがとても嫌そうな顔をした。
「いやあ~、それは困るな~。そうならないようにしないと……」
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