1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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 俺たちは詳報を受けた後、すぐにレボーナの町を出立した。

 三十騎の騎馬隊がデュランドルとオロチを取り囲み、他は馬車に乗り込んで、一路王都を目指してひた走った。

 途中、町という町を迂回して、一切立ち寄らずに進んだ。

 街道を行っているため、道中出くわした人たちを驚かせたものの、以前のように人々に取り囲まれるようなことはなかった。

 夜は街道脇に寝泊まりし、ほぼ一直線に王都への道を駆け抜けた。

 そして三日後の明け方に、俺たちは王都へと帰還した。

「見えた……ミラベルトの王城が見えるよ」

 レノアが小高い丘の頂上で馬車の幌を上げ、朝焼けに浮かび上がる八つの尖塔に囲まれたオルダナ王の優美な居城を望み、疲れ切った声でつぶやいた。

「さすがに疲れたみたいだな?」

 俺はレノアの隣でその顔を覗き込み、苦笑交じりに言った。

「そりゃあそうだよ……三日間ずっと馬車に揺られたから、内臓がどうにかなっちゃったよ」

 レノアはみぞおちの辺りをさすりながら、今にも吐きそうな顔で言った。

「もう少し我慢してくれよ。もうすぐ着くだろうから」

 だが、レノアの顔は晴れなかった。

「いやでも、王城が見えたといっても、まだずいぶん遠いよ。結構あるんじゃない?」

「そうだな。あと一時間くらいかな」

「うげ……ちょっと持ちそうにないから、行ってくる」

 レノアはうんざりした表情でそう言うと、ゆっくりした動作で馬車を下りた。

 そして少し離れた大きな木が生えたところまで、よろよろとよろめきながら歩き、たどり着くとうずくまった。

 レノアが胃の中のものを戻す音が、爽やかな朝の風に乗って、俺の耳元まで運んでくる。

 この三日間で何度あったことだろうか。さすがに、レノアには強行軍過ぎた。

 レノアはげっそりした顔をして、俺たちの乗る馬車に向かって戻ってくる。

 遠目に見ても、やつれている。正直、同情を禁じ得ない。

 だがそれも、これで終わりだろう。

 あと一時間もすれば、アリアスの居館にたどり着く。

 うん?そう言えば……

 今まさに馬車までなんとかたどり着いたレノアに、俺は申し訳ないと思いつつも尋ねる。

「レノア、デュランドルは、王都には入れられないんじゃないのか?」

 レノアは疲れ切った表情で、馬車によじ登りながら答える。

「いや、大通りなら大丈夫だ。手配済みだし……」

 俺はレノアの手を引き、馬車に乗せつつさらに問う。

「デュランドルの住まいは?」

「それも、手配済み。あとは、商会のひとたちに任せるよ……」

 レノアはそう言うと、長椅子に倒れ込むように寝そべり、そのまま眠りに落ちた。
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