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第二章
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「ゴート公爵!」
レノアが叫ぶように言った。
ゼロスがいぶかしげに問いかける。
「その、ゴート公爵とやらは、敵なのか?」
レノアが、眉根を寄せてうなずく。
「敵……だね。ゴート公爵はオルダナ王国一の大貴族で、アリアス王女殿下にとっては、現状一番の政敵なんだ」
そこで俺は、呟くように言った。
「相手が悪い。判断が難しいな……」
レノアがすかさず同意する。
「そうだね。とても難しい相手だよ。普通に犯人返還の要求をしても、到底引き渡してはくれないだろうね」
「一筋縄ではいきそうもないか」
「いかないね。返還要求に対して、返事もしないかもしれない」
「押しても、引いても、って感じだな」
「参ったよ。こういった場合、一番嫌な相手かもしれない」
「逆にいえば、ワイズマンたちはしてやったりだな」
レノアが苦々しい顔をする。
「悔しいけど、そうだね。やつらにしたら、上手いところに逃げ込んだものさ」
だが俺は、そこで以前のレノアの言葉を思い出した。
「レノアは以前、ゴート公爵は、場合によっては味方につけられると言っていなかったか?」
レノアが重々しくうなずく。
「言ったね。でもそれは、もっと後の話さ。ティラノレギオンがもっともっと強大になり、大軍団にでもなればってことであって、今すぐってわけには……」
「デュランドルが加わってもか?」
レノアが右手を顎に付けて考え込む。
「……確かにデュランドルの巨体は、インパクトが強いかもしれない」
「やり方次第では、上手くいくんじゃないか?」
レノアが再び考え込む。
そして、ぽつりとささやくように言った。
「……宣伝するか」
俺はうなずいた。
「そうしよう。大宣伝して、練り歩こう。その評判がゴート公爵に届けば……」
だがレノアは首を横に振った。
「いや、やっぱり弱いよ。ゴート公爵が味方になるのは、我々の軍事力が帝国を凌駕するかもしれないと思わせた時だ。さすがにデュランドル一体では、厳しいと思う」
レノアは、俺の目を真っ直ぐに見据えて言った。
だが俺は、その視線を跳ね返す。
「だが他に方法はないだろう。ならば、難しくてもやってみる価値はあるんじゃないか?」
レノアは三たび、顎に手をやり考え込んだ。
そしてしばらくの後、まなじりを決して彼は言った。
「いや、他の方法もあるよ」
俺は眉根を寄せて首をひねる。
「他の方法って、どんな?」
するとレノアが、にやりと口角を上げて笑った。
「それは、僕に任せてくれないか?きっと、ゼークルたちを取り戻して見せるよ」
レノアが叫ぶように言った。
ゼロスがいぶかしげに問いかける。
「その、ゴート公爵とやらは、敵なのか?」
レノアが、眉根を寄せてうなずく。
「敵……だね。ゴート公爵はオルダナ王国一の大貴族で、アリアス王女殿下にとっては、現状一番の政敵なんだ」
そこで俺は、呟くように言った。
「相手が悪い。判断が難しいな……」
レノアがすかさず同意する。
「そうだね。とても難しい相手だよ。普通に犯人返還の要求をしても、到底引き渡してはくれないだろうね」
「一筋縄ではいきそうもないか」
「いかないね。返還要求に対して、返事もしないかもしれない」
「押しても、引いても、って感じだな」
「参ったよ。こういった場合、一番嫌な相手かもしれない」
「逆にいえば、ワイズマンたちはしてやったりだな」
レノアが苦々しい顔をする。
「悔しいけど、そうだね。やつらにしたら、上手いところに逃げ込んだものさ」
だが俺は、そこで以前のレノアの言葉を思い出した。
「レノアは以前、ゴート公爵は、場合によっては味方につけられると言っていなかったか?」
レノアが重々しくうなずく。
「言ったね。でもそれは、もっと後の話さ。ティラノレギオンがもっともっと強大になり、大軍団にでもなればってことであって、今すぐってわけには……」
「デュランドルが加わってもか?」
レノアが右手を顎に付けて考え込む。
「……確かにデュランドルの巨体は、インパクトが強いかもしれない」
「やり方次第では、上手くいくんじゃないか?」
レノアが再び考え込む。
そして、ぽつりとささやくように言った。
「……宣伝するか」
俺はうなずいた。
「そうしよう。大宣伝して、練り歩こう。その評判がゴート公爵に届けば……」
だがレノアは首を横に振った。
「いや、やっぱり弱いよ。ゴート公爵が味方になるのは、我々の軍事力が帝国を凌駕するかもしれないと思わせた時だ。さすがにデュランドル一体では、厳しいと思う」
レノアは、俺の目を真っ直ぐに見据えて言った。
だが俺は、その視線を跳ね返す。
「だが他に方法はないだろう。ならば、難しくてもやってみる価値はあるんじゃないか?」
レノアは三たび、顎に手をやり考え込んだ。
そしてしばらくの後、まなじりを決して彼は言った。
「いや、他の方法もあるよ」
俺は眉根を寄せて首をひねる。
「他の方法って、どんな?」
するとレノアが、にやりと口角を上げて笑った。
「それは、僕に任せてくれないか?きっと、ゼークルたちを取り戻して見せるよ」
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