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第二章

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「えっ!?そうなのか?」

 レノアが驚いた顔をする。

 俺はレノアに向き直り、言った。

「実は、こちらの世界には、俺がいた世界との共通点が多々あるんだ」

 レノアが渋面を作る。

「もしかして……他の転移者の影響とか?」

「おそらくはそうだ。俺は様々な街で、元いた世界のものとほとんど変わらない建築様式の建物などを見たりしたんだ。いくらなんでもそのすべてが偶然の産物とは到底思えないからな」

「それほどたくさんあるってことだね?」

「ああ。だが、今回のはどうなんだろうか」

 俺は眉根を寄せて考え込んだ。

 すると、レノアが俺の考えを読み取ったように言った。

「つまり君が言いたいのは、これまでのは人間界でのことだった。だけど、今度のはそうじゃない。ゼロスの一族、ネメセス族での名前なわけだからね」

 俺はうなずき、ゼロスに向き直る。

「ゼロス、ネメセス族は人間界と付き合いがあるのか?実際、人間の言葉が喋れているし」

 レムルはすかさず答えた。

「基本的には人間と交流などはない。何故なら、人間は多くの場合、我らの敵となるからだ」

「納得だ。だけど、例外はあるんだな?」

 俺の問いに、ゼロスが重々しくうなずいた。

「カズマの言う通り、我らは人語を解すだけではなく、喋ることが出来る。それは、時に味方となる人間が現れるからに他ならない」

「その味方に言葉を教わったわけだな。つまり、それが転移者ってことか?」

 だがこの問いには、ゼロスは首をゆっくりと横に振った。

「それはわたしにはわからない。少なくともわたし自身は転移者と出会ったのは、カズマが最初だ」

「村には伝承とかはないのか?転移者と出会ったとかの……」

 だが残念ながら、ゼロスはこれも首を横に振った。

「申し訳ないが、わたしは語り部ではないのだ。村の語り部はもう……」

 ゼロスは消え入りそうな声でそこまで言った。

 俺は両手を胸の前に出して開き、ゼロスを押しとどめた。

「すまなかった。これ以上は充分だ」

 ゼロスは俺の仕草と言葉を聞いて、大きくゆっくりとうなずいた。

 俺はうなずき返し、言った。

「ネメセス族に、オロチという呼び名が伝わっている以上、転移者がこの森を訪れ、ネメセス族と関わった可能性は高いだろう。ただ、長命なゼロスが俺以外の転移者を知らないとすれば、やはりかなり以前のことになるのだろう」

 レノアが同意する。

「そうだろうね。おそらくは百年以上前……もしかすると、エニグマが語ったという鍛冶屋がそうかもしれないね」
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