１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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　そうかもしれない。言われてみれば確かに、僕自身違和感がある。

　僕――の一人称って、僕だったっけ？

　違うような気がする。どうだったろうか。思い出せ。僕はあちらの世界で僕と言っていたか？家にいたときは、確かに僕と言っていた。

　それ以外の一人称は用いていない。なぜなら怖かったからだ。従順を装わなければいけなかったから。だから、僕は僕と言っていた。だけど、施設に入ってからはどうだったか。あの暴力から解放された、わずか一年余りの期間、僕は僕と言っていたか？

　言っていない。僕は――俺と言っていた。

　施設に入ってすぐ、僕は僕と言ってからかわれた。施設内で一番喧嘩の強い奴に睨まれ、僕はいじめられかけた。

　そのとき出会ったのが、あの漫画だった。あの漫画の主人公も、初めは僕という一人称を使っていた。だけど、いじめを受け、彼は立ち上がった。いじめっ子を力でねじ伏せた。そして、その後しばらくして――彼は一人称を俺に変えた。

　だから僕も変えた。僕から俺に、一人称を変えたんだ。いじめっ子をねじ伏せることは出来なかったけど、反抗したら、それ以降いじめては来なくなった。一発だけだけど、殴ることが出来たのが功を奏した気がする。

　それ以降僕は、いや、俺はいじめられなくなった。友達は出来なかったけど、構わなかった。そんなものより、あの漫画の方が大事だった。ただ残念ながらあの漫画は、巻数が十巻しかなかった。だからすぐ読み終わってしまうんだ。だから俺は、あの漫画を何度も繰り返し読んだんだ。何度も、何度も。

　それと、あの漫画はまだ連載途中だった。だから、結末は知らない。だけど、たぶんハッピーエンドになると思う。作風からして、バッドエンドになるとは思えないからだ。おそらくだが十巻以降も、主人公は次々と襲い来る敵をところかまわずなぎ倒し、可愛らしいヒロインと見事結ばれ、そして大陸全土を統一して新王朝を打ち立てる。そんな結末になる気がする。

　大陸全土を統一か――参ったな。

　もしかしたら、その方向性も俺は植え付けられてしまったのか？あの漫画に引きずられ、だから俺はアリアスを助けたのか？そして蒼龍槍を振るって、押し寄せるベルガン帝国の兵士たちを血祭りに上げ続けたのだろうか？

　わからない。俺は自分自身がわからない。今考えているこの自我も、本来の自分なのかどうかもわからない。

　俺は――誰だ？

　俺は、本当に俺なのか？

　俺は――俺だ。間違いない。どうやらようやく――そう、ようやく俺はあの部屋から完全に抜け出せたようだ。