１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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「さあ！もったいぶらずに教えてくれ。カズマ！」

　エニグマが興奮した様子で、僕を急かす。

　だが僕は動かない。

　契約違反がどうなるかを確認したい。

　そもそも本当に契約は成立しているのか。

　成立していたとして、果たしてそれは僕に効くのか。

　僕はあらゆることにレベルアップし続ける。

　ならば契約ですら、時間を経れば凌駕してしまうのではないだろうか。

「どうした？さあ、答えてくれ。君の何が変わった？この質問に、君は抗えないはずだぞ」

　エニグマがしびれを切らして言う。

　抗えないか。

　さて、どうなるものか。

　すると突然、刺すような胸の痛みを覚えた。

　思わず、左胸を手で抑えながら腰を折って前かがみとなる。

「これは……」

　エニグマが困ったような顔をしてため息を吐いた。

「忘れたのかい？僕と君は契約を結んでいるんだよ？その契約に違反すれば、心臓が締め付けられてしまうんだ。だからさあ、早く答えておくれよ。そうすれば痛みから解放されるよ」

　ぐっ！これは……凄い痛みだ。鋭利なナイフを心臓に突き立てたかのような。

　この痛みに耐えられるか？

　いや、ダメだ。おかしい。レベルアップしている気がしない。

　このままでは、死んでしまうかもしれない。

「わかった……話す……」

　僕は必死に絞り出すように言った。

　すると、心臓の痛みがスッと和らいだ。

　そこへ、エニグマが釘を刺すように言う。

「時間稼ぎをしようとしても無駄だよ。この契約は絶対だ。何者であろうと、逃れられやしない」

　契約の場合は、レベルアップが効かないってことか。

　仕方がない。

　僕はかがめていた腰を戻し、真っ直ぐに立つ。

　そして、両手を下ろして胸をそびやかすようにして話し始める。

「君の言う通りだよ。別人のようなものさ」

　エニグマが目を細めて僕を見る。

　そして顔を斜め上に上げ、僕を見下ろすようにして口を開いた。

「別人のようなもの……か。いや、ダメだ。もっと正確に答えてくれ」

　さて、何て説明したらいいか。

　僕はちょっと考えると、話し始めた。

「今の僕が本当の僕だ。さっきまでのは、本当の僕じゃない」

　エニグマが目を爛々と輝かせる。

「本当じゃないとは？どういう意味なんだい？」

「別人格だったってことさ」

　するとエニグマが、ハッとした顔となって大きく目を見開く。

「別人格……そうか！君は多重人格者だったのか！」

　僕はゆっくりとうなずいた。

　エニグマの口角が、耳にまで届くのではないかというほど異様に上がっていく。

「では、今僕が話している君こそが、本来の君であり、主人格ということだね？」