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第二章

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「つまりそれは、オルダナ王国内には悪魔はいないってこと?」

 僕がそう問いかけると、エニグマは顔を斜めにし、軽く何度もうなずいた。

「でも僕は、近いうちにアルデバラン王国内に行くつもりだよ」

 すると、エニグマが笑みを浮かべて顔を横に振った。

「大丈夫さ。アルデバラン王国内にもいないから」

「ふ~ん、じゃあ何処にいる?オルダナから一番近いところだと」

 僕の問いに、エニグマが少し考えながらゆっくりと口を開く。

「そうだね……一番近いところとなると……」

 エニグマはそこまで言うと、少し険しい顔つきとなった。

「ベルガン帝国かな」

「ベルガン!」

「そう、どうも帝国内にひとりいるようだね」

「いるようだってことは、はっきりとはわからないの?」

 するとエニグマが首を横に振った。

「いや、いるのは間違いないと思う。ただ、誰かがわからない」

 僕の勘が働いた。

「つまり、君より上位階級の悪魔ってこと?」

 エニグマが口の端をクイッと上げる。

「かもしれない。でもそうでないかもね」

「下位の者ならわかりそうなものだけど」

「そうだね。下位ならわかると思うよ」

「じゃあ……あ、もしかして同格?」

 エニグマが大いにうなずいた。

「その可能性は高いと思う。もしも僕より明らかな上位悪魔なら、その存在自体も気づかない可能性が高い。つまりベルガンにいるのは、僕の同格ってことになる」

 なるほど。

 そこで僕はさらに勘を働かす。

「もしかして……その悪魔がベルガンによるアルデバラン侵略に関係しているってことは?」

 エニグマは両手を広げ、肩をすぼめた。

「さあね。関係しているかもしれないし、していないかもしれない。なにせ、今のところいるであろうことしかわからないんだ。何をしているかなんてわかりはしないよ」

 確かに。

 でも、もし関係していたら――

 大変なことになる。

 最悪、悪魔を敵にしないといけないってことだ。

 それも、僕がまったく歯が立たなかったグラドゥスを軽く退けたエニグマと同格の悪魔を。

 僕の身体がぶるっと震えた。

 するとそれを見てエニグマが言う。

「大丈夫さ。そう怖がることはない」

 その声は優し気に響いた。

 だが僕は眉根を寄せる。

「怖がって悪い?」

 反発する僕に、エニグマはまたも優しげな声で言う。

「そんなことは言っていないさ。ただ、君が怖がる必要はないって言っているだけだよ」

「どういう意味?」

 僕がそう問いかけると、エニグマは急に声音を変えた。

 その声はまだ優し気な色合いではあったものの、それと同時に言いようのない凄みも混ざっていた。

「もしもその悪魔が、君の前に立ちはだかろうとするのならば、僕が黙ってはいないからだよ」
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