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第二章
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僕は、ハッとした表情でエニグマを見た。
すると眩い光の先で、エニグマが会心の笑みを浮かべていた。
どういうことだ?
僕は何かの罠に引っかかったのか?
いや、待て。
別にエニグマが僕を引っかける意味はないはずだ。
彼の強さは、僕を遥かに凌駕している。
僕に何かしようとする気なら、とっくにやっているはずだ。
なら、これはなんだ?
なぜ指が離れない?
そう思った瞬間、突如として光が収束しだした。
それはあまりにも急速だった。
瞬く間に光は収縮し、跡形もなく消え去った。
僕は呆気にとられた。
次の瞬間、僕の指が何事もなかったかのようにエニグマの指から離れた。
「あ……」
僕は思わず親指の腹を見る。
血が垂れていない!
それどころか、傷跡すらもなかった。
僕は眉根を寄せてエニグマを見た。
エニグマは、またも満足そうな顔をして、僕を見つめる。
「心配しなくてもいい。契約は完了したよ」
僕は自分の親指の腹をエニグマに見せた。
「血どころか、傷跡もないんだけど?」
すかさずエニグマが返す。
「傷があった方がよかった?」
「いや、別に……無い方がいいけど」
「そうでしょ?だから治しておいたよ。別に礼はいらないよ」
「特にする気もないけど……まあいいや」
僕は些事は置いて、本題に入ることにした。
「それで、契約は完了したんだよね?」
「ああ。無事に滞りなくね」
エニグマが軽く首を傾ける。
僕は軽く息を吐き出す。
「そう。ならこの先、互いの質問に強制的に答えることになるってわけだ」
「そうなるね」
「期限は?まさかずっとってことはないでしょ?」
「そうだね。まあ一日ってところかな」
「一日あれば、すべての聞きたいことが聞けそうだね」
「そういうこと。充分さ」
僕はそこで大きく息を吸い込んだ。
そして息を止め、肺腑いっぱいに空気を溜める。
「どっちから聞く?」
「君からでいいよ」
エニグマが右掌を上に向け、どうぞという仕草をする。
僕はうなずいた。
「じゃあ、遠慮なく聞かせてもらうよ」
エニグマが鷹揚にうなずく。
「さっきの話の続きから聞きたい。君は、僕の住んでいた地球のことは知らない。だけど、宇宙のことは知っているんだね?」
エニグマが笑みを湛えたまま、無言でうなずいた。
「そして、惑星と惑星の間は途方もない距離が離れていることも知っているね?」
またもエニグマがうなずく。
「では、恒星のことは知っている?」
すると、エニグマが口を開いた。
「太陽などのことだね。自らを燃やし、光を発する星々のことだろう?夜空を見上げると輝く星々……あれらのほとんどは恒星のはずだ」
すると眩い光の先で、エニグマが会心の笑みを浮かべていた。
どういうことだ?
僕は何かの罠に引っかかったのか?
いや、待て。
別にエニグマが僕を引っかける意味はないはずだ。
彼の強さは、僕を遥かに凌駕している。
僕に何かしようとする気なら、とっくにやっているはずだ。
なら、これはなんだ?
なぜ指が離れない?
そう思った瞬間、突如として光が収束しだした。
それはあまりにも急速だった。
瞬く間に光は収縮し、跡形もなく消え去った。
僕は呆気にとられた。
次の瞬間、僕の指が何事もなかったかのようにエニグマの指から離れた。
「あ……」
僕は思わず親指の腹を見る。
血が垂れていない!
それどころか、傷跡すらもなかった。
僕は眉根を寄せてエニグマを見た。
エニグマは、またも満足そうな顔をして、僕を見つめる。
「心配しなくてもいい。契約は完了したよ」
僕は自分の親指の腹をエニグマに見せた。
「血どころか、傷跡もないんだけど?」
すかさずエニグマが返す。
「傷があった方がよかった?」
「いや、別に……無い方がいいけど」
「そうでしょ?だから治しておいたよ。別に礼はいらないよ」
「特にする気もないけど……まあいいや」
僕は些事は置いて、本題に入ることにした。
「それで、契約は完了したんだよね?」
「ああ。無事に滞りなくね」
エニグマが軽く首を傾ける。
僕は軽く息を吐き出す。
「そう。ならこの先、互いの質問に強制的に答えることになるってわけだ」
「そうなるね」
「期限は?まさかずっとってことはないでしょ?」
「そうだね。まあ一日ってところかな」
「一日あれば、すべての聞きたいことが聞けそうだね」
「そういうこと。充分さ」
僕はそこで大きく息を吸い込んだ。
そして息を止め、肺腑いっぱいに空気を溜める。
「どっちから聞く?」
「君からでいいよ」
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僕はうなずいた。
「じゃあ、遠慮なく聞かせてもらうよ」
エニグマが鷹揚にうなずく。
「さっきの話の続きから聞きたい。君は、僕の住んでいた地球のことは知らない。だけど、宇宙のことは知っているんだね?」
エニグマが笑みを湛えたまま、無言でうなずいた。
「そして、惑星と惑星の間は途方もない距離が離れていることも知っているね?」
またもエニグマがうなずく。
「では、恒星のことは知っている?」
すると、エニグマが口を開いた。
「太陽などのことだね。自らを燃やし、光を発する星々のことだろう?夜空を見上げると輝く星々……あれらのほとんどは恒星のはずだ」
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