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第二章
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「そうか……僕はまったく歯が立たなかった。一回吹き飛ばされて、それで終わりだった」
僕は、内から湧き上がる悔しさを押し殺しながら言った。
するとエニグマがまたも苦笑した。
「相手は悪魔だよ?君がいくら特殊な人間だといっても、悪魔相手では歯が立たないのは仕方がないさ」
「そうかもしれないけど……」
エニグマがじっと僕を見つめた。
「自分は無敵だと思っていた?」
そう。僕はいつの間にか無敵感の中にいた。
どんな相手であろうが、僕には勝てない。それどころか足元にも及ばない。
そういつの頃からか思っていた。
「そうだね。どんな相手でも勝てると思っていた。思い上がりも甚だしいよね」
エニグマは首を軽く横に傾ける。
「そうは言っても、人間相手なら無敵だろう。今回ばかりは相手が悪かったね」
「悪魔か……エニグマも悪魔なんだね?」
僕の問いに、エニグマが妖しげな笑みを浮かべた。
「そうだよ。僕も悪魔さ」
「やっぱりね。そうだろうとは思っていたけど……」
「思っていたけど……なに?」
「半信半疑だった。本当に悪魔がいるなんて、やっぱり信じがたいし」
エニグマが納得した顔でうなずいた。
「そうだろうね。通常僕ら悪魔と、君たち人間が出会うことはないからね」
うん?何か今、さらっと物凄く重要なことを言わなかった?
僕は慌てて問いかける。
「通常は出会わないって、どういうこと?」
エニグマは軽く肩をすぼめる。
「君の周りに、これまでに悪魔と出会ったことがあると言っている者はいる?いないだろう?通常とはそういうことさ」
「つまり、今こうして僕たちが出会っているのは、異常な状態だってこと?」
「そう。通常、悪魔は人間に干渉しないからね」
「じゃあ、君はわざと異常な状態を作ったってこと?」
エニグマが鼻を鳴らす。
「異常な状態を作ったのは、君の方さ。僕は、君を観察していたのであって、干渉するつもりはなかったんだよ。それなのに君は、マフィアのアジトの屋上にいた僕を目ざとく見つけてしまった。だから、仕方なく挨拶したんじゃないか」
「僕が悪いって言いたいの?僕が見つけたからって、別に挨拶なんかしなくてもいいじゃないか。君には背中の翼があるんだから、僕がアジトの階段を駆け上がっている時に飛んで逃げればよかった。でも君はそうしなかった。何故ならそれが君の意志だったからだ。違う?」
エニグマは僕の言葉をふんふんとうなずきながら聞き終えると、ニヤリと嫌らしく口角を上げた。
「そうだね。確かにその通りなんだけど。でも、僕をその気にさせたのは、やっぱり君さ」
僕は、内から湧き上がる悔しさを押し殺しながら言った。
するとエニグマがまたも苦笑した。
「相手は悪魔だよ?君がいくら特殊な人間だといっても、悪魔相手では歯が立たないのは仕方がないさ」
「そうかもしれないけど……」
エニグマがじっと僕を見つめた。
「自分は無敵だと思っていた?」
そう。僕はいつの間にか無敵感の中にいた。
どんな相手であろうが、僕には勝てない。それどころか足元にも及ばない。
そういつの頃からか思っていた。
「そうだね。どんな相手でも勝てると思っていた。思い上がりも甚だしいよね」
エニグマは首を軽く横に傾ける。
「そうは言っても、人間相手なら無敵だろう。今回ばかりは相手が悪かったね」
「悪魔か……エニグマも悪魔なんだね?」
僕の問いに、エニグマが妖しげな笑みを浮かべた。
「そうだよ。僕も悪魔さ」
「やっぱりね。そうだろうとは思っていたけど……」
「思っていたけど……なに?」
「半信半疑だった。本当に悪魔がいるなんて、やっぱり信じがたいし」
エニグマが納得した顔でうなずいた。
「そうだろうね。通常僕ら悪魔と、君たち人間が出会うことはないからね」
うん?何か今、さらっと物凄く重要なことを言わなかった?
僕は慌てて問いかける。
「通常は出会わないって、どういうこと?」
エニグマは軽く肩をすぼめる。
「君の周りに、これまでに悪魔と出会ったことがあると言っている者はいる?いないだろう?通常とはそういうことさ」
「つまり、今こうして僕たちが出会っているのは、異常な状態だってこと?」
「そう。通常、悪魔は人間に干渉しないからね」
「じゃあ、君はわざと異常な状態を作ったってこと?」
エニグマが鼻を鳴らす。
「異常な状態を作ったのは、君の方さ。僕は、君を観察していたのであって、干渉するつもりはなかったんだよ。それなのに君は、マフィアのアジトの屋上にいた僕を目ざとく見つけてしまった。だから、仕方なく挨拶したんじゃないか」
「僕が悪いって言いたいの?僕が見つけたからって、別に挨拶なんかしなくてもいいじゃないか。君には背中の翼があるんだから、僕がアジトの階段を駆け上がっている時に飛んで逃げればよかった。でも君はそうしなかった。何故ならそれが君の意志だったからだ。違う?」
エニグマは僕の言葉をふんふんとうなずきながら聞き終えると、ニヤリと嫌らしく口角を上げた。
「そうだね。確かにその通りなんだけど。でも、僕をその気にさせたのは、やっぱり君さ」
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2024/02/23
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