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結香高二の春
逃げたはずですが
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運動オンチだけど、だいぶ走って商店街を抜けた。
周りに人気が少なくてホッとする。
―――逃げちゃった。
逃げちゃったけど、駄目だったかな。でも泣かないで話できる自信ない。
浮気じゃない。先輩はそんなことしない。
私の試験が終わるまで待ってた?試験終わったら出かけようって言ってたけど、そこで言われるってこと?私、泣かないでちゃんと話できる?
~~~っ、ダメだっ。考えただけでもう目が潤んできた。
「ねぇ、大丈夫?」
上から声が降ってきて見上げると、男の人が私を見下ろしていた。
視界が歪んで上手く見えないけど、同じ学校の人みたいだ。
「だ、大丈夫です」
慌てて体勢を直して少し後退る。
先輩より伸長低いと思うけど、やっぱり怖い。
そんな私に構わずに、目の前の人は私が下がった距離を一歩で近寄る。
「ねぇ、もしかして去年剣道部の練習見に来てくれた子じゃない?俺たち今試験お疲れ会ってことでカラオケに来てるんだけど、良かったら―――」
「結香」
下がっても近寄られてパニクっている私を、優しい腕が包んだ。
「―――――せんぱい?」
なんでここにいるんですか?
あのヒトは一緒じゃないの?
………っていうか………今、名前呼んだ?
言葉もなく見上げると、心配そうに眉を寄せた先輩が逆さまに映った。
片手で私を抱えたまま、もう一方の手で何度も髪を撫でてくれる。
「どうした?急に走ったら危ない―――どこか痛いか?」
私に優しくして大丈夫ですか?
あのヒトは―――――
思い出したらボロッと涙が溢れた。
あぁもう。泣くときもこんなに子供っぽくて情けない―――
先輩が一瞬顔をしかめると、私の身体を反転させてがっしり抱き込む。
な、なんで!?先輩、人が見てますよ!あのヒトも見てますよ!?
力いっぱいもがくけど、全然緩まない。苦しくないけど、先輩は平然としててなんかズルい。
「し、進藤先輩?」
あ。目の前の人のこと忘れてました。
先輩のこと知ってたみたいです。
「………あぁ、剣道部の」
「あ、ハイ。お久しぶりです。その子は」
「ああ、俺が送っていくから心配ない。じゃ」
声が低いけど、先輩怒ってる?
行こう、と促されるけど、先輩の態度が気になって足が動かない。
すると―――――
背中と膝の裏に触れられた、と思った次の瞬間に身体が浮いた。
お、お姫様抱っこ!?
恥ずかしい!!降ろしてぇぇぇ!!
心の声を上手く言えずにあわあわしてる私を抱えて、先輩は来た道を悠々と戻って行った。
周りに人気が少なくてホッとする。
―――逃げちゃった。
逃げちゃったけど、駄目だったかな。でも泣かないで話できる自信ない。
浮気じゃない。先輩はそんなことしない。
私の試験が終わるまで待ってた?試験終わったら出かけようって言ってたけど、そこで言われるってこと?私、泣かないでちゃんと話できる?
~~~っ、ダメだっ。考えただけでもう目が潤んできた。
「ねぇ、大丈夫?」
上から声が降ってきて見上げると、男の人が私を見下ろしていた。
視界が歪んで上手く見えないけど、同じ学校の人みたいだ。
「だ、大丈夫です」
慌てて体勢を直して少し後退る。
先輩より伸長低いと思うけど、やっぱり怖い。
そんな私に構わずに、目の前の人は私が下がった距離を一歩で近寄る。
「ねぇ、もしかして去年剣道部の練習見に来てくれた子じゃない?俺たち今試験お疲れ会ってことでカラオケに来てるんだけど、良かったら―――」
「結香」
下がっても近寄られてパニクっている私を、優しい腕が包んだ。
「―――――せんぱい?」
なんでここにいるんですか?
あのヒトは一緒じゃないの?
………っていうか………今、名前呼んだ?
言葉もなく見上げると、心配そうに眉を寄せた先輩が逆さまに映った。
片手で私を抱えたまま、もう一方の手で何度も髪を撫でてくれる。
「どうした?急に走ったら危ない―――どこか痛いか?」
私に優しくして大丈夫ですか?
あのヒトは―――――
思い出したらボロッと涙が溢れた。
あぁもう。泣くときもこんなに子供っぽくて情けない―――
先輩が一瞬顔をしかめると、私の身体を反転させてがっしり抱き込む。
な、なんで!?先輩、人が見てますよ!あのヒトも見てますよ!?
力いっぱいもがくけど、全然緩まない。苦しくないけど、先輩は平然としててなんかズルい。
「し、進藤先輩?」
あ。目の前の人のこと忘れてました。
先輩のこと知ってたみたいです。
「………あぁ、剣道部の」
「あ、ハイ。お久しぶりです。その子は」
「ああ、俺が送っていくから心配ない。じゃ」
声が低いけど、先輩怒ってる?
行こう、と促されるけど、先輩の態度が気になって足が動かない。
すると―――――
背中と膝の裏に触れられた、と思った次の瞬間に身体が浮いた。
お、お姫様抱っこ!?
恥ずかしい!!降ろしてぇぇぇ!!
心の声を上手く言えずにあわあわしてる私を抱えて、先輩は来た道を悠々と戻って行った。
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