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本編
エピローグ
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―――ーー3月14日。卒業式だ。
天気には恵まれたが、桜はまだあまり咲いていない。
あっという間に式が終わり、写真撮影や卒業アルバムの寄せ書きにざわつく教室を抜けると、俺は屋上に出て寝転がった。
風はまだ少し冷たいけど、日射しは暖かい。目を閉じて自分には珍しい高揚した感情をもて余していると、ドタドタドタっ、と騒がしい足音が近づいてきた。
「夕弦っ夕弦っ!見ろ見ろ!」
だらしない格好をした光司がドヤ顔をしていた。
「うん。だらしない」
「ふふっ。悔し泣きに泣くがいい。どうだ!ボタン全部売り切れだぞ!!」
「よかったな」
悔しがれよ!ちゃんと見ろよ!と喚く光司を放っておいて、メールをチェックする。
立ち上がって軽く服を叩いて教室に戻り荷物を取る。
「なぁなぁ。お前あの女の子とその後どうなったワケ?あ!あのチョコの娘は?」
「煩いな。静かに歩けよ。―――あ」
昇降口に近づいたところで立ち止まる。
「~~~っあぶなっ!おま、もう少しでぶつかるところだったろうがっ」
「光司、ここで少し待て。良いって言うまで待てよ」
言いおいて昇降口で待っていた彼女に駆け寄る。
俺に気付いた彼女は、にっこり笑って小さく手を振った。
「寒くないか?」
「大丈夫です。………先輩」
あの時と同じ紙袋を差し出して首をかしげた。
「これ、貰ってください」
「ありがとう。今度はちゃんと食べるな」
「一緒に写真、いいですか?」
「うん。―――光司!写真撮ってくれ」
とととっ、と駆け寄った光司は俺と結香と紙袋を順に見つめ―――――
「はぁぁぁぁっ!!!!!?」
絶叫をあげたのだった。
fin.
天気には恵まれたが、桜はまだあまり咲いていない。
あっという間に式が終わり、写真撮影や卒業アルバムの寄せ書きにざわつく教室を抜けると、俺は屋上に出て寝転がった。
風はまだ少し冷たいけど、日射しは暖かい。目を閉じて自分には珍しい高揚した感情をもて余していると、ドタドタドタっ、と騒がしい足音が近づいてきた。
「夕弦っ夕弦っ!見ろ見ろ!」
だらしない格好をした光司がドヤ顔をしていた。
「うん。だらしない」
「ふふっ。悔し泣きに泣くがいい。どうだ!ボタン全部売り切れだぞ!!」
「よかったな」
悔しがれよ!ちゃんと見ろよ!と喚く光司を放っておいて、メールをチェックする。
立ち上がって軽く服を叩いて教室に戻り荷物を取る。
「なぁなぁ。お前あの女の子とその後どうなったワケ?あ!あのチョコの娘は?」
「煩いな。静かに歩けよ。―――あ」
昇降口に近づいたところで立ち止まる。
「~~~っあぶなっ!おま、もう少しでぶつかるところだったろうがっ」
「光司、ここで少し待て。良いって言うまで待てよ」
言いおいて昇降口で待っていた彼女に駆け寄る。
俺に気付いた彼女は、にっこり笑って小さく手を振った。
「寒くないか?」
「大丈夫です。………先輩」
あの時と同じ紙袋を差し出して首をかしげた。
「これ、貰ってください」
「ありがとう。今度はちゃんと食べるな」
「一緒に写真、いいですか?」
「うん。―――光司!写真撮ってくれ」
とととっ、と駆け寄った光司は俺と結香と紙袋を順に見つめ―――――
「はぁぁぁぁっ!!!!!?」
絶叫をあげたのだった。
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