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本編
18 3月12日 彼女の家4
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お父さん待ってると遅くなっちゃうから先に頂きましょう、とハルさんが言うので、ダイニングテーブルについた。
和やかに話をしながらご飯を食べる。控え目にしようとすると三人とも残念そうに眉を下げるので、普通に食べることにした。ちらりと見ると、彼女もきちんと食べているようで安心した。
「明後日卒業式かぁ。今でも第二ボタン貰うのって、やってるのかしら?」
「ウチは学ランですから、やるかもしれないですね」
バレンタインのチョコに勢いづいて、卒業式制服のボタン足りなくなるな!!と大笑いしていた光司を思い出した。
茜さんは、羨ましいなぁ、とため息をついた。茜さんの高校はブレザーだったから第二ボタンも味気なかったらしい。
「夕弦くん、制服のボタン無くなっちゃうんじゃない?」
「それはないんじゃないですかね」
女子には単純に怖がられてるし。
ハルさんは変わらずワクワクと続けた。
「夕弦くん、絶対女の子に人気あると思うの!バレンタイン、チョコいっぱい貰ったでしょう!?」
家族含め三個ですとは言いづらい。
その内二個はバレンタインデー前に貰ったけど、あれはバレンタインチョコにカウントしていいのか?
カタンッ―――――
何とも答えられずぐるぐると考えていると、物音がした。隣を見ると、彼女が食器を置いて俯いている。具合が悪くなったのか?
「どうし―――」
「ただいま―――誰だ、キミは」
彼女のお父さんは低い声で誰何した。
ハルさんと茜さんが説明したり食事を薦めたりしてくれて、険悪な目は和らいだものの、そのあとはあまり味を感じなかった。
なんとか食事を終えたあと、俺は仏間に呼び出された。
二人分のお茶を出して父親に何か耳打ちして俺に軽く頷いてみせてから、茜さんが部屋を出る。
―――――ガバリっ!!
「本っ当に!申し訳なかった!」
「……………はい?」
「恩人に対する態度ではなかった!この通り!申し訳ない!」
長居し過ぎたとか夕食まで頂いていることを咎められると思ってた俺は、はぁ、と間抜けな声を出してしまった。帰ってきて、知らない男が堂々と食事してたら誰何するだろう。
「えぇと、気になさらないでください」
「ありがとう。私は結香の父親で牧野信夫です」
「進藤夕弦です」
つられて自己紹介したが、信夫さんは構わず続けた。
「進藤くんは卒業後は?」
「県内の大学に進学して、商社に勤めようと思ってます」
「ご家族は?」
「両親と双子の弟妹がいます」
「その、趣味は」
「…小学校卒業まで剣道をやっていたので、竹刀を振るうことです」
「ご両親の職業は?」
「父は公務員、母は専業主婦です」
聞かれるまま答えているが、これは職質か見合いか?
悩んでいると、信夫さんは背後の仏壇を振り返った。
「私は再婚でね」
「……………はい」
「結香と茜は異母姉妹だ」
「はい」
「小さいときから雰囲気も伸長も違うからいろいろ言われたんだけどね」
「………はい」
「結香はおとなしい子だし茜みたいな華やかな美人ではないけど、可愛い自慢の娘なんだ」
「はい???」
「お父さんっ!!!!」
スパァァァンっ!!と音を立てて障子が開き、顔を真っ赤にした彼女がワナワナ震えながら仁王立ちしていた。その後ろでは、茜さんが俺に向かって両手を合わせ、ごめん、と口パクしている。
「お父さん!先輩には私からお話します。勝手に先輩に変なコト言わないで!!」
怒られてさらに小さくなった信夫さんを茜さんが回収し、仏間には俺と彼女が残った。
和やかに話をしながらご飯を食べる。控え目にしようとすると三人とも残念そうに眉を下げるので、普通に食べることにした。ちらりと見ると、彼女もきちんと食べているようで安心した。
「明後日卒業式かぁ。今でも第二ボタン貰うのって、やってるのかしら?」
「ウチは学ランですから、やるかもしれないですね」
バレンタインのチョコに勢いづいて、卒業式制服のボタン足りなくなるな!!と大笑いしていた光司を思い出した。
茜さんは、羨ましいなぁ、とため息をついた。茜さんの高校はブレザーだったから第二ボタンも味気なかったらしい。
「夕弦くん、制服のボタン無くなっちゃうんじゃない?」
「それはないんじゃないですかね」
女子には単純に怖がられてるし。
ハルさんは変わらずワクワクと続けた。
「夕弦くん、絶対女の子に人気あると思うの!バレンタイン、チョコいっぱい貰ったでしょう!?」
家族含め三個ですとは言いづらい。
その内二個はバレンタインデー前に貰ったけど、あれはバレンタインチョコにカウントしていいのか?
カタンッ―――――
何とも答えられずぐるぐると考えていると、物音がした。隣を見ると、彼女が食器を置いて俯いている。具合が悪くなったのか?
「どうし―――」
「ただいま―――誰だ、キミは」
彼女のお父さんは低い声で誰何した。
ハルさんと茜さんが説明したり食事を薦めたりしてくれて、険悪な目は和らいだものの、そのあとはあまり味を感じなかった。
なんとか食事を終えたあと、俺は仏間に呼び出された。
二人分のお茶を出して父親に何か耳打ちして俺に軽く頷いてみせてから、茜さんが部屋を出る。
―――――ガバリっ!!
「本っ当に!申し訳なかった!」
「……………はい?」
「恩人に対する態度ではなかった!この通り!申し訳ない!」
長居し過ぎたとか夕食まで頂いていることを咎められると思ってた俺は、はぁ、と間抜けな声を出してしまった。帰ってきて、知らない男が堂々と食事してたら誰何するだろう。
「えぇと、気になさらないでください」
「ありがとう。私は結香の父親で牧野信夫です」
「進藤夕弦です」
つられて自己紹介したが、信夫さんは構わず続けた。
「進藤くんは卒業後は?」
「県内の大学に進学して、商社に勤めようと思ってます」
「ご家族は?」
「両親と双子の弟妹がいます」
「その、趣味は」
「…小学校卒業まで剣道をやっていたので、竹刀を振るうことです」
「ご両親の職業は?」
「父は公務員、母は専業主婦です」
聞かれるまま答えているが、これは職質か見合いか?
悩んでいると、信夫さんは背後の仏壇を振り返った。
「私は再婚でね」
「……………はい」
「結香と茜は異母姉妹だ」
「はい」
「小さいときから雰囲気も伸長も違うからいろいろ言われたんだけどね」
「………はい」
「結香はおとなしい子だし茜みたいな華やかな美人ではないけど、可愛い自慢の娘なんだ」
「はい???」
「お父さんっ!!!!」
スパァァァンっ!!と音を立てて障子が開き、顔を真っ赤にした彼女がワナワナ震えながら仁王立ちしていた。その後ろでは、茜さんが俺に向かって両手を合わせ、ごめん、と口パクしている。
「お父さん!先輩には私からお話します。勝手に先輩に変なコト言わないで!!」
怒られてさらに小さくなった信夫さんを茜さんが回収し、仏間には俺と彼女が残った。
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