少女探偵ヒカリ

タロット殺人事件

身体のない遺体

ヒカリはコーヒーを飲みながら考えた
「ヒカリがコーヒーを飲むなんて」
ベルはギョッとした
「なんでそんな目で見るのよ」
「珍しかったので」
ベルは照れ笑いした
「まさかニュースになるとは」
「さすがに早いわ」
「でしょ？」
チェレンはうなずいた
「まさか国が特例とは」
「そこ？」
ヒカリは呆れた
ヒカリのスマートフォンが鳴った
「エンナからだわ」
「また死体よ」
「場所は？」
「磯子署からで左胸から腕にかけてバッサリ切られた遺体よ」
「左胸から腕にかけてバッサリ切られた遺体？」
エンナはうなずいた
「右にタトゥーが確認できたわ」
ヒカリはまたかと思った
「検視依頼？」
チェレンは思わず言った
ヒカリは小さくうなずいた
「近所かよ」
エンナは驚いた
「ヒカリが住んでるのは確か滝頭？」
ヒカリはうなずいた
「そうだけど」
エンナは複雑そうに思った
「新杉田駅のトイレ内から遺体が出たわ」
「エンナが言った遺体？」
ヒカリはうなずいた
｢左胸から腕がバッサリかよ」
チェレンは味噌汁を飲んだ
エンナはブルーシート前に立った
｢昨日の事件が頭から離れないわ｣
｢離れないって？」
「わたしもよ」
ヒカリはそういいながら黙々と検視した
「首を自分の足に置いて」
エンナはうなずいた
「タトゥーはあったの？」
エンナはうなずいた
「右に」
エンナは口を押さえた
「死後は二、三日程度よ」
「下半身のない遺体より先に殺されたと」
「その通りよ」
ヒカリはエンナに
「犯人はタトゥーに特別ななにかがあったと考えるべきかなと」
「言われてみれば確かに」
ベルはメモを見せた
「これでわかる？」
ヒカリはメモを見た
「いつのまに描いたの？」
「エンナから聞いて」
エンナはうなずいた
「ヒカリが書き忘れてるんじゃないかと」
「な、納得」
ヒカリのスマートフォンが鳴った
「チェレン、どうしたの？」
チェレンは深呼吸した
「金沢署からだ！」
「金沢署？」
チェレンはうなずいた
「また遺体だ」
「遺体？」
チェレンは地図を開いた
「野島で左足がない遺体が｣
「野島で」
エンナは電話した
ヒカリはスマートフォンを鞄に入れた
伊織ははたきを持って
「資料室、ほこりまみれだったから」
ヒカリはあちゃーと思った
「痛恨のミス？」
ヒカリはうなずいた
「調べたの？」
「なにを？」
ヒカリはエンナに
「あたしは毒殺だと思うわ」
エンナはヒカリに
「解剖所見と死体検案書つきで」
ヒカリはバイクを走らせた
「ヒカリが来たけど」
鑑識は胸撫で下ろした
ヒカリがは少し呆れた
「大丈夫かな」
鑑識はヒカリを案内した
ヒカリは鼻と口を押さえた
「右足がないわ」
鑑識は思わずブルーシートの外に出た
「ひどいわ、腐敗臭が｣
エンナはヒカリに行った
「どうしたの、ヒカリ？」
エンナは思わず口と鼻を押さえた
「すごいわ｣
ヒカリはうなずいた
チェレンはヒカリを見つけて
「すごい臭いだったか？」
「すごかったわ｣
エンナはタトゥーを見て
「タトゥーが残されているわ」
エンナは鑑識に
「タトゥーの方は？」
「人が逆さ釣りだったが｣
「吊るされた男が金沢区で」
「磯子区はライオンだったわ」
ベルは覗きこんで
「タロットカードだと力ですが｣
「力か」
ヒカリとエンナは振り向いた
「ベ、ベル？」
「栄区で見つかった遺体は星よ」
ヒカリは頭を抱えた
「なんか全員タロットカードに名前が｣
「あったわよ」
エンナはきっぱりと答えた
「新杉田駅で見つかった遺体の名前は玲於奈だったわ」
「レオって確かライオンを」
エンナはうなずいた
「栄区で見つかった遺体の名前は星子だったわ｣
「名前は？」
「免許証から身元が割れたから弦奈だって」
「またタロットカードに入ってるわ」
伊織は一つの事件資料を落とした
「似た事件だ」
伊織は事件資料に目を通した
ヒカリはエンナに
「過去にも似た事件が」
「確か聞いたことがあるわ」
「なにを？」
ベルは口を挟んだ
「身体の一部がない遺体よ」
「犯人は模倣犯？」
エンナは首を横にふった
「あれは」
「顧問弁護士から聞いたんだけど」
「ヒカリもそこに確信を？」
ヒカリはうなずいた
「死んだ作家は今回の事件を過去に起こしたのよ」
「過去にも？」
「事件資料は事務所にあるわ」
伊織の携帯がなった
「今、読書んだ事件資料ですか？」
ヒカリはうなずいた
「伊織が読んだ事件資料よ」
ヒカリはきっぱりと言った
ヒカリたちは事務所に戻った
「これですか？」
伊織は事件をヒカリに渡した
「この事件って」
エンナは事件資料を見た
「神奈川県警が迷宮入りした殺人事件よ」
ヒカリはエンナに
「実はこの事件は依頼人の顧問弁護士が言っていた殺人事件よ」
「殺人事件だと」
ヒカリはうなずいた
「過去の事件はなにかつながりでも？」
「あると思って」
ヒカリは黙々と読んだ
「平成元年に起きた事件は」
エンナは考えた
「陰陽道だと思うわ」
「陰陽道って」
「陰陽寮から来た教えよ」
「殺人に関係が」
ヒカリはお手上げをした
「まだわからないのね」
ヒカリはうなずいた
チェレンは本をヒカリに見せた
「過去の事件｣
「どうしたの？チェレン」
ヒカリはチェレンから事件資料を渡した
｢この事件が平成元年に起きた殺人事件と｣
エンナは事件資料を読んだ
｢六人の娘が産まれる前だわ｣
｢この事件は今回殺された人間は知らないと｣
エンナはうなずいた
｢この事件自身、神奈川県警がうやむやにしようとしていたから｣
｢どういうこと？｣
ヒカリは思わずエンナに詰め寄った
｢上層部の噂では権力がらみだと｣
ヒカリは考えた
チェレンははたきを持ってきて
｢ほこりが凄くて｣
ヒカリは立ち上がった
｢この事件知ってるのは？｣
｢警察庁が特別に写した物よ｣
ヒカリはきっぱりと言った
｢上層部が墓場まで持っていきたい事件なのは事実だってこと？｣
ベルは首を傾げた
｢どうしてですか？｣
｢わからないわ｣
ヒカリはエンナに
｢気になる点が出てきたわ｣
｢気になる点？｣
エンナはキョトンした
ヒカリはエンナに
｢犯人は儀式として捉えてるかよ｣
｢儀式？｣
ヒカリはうなずいた
｢この事件は模倣の可能性も｣
エンナはさっぱりわからなかった
｢これはこれでわからないわ｣
ヒカリはダメだこりゃと思った
｢曜日には？｣
｢こだわってないわ｣
ヒカリの答えは素っ気なかった
チェレンはふだんのヒカリじゃないと思った
｢体の一部を持ち去る犯人の意味が｣
ベルは体を震わした
｢弁護士が見せてくれた遺言書になかったわ｣
Ｎはうなずいた
｢書いた人はサイコパスの一面を隠すためか？｣
｢多分ね｣
ヒカリはあっさりと答えた
｢アメリカでもいたわ｣
｢ヒカリが言いたいのって殺人ピエロ？｣
｢さすがチェレンね｣
ヒカリはチェレンを見た
｢若い男を殺して自分の家の庭に埋めていたもの｣
ベルはヒカリに
｢その殺人鬼と共通点は？｣
｢中卒者や病気の子供を励ましていたし｣
｢あの作家にも似た点が？｣
ヒカリはうなずいた
｢タロットカードがモチーフにしてるのも｣
エンナのスマートフォンが鳴った
｢どうしたの、エンナ？｣
エンナは動揺する手を押さえて
｢く、首なし遺体が中華街で見つかったわ｣
｢中華街で？｣
エンナはうなずいた