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第26話

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 事件を調べていく過程で浮かび上がった人物の名前・・・・その名前は・・・

 私たちも知る人物、テレーゼさんだった。

 でも私、昼間に教会で会ったわよ。そのテレーゼさんが容疑者なの? いや容疑者というか参考人って感じなのかな?

 そんな捜査上の話をなんで私たちにするのかしら? と思ったけどそれは私たちの想像を超えていた。
 魔獣が突然、学園に出現して人々を襲い、そのどさくさで殿下の暗殺を狙ったこの事件。そうとう闇が深そう。

 到底ひとりの女学生が計画実行できるものではないのは誰でも分かる。テレーゼさんは手駒のひとり、もしくはただ単に巻き込まれた人物。その背後には大きな組織が関与しているのが分かる。それが只の犯罪組織なのか、それともこの国を狙う敵対国家の仕業か。はたまた王位継承権絡みなのか。

 もしこれが王位継承権絡みだったら最悪よね。
 でもそれが本当だったら、一番疑わしいのは王位継承2位のジュリアン様になってしまう。いくらなんでもそんな誰でも予想できるようなことしないわよね?
 
 あっ、これがこの話の目的のひとつなのね。
 事件の真相はともかく、ジュリアン様には自重していただかないといけない。それが本人の意思ではなく、誰かジュリアン様を祭り上げようとする貴族連中に対するけん制にもなるのだろう。

 話を聞く限りでは、テレーゼさんは魔獣への生贄、憑代になった男子生徒と授業まえに接触していたらしい。
 普段接点のない男女ふたりが一緒にいれば色恋ざたかと思うのじゃない? なので見ていた生徒も少なからずいたみたい。
 そして授業が始まり、しばらくして事件が起こった。

 その間に何があったのか? どうしたらあんな魔獣が呼び出されるのか? 大規模な術式と魔法陣、そして生贄が必要だと思われる禁忌魔法。それが何もない校庭で、ひとりの男子生徒を生贄にするだけで可能なのかしら? 
 呪術のことは分からないけれど、テレーゼさんひとりでできることではない。誰か別の呪術師が居たはずである。

 呪術師の件は未だ分からないが、テレーゼさんは組織の末端として何も知らされないまま、授業の前に男子生徒にあるアイテムを渡したそうだった。そのアイテムが恐らく呪いの素なのでしょう。
 
 目の前で豹変してく男子生徒を見たテレーゼさん。そして暴れ出した魔獣。
 昼間に聞いた話でそれがトラウマになった原因と思っていたけれど、まさかその元凶の片割れがテレーゼさん自身だったとはね。
 そんな話はあの時は出ていなかったけど、隠していたのね。まあ公にするような話でもないから仕方がないわね。

 テレーゼさんは事情聴取の過程で全てを話してくれたらしい。
 平民であるテレーゼさんは、生活のために知らない人から依頼を受けたらしい。その内容はアイテムをある男子生徒に渡すこと。それだけで高額な報酬がもらえるらしかった。
 前金だけでも結構な額になり、成功すれば残りの報酬がもらえるらしかったが、事件の後では依頼主との連絡が途絶えたそうだった。
 
 依頼主の名前も知らされておらず、テレーゼさんは騙された被害者とみて良いだろう。
 それでも罪に問われることは間違いない。

 事情聴取だけで済んでいるのは、テレーゼさんを泳がせて組織が再び接触してくるのを待っているらしい。
 依頼主の顔を知っているテレーゼさん。
 本来であれば彼女は魔獣に殺されていたかも知れない。
 だがテレーゼさんは生き残った。
 生き残ってしまった・・・だとすれば組織が口封じに動く可能性もある訳で、捜査員はそれを待っていると。

 昼間、教会で会った何とかっていう貴族男性は関係あるのかしら? ただのスケベ親父の可能性もあるけど、まあ過ぎた話だわ。
 とにかく泳がせているテレーゼさんには、あまり接触しないでほしいらしい。そして何かあれば知らせることも約束されられた。

 
 気が思い話をさせられたけど、舞踏会の主役がいつまでも不在なのは良くないらしい。ジュリアン様を残して私たちは会場に戻ったのだった。
 後から聞いた話では、ジュリアン様は国王陛下からこってりと絞られたらしい。くすくす。いい気味だわ。
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