12 / 31
第12話
しおりを挟む
その後は、破壊された講堂に案内された。
多くの犠牲者を出した場所であり、私も死にそうな目に合った。
半壊した建物は倒壊の危険性もあるので、行方不明者の捜索が終わり次第取り壊されるらしい。
そしてその跡地に犠牲になった多くの学生、教師、騎士たちの慰霊碑が立てられるとか。
今も行方不明者の捜索は行われており、病院や寺院には多くの負傷者がいる。
私にはお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りすることしかできない。
私たちは簡易的に作られた献花台に摘んできた花を供えて、途中から合流した学園長先生とともに黙祷を捧げることにした。
「魔獣災害で犠牲となられた方々に、追悼の意を表し、心からご冥福をお祈りします」
お父様や学園長先生でもいいと思うのだけど、皆の勧めでなぜか私が代表で慰霊の言葉を述べ黙祷を捧げた。
不出来な私の言葉でごめんなさい。本職の司祭じゃないので間違ってても怒ら撫でくださいね。
騎士の中には泣き出す者までいて、ホントにいたたまれない気持ちになってしまう。
倒された魔獣は王国軍が引き取った後で、その姿は無かった。
災害級に指定されている魔獣は、討伐例そのものが少ない。
人里から遠く離れた高原に生息しており、滅多に遭遇することは無いと聞く。
それでも稀に人里の近くに現れることもあるのだとか、討伐するのが非常に難しく、討伐隊の被害も甚大なものになってしまう。それより追い払うのが得策なのでしょうが、今回は現れた場所が悪かった。王都のど真ん中、魔法学園内に突然現れたのだからどうしょうもない。被害を最小限に抑えるためにも学園内で倒す必要があったのでしょう。
もし学園の外に逃げ出し、繫華街や住宅地で暴れまわったら・・・戦う術を持たない民衆は蹂躙され、辺り一面地獄絵図になることが簡単に予想できて恐ろしくなってしまう。
それほど恐ろしい魔獣
硬い甲殻や骨格は貴重な資料、素材として有効活用されるそうなので、少しでも復興資金の足しにして欲しい。
それにしても疲れたわ。特に精神的に・・・・私がやらかした結果、お花畑になった広場。
綺麗な花は見ていると心が安らいでいいのよ。でもそれが辺り一面、どこを見ても花、花、花。
負傷者の傷も癒すほどのお花パワー、奇跡のお花畑。
皆からは感謝されるけど・・・私にとっては複雑なのよね。
だって私がパニックになって魔力暴走が引き起こした結果であって、私が意図して魔法を使った訳でもなく、その魔法も使えないでいる。
ある意味でホントの奇跡、偶然の産物、そんなんで聖女と呼ばれても嬉しくない。
まさに、張りぼての聖女。魔法の使えない聖女。
そもそもが聖女なんてガラじゃない! 人に敬われることなんて今回が初めてだし、経典もろくに朗読できない。
そんな私が、あれよあれよと知らないうちに持ち上げられている現状・・・ホントに止めてほしい。
もう、私のメンタルはボロボロよ。
私の望みは早くこの騒動が収まり、元の普通の学園生活に戻れること。
ニール様と一緒に勉強したり、お茶会や舞踏会を楽しむのよ。
そしてゆくゆくはニール様に求婚され、結婚するのよ。
跡継ぎでもない貴族同士の結婚、派手でなくて良いから普通の結婚式。
騎士になったニール様を支える慎ましい妻。
子どもは3人は欲しいわね。男の子がふたりに、女の子がひとり。
裕福じゃなくても良いから幸せな家庭を築きたいわ。
それが私の未来予想図。私の理想とする夢。
もしもの仮定として、少しぐらい回復属性の魔法が使えるようになったとしても、聖女ではない。教会で働く治療師が関の山、私に相応の仕事だわ。
それだけでもニール様とふたり、家族が増えても十分生活できる。
それでいいのよ。
聖女として、チヤホヤされるのは勘弁してほしい。
聖人君子でもなければ、容姿端麗でもない。
事件が沈静化すれば、そのうち人々から忘れられて普通の生活が送れるようになるはず・・・それまで私のメンタルが持つかどうか・・・いっそのこと、引きこもろうかしら。
ダメだわ。そしたらニール様に会えなくなる。
「ニール様・・・・」
私は愛しの男性の名を呟いた。
「ルシアさん」
ああっ、この凛々しく澄んだ声は愛しのニール様のお声。幻かしら・・・妄想がすぎて幻聴が聞こえてきたわ。
「ルシアさん、探しましたよ」
あれ? お声だけでなくお姿まではっきりと見えるわ。
多くの犠牲者を出した場所であり、私も死にそうな目に合った。
半壊した建物は倒壊の危険性もあるので、行方不明者の捜索が終わり次第取り壊されるらしい。
そしてその跡地に犠牲になった多くの学生、教師、騎士たちの慰霊碑が立てられるとか。
今も行方不明者の捜索は行われており、病院や寺院には多くの負傷者がいる。
私にはお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りすることしかできない。
私たちは簡易的に作られた献花台に摘んできた花を供えて、途中から合流した学園長先生とともに黙祷を捧げることにした。
「魔獣災害で犠牲となられた方々に、追悼の意を表し、心からご冥福をお祈りします」
お父様や学園長先生でもいいと思うのだけど、皆の勧めでなぜか私が代表で慰霊の言葉を述べ黙祷を捧げた。
不出来な私の言葉でごめんなさい。本職の司祭じゃないので間違ってても怒ら撫でくださいね。
騎士の中には泣き出す者までいて、ホントにいたたまれない気持ちになってしまう。
倒された魔獣は王国軍が引き取った後で、その姿は無かった。
災害級に指定されている魔獣は、討伐例そのものが少ない。
人里から遠く離れた高原に生息しており、滅多に遭遇することは無いと聞く。
それでも稀に人里の近くに現れることもあるのだとか、討伐するのが非常に難しく、討伐隊の被害も甚大なものになってしまう。それより追い払うのが得策なのでしょうが、今回は現れた場所が悪かった。王都のど真ん中、魔法学園内に突然現れたのだからどうしょうもない。被害を最小限に抑えるためにも学園内で倒す必要があったのでしょう。
もし学園の外に逃げ出し、繫華街や住宅地で暴れまわったら・・・戦う術を持たない民衆は蹂躙され、辺り一面地獄絵図になることが簡単に予想できて恐ろしくなってしまう。
それほど恐ろしい魔獣
硬い甲殻や骨格は貴重な資料、素材として有効活用されるそうなので、少しでも復興資金の足しにして欲しい。
それにしても疲れたわ。特に精神的に・・・・私がやらかした結果、お花畑になった広場。
綺麗な花は見ていると心が安らいでいいのよ。でもそれが辺り一面、どこを見ても花、花、花。
負傷者の傷も癒すほどのお花パワー、奇跡のお花畑。
皆からは感謝されるけど・・・私にとっては複雑なのよね。
だって私がパニックになって魔力暴走が引き起こした結果であって、私が意図して魔法を使った訳でもなく、その魔法も使えないでいる。
ある意味でホントの奇跡、偶然の産物、そんなんで聖女と呼ばれても嬉しくない。
まさに、張りぼての聖女。魔法の使えない聖女。
そもそもが聖女なんてガラじゃない! 人に敬われることなんて今回が初めてだし、経典もろくに朗読できない。
そんな私が、あれよあれよと知らないうちに持ち上げられている現状・・・ホントに止めてほしい。
もう、私のメンタルはボロボロよ。
私の望みは早くこの騒動が収まり、元の普通の学園生活に戻れること。
ニール様と一緒に勉強したり、お茶会や舞踏会を楽しむのよ。
そしてゆくゆくはニール様に求婚され、結婚するのよ。
跡継ぎでもない貴族同士の結婚、派手でなくて良いから普通の結婚式。
騎士になったニール様を支える慎ましい妻。
子どもは3人は欲しいわね。男の子がふたりに、女の子がひとり。
裕福じゃなくても良いから幸せな家庭を築きたいわ。
それが私の未来予想図。私の理想とする夢。
もしもの仮定として、少しぐらい回復属性の魔法が使えるようになったとしても、聖女ではない。教会で働く治療師が関の山、私に相応の仕事だわ。
それだけでもニール様とふたり、家族が増えても十分生活できる。
それでいいのよ。
聖女として、チヤホヤされるのは勘弁してほしい。
聖人君子でもなければ、容姿端麗でもない。
事件が沈静化すれば、そのうち人々から忘れられて普通の生活が送れるようになるはず・・・それまで私のメンタルが持つかどうか・・・いっそのこと、引きこもろうかしら。
ダメだわ。そしたらニール様に会えなくなる。
「ニール様・・・・」
私は愛しの男性の名を呟いた。
「ルシアさん」
ああっ、この凛々しく澄んだ声は愛しのニール様のお声。幻かしら・・・妄想がすぎて幻聴が聞こえてきたわ。
「ルシアさん、探しましたよ」
あれ? お声だけでなくお姿まではっきりと見えるわ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
この死に戻りは貴方に「大嫌い」というためのもの
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
侯爵令嬢ロゼ・フローラは第一王子の婚約者候補の一人だった。
そして愛し合うようになり二年が過ぎたある日。
晴れて二人は婚約者となるはずだったのだが……?
※作者独自の世界観です。
※妊娠に関するセンシティブな内容を含みます(ヒロイン、恋人の立場に不妊が関係します)。辛い方は避けてください。
※5/25 お話をより分かり易くするために文を修正しました。話の内容に変更はありません。
※6/11 21話のタイトル(前回1→前回)と文(西の国→西の大国)を訂正します。
※6/27 完結しました。この後カタリナ視点の話を別作品として公開予定です。そちらはドロドロの話の予定ですが、よろしければあわせてお読みいただけると嬉しいです。
※6/28 カタリナ視点でのお話「空っぽから生まれた王女」を公開しました。(あわせて読んでいただけると嬉しいですが、あっちはダークです。ご注意を)
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる