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第12話

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 その後は、破壊された講堂に案内された。

 多くの犠牲者を出した場所であり、私も死にそうな目に合った。
 半壊した建物は倒壊の危険性もあるので、行方不明者の捜索が終わり次第取り壊されるらしい。
 そしてその跡地に犠牲になった多くの学生、教師、騎士たちの慰霊碑が立てられるとか。

 今も行方不明者の捜索は行われており、病院や寺院には多くの負傷者がいる。
 私にはお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りすることしかできない。

 私たちは簡易的に作られた献花台に摘んできた花を供えて、途中から合流した学園長先生とともに黙祷を捧げることにした。

「魔獣災害で犠牲となられた方々に、追悼の意を表し、心からご冥福をお祈りします」
 
 お父様や学園長先生でもいいと思うのだけど、皆の勧めでなぜか私が代表で慰霊の言葉を述べ黙祷を捧げた。
 不出来な私の言葉でごめんなさい。本職の司祭じゃないので間違ってても怒ら撫でくださいね。
 騎士の中には泣き出す者までいて、ホントにいたたまれない気持ちになってしまう。


 倒された魔獣は王国軍が引き取った後で、その姿は無かった。
 災害級に指定されている魔獣は、討伐例そのものが少ない。
 人里から遠く離れた高原に生息しており、滅多に遭遇することは無いと聞く。
 それでも稀に人里の近くに現れることもあるのだとか、討伐するのが非常に難しく、討伐隊の被害も甚大なものになってしまう。それより追い払うのが得策なのでしょうが、今回は現れた場所が悪かった。王都のど真ん中、魔法学園内に突然現れたのだからどうしょうもない。被害を最小限に抑えるためにも学園内で倒す必要があったのでしょう。
 もし学園の外に逃げ出し、繫華街や住宅地で暴れまわったら・・・戦う術を持たない民衆は蹂躙され、辺り一面地獄絵図になることが簡単に予想できて恐ろしくなってしまう。

 それほど恐ろしい魔獣
 硬い甲殻や骨格は貴重な資料、素材として有効活用されるそうなので、少しでも復興資金の足しにして欲しい。

 
 それにしても疲れたわ。特に精神的に・・・・私がやらかした結果、お花畑になった広場。
 綺麗な花は見ていると心が安らいでいいのよ。でもそれが辺り一面、どこを見ても花、花、花。
 負傷者の傷も癒すほどのお花パワー、奇跡のお花畑。
 皆からは感謝されるけど・・・私にとっては複雑なのよね。
 だって私がパニックになって魔力暴走が引き起こした結果であって、私が意図して魔法を使った訳でもなく、その魔法も使えないでいる。
 ある意味でホントの奇跡、偶然の産物、そんなんで聖女と呼ばれても嬉しくない。
 まさに、張りぼての聖女。魔法の使えない聖女。
 そもそもが聖女なんてガラじゃない! 人に敬われることなんて今回が初めてだし、経典もろくに朗読できない。
 そんな私が、あれよあれよと知らないうちに持ち上げられている現状・・・ホントに止めてほしい。
 もう、私のメンタルはボロボロよ。

 私の望みは早くこの騒動が収まり、元の普通の学園生活に戻れること。
 
 ニール様と一緒に勉強したり、お茶会や舞踏会を楽しむのよ。
 そしてゆくゆくはニール様に求婚され、結婚するのよ。
 跡継ぎでもない貴族同士の結婚、派手でなくて良いから普通の結婚式。
 騎士になったニール様を支える慎ましい妻。
 子どもは3人は欲しいわね。男の子がふたりに、女の子がひとり。
 裕福じゃなくても良いから幸せな家庭を築きたいわ。

 それが私の未来予想図。私の理想とする夢。

 もしもの仮定として、少しぐらい回復属性の魔法が使えるようになったとしても、聖女ではない。教会で働く治療師が関の山、私に相応の仕事だわ。
 それだけでもニール様とふたり、家族が増えても十分生活できる。
 それでいいのよ。

 聖女として、チヤホヤされるのは勘弁してほしい。
 聖人君子でもなければ、容姿端麗でもない。

 事件が沈静化すれば、そのうち人々から忘れられて普通の生活が送れるようになるはず・・・それまで私のメンタルが持つかどうか・・・いっそのこと、引きこもろうかしら。
 ダメだわ。そしたらニール様に会えなくなる。

「ニール様・・・・」
 私は愛しの男性の名を呟いた。

「ルシアさん」
 ああっ、この凛々しく澄んだ声は愛しのニール様のお声。幻かしら・・・妄想がすぎて幻聴が聞こえてきたわ。
 
「ルシアさん、探しましたよ」
 あれ? お声だけでなくお姿まではっきりと見えるわ。
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