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第2話
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「ちょっと、どういうことですの?」
「ルシアちゃん、怒ってる? 怒ってるよね・・・ホントにごめん。俺が至らなかったばかりに・・・」
突然の婚約破棄から、後日ことの真相を問いただすためにニール様のもとを訪れたところなの。
あら、問いただすなんて私ったらはしたない。お聞きするためですわ。
「で、どうなのよ」
「それは・・・実際のところ、俺にもよくわかってないんだ。殿下もアリス様との婚約を疎ましく思っている訳じゃないみたいだし・・・」
「なら何であんなことを」
「幸いなことにまだ大事に至っていない点だ。これが観衆の前だったりすると大変なことになる」
「そうね・・・廊下で、この話を聞いていたのは当事者の4人だけ。公式の場での婚約破棄ではないことは幸いだったわ」
「事が事だけに父上を通してにも報告しておいた。きっと王宮を通して、公爵家には謝罪が行くだろうと思う。なに、殿下が陛下から怒られてそれで終わりさ」
「だといいけど・・・」
ニール様は心配するなと言うけど、果たしてそれだけで済むだろうか。
なにか、もやもやする。
「殿下が誰か別の女性と懇意にしてるとか、そんなんじゃないのよね?」
大国の皇子だ。権力目当てに近寄ろうとする令嬢は多い。王宮主催の舞踏会など、少しでも皇子の気を引こうと多くの令嬢が殺到する。
だが今まではアリス様がいた。幼い頃より英才教育を受けた才女に誰も勝てないでいた。
また皇子も近寄る令嬢には関心がないように思えたけど、実際のところどうなんでしょう。
「殿下が別の女性と? そんな女性など・・・」
なにか考え込むニール様。すらりとした長身を包む学園の制服。引き締まった体躯に整った顔立ち。
やっぱりカッコイイ・・・。
「・・・ちゃん。 ルシアちゃんどうしたの? 聞いてた?」
「ごめんなさい。ニール様に見惚れていました」
「ははっ、ルシアちゃんは可愛いな」
ニール様が私の頭を撫でてくる。
「もう、子ども扱いしないでください」
「つい可愛くてね。ルシアちゃん、小動物みたいでホント可愛いな」
「もう・・・小動物みたいって、どうせチビで女性として魅力が無いとでも言いたいのですか・・・・でも・・可愛いって言ってもらえると嬉しいです」
「ルシアちゃん・・・」
「ニール様・・・」
見つめ合うふたり。
これは願っても無い良い雰囲気? さあ、ニール様、私を抱きしめて唇を奪うチャンスですよ。
「さっきの話の続きだけど・・・」
えっ!? キスは? 熱い抱擁は? そう思ってたのは私だけなの? それともニール様って鈍感なの? 私の独りよがりじゃないわよね。
「殿下と仲のよい女性は、アリシアーネ様とルシアちゃん。これはローランド宰相の派閥だね」
ニール様は私の気持ちを知ってか知らずか淡々と話し出した。
もう私はおこですよ。ぷんぷんですよ。
「そうね」
大国であるレオン王国。その国で最大の派閥である宰相派・アリス様の父であるローランド公爵。私の実家であるナイトレイ家も宰相派に含まれる。
宰相派である諸侯は、公爵家には恭順している。
アリス様からその地位を奪おうとするものはおらず、よくて第二夫人の座を狙う者もいるくらいだろう。
正妻と側室の差は大きい、公の場に姿を現すのは正妻であり側室ではない。 跡取り問題もあるが、そこは王室に限らず貴族ならどこにでもある問題であり、そこは上手くやっていくしかない。
「で敵対派閥・・・これはどんぐりの背比べだね。殿下はそれほど興味を示していない」
「なら、誰が・・・」
そう言いかけて私はある人物に心当たりがあった。
でも彼女は学園に通う平民、大国の皇子とは身分が違い過ぎる。
「まさか・・・テレーゼさん? 彼女は平民よ」
「ルシアちゃんもそう思う? でも殿下の取り巻きの女性で一番確率の高い女性が、テレーゼさんなんだ」
「ルシアちゃん、怒ってる? 怒ってるよね・・・ホントにごめん。俺が至らなかったばかりに・・・」
突然の婚約破棄から、後日ことの真相を問いただすためにニール様のもとを訪れたところなの。
あら、問いただすなんて私ったらはしたない。お聞きするためですわ。
「で、どうなのよ」
「それは・・・実際のところ、俺にもよくわかってないんだ。殿下もアリス様との婚約を疎ましく思っている訳じゃないみたいだし・・・」
「なら何であんなことを」
「幸いなことにまだ大事に至っていない点だ。これが観衆の前だったりすると大変なことになる」
「そうね・・・廊下で、この話を聞いていたのは当事者の4人だけ。公式の場での婚約破棄ではないことは幸いだったわ」
「事が事だけに父上を通してにも報告しておいた。きっと王宮を通して、公爵家には謝罪が行くだろうと思う。なに、殿下が陛下から怒られてそれで終わりさ」
「だといいけど・・・」
ニール様は心配するなと言うけど、果たしてそれだけで済むだろうか。
なにか、もやもやする。
「殿下が誰か別の女性と懇意にしてるとか、そんなんじゃないのよね?」
大国の皇子だ。権力目当てに近寄ろうとする令嬢は多い。王宮主催の舞踏会など、少しでも皇子の気を引こうと多くの令嬢が殺到する。
だが今まではアリス様がいた。幼い頃より英才教育を受けた才女に誰も勝てないでいた。
また皇子も近寄る令嬢には関心がないように思えたけど、実際のところどうなんでしょう。
「殿下が別の女性と? そんな女性など・・・」
なにか考え込むニール様。すらりとした長身を包む学園の制服。引き締まった体躯に整った顔立ち。
やっぱりカッコイイ・・・。
「・・・ちゃん。 ルシアちゃんどうしたの? 聞いてた?」
「ごめんなさい。ニール様に見惚れていました」
「ははっ、ルシアちゃんは可愛いな」
ニール様が私の頭を撫でてくる。
「もう、子ども扱いしないでください」
「つい可愛くてね。ルシアちゃん、小動物みたいでホント可愛いな」
「もう・・・小動物みたいって、どうせチビで女性として魅力が無いとでも言いたいのですか・・・・でも・・可愛いって言ってもらえると嬉しいです」
「ルシアちゃん・・・」
「ニール様・・・」
見つめ合うふたり。
これは願っても無い良い雰囲気? さあ、ニール様、私を抱きしめて唇を奪うチャンスですよ。
「さっきの話の続きだけど・・・」
えっ!? キスは? 熱い抱擁は? そう思ってたのは私だけなの? それともニール様って鈍感なの? 私の独りよがりじゃないわよね。
「殿下と仲のよい女性は、アリシアーネ様とルシアちゃん。これはローランド宰相の派閥だね」
ニール様は私の気持ちを知ってか知らずか淡々と話し出した。
もう私はおこですよ。ぷんぷんですよ。
「そうね」
大国であるレオン王国。その国で最大の派閥である宰相派・アリス様の父であるローランド公爵。私の実家であるナイトレイ家も宰相派に含まれる。
宰相派である諸侯は、公爵家には恭順している。
アリス様からその地位を奪おうとするものはおらず、よくて第二夫人の座を狙う者もいるくらいだろう。
正妻と側室の差は大きい、公の場に姿を現すのは正妻であり側室ではない。 跡取り問題もあるが、そこは王室に限らず貴族ならどこにでもある問題であり、そこは上手くやっていくしかない。
「で敵対派閥・・・これはどんぐりの背比べだね。殿下はそれほど興味を示していない」
「なら、誰が・・・」
そう言いかけて私はある人物に心当たりがあった。
でも彼女は学園に通う平民、大国の皇子とは身分が違い過ぎる。
「まさか・・・テレーゼさん? 彼女は平民よ」
「ルシアちゃんもそう思う? でも殿下の取り巻きの女性で一番確率の高い女性が、テレーゼさんなんだ」
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