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第六章 終わりなき初恋を君に
第六章 終わりなき初恋を君に4
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「しかし、どうして私達は攫われたんだ?」
カメリアにドロシア、そして青年。
この三人に共通点があるとは思えない。
更にカメリアがわからないのは、青年まで一緒に攫われたことだ。
敵でないとするならば、この青年は一体何者なのか。
「気になるか? 私が一体何なのか」
「あぁ、気になるな」
カメリアは隠すことなく、正直に答えた。
「それに兄上やロベルト様に近付いた理由もわからない。お前は何が目的なんだ?」
「好きだから。それだけでは理由にならないか?」
「この場に及んで、まだふざけるつもりか!?」
「ふざけてなんかいないさ。私には君の言っている意味がよくわからない」
青年は言葉を切ると、カメリアにたずねた。
「君は私に何を望むんだ?」
「私はただ、あいつの……セロイスの気持ちを弄ぶようなことをやめてほしいだけだ」
ルベールのことが好きでないというならば、どうしてあんな恋人のような振る舞いをしたのか。
青年にとっては何気ない、ただの遊びだったのかもしれないが、あの光景を見たセロイスがどれだけ悲しみ落ち込んでいたかを知るカメリアからすれば、青年の言動には許しがたいものがあった。
「なら聞くけど、君はそのセロイスの何なんだ?」
「それは……」
青年の問いかけに対する答えをカメリアは持っていなかった。
「君があいつの何になるつもりもないなら、君が私に対してとやかく言う資格なんかないよ」
青年の言っていることは、もっともだった。
カメリアはセロイスの何でもない。
セロイスの何かであろうと、何かでありたいと思う自分をカメリアは否定したのだ。
こんな自分にセロイスのことを言う資格なんてあるわけがない。
「カメリア様は、セロイス様のことが好きなのではないのですか?」
そうたずねたのは黙って話を聞いていたドロシアだった。
「カメリア様は王子様のような人だと……ずっとそう思っていました。でも、今ならバルドの言っていたことの意味がわかります」
「ドロシア?」
「カメリア様、カメリア様は王子様なんかじゃない……王子様でなくていいんです、誰かを好きになってもいいんです……誰かのお姫様になっても、どんな姿をしていても、私はカメリア様のことが大好きですから」
「演じることも一緒だ。どんな役を演じようと私は私……己を否定し続ける者は、たとえ立派な舞台の上に立つことができたとしても、どれだけ豪華な衣装に身を包もうとも何者にもなれはしない」
青年はカメリアを見据え、言った。
「なら、お前は一体何者なんだ?」
「私は……」
青年の問いかけに答えようとカメリアが口を開きかけたところで、部屋の扉が開かれた。
部屋へと入ってきた数人の男達はカメリア達を見たかと思うと、戸口の近くで何かを話し出した。
(一体、何の話をしているんだ?)
カメリアは男達の会話に耳を傾けた。
「おい、これはどういうことだ? どうして三人もここにいるんだ?」
「仕方ないだろう! 攫ってくるとこ、見られちまったんだから」
「でも、これじゃあ、誰がそうだかわかんねぇだろ!? どうすんだよ、あの人が来るまでにどうにかしなけりゃ」
男達の会話から推測すると、誰かに頼まれて男達はカメリア達を攫ってきたらしい。
しかし三人がここにいることは予想外の事態で、本来攫うべきだった相手が誰なのかが男達にはわからないといったところらしい。
恐らく攫うべき相手について、大まかにしか教えられていなかったのだろう。
男達は会話に気を取られ、カメリア達からは注意が反れている。
カメリアが囮になれば、うまくふたりを逃がすことができるかもしれない。
(最悪、ドロシアだけでも逃がすことができれば)
そんなことを考えていたカメリアは戸口で話していたひとりの男と目が合った。
カメリアにドロシア、そして青年。
この三人に共通点があるとは思えない。
更にカメリアがわからないのは、青年まで一緒に攫われたことだ。
敵でないとするならば、この青年は一体何者なのか。
「気になるか? 私が一体何なのか」
「あぁ、気になるな」
カメリアは隠すことなく、正直に答えた。
「それに兄上やロベルト様に近付いた理由もわからない。お前は何が目的なんだ?」
「好きだから。それだけでは理由にならないか?」
「この場に及んで、まだふざけるつもりか!?」
「ふざけてなんかいないさ。私には君の言っている意味がよくわからない」
青年は言葉を切ると、カメリアにたずねた。
「君は私に何を望むんだ?」
「私はただ、あいつの……セロイスの気持ちを弄ぶようなことをやめてほしいだけだ」
ルベールのことが好きでないというならば、どうしてあんな恋人のような振る舞いをしたのか。
青年にとっては何気ない、ただの遊びだったのかもしれないが、あの光景を見たセロイスがどれだけ悲しみ落ち込んでいたかを知るカメリアからすれば、青年の言動には許しがたいものがあった。
「なら聞くけど、君はそのセロイスの何なんだ?」
「それは……」
青年の問いかけに対する答えをカメリアは持っていなかった。
「君があいつの何になるつもりもないなら、君が私に対してとやかく言う資格なんかないよ」
青年の言っていることは、もっともだった。
カメリアはセロイスの何でもない。
セロイスの何かであろうと、何かでありたいと思う自分をカメリアは否定したのだ。
こんな自分にセロイスのことを言う資格なんてあるわけがない。
「カメリア様は、セロイス様のことが好きなのではないのですか?」
そうたずねたのは黙って話を聞いていたドロシアだった。
「カメリア様は王子様のような人だと……ずっとそう思っていました。でも、今ならバルドの言っていたことの意味がわかります」
「ドロシア?」
「カメリア様、カメリア様は王子様なんかじゃない……王子様でなくていいんです、誰かを好きになってもいいんです……誰かのお姫様になっても、どんな姿をしていても、私はカメリア様のことが大好きですから」
「演じることも一緒だ。どんな役を演じようと私は私……己を否定し続ける者は、たとえ立派な舞台の上に立つことができたとしても、どれだけ豪華な衣装に身を包もうとも何者にもなれはしない」
青年はカメリアを見据え、言った。
「なら、お前は一体何者なんだ?」
「私は……」
青年の問いかけに答えようとカメリアが口を開きかけたところで、部屋の扉が開かれた。
部屋へと入ってきた数人の男達はカメリア達を見たかと思うと、戸口の近くで何かを話し出した。
(一体、何の話をしているんだ?)
カメリアは男達の会話に耳を傾けた。
「おい、これはどういうことだ? どうして三人もここにいるんだ?」
「仕方ないだろう! 攫ってくるとこ、見られちまったんだから」
「でも、これじゃあ、誰がそうだかわかんねぇだろ!? どうすんだよ、あの人が来るまでにどうにかしなけりゃ」
男達の会話から推測すると、誰かに頼まれて男達はカメリア達を攫ってきたらしい。
しかし三人がここにいることは予想外の事態で、本来攫うべきだった相手が誰なのかが男達にはわからないといったところらしい。
恐らく攫うべき相手について、大まかにしか教えられていなかったのだろう。
男達は会話に気を取られ、カメリア達からは注意が反れている。
カメリアが囮になれば、うまくふたりを逃がすことができるかもしれない。
(最悪、ドロシアだけでも逃がすことができれば)
そんなことを考えていたカメリアは戸口で話していたひとりの男と目が合った。
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