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奈恵は、圭介から電話を切られた後、携帯を握り締めたまま玄関にしゃがみこんでいた。
その奈恵の耳に、きい、と耳に慣れた音が聞こえた。門扉が開閉するときに聞こえる軋みだった。
鍵は閉まっている。このまま開けなくてもいい。圭介には開けることができない。黙って、彼が立ち去るまで潜んで居ればいいのかもしれない。
どうして、と奈恵はまた思う。どうして、圭介は奈恵のところに来るのか。求めていることは解っている。それでも、どうして奈恵なのか。
あの時、圭介は奈恵を好きだと言った。あの「好き」は、奈恵の内容を含めての好きだったと思うことができない。彼を受け入れる身体だから、好きなのではないか。
病院に見舞いに行ったときの、「うるさい」という圭介の怖い声が忘れられない。奈恵は励ましたつもりだったのに、圭介はそれを煩わしそうに退けた。
そんな彼が、奈恵を好きだとどうして思えるだろう。
ピンポン、とインターホンが鳴った。
かたん、と奈恵は傍らのスリッパ立てを倒してしまった。
「奈恵?」
がちゃがちゃとドアが鳴る。外から圭介が扉を引いている。
「鍵、開けろよ」
そこにいるんだろ、と圭介が言う。
素足で玄関のたたきに下りた。タイルが冷やりとした感触である。
「よう……」
はにかんだような表情で、圭介が居る。松葉杖の姿が、どこか痛々しい。
「結構、遠いのな」
ドアを大きく開いた奈恵の横を、不自由そうに圭介が通り過ぎた。少し汗が匂う。圭介の、匂いがした。
急いで、奈恵はドアを閉めて施錠した。
振り返るとぎこちない動作で圭介が玄関の上がり口に腰を下ろしている。右足の靴は容易に脱げるようだが、固定されている左足の靴を脱ぐのは難しいようだ。
「大丈夫なの? まだ痛いんじゃないの?」
奈恵は、圭介の足元にしゃがんで彼の靴を外した。
「無謀だったかなあ」
はは、と圭介は笑った。額が汗で濡れている。ずいぶん涼しくなったのに、松葉杖で駅から奈恵の家に来るまでに、汗をかいたのだと奈恵にも解る。
「無理したら、治らなくなっちゃうよ?」
どうしてか、胸が痛むような心地になって、奈恵は少し目を潤ませた。その奈恵を、圭介は片腕で抱き寄せた。
「奈恵は、良い子だな」
「圭ちゃん……」
奈恵の耳元に、圭介の溜息が響いた。
「お前の部屋、どこ?」
「……二階」
よ、と言うような掛け声と共に、圭介が立ち上がった。
「奈恵、先に行けよ」
「でも危ないよ?」
「馬鹿。お前が下に居たらもっと危ない。俺が転んだらお前も怪我するぞ」
そして、器用に階段を上った。
奈恵の部屋の壁際にベッドがある。そこに、圭介は上った。手で足を引きあげ、足を投げ出して座る。斜めがけにして背に回していたバッグを傍らに下ろし、
「奈恵」
と、当たり前のように手を伸ばす。
奈恵は、圭介のところに行く前に、遮光カーテンを引いた。
病院の帰りだと、重ねた唇の隙間で圭介は言った。
ベッドの足元側の壁に、圭介は背中を預けて、座っている。横たわらない彼に合わせて、奈恵も身体を起こしている。圭介の傍らに膝立ちになっていた。その奈恵の腰を圭介の手が引き寄せた。
奈恵は、腹の辺りからカットソーを捲られ、露になった胸のあわい膨らみに圭介の唇が吸い付いた。そうしながら圭介の手が奈恵のスカートの中で下着を下ろしている。奈恵は膝を左右交互に少し浮かせた。爪先からそれが落ちる。
「ん、あぁ……」
「奈恵、すげ……」
圭介がそこに触れたときには、既に潤んでいた。奈恵がぬるりと容易に指先を飲み込んだとき、細い体が大きく戦慄した。
手伝え、と圭介は言った。
膝に患部を固定する器具を装着しているために、幅のたっぷりとしたジャージを穿いている。既にそれを押し上げるほど、圭介が熱く反り返っている。
「……」
奈恵は言われたとおりに圭介の穿いているジャージに手をかけて下に引いた。膝の辺りまで、トランクスごと下ろした。
「その辺で良い」
赤黒いようなそれが、憤激しているように膨れ上がっている。怖いような姿だった。怖いようでありながら、奈恵は目が離せない。
「触っていいよ」
「え?」
「興味、あるんだろ?」
悪戯なような顔で圭介は奈恵を見る。眉を少しひそめて、戸惑った奈恵が可愛い。その奈恵の右手を取って、奈恵の手ごと、圭介は自分の物を握った。
「あっ……」
「お前の、手」
気持ちがいいな、と圭介が言う。
(熱い)奈恵は胸がどきどきしている。圭介の手が導くままに、茎の根元から先端へと手を滑らせた。
「そこ、やばい……」
は、と圭介が溜息をついた。触れたところからじわりと滲んだ物が奈恵の指を濡らす。
傍らのバッグから取り出したコンドームを、圭介が慣れた手つきで装着した。彼のそれが薄い皮膜に覆われていく様子を、奈恵はじっと見ている。
「そんな見るな」
奈恵の腕を掴んで引き寄せる。圭介の胸の上に上体を倒した奈恵を持ち上げた。
「奈恵、足開け」
「え……?」
圭介の腕が奈恵の腰を巻き、空いた片腕で思い通りの姿勢をとらせる。彼の腹を跨がせて、その開いた秘所を、指先で触れた。
「はぁっん」
表面を撫でただけで奈恵は身体を震わせた。圭介の肩に手をついて、自分の身体を支えている。髪が圭介の頬を撫でた。小刻みな声を耳元に聞きながら指先を奈恵の中に出入りさせた。少しずつ奈恵の声が高まる。圭介の手を濡らすものの温度が上がる。
「奈恵……」
「あぁ!」
弾けるように奈恵が身体を反らした。
「うぁ、……気持ちいい」
温かい所に自分の分身が包まれていくのを感じる。
「……圭ちゃ……」
熱い物が奥に届いた。奈恵を分け入って来た。圭介の手が奈恵の胸に触っている。服を捲くり、やがて唇が奈恵の乳首を噛んだ。
鼻に掛かった甘い声で奈恵が喘ぐ。眉を寄せて苦しいような表情をして、圭介の肩に縋って奈恵が振動した。ベッドについた膝を伸縮させて、身体の中の圭介を襞で擦る。華奢な腰を捩り、さまざまな角度に圭介を受け入れた。
その奈恵の耳に、きい、と耳に慣れた音が聞こえた。門扉が開閉するときに聞こえる軋みだった。
鍵は閉まっている。このまま開けなくてもいい。圭介には開けることができない。黙って、彼が立ち去るまで潜んで居ればいいのかもしれない。
どうして、と奈恵はまた思う。どうして、圭介は奈恵のところに来るのか。求めていることは解っている。それでも、どうして奈恵なのか。
あの時、圭介は奈恵を好きだと言った。あの「好き」は、奈恵の内容を含めての好きだったと思うことができない。彼を受け入れる身体だから、好きなのではないか。
病院に見舞いに行ったときの、「うるさい」という圭介の怖い声が忘れられない。奈恵は励ましたつもりだったのに、圭介はそれを煩わしそうに退けた。
そんな彼が、奈恵を好きだとどうして思えるだろう。
ピンポン、とインターホンが鳴った。
かたん、と奈恵は傍らのスリッパ立てを倒してしまった。
「奈恵?」
がちゃがちゃとドアが鳴る。外から圭介が扉を引いている。
「鍵、開けろよ」
そこにいるんだろ、と圭介が言う。
素足で玄関のたたきに下りた。タイルが冷やりとした感触である。
「よう……」
はにかんだような表情で、圭介が居る。松葉杖の姿が、どこか痛々しい。
「結構、遠いのな」
ドアを大きく開いた奈恵の横を、不自由そうに圭介が通り過ぎた。少し汗が匂う。圭介の、匂いがした。
急いで、奈恵はドアを閉めて施錠した。
振り返るとぎこちない動作で圭介が玄関の上がり口に腰を下ろしている。右足の靴は容易に脱げるようだが、固定されている左足の靴を脱ぐのは難しいようだ。
「大丈夫なの? まだ痛いんじゃないの?」
奈恵は、圭介の足元にしゃがんで彼の靴を外した。
「無謀だったかなあ」
はは、と圭介は笑った。額が汗で濡れている。ずいぶん涼しくなったのに、松葉杖で駅から奈恵の家に来るまでに、汗をかいたのだと奈恵にも解る。
「無理したら、治らなくなっちゃうよ?」
どうしてか、胸が痛むような心地になって、奈恵は少し目を潤ませた。その奈恵を、圭介は片腕で抱き寄せた。
「奈恵は、良い子だな」
「圭ちゃん……」
奈恵の耳元に、圭介の溜息が響いた。
「お前の部屋、どこ?」
「……二階」
よ、と言うような掛け声と共に、圭介が立ち上がった。
「奈恵、先に行けよ」
「でも危ないよ?」
「馬鹿。お前が下に居たらもっと危ない。俺が転んだらお前も怪我するぞ」
そして、器用に階段を上った。
奈恵の部屋の壁際にベッドがある。そこに、圭介は上った。手で足を引きあげ、足を投げ出して座る。斜めがけにして背に回していたバッグを傍らに下ろし、
「奈恵」
と、当たり前のように手を伸ばす。
奈恵は、圭介のところに行く前に、遮光カーテンを引いた。
病院の帰りだと、重ねた唇の隙間で圭介は言った。
ベッドの足元側の壁に、圭介は背中を預けて、座っている。横たわらない彼に合わせて、奈恵も身体を起こしている。圭介の傍らに膝立ちになっていた。その奈恵の腰を圭介の手が引き寄せた。
奈恵は、腹の辺りからカットソーを捲られ、露になった胸のあわい膨らみに圭介の唇が吸い付いた。そうしながら圭介の手が奈恵のスカートの中で下着を下ろしている。奈恵は膝を左右交互に少し浮かせた。爪先からそれが落ちる。
「ん、あぁ……」
「奈恵、すげ……」
圭介がそこに触れたときには、既に潤んでいた。奈恵がぬるりと容易に指先を飲み込んだとき、細い体が大きく戦慄した。
手伝え、と圭介は言った。
膝に患部を固定する器具を装着しているために、幅のたっぷりとしたジャージを穿いている。既にそれを押し上げるほど、圭介が熱く反り返っている。
「……」
奈恵は言われたとおりに圭介の穿いているジャージに手をかけて下に引いた。膝の辺りまで、トランクスごと下ろした。
「その辺で良い」
赤黒いようなそれが、憤激しているように膨れ上がっている。怖いような姿だった。怖いようでありながら、奈恵は目が離せない。
「触っていいよ」
「え?」
「興味、あるんだろ?」
悪戯なような顔で圭介は奈恵を見る。眉を少しひそめて、戸惑った奈恵が可愛い。その奈恵の右手を取って、奈恵の手ごと、圭介は自分の物を握った。
「あっ……」
「お前の、手」
気持ちがいいな、と圭介が言う。
(熱い)奈恵は胸がどきどきしている。圭介の手が導くままに、茎の根元から先端へと手を滑らせた。
「そこ、やばい……」
は、と圭介が溜息をついた。触れたところからじわりと滲んだ物が奈恵の指を濡らす。
傍らのバッグから取り出したコンドームを、圭介が慣れた手つきで装着した。彼のそれが薄い皮膜に覆われていく様子を、奈恵はじっと見ている。
「そんな見るな」
奈恵の腕を掴んで引き寄せる。圭介の胸の上に上体を倒した奈恵を持ち上げた。
「奈恵、足開け」
「え……?」
圭介の腕が奈恵の腰を巻き、空いた片腕で思い通りの姿勢をとらせる。彼の腹を跨がせて、その開いた秘所を、指先で触れた。
「はぁっん」
表面を撫でただけで奈恵は身体を震わせた。圭介の肩に手をついて、自分の身体を支えている。髪が圭介の頬を撫でた。小刻みな声を耳元に聞きながら指先を奈恵の中に出入りさせた。少しずつ奈恵の声が高まる。圭介の手を濡らすものの温度が上がる。
「奈恵……」
「あぁ!」
弾けるように奈恵が身体を反らした。
「うぁ、……気持ちいい」
温かい所に自分の分身が包まれていくのを感じる。
「……圭ちゃ……」
熱い物が奥に届いた。奈恵を分け入って来た。圭介の手が奈恵の胸に触っている。服を捲くり、やがて唇が奈恵の乳首を噛んだ。
鼻に掛かった甘い声で奈恵が喘ぐ。眉を寄せて苦しいような表情をして、圭介の肩に縋って奈恵が振動した。ベッドについた膝を伸縮させて、身体の中の圭介を襞で擦る。華奢な腰を捩り、さまざまな角度に圭介を受け入れた。
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