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「……」
声にならない息を奈恵が吐いた。
 圭介の指先が堅くなった奈恵の胸の蕾を弾いている。白いほのかな膨らみに赤い蕾が淫らに震えた。

「可愛い、奈恵」
肩先で揺らぐ爪先を舐めながら、圭介は既に甦った彼を奈恵の中にまた注入している。奈恵の分泌したものが、じわりと出た。
「だめ……!」
奈恵の抗いの言葉どおりに、まるで彼を遮るようにその花弁が縮まった。
 しかし既に一部が含まれてしまっている。圭介はそのおかげで敏感なところを締め付けられて、逆に快さの余り、眉をしかめながら思わず腰を引いていた。引いたが、奈恵の中に捉えられて引っかかっていた。
「く、はぁあ!」
そのせいで何を刺激したのか、奈恵が高い声を上げて身体を反らせている。

「奈恵、なんか、スゲエいい」
まるでコルクの栓を抜くように、圭介は奈恵の中から退き、再び浅く突入した。
 それを繰り返した。奈恵の身体が圭介の動きにあわせて大きく動揺する。
 もう奈恵の唇から小刻みな音色が留めようもなくあふれ出ていた。湿った音を立てて、奈恵の中からも粘液があふれ出ている。そのせいで奈恵の内股も圭介の太股もねっとり濡れている。しかしそんなことに構いはしない。
 ただのぼせて沸騰しそうな快楽に、溺れこんでいる。蒸発してしまった理性の奥の別の何かで言葉を交わしている。
「すごく良い」
と圭介は何回も口走り、奈恵は言葉にさえならない何かを呻吟し続けている。
「あー……」
奈恵は圭介の全てが奥に届くまで、長々と声を放った。圭介は、奈恵の奥を突き留めてからまた素早く引き抜き、再び突入した。それを何度か繰り返す。
「ん……う。ん、くぅ……」
奈恵の声はすすり泣きに変わっていた。

 何度も何度も圭介の突入を受けた奈恵の其処が紅色に充血し、びく、びく、と蠢いている。その蠢動の度に圭介をきつく締め付ける。圭介はその姿を見ながら果てた。堪らない快感だった。気づけば疾走した後のように息が切れている。
 身体を離した奈恵は、横臥して、何度も小刻みな戦慄で肌をあわ立てていた。
 そして身を震わせる度に、胎内から圭介に誘い出されたものがどろりと漏れ出る。その感触が不愉快だったが、起き上がる力が出なかった。脈が乱れすぎて胸が痛いほどだ。

 ぼやけた視界の向こうで圭介がティッシュの中に外したコンドームを包んでいるのが見える。圭介は名門のサッカー部で、夏休みの前までレギュラーだった。よく鍛えた引き締まった筋肉が、きれいなようにも見えた。割れた腹筋の下のほうで、少し力を失った彼のそれが白濁の粘液にねっとりと濡れて在る。 
 生々しく奈恵の脳裏を射る。あれが、と思う。関節が砕けたように脱力しているのに、もう嫌だと思っているはずなのに、圭介の身体を見て奈恵はまた腿の内側からとろけるものを知った。肌を伝った。

 身体の下が湿っているような気配がある。
 シーツを汚しただろうと思う。まだ午前中のはずで、これからでも洗濯をすれば、汚してしまったことを祖母に知られないように綺麗に洗えるかもしれない。そんなことをぼんやりと考えながら、奈恵は身体の下のシーツを掴んで引いた。
「……洗わなきゃ」
「何をしてんだ、奈恵?」
「シーツ……。おばあちゃんに怒られちゃう」
どこか、まだ奈恵は朦朧としている。
 圭介は、きょとんとした顔で奈恵を見下ろして、ちょっと首をかしげた。ぼう、っとした顔で、洗わなきゃ、と呟く奈恵は少し常軌を逸しているようだ。

「わかったよ。シーツ洗おう。お前も綺麗にしてやるよ」
唇を呆然と半ば開いたままの奈恵をシーツで包んで、ベッドの脇に立たせた。そのまま先に奈恵を歩かせ、浴室に行く。
 脱衣室の中に洗濯機がある。その横で圭介はくるくると奈恵からシーツを剥ぎ取って洗濯機に放り込み、スイッチを入れた。洗剤と、柔軟剤も入れた。さわやかな匂いがした。
 それから圭介は、「さあ、」と言って奈恵を浴室に連れ込む。
「きゃっ!」
と奈恵が悲鳴を上げる。水のシャワーを掛けられたからだ。浴室は反響が良い。

 ここのところ暑いので、湯船には湯が入っていない。その空の湯船に、圭介は奈恵を連れて入った。
 田舎の別荘である。敷地に応じて風呂も広い。
 ざあ、と音を立ててシャワーの雨が降り注ぐ。その中で、圭介は奈恵の身体に掌を這わせていた。立たせたまま、背後から手を回して、胸や腹を洗うようにしてこする。膝を奈恵の脚の間に割り込ませ、腿の隙間を開けた。
 ん、と言って奈恵が膝を少し曲げた。圭介が奈恵の下腹にシャワーを当てながら、もう一方の手でその隙間を擦るからだ。そればかりでなく、指先は奈恵の中を出入りする。ざ、という一定のシャワーの音の中に、ちゅぷ、という不規則な音が混じる。奈恵が背を反らす。圭介の胸に凭れる格好になった。
 白い桃に、既に大きく膨れ上がった圭介のそれが押し付けられている。冷たいシャワーを浴びている中で、それはひどく熱いものに奈恵には感じられた。
 圭介は奈恵の右足を湯船の縁に乗せさせ、後ろから貫いた。奈恵の腹を押さえ、膝のばねを使って、時に奈恵の爪先が浮くほどに存分に突き上げる。体重の分、深々と刺さるようだった。其処が楔のように合致すると、姿勢が安定したので、手を奈恵の胸に回して弄った。
「こんな、とこで……」
壁に手を付いて膝が崩れそうになるのを抑える。か細い二の腕の影で、蕾に似た乳首が圭介の指に捩られている。

 不意に圭介の手が、奈恵の首を横に回した。
「それ、鏡……」
と彼は言った。浴室の壁の大きな鏡に、交わっている姿が映っていた。奈恵の中に出入りしている圭介がありありとわかる。
「いや! ……見たくない」
「すげえな、やらしい……興奮するよ」
「や……だ!いや!」
「生、すげえ良い」
圭介が奈恵の膝裏を持って持ち上げた。腿を左右に開かせ、その深部はつながったまま。湯船の縁を奈恵の素足が踏んだ。
 その姿態で鏡に正対する。まだ午前中の光のなか、圭介を含みこんだ奈恵の秘所が鏡に精細に映されている。
「眼を開けろって」
と強要する圭介に逆らえず、奈恵は眼を開いて、それを見た。圭介はその途端に自らを一瞬引き抜き、再び犯した。
「ああっ!」
圭介のそれは奈恵の手首に等しいくらいだ。それが、本当に奈恵の中に入っていた。彼が去るときにまるで追従するように纏わり付いていた襞が、紅くぬらぬらと照っていた。そしてまた圭介が侵入した途端、粘液が溢れ出てきた。胎内を摩擦する彼の感触もさることながら、淫ら過ぎる光景が奈恵の脳裏に衝撃を与えた。

 ひどく高ぶったのか、呼吸が荒くなる。それと同時にどくどくと音を立てて流れる血流と同じ拍動で、奈恵のそれは圭介を絞るように締め付ける。またそのせいで奈恵は圭介の摩擦をいっそう強く感受し、鳴き声を高くした。
「や、圭ちゃん……。あぁ……ん……」
 鳴き声の高まりと共に、奈恵の内腿に流れる露が増えていた。
 やがてその露から引き抜かれた圭介が、奈恵の身体に白濁を吐きだした。

 浴室の中でさえ、何回、交わっただろう。圭介が充足して奈恵を手放したのは、正午近くになってからだった。
 奈恵は、指の一本も動かすことが重たく感じるほど、疲労した。脚の付け根が痺れるほどに痛くなっている。貫かれ、揺らされ続けた腰が重く痛む。彼を含み続けたその部分にも疼痛があった。
 それでも、奈恵は確かに圭介を迎え入れることに快楽を感じていたのを悟った。彼が入ってくると、何もかも解らなくなる。触れ合っている其処の部分だけが在って、もっと彼を感じたいと思うだけになる。
 そのうち余分な何かが焼き切れて、空中に放り出されたような浮遊感が訪れる。
 その感覚を何度も求め、繰り返し得て、そして忘れられない。


 その日の夕方。
 奈恵の母親が、祖母と共に現れ、午睡を貪る圭介に何も告げずに、奈恵は祖父母の家を出ることになった。
 圭介とのことは、親には絶対に言えない。そう思った。そんなことを考えているうちに、母の運転する車の助手席で、すっ、と睡魔に飲み込まれていた。
 家に帰れば、明日からはもう、この数日ですっかりおろそかになってしまった宿題の続きをしなければ、と思う。

 それで、終わったのだと奈恵は思った。
 この夏が来る前までは、圭介はただのいとこで、一人っ子の奈恵にはちょっと自慢になるかっこいい親戚のお兄ちゃんだった。そんな存在に戻る。
 それでいいと思った。
 祖父が入院して、祖母も留守になった。大人が不在の間に、その目を盗んでいけないことをしたのだと、わかっている。だから、忘れたほうがいい。
 あんなことは、間違いだった。
 忘れられない感触を、それは過ちだとして思い出さないようにしながら、奈恵は夏を終えた。

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