10 / 11
10
しおりを挟む
ソントへ戻る道中。
普段よりずっと無口に馬に揺られるラシャを、近侍のディアと小姓のユーレウスが、ときおり懸念を帯びた眼差しで見た。そんな視線もわずらわしく、ますます彼は無愛想になる。
途中の休憩の間に、ふと何かを思い出しては物を投げつけたり、立ち木を蹴ったり、拾い上げた枝を折ったりしている。ひどく怒っていると思えば、中空を見つめて、涙さえ浮かべているのではないかという表情をすることもある。
滞在地の宿所では、庭に出て足がもつれるまでディアを相手に剣を交えるのだ。
三泊目の宿で、ラシャの稽古に付き合ってどろどろにくたびれたディアに、ユーレウスが話しかけた。
「ディア、大丈夫か?」
「んー、何とも言いにくいなあ」
ディアは肘にシップを巻きながら、唇の端で笑っていた。
「よく付き合うよ。ラシャおかしいだろ、今。何があったんだか知らないけどさ。話してくれればいいのに」
「話せないこともあるんだぜ、ボウズ。しいて聞くんじゃないぞ」
「じゃあディアはなんだかわかるのか?」
「お前も二、三回痛い目を見りゃわかる」
「俺は痛い目なんか見ないよ。兵士にはなんないからね」
ばか。と言いながら、ディアはユーレウスの額を指ではじいた。
「痛いじゃないか、何すんだよ? おーいて。これぜったい腫れる」
「こういう痛い目じゃねえってんだよ」
抗議するユーレウスに、ディアは高笑いしながらもう一発をお見舞いした。
「わかってるよ。わかってんのにもう、二回もやることないだろ! いってぇなあ、もう! 明日はもう面倒見てやんないよ? 今夜出かけてもカギ開けてやんないよ?」
「それぁ困る。頼むぜ~。花窓の姐さんたちが俺を待ってるんだよ」
「シップ巻いてるヤツが、言う? それでも行く?」
「馬鹿だなあ。ガキは。……大事にしてもらえんだよ、こういうの」
「やらしー。やだやだ」
キーウから南海道を真っ直ぐ南下し、レスフォを経由して海沿いの道を西に向かって約半日でソントである。
レスフォに着いたラシャは、まず領主の館に向かう。
そこには兄の王太子リディスがいる。また、ラシャはリディスの館の一室をレスフォの軍学校に通うための滞在用に借りている。ひとまずそこに入ることになっている。
十日間学校に行き、十日間ソントに戻る。ラシャはそういう日常の暮らしに帰って行った。
キーウから出て、レスフォに十日間滞在してそれからようやく自領のソントへの向かう。
ラシャが父親である王から与えられた領地のソントは、レスフォのように良港があるわけでもなく、商業が栄えているわけでもない。豊かとは言い難い土地であるが、その代わりソントにはおっとりとした美しい風景があった。果樹園と牧場と畑と、こんもりした森と、小さな漁港と、そして何よりもまばゆく青い海がある。
見慣れたはずのソントの景色が、今のラシャの眼にはひどく優しい風景に映った。彼を育んだ風景である。
「ああ、やっぱりソントはいいなあ」
ラシャの後ろにしたがっていたユーレウスが、深呼吸と共に言う。のどかな声を振り返ると、ユーレウスの傍らでディアも緩やかに頬をほころばせていた。
彼らは、何も訊かなかったな、とラシャはふと思う。
平らな気持ちで省みると、戴冠式に出てからおよそひと月あまりの間の、ラシャの挙動は明らかに不審だっただろう。思い起こせば羞恥に顔が火照るほどだ。
それに当初の予定では、戴冠記念式が終わればすぐにソントに戻る予定だった。
それを、ラシャはなんと言う理由も彼らに言わず、滞在を伸ばしていた。
そのことを何故かと、ディアもユーレウスもあえてラシャに問うことはしなかった。
今もなお。
彼らの穏やかな沈黙を、ラシャはありがたく感じた。彼の心を察し、むやみに触れることなく見守ってくれている。そういう優しさを示してくれているのだと悟ると、ひび割れた心の隙間に、温かな水が浸透したような心地になった。
いずれ二人から問われる日が来るかもしれない。今は、多分、何も答えられないだろう。問うべきは今ではないと、それも彼らはわかっているかのようだ。
踏み込むべき時を、過たずに知っている。それは思いやりなのかもしれない。
ナセアとはどうだったのだろう。
かつてないほど密接に膚を触れ合った間柄でありながら、ラシャは彼女が何を思っていたのかもわからず、問うてはぐらかされればそれで終わりにしてしまっていた。強いてわかろうとはしなかった。
今でも、ワナン達が噂していたようなひどい行状の女性がその正体とは、ラシャには信じたくない。違う、とナセアの口から聞きたかった。理由があるならそれを知りたい。だが、今はもうそれも叶わない。
もっと、踏み込んで問うべきだったのだろうか。
(俺は馬鹿だ)
優しく開けたソントの風景から、ラシャは目を落として俯いた。
ラシャはただ自分が為したい事を為し、伝えたいことを訴え、ひたすらに求めていただけだった。ナセアのことを何も知ろうともせず、自分の思いだけを自分の中に必死にあふれさせていた。そんなラシャにナセアが何も告げなかったのは当然なのかもしれない。
宮廷の人々が口にしていたナセアの「ふしだら」であるという噂を耳にした時の動揺も忘れ難い。思い出せば今でも腹の底が煮えるような心地になる。
もし、とも思う。この数日、少し考えた。
あの時に本当にナセアが居たのなら、彼女の話を聞く耳が自分にあっただろうか。ラシャは、地面を見ながら考える。
きっと、ナセアを責めただろう。
責めて、罵って、彼女を傷つけたに違いない。
きっと、それさえもナセアは見抜いていたのではあるまいか。だから、黙って姿を消した。
そんな気がしていた。
あの人は複雑な人だったのだ。この数日、ようやくそう思えるようになった。
はるかに大人で、女性で、多面かつ多層に出来ていて、ラシャはそのほんの一面にかろうじて指先を触れただけであったのだろう。もしかしたらラシャの指先はナセアの表面を滑っただけで、その実、彼女に触れてさえ居なかったのかもしれない。
ナセアにとって彼が一時の戯れの相手だったのか、少しは愛してくれていたのか、答えを持っているはずの彼女が黙って姿を消してしまった今となっては、そんなこともラシャには一向にわからない。
濃密に刻まれたナセアとの記憶の中で、一つ一つの行動に対して後悔が押し寄せた。
あの時はどうしてこうしなかったのか、どうしてああ言わなかったのか、どうして問いかけなかったのか、そんなことを一瞬のうちに脳に昇らせている。
もっと強いて問いかければ、もしかしたらナセアの真実に少しは近づけたのかもしれない。すさんだ行動に陥った事情も、あるいは聞く事が出来たかもしれない。問う勇気が無かった。ナセアに嫌われたくないと恐れていたのだと、今ならわかる。
後悔は、胸にも脳裏にも、あふれるほど波のように寄せては返す。だが後悔は後悔だ。それ以上の何をなせるものでもない。今なら、きっとナセアを責めることなく話を聞く事が出来るかもしれない。
今なら。そう思っても、もう遅いのだ。
わずかに触れあった時間の中で、ナセアは、自らを語る相手ではないとラシャへの評価を下した。それだけのことだった。
ナセアは帰ってこない。
ラシャも、どれほどあがいたところで彼女と触れ合っていた時間にさかのぼることなど出来ない。
そのときそのときで、言うべきことを言い、問うべきことを問い、なすべきことを為さなければ、目の前に居る大切な誰かに大切なことを何一つ伝えられないまま、大切な誰かからの気持ちも伝えてもらえぬまま、一瞬は終わってしまう。
そしてその一瞬は、未来永劫帰ってこない。
時は帰らない。それはとても明解なことなのに、ラシャはそれをおろそかに思っていた。
(俺は本当に馬鹿だ……)
見慣れたソントの優しい風景が、眸の中で少しこごった。
途方に暮れたラシャの背に、「さあ、もう行こう」と声がした。
遠い海が、ナセアの瞳の色に似て見えた。
おわり
普段よりずっと無口に馬に揺られるラシャを、近侍のディアと小姓のユーレウスが、ときおり懸念を帯びた眼差しで見た。そんな視線もわずらわしく、ますます彼は無愛想になる。
途中の休憩の間に、ふと何かを思い出しては物を投げつけたり、立ち木を蹴ったり、拾い上げた枝を折ったりしている。ひどく怒っていると思えば、中空を見つめて、涙さえ浮かべているのではないかという表情をすることもある。
滞在地の宿所では、庭に出て足がもつれるまでディアを相手に剣を交えるのだ。
三泊目の宿で、ラシャの稽古に付き合ってどろどろにくたびれたディアに、ユーレウスが話しかけた。
「ディア、大丈夫か?」
「んー、何とも言いにくいなあ」
ディアは肘にシップを巻きながら、唇の端で笑っていた。
「よく付き合うよ。ラシャおかしいだろ、今。何があったんだか知らないけどさ。話してくれればいいのに」
「話せないこともあるんだぜ、ボウズ。しいて聞くんじゃないぞ」
「じゃあディアはなんだかわかるのか?」
「お前も二、三回痛い目を見りゃわかる」
「俺は痛い目なんか見ないよ。兵士にはなんないからね」
ばか。と言いながら、ディアはユーレウスの額を指ではじいた。
「痛いじゃないか、何すんだよ? おーいて。これぜったい腫れる」
「こういう痛い目じゃねえってんだよ」
抗議するユーレウスに、ディアは高笑いしながらもう一発をお見舞いした。
「わかってるよ。わかってんのにもう、二回もやることないだろ! いってぇなあ、もう! 明日はもう面倒見てやんないよ? 今夜出かけてもカギ開けてやんないよ?」
「それぁ困る。頼むぜ~。花窓の姐さんたちが俺を待ってるんだよ」
「シップ巻いてるヤツが、言う? それでも行く?」
「馬鹿だなあ。ガキは。……大事にしてもらえんだよ、こういうの」
「やらしー。やだやだ」
キーウから南海道を真っ直ぐ南下し、レスフォを経由して海沿いの道を西に向かって約半日でソントである。
レスフォに着いたラシャは、まず領主の館に向かう。
そこには兄の王太子リディスがいる。また、ラシャはリディスの館の一室をレスフォの軍学校に通うための滞在用に借りている。ひとまずそこに入ることになっている。
十日間学校に行き、十日間ソントに戻る。ラシャはそういう日常の暮らしに帰って行った。
キーウから出て、レスフォに十日間滞在してそれからようやく自領のソントへの向かう。
ラシャが父親である王から与えられた領地のソントは、レスフォのように良港があるわけでもなく、商業が栄えているわけでもない。豊かとは言い難い土地であるが、その代わりソントにはおっとりとした美しい風景があった。果樹園と牧場と畑と、こんもりした森と、小さな漁港と、そして何よりもまばゆく青い海がある。
見慣れたはずのソントの景色が、今のラシャの眼にはひどく優しい風景に映った。彼を育んだ風景である。
「ああ、やっぱりソントはいいなあ」
ラシャの後ろにしたがっていたユーレウスが、深呼吸と共に言う。のどかな声を振り返ると、ユーレウスの傍らでディアも緩やかに頬をほころばせていた。
彼らは、何も訊かなかったな、とラシャはふと思う。
平らな気持ちで省みると、戴冠式に出てからおよそひと月あまりの間の、ラシャの挙動は明らかに不審だっただろう。思い起こせば羞恥に顔が火照るほどだ。
それに当初の予定では、戴冠記念式が終わればすぐにソントに戻る予定だった。
それを、ラシャはなんと言う理由も彼らに言わず、滞在を伸ばしていた。
そのことを何故かと、ディアもユーレウスもあえてラシャに問うことはしなかった。
今もなお。
彼らの穏やかな沈黙を、ラシャはありがたく感じた。彼の心を察し、むやみに触れることなく見守ってくれている。そういう優しさを示してくれているのだと悟ると、ひび割れた心の隙間に、温かな水が浸透したような心地になった。
いずれ二人から問われる日が来るかもしれない。今は、多分、何も答えられないだろう。問うべきは今ではないと、それも彼らはわかっているかのようだ。
踏み込むべき時を、過たずに知っている。それは思いやりなのかもしれない。
ナセアとはどうだったのだろう。
かつてないほど密接に膚を触れ合った間柄でありながら、ラシャは彼女が何を思っていたのかもわからず、問うてはぐらかされればそれで終わりにしてしまっていた。強いてわかろうとはしなかった。
今でも、ワナン達が噂していたようなひどい行状の女性がその正体とは、ラシャには信じたくない。違う、とナセアの口から聞きたかった。理由があるならそれを知りたい。だが、今はもうそれも叶わない。
もっと、踏み込んで問うべきだったのだろうか。
(俺は馬鹿だ)
優しく開けたソントの風景から、ラシャは目を落として俯いた。
ラシャはただ自分が為したい事を為し、伝えたいことを訴え、ひたすらに求めていただけだった。ナセアのことを何も知ろうともせず、自分の思いだけを自分の中に必死にあふれさせていた。そんなラシャにナセアが何も告げなかったのは当然なのかもしれない。
宮廷の人々が口にしていたナセアの「ふしだら」であるという噂を耳にした時の動揺も忘れ難い。思い出せば今でも腹の底が煮えるような心地になる。
もし、とも思う。この数日、少し考えた。
あの時に本当にナセアが居たのなら、彼女の話を聞く耳が自分にあっただろうか。ラシャは、地面を見ながら考える。
きっと、ナセアを責めただろう。
責めて、罵って、彼女を傷つけたに違いない。
きっと、それさえもナセアは見抜いていたのではあるまいか。だから、黙って姿を消した。
そんな気がしていた。
あの人は複雑な人だったのだ。この数日、ようやくそう思えるようになった。
はるかに大人で、女性で、多面かつ多層に出来ていて、ラシャはそのほんの一面にかろうじて指先を触れただけであったのだろう。もしかしたらラシャの指先はナセアの表面を滑っただけで、その実、彼女に触れてさえ居なかったのかもしれない。
ナセアにとって彼が一時の戯れの相手だったのか、少しは愛してくれていたのか、答えを持っているはずの彼女が黙って姿を消してしまった今となっては、そんなこともラシャには一向にわからない。
濃密に刻まれたナセアとの記憶の中で、一つ一つの行動に対して後悔が押し寄せた。
あの時はどうしてこうしなかったのか、どうしてああ言わなかったのか、どうして問いかけなかったのか、そんなことを一瞬のうちに脳に昇らせている。
もっと強いて問いかければ、もしかしたらナセアの真実に少しは近づけたのかもしれない。すさんだ行動に陥った事情も、あるいは聞く事が出来たかもしれない。問う勇気が無かった。ナセアに嫌われたくないと恐れていたのだと、今ならわかる。
後悔は、胸にも脳裏にも、あふれるほど波のように寄せては返す。だが後悔は後悔だ。それ以上の何をなせるものでもない。今なら、きっとナセアを責めることなく話を聞く事が出来るかもしれない。
今なら。そう思っても、もう遅いのだ。
わずかに触れあった時間の中で、ナセアは、自らを語る相手ではないとラシャへの評価を下した。それだけのことだった。
ナセアは帰ってこない。
ラシャも、どれほどあがいたところで彼女と触れ合っていた時間にさかのぼることなど出来ない。
そのときそのときで、言うべきことを言い、問うべきことを問い、なすべきことを為さなければ、目の前に居る大切な誰かに大切なことを何一つ伝えられないまま、大切な誰かからの気持ちも伝えてもらえぬまま、一瞬は終わってしまう。
そしてその一瞬は、未来永劫帰ってこない。
時は帰らない。それはとても明解なことなのに、ラシャはそれをおろそかに思っていた。
(俺は本当に馬鹿だ……)
見慣れたソントの優しい風景が、眸の中で少しこごった。
途方に暮れたラシャの背に、「さあ、もう行こう」と声がした。
遠い海が、ナセアの瞳の色に似て見えた。
おわり
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
イケメン俳優パパ 『生田 蓮』に恋をして――。
立坂雪花
恋愛
イケメン俳優 生田蓮(いくたれん)34歳
×
スーパーのパート 江川葵(えがわあおい)29歳
妊娠中に不倫され、その後、離婚した葵は
娘の柚希(ゆずき)と同じ保育園で同じクラスの斗和(とわ)ちゃんのパパ、生田蓮と親しくなっていく。
でも彼は人気イケメン俳優で、身分の差を感じてしまい――。
🌸子育てと恋愛、ほのぼのストーリー🌸
2月はアルファポリスさんの恋愛小説大賞に参加しております。少しでも良いなと思ってくださったら投票してくださればうれしいです。
読んでくださりありがとうございます。
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
ふたりぼっちのラブレター
高殿アカリ
恋愛
いつから世界はこんなにも味気なくなったのだろう。
耐える胸の奥、私は独りで泣いていた。
灰色の町並みは、ただただ私を責めるばかりで。
だから、だろうか。
その中で貴方だけが色を持っていたのは。
だから、だろうか。
私がまるで祈りにも似た気持ちで貴方に近付いたのは。
「お一つ、どうぞ」
湿気た空気を鼻で嗅いだ君は、雨の降る気配を察したのだろう。
徐に傘を広げて、僕をその中に呼び寄せた。
「こっちに来て」
泣き出しそうに震えた声。
僕はそれに抗うことが出来ないのだ。
ふらふら、ふらり。
頼りない足を前に進めて、僕は君の元に行く。
こんな僕たちにも雨は優しく降り注ぐ。
継ぎ接ぎだらけの愛情へ。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる