水霊の贄 孤独な少女は人ならぬ彼へ捧げられた

春想亭 桜木春緒

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第三章

密 三

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 龍彦が、膝の上に抱えたみなほの耳に囁く。
「さあ、どうして欲しい?」
 乱れた衣から突き出した華奢な膝頭を撫でながら、さらに言う。
「みなほ、言ってごらん」
「あ……」
 膝から、指先がつと上昇する。みなほの内腿を龍彦の指が滑って、止まる。
 びく、とみなほが身体を震わせた。龍彦のもう一方の手が、衣越しに胸の頂きを強くつまんだ。痛いほどに、それを龍彦の指先が歪める。
 二度ほど、みなほが甘い息を吐いた。
「……って、下さいまし」
「何と?」
「直に、触って下さい」
「ふうん。衣越しでは、嫌か?」
「……は、い……」
「触れて欲しいのは、どこ?」
 襟を掴んで、引き下ろしながら、なお問いを重ねる。
 みなほの背をはだけさせて、うなじに舌を這わせた。滑らかな肌が、快い。
「あ、んぁ……ん」
「さあ、どこに触れて欲しい?」
 わかりきって、訊いている。
 絹の上からでも、みなほの坩堝は蜜を溶け出していた。
 恥じらうようにみなほが身を竦める。龍彦の胸に背を預けて、頬をすり寄せた。じわりと潤んだ秘所が龍彦の腿を濡らす。
(おわかりでしょう)
 そんなことを言いたげな仕草になった。

 みなほの顎先に指を添え、振り向かせて唇を重ねる。小さな舌が、龍彦のそれをなぞった。そうしている間に、恍惚がか細い身体を駆け巡る。吐息が忙しなくなった。
 龍彦は帯の上からみなほの身体を押さえつつ、唇だけの愛撫を続けた。
「ん、んう……」
 膝の上でみなほが身を捩る。切ないような響きを帯びたすすり泣きが、龍彦の耳を撫でた。昂ぶった彼自身が、熱を帯びてみなほの脚に触れている。幽かな嗚咽を漏らしながら、みなほが膝をずらしていく。
 甘えた仕草が、龍彦を煽る。
 どうして欲しいかとみなほを焦らせながら、むしろ己が耐えかねてきた。
 みなほを手荒く褥に下ろして組み敷く。薄絹の裾を剥ぎ、膝を左右に開かせた。
 白い肌の間に、紅い亀裂が垣間見える。既に滲み出した露で、奇妙に光沢を帯びている。
 不意に、隠微にしていた欲情の源を露わにされ、みなほがびくりと身体を震わせる。袂を持って顔を覆った。
「ここに、欲しかったのだろう?」
 指の先で軽く触れただけで、みなほが悲鳴のような嬌声を放った。
 頬に血の色を透かし、目を潤ませて、龍彦をみなほの瞳が捉える。色めいた期待を、底に漂わせている。
 顔を覆ったみなほの手を取り、龍彦はそれを秘裂へと導いた。
 みなほ自身の指先を、熱くなった坩堝に埋める。
「やぁっ……!」
「さあ、みなほの気持ちの良いところを、儂に教えるのだ」
 龍彦の端整な顔が、淫らな表情を帯びてみなほを見つめる。髪が、乱れて頬にまとわりついていて奇妙に凄艶だった。
「その手で触れてみよ」
 昂揚の紅色に染まった襞に手を添えて、左右に開きながら、言う。
 みなほはなお嗚咽を高くした。淫靡な仕草に翻弄されている。美貌に、恥ずかしい姿をさらしていることが、みなほを羞恥で竦ませた。竦みながら、たぶん、昂ぶりは増している。
 浅い呼吸にか細い声が混じる。胸が痛いような鼓動が、みなほを苦しくさせている。
 首を横に振って、抗いを示す。
 恥じらいに震えた身体に、龍彦が己を突き立てた。
「あっ! 痛い……!」
「教えぬからだ」
 普段ならば、十分に慈しんで柔らかにとろかしてからの行為のはずだった。
 溶解の足りぬそれに不意に押し込まれた凶器が、みなほを軋ませた。
 強張って痛みを訴えるみなほを、無理に貫くような、粗暴なことを龍彦はしない。そっと退きながら、また、命じた。
「快いところを示すのだ」
 苦痛への脅えのためか、みなほは素直にそれを龍彦に教えた。
 襞の中に隠れていた花芽を、指した。
「ここか」
「あっ……、そう、です」
 龍彦が、それを摘まんだ。身体を跳ね上がらせながら、みなほは頷く。
 固くなったそれを押しつぶしながら、龍彦がみなほの内に指先を押し込んだ。掌を流れるほど、みなほが溢れる。
「ひ、あ……!」
 中で侵入者を圧するように、襞が緊縮した。
 びくびくと爪先まで震わせながら、みなほが甘い声を放つ。滑らかになったその中に、龍彦が二指を沈め、円を描く。そうしながら、胸元に唇を置いて、花芽と同じように固くそそり立った乳首を吸う。
 
 小刻みに、みなほが喘ぎ、すすり泣く。乱れていく。
 その姿を堪能するのが、龍彦は好きなのだ。恥じらって、身を竦めたみなほが、徐々に放恣になっていく。膝を開き、腰を浮かせる。
「いや、嫌!」
 抗う言葉を発しながら、身体を穿つ龍彦に、内襞を擦りつけるように、華奢な肢体をうねらせた。白桃に似たそれを持ち上げ、ゆらゆらと揺るがせる。腿に、胎内で醸造された露が流れた。
 幾度か鋭い悲鳴のような声を上げながら、みなほの潮が龍彦の手を濡らしていく。
「みなほ、良いな?」
「は……い」
 幽かな声で返事をする。
 細く目蓋を閉ざしかけたみなほの視線と、龍彦の眼差しが出会う。
「見えるか?」
 龍彦がみなほの膝裏を高く持ち上げた。背を丸められたみなほは、腹の上に秘所の丘を見た。そこに、猛々しい彼が押しつけられている。紅く腫れ上がったようなそれの小さな亀裂からぬらぬらとした蜜が糸を引く。
「そなたに入る」
「あぁあっ!」
 先端が、自分の襞に沈んだ姿を見た。幾度となく繰り返された行為だが、目の当たりにすると驚きを禁じ得ない。
(こんな風に……!)
 あんなものが。衝撃を感じる。みなほの拳ほどもある熱塊が、みなほの身体の中に侵入していった。固い異物が胎内を襲うのが解る。熱い。息苦しいのに快い。
 身体の感覚に、視覚の驚きが、押し出される。
 気が遠くなった中で、遠くに甘ったるい媚声が聞こえた。みなほ自身の音色だと、気付かなかった。
 頭上に掲げさせた手を押さえつけながら、龍彦は彼の楔を仰向けのみなほの花芯に打ち下ろした。一突きで、最奥に届く。
 ただそれだけで、彼の全てを搾り取るようにみなほの身体が強く吸い付いてくる。往来を堪能するには苦しいような圧迫だ。苦しいが、目がくらむように快い。
「みなほっ……」
 龍彦の声が切迫した。
 眼下でみなほが左右に身を捩りながら甘い声で鳴く。
 その音色もまた、龍彦を酔わせる。
 酔い痴れながら、龍彦は絡みつくみなほの内から退き、再び攻め入った。
 飽きようのない快楽に、この夜もまた夢中になる。
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