Reset sand

香川 みぃさ

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人の弱さ

新たな門出

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それから1ヶ月、彼は日常生活を取り戻し仕事に復帰出来たと連絡が来た。
早く子供達や私と一緒に暮らしたくて頑張っていたのだと話していた。

「お前を見つけ出して必ず殺してやる、、、」

あの言葉が頭をよぎった。
正直まだまだ暴力や暴言の不安は消えてはいない。
母は、本当に病気が治ったのか、ただ、早く一緒にいたいだけで言っているのでは?と、、、。
でも私は子供と父親を離れ離れにしておくことは子供達にとって良いことでは無いと思っていた。

色々考えた結果。私は来週から子供達と一緒に彼のいる家に戻ると決めた。


祖母の運転する車に乗り嬉しそうにいつものお喋りをする息子とチャイルドシートでまったりとオヤツを食べる小さな娘、再出発はまったりと始まった。

2時間の旅は意外とすぐに終わった。
家の駐車場に車が停まり、ドアを開けると玄関に彼が立っていた。
満面の優しい笑顔で子供達の元に向かう彼は本当に嬉しそうだった。
「パパだ!!」息子は嬉しそうに彼の腕の中に飛び込んで行った。
帰ってきてよかった。本当にそう思った。

彼の病気は本当に改善していて、怒ることは無くなっていました。
安定剤を飲んでいる事もあって気分はいつも安定していて穏やかでした。

彼が新しく勤め始めた会社はパンの工場で、同僚達と仲良くなり、家にばかりいた頃の彼とは違い、休日に出かける事が多くなっていきました。

私に執着することもなくなり、一緒に出掛けたりする事はあまりなくなっていきました。それどころか私と子供達と彼の寝室は別になりました。
あまりにも興味がなくなり過ぎているのでは、、、?
とさえ感じるほどに、、、

病気が安定し穏やかになった彼のことをただ、良かったと思っていましたが、それと同時に、彼と私の間に見えない壁のような物があるように感じます。

彼は休日や夜も遅くまで誰かと電話をしていて私達夫婦は会話さえ無くなっていきました。

娘が産まれてからの彼の両親にはおかしな場面がいくつかありました。
私の娘に対して彼の母親からの異常なくらいの愛情。
私は可愛がってもらえる事が正直嬉しかったし、面倒を見てもらえて助かっていました。
しかし母親は段々と不思議な事を言う様になっていきました。
「ママだよー(^^)ママって呼んで?」
まるで自分が母親のつもりになっているようでした。
次第に私を避ける様になっていた母親は彼に「あの子は孫を抱かせてくれない。」とまで言っていたようでした。
そんな事は一度も思っていませんし、もちろん言ったこともありませんでした。
彼の母親は私が帰ってくると居間からいなくなり、離れに私がいると彼が娘を迎えに来ては
「お母ちゃんが娘と過ごしたいからお前は居間にくるなよ?」
この家で私に居場所は無くなって行きました。

そんな生活が3ヶ月くらい続きました。
ある日彼から呼ばれて部屋へ行くと彼は静かに話し始めました。
「ずっと考えていた、病気になって入院したりしてから俺はどこかお前の事が信じられなくなってしまった。
正直、お前や子供達の前では良い父親でいなくてはいけない、その事が負担になっている。」
そんな気はしていたから、私はただ話を聞いていた。
少しづつでも改善する事を祈っていたけれど彼にとっては私たちがいる事自体が負担になってしまっていたようだ。

彼は続けた。
「何がいけなかったんだろう、、、多分あれだな、
そもそも息子が産まれたところから間違っていたんじゃないかな、、、。」
彼の言葉に私は唖然とした、、、。

いままでいくら暴力を振るわれても、暴言を言われた時も、彼が病気で入院した時でさえも、離婚するという事は頭になかった。

当初、彼は結婚の話になった際に私に話してくれていた。
「息子がいる事でお前に後ろめたい思いは絶対にさせない。」


その言葉で私に、迷いは無くなった。
すぐに携帯電話を取った。
「お母さん?
私達、離婚する事に決めたから私と子供達を迎えに来てくれる?」
電話を受けた母は詳しい事は何も聞く事なく、
「分かった。」
ただそれだけの会話で話はついた。

次の日居間で彼の両親と離婚について話した。
「、、、という感じで、彼にとっては私たちの存在が負担みたいです。話し合って私たちは離婚する事になりました。」
両親は静かに頷き、、、肩を落としていた。
母親は「あの子は?子供達は2人とも連れて行ってしまうの??」子供達が居なくなることが耐えられない様子だった。しかし、
「当たり前だろう、、、あの子たちは母親と一緒が良いに決まっている」父親は母親を諭している。
「はい。子供達は置いては行けません。すいません。」
もちろん私は譲る気はありませんでした。子供達は私の命そのものでした。



離婚が、シングルマザーになる事が決まった瞬間だった。






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