Strain:Cavity

Ak!La

文字の大きさ
上 下
8 / 15
Chapter 2 The [C]apricious

Act8:神は、移ろいやすいものだけを美しくした

しおりを挟む
 月が海上に昇った頃。ヒルダの家のチャイムが鳴る。意を決して玄関ドアを開けると、そこには見たくもない顔がいる。でも、彼女は“彼”が言ったことを信じて────その腕を受け入れて、家の中へその男を招き入れた。

「あぁヒルダ……会いたかった」

 玄関でぎゅうと男が抱き締めてくる。ヒルダは目を瞑る。愛おしさと支配欲に満ちたその力が緩むのを待って、ヒルダは笑って見せる。

「食事を用意したの。向こうで喋りましょ」



 ソファに着いたアダンは捲し立てるように喋る。

「どうして店を辞めてしまったんだい? 俺に連絡もなく! お陰で探すのにとても苦労したんだよ」

 ヒルダは二つのグラスにワインを注ぐ。隣の男はただ、彼女の視線を求めて続ける。

「嫌な客でもいたのかい。もしそうなら、俺が守ってあげるよ」

 ええそうよ。どの口が言っているの。……その言葉をぐっと堪えて。ヒルダは彼に笑いかける。

「心配かけたわね。でも、もう大丈夫」

「そう? 良かった。怖いことがあったら何でも相談してくれ、俺は君のためなら何でもするよ」

「……何でも……ね」

 ヒルダが小さくそう繰り返すと、アダンは思い出したように指を差した。

「そうだ! この前君の家の前に来てた男! アレは何だ」

「アレ? 何のこと?」

「栗色の長い髪の男だよ! 随分と若い男だった。もしかして君のストーカー? 彼が怖くて店を辞めたの?」

 リアンだ。ヒルダが口を結んだのを見て、アダンは彼女の両肩を掴む。

「分かった。俺があいつを片付けてやる。俺の手にかかれば、アイツなんか二度と君の目の前に現れなくしてやれる」

 そう言う彼に、ヒルダはワインを渡した。受け取る彼の目を見ながら、答える。

「そんなことして。お父様にバレたら大変よ。次期社長でしょ」

「大丈夫だよ。俺自身は何もしやしないんだから────」

「危ない付き合いは、やめた方が身のためよアダン」

「うるさいな。どれもこれも会社のため、ひいては君のためだよヒルダ。金がなきゃ世の中生きていけないじゃないか。これはビジネスだ、何も持たない者から喰われていく。……あの馬の骨もそうさ」

 ワインを飲みながら、陶酔した様子でアダンは語る。

「大体、親父の事業はせせこましいんだ。鉄を安く仕入れて、安く船を作ったり……派手さが足りないだろ? 俺はそれがつまらない。折角でかい会社なのに」

 テーブルの上に用意されていた料理をアダンはつまむ。その様子をヒルダは見ている。

「……俺の事業は順風満帆だ。親父より稼いでる。あとは……料理が上手でイケてる女がいれば…………」

「…………」

 じっと自分を見ているヒルダに気が付いて、アダンは首を傾げる。

「食べないのか?」

「……食べるわ。あなたの横顔につい、見惚れてたの」

 アダンは照れた様子もなく、その腕の中にヒルダを抱き寄せた。

「あぁ、本当にいい女だなヒルダ。俺と結婚しよう。そうしたら、何不自由ない生活を送らせてやれるし、俺はとても幸せだ」

「そう。素敵な話ね」

 気持ちを込めようと思っても、篭らなかった。心臓がどきんどきんと鳴っている。指先が冷える。アダンの腕から抜け出して、テーブルの上のフォークを手に取った。

「この料理、あなたのために作ったんだから。たくさん食べてね」

 ニコリと笑う。ぎこちない笑みだった。だけど、恋は目を曇らせる。男は何も気付かずに、嬉しそうにしていた。







 カラン、とフォークが床に落ちる。それをリアンは拾い上げた。

 ソファの上で二人の男女が眠りに落ちている。ソファで天井を向いてイビキをかいているスーツの男。その隣で、ヒルダはまるで死んでしまったかのように静かに眠っていた。

「……助かるけどさ……」

 ヒルダの作った料理には、睡眠薬が盛ってあった。ルチアーノから貰ったものだ。知り合いの闇医師が作った特製の強力な睡眠薬だと言う。それをヒルダに渡しておいた。しばらくは起きないだろう。

 そっと、リアンはソファの後ろに回ってヒルダの頬を撫でた。

「……ごめんね」

 会話は聞いていた。ずっとこの部屋のクローゼットの中に身を潜めていた。ヒルダはきっと怖かっただろう。不快だっただろう。でも、もうそんな思いをさせなくて済む。

 何も知らないで眠っている男の手足を縄で縛った。漁師の男たちに教えてもらった強い結び方────こんなことに使うなんて、とリアンは心の内で笑った。男を肩に抱える。意識のない人間の重さを感じる。

 チラリとヒルダを見た。…………これが最後になるかもしれない。そう思うと急に愛おしくなって────その思いを噛み潰して、リアンは踵を返した。







 男は目を覚ました。いつの間に眠ってしまっていたのか、記憶がない。ソファの上にいたはずなのに、固くて冷たい地面を感じる。身じろぎしようとして、縛られていることに気が付いた。

「…………ヒルダ⁈ ヒルダ!」

 叫ぶ。そうしてようやく、そこが外であることに気が付いた。

 暗い夜の港。停泊した船と港の間で揺れる波が、不気味な音を立てている。灯りは港に点々と立つ街灯だけで、昼間と違って人の気配のない港の海は、命を飲み込む深淵の様だった。

「なん……」

「ようやくお目覚め? いっぱい食べたのね、最後の晩餐のお味はどうだった?」

「! お前は……」

 リアンは男の目の前で屈み、笑う。

「昨日はどうも。…………あぁ、もう日付が変わるか……まぁ、俺のことは覚えてるでしょ」

「ヒルダのストーカー!」

「……ストーカーはお前でしょ。自覚がないって怖いよねぇ」

 アダンはリアンが自分の後方に目を向けたのを見て、身を捻る。そこにもう一人立っているのを見て、勢いで飛び起きた。

「だっ、何だ!」

「……うるさいのは嫌いなんだ。静かに出来ねェなら今すぐ沈める」

 ルチアーノの手にある拳銃に、アダンは気が付いて慌てる。

「殺し屋か⁈ どこの組織のモンだ……! 俺に手を出したらタダじゃ済まねェぞ!」

「あぁ、それなら心配ない。お前のお仲間の所にもお迎えが行ってる。だから安心して死ね」

 真っ黒な銃口を向けられて、アダンが甲高い悲鳴を上げる。リアンは立ち上がってルチアーノを一旦制止する。

「まぁ待ってよ。ちょっと話がしたい」

「早く片付けねェと人が来る。目撃者がいたら消さなきゃならねェんだよ俺たちは。それに、これから死ぬ奴と話したって何にもならねェぞ」

「少しだけ。少しだけだから」

 リアンは笑ってルチアーノを宥めると、アダンを見た。

「……ヒルダはお前から逃げたんだよ。分かってる?」

「そんな訳ない! 俺はヒルダを愛してるんだ! 今日だって家に招いて……」

 はたとアダンは気付いたようだった。目の色を変えて、唸る。

「…………ヒルダが料理に薬を? それで俺は眠ってたのか⁈」

「そうだよ」

「お、お前が唆したんだろ! お前が、あいつを自分のものにしたいから──……!」

「いいや。俺のものにはならないよ。彼女には幸せになって欲しいけど────彼女の隣に、俺はいない」

「は……?」

 屈んで目を見る。男の目を見ていると、自分の芯が冷たく、静かに冷めて行くのを感じた。

「お前さ────女のコと仲良くなりたいたら、優しくしないと」

「何……」

「この町の女のコたちは、皆んな俺の恩人なんだ。俺を育てて養ってくれた人達だ。漁師たちだってそう。お前はその全てを脅かす」

 この胸に感じるのは、怒りだ。自分の大切なものを穢す者への憤り。ポケットからナイフを取り出し、刃を展開させて握り締める。鈍色の刃が、街灯の光を返す。

「初めてが、お前みたいなので良かったよ」

 ドッ。刃が肉を貫く感触がする。ルチアーノが言っていたことを思い出す。イヤな感触だ、とリアンは思った。アダンは何が起こったのかよく分かっていないようだった。

「あえ……え……?」

 アルヴァーロに貰ったナイフを引き抜いた。使われていたものらしく、刃に血が馴染んでいる。アダンが倒れるより先に、ルチアーノが彼の体を蹴り飛ばした。呆気なく男は真っ黒な海に落ちて、見えなくなった。ドボン、という音は幻の様に闇の中へ消えて行った。

「……俺の仕事がなかった」

「いや。いてくれて良かったよ。俺一人じゃ……押し潰されそうだ」

 不満げなルチアーノに、立ち上がったリアンはそう言って笑う。足元に血痕が遺っている。ナイフを握る手がぬめりとしている。男が消えた深淵を見遣るリアンに、ルチアーノはため息を吐く。

「今回ばかりは……アレだが。あまり仕事に私情を挟むな」

「分かってる」

「俺たちの仕事は、人を助けることじゃない。依頼のままにターゲットを殺すことだ。俺たちが、そいつを何と思おうが、だ。“殺したい”って感情を、俺たちは持っちゃいけない」

「……それは依頼主の役割?」

「そうだ」

 ルチアーノの隻眼は冷徹だった。本来なら、自分とは関わらない種の人間だったろうと思う。どうして関わることになってしまったのか不思議なくらい────でも、だからこそ、彼と近付きたいと思う。

「帰ろう。見られたらマズイんだろ」

 リアンはルチアーノを促して歩き出す。が、立ち止まったままのルチアーノが後ろから言った。

「彼女の様子、見て行かなくていいのか」

「…………うーん。こんなだしさ」

 暗がりの中。街灯に照らされた右手と胴は、血に汚れていた。酷い臭いだな、とリアンは思った。

「……そうか」

 ルチアーノは隻眼を伏せると、リアンの後を歩き出した。







 帰るとまだアルヴァーロはいなかった。彼が帰って来たのは、翌日の昼前だった。足音なく帰って来て、ケロッとしているアルヴァーロに、リアンは何というか、驚いた。

「……そっちは無事に済んだんですか?」

「うん? 勿論。いやぁ、骨のない連中だった」

「アルヴァーロさんにしてみれば、どいつもそんなものでしょう」

 ルチアーノがソファで新聞を読みながらそう言う。そんなルチアーノに近付くと、アルヴァーロは後ろからぎゅむと彼を抱きしめた。

「あぁ~でもちょっと寂しかった~!」

「やっ、めて下さい苦しっ……」

 わしゃわしゃと頭を撫でている。こうして見ると親子のようだなと思う。

「そっちは? 首尾良く行ったの?」

「まぁ……」

「アルヴァーロさん。ほら」

 と、ルチアーノは読んでいた新聞をアルヴァーロに見せる。

「…………水死体発見……あぁ、アダンの死体が見つかったのか。早いとこ引き上げないとな」

「次はどこに行くんですか」

「ウィスタリアだよ。少し遠いけど」

「ウィスタリア……」

 二人の会話を聞いて、リアンは急に寂しさを覚えた。そうか。本当に、もうここにはいられないのか。分かっていたことだが。

 この町から出たことはない。海には出たことがあるが。他の町に行ったことが、リアンにはなかった。だから、ここを出ることには少しのワクワクと惜しさを感じていた。

「……あ、リアン。香水付けてくれたんだ?」

「ん、あぁ、はい……」

 血の臭いが消えるかと思って。と、そうは言わなかった。爽やかな香りが自分の周りに漂っている。アルヴァーロはにこりと笑うと、頷いた。

「うん、俺の見立て通り似合うね。良かったよ」

「あの、いつ出るんですか」

「ここを? そうだね、元から一週間の滞在だったから……明日には出るよ。それまでに荷物とかまとめといてね」

「……荷物は何も無いです」

「そっか。良かった」

 自分は何も持っていない。持ち物も、家も、何もかも────いつだって、この身一つだ。アルヴァーロに貰ったものが、初めて自分の所有物と呼べるものだ。この香水とナイフさえあればそれでいい。

「……挨拶とか、して行かなくていいの?」

「!」

 思いがけず、アルヴァーロにそう言われてリアンは驚いた。彼の顔を見ると、申し訳なさそうな顔をしていた。

「…………なんすか」

「いや。俺たちの都合で君を外に連れ出すわけだからさ────」

「気にしなくていいすよ。俺がいなくたって誰も困りゃしないし」

「でも、寂しがるんじゃない?」

 そんなこと。そんなことない。自分は、誰の一番でもない。そりゃ、しばらく顔を見せなくなったら少しの間は寂しがるかもしれないが。彼女たちには皆他に大切なものがある。自分一人がいなくなったって、そんな────。

 と、俯いたリアンの肩をアルヴァーロは優しく叩く。

「まぁ、もう二度と来ないってわけじゃないからさ。君が良いっていうなら、良いんだけど。後悔だけはしないようにね」

「…………」

 ヒルダのことを思う。彼女は、数多くいる関係を持った女性の中の一人に過ぎない。特段特別な感情を抱いているわけじゃない。でも、嫌なことを強いてしまったことに罪悪感があるのは確かだ。このまま、何も言わずに去っていいのか。他の、女たちにも────。

「……迷うくらいなら行っとけば」

「!」

 ルチアーノが言う。少しの苛立ちが籠ったような声だったが、リアンは不快には思わなかった。

「分かった。……“荷物”を、まとめて来るよ」







 とは言ったものの、どうしたら良いのか具体的に分からないまま──顔を合わせて、彼女たちに何と言ったら良いのか分からないまま、リアンはフラフラと歓楽街を歩いていた。

 昼間だ。まだどこも開いていない。一人一人の家に行く気力もない。そうなると、具体的に誰の所に行こう、とか浮かばなかった。浮かぶとしたらヒルダだが────それこそ、合わせる顔が無かった。

 見慣れた町並みを眺める。夜は賑わうが昼は静かだ。住み込みの嬢たちの気配はするが────。

「リアン? リアンじゃない」

「!」

 上から声が降って来て、リアンは視線を上へ向けた。娼館のバルコニーから、髪の短い女が手を振っている。リアンはいつものように笑おうとして、どこかぎこちなくなる。

「……こんにちは」

「どうしたの? お腹空いてる? なんか作ろっか」

「ええと……いや」

「あれ、いつもの服じゃない! カッコいいじゃん、どうしたの」

 答えを迷っていると、女の後ろから新たに金髪の女が顔を出す。

「なになに、リアン? おーい! 上がって行きなよ」

 そんな調子で────その内目の前の店の扉からも女が出て来て、リアンの腕を引いた。振り解く訳にも行かず、そのまま中へ招かれた。



「えーっ、リアン、この街出てくの」

「うん……誰かには、伝えとかなきゃって思って」

「そっかぁ、寂しくなるねー」

 三人の女たちは、誰もリアンを止めようとはしなかった。少し早い昼食を摂っている。リアンも食べるように勧められたが、そんな気分じゃない。

「まぁ、リアンももう大人だもんねー。大きくなったねほんと」

 彼女たちは、リアンを小さい頃から知っている人たちだ。歳は皆40を過ぎている。

「ほんとほんと。あたしら皆んなで面倒見てたもんね。ヤンチャだったなぁ小さい頃は」

「今でもヤンチャだけど。でも良かったよ、心配してたんだから私たち……」

「?」

 俯いていたリアンは顔を上げる。彼女はにこりと笑う。

「リアンももう大人でしょ。このままじゃ、あんたのために良くないと思っててさ……無理矢理にでも何か仕事につけて……漁師に弟子入りさせようとか、なんとか考えてたわけ……だから安心してさ」

「えっ……と」

「居場所、見つけたんでしょ」

 ぐ、と喉が支えた。何で、という思いが頭を駆け巡る。

「ごめんね。あんたの母親を見つけてあげられなくてさ。寂しい思いさせてたんじゃない」

「そっ……そんなことない……!」

 口を突いて出た言葉。それはきっと本音だった。孤独感がなかったと言えば嘘になる。だけど。

 彼女たちは皆優しく笑う。リアンは胸がぎゅっと締まる。あぁ、こんなにも。こんなにも自分は。

「行っておいで。あんたなら大丈夫だよ」

「帰って来たら顔見せてね。それで、また話聞かせてよ」

「そーそ。お腹いっぱいご馳走するからさ」

 胸が痛い。顔を伏せる。ぎゅっと、隣の女に抱き寄せられて頭を撫でられる。

「泣いてるの? ふふ、まだ子供だったなぁ」

「……俺……ここで育って良かった」

「そっか」

 町を出る理由を、正確に彼女たちに話すことは出来ない。でも、せめて、この町で受けて来た愛を忘れないでいようと、リアンは誓った。







 女は町を駆けた。目が醒めると、そこには誰もいなかった。締め切られたカーテンの隙間から、朝日が差し込んでいた。

 その日のうちに、きっとリアンから連絡があるか、顔を出してくれると思っていた。でも、そんなことはなくて───夜、玄関ポストに刺さっていた朝刊に気が付いて、見て、背筋が凍った。

 翌日に、胸騒ぎがして歓楽街に行った。そこで、リアンが町を出るという噂を聞き────早朝の今、走っている。海から離れて、山へ向かうただ一つの街の出口へ。向かう先の空は、山の陰に隠れた朝日で白んでいる。心臓が爆発しそうなくらい、足がもつれそうになるくらい、走って。彼女はリアンの後ろ姿を見つけた。他にも二人、知らない人がいる。

「…………リアンっ!」

 息も切れ切れに、なんとか叫んだ。リアンたちが振り向く。ハァ、ハァと激しく息を吐いている彼女の元に、リアンは近づこうとして……やめた。

「……ハァッ、なんっで……」

「ごめん」

「私のせいで、出てくの……?」

「違う。……これは、その。たまたまだよ。巻き込んだのもさ」

「────」

 へら、と笑って見せるリアン。ヒルダは言葉を失くす。もうそれは、ヒルダが知っている笑みではないような気がした。

「おおよそ、多分、君が想像してる通りだ。アダンのことは────もう心配いらない。俺のこともさ」

「……リアン」

「俺なんか、相手にしてたってしょうがないからさ。忘れてよ。全部」

 少し歳下の青年は、そんな残酷なことを言って、笑う。彼は元々、流れて行くものだった。誰の元にも止まらない。気まぐれにやって来て、抱いて、食べて、去って行く。そういうものだと分かっていた。でも。

「………そんな悲しいこと、言わないで」

「ごめん」

「忘れたりしないわ、リアン」

「……ごめん」

 青年は、謝ることしかしなかった。その海のような瞳が揺れている。あぁ。あなたは。

「────いいの? 私、全部喋っちゃうかもしれないわよ」

 青年はただ笑って、向こうで待っている二人の元へ歩いて行った。全てを見透かされている様な気がして、ヒルダはただ立ち尽くしていた。



#8 END

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

呂色高校対ゾン部!

益巣ハリ
キャラ文芸
この物語の主人公、風綿絹人は平凡な高校生。だが彼の片思いの相手、梔倉天は何もかも異次元なチート美少女だ。ある日2人は高校で、顔を失くした化け物たちに襲われる。逃げる2人の前に国語教師が現れ、告げる。「あいつらは、ゾンビだ」 その日から絹人の日常は一変する。実は中二病すぎる梔倉、多重人格メルヘン少女、ストーカー美少女に謎のおっさんまで、ありとあらゆる奇人変人が絹人の常識をぶち壊していく。 常識外れ、なんでもありの異能力バトル、ここに開幕!

失恋少女と狐の見廻り

紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。 人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。 一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか? 不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」

チャリンコマンズ・チャンピオンシップ

古城ろっく
キャラ文芸
 日本列島を自転車で縦断する、超長距離レースが開催される。  自転車を始めたばかりの少年は、自転車に詳しいクラスメイトの少女と共に、その大会に出場するのだった。  オンロードもオフロードも、悪天候も何でもあり。降雨、強風、積雪などの様々なコンディションを、ママチャリ、マウンテンバイク、ロードバイクなど、様々な自転車で戦うのだ。 ※この作品はフィクションです。実在する人物、地名、団体、大会、その他とは一切関係がありません。また、実在する社名、車体名などが登場することがありますが、各社および各車両に対し技術的、あるいは能力的なものを示唆する意図はありません。 ※劇中には大変危険な行為が描写されています。公道を走る際は交通ルールに則り、安全に運転するよう努めてください。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

天鬼ざくろのフリースタイル

ふみのあや
キャラ文芸
かつてディスで一世を風靡した元ラッパーの独身教師、小鳥遊空。 ヒップホップと決別してしまったその男がディスをこよなく愛するJKラッパー天鬼ざくろと出会った時、止まっていたビートが彼の人生に再び鳴り響き始めた──。 ※カクヨムの方に新キャラと設定を追加して微調整した加筆修正版を掲載しています。 もし宜しければそちらも是非。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

処理中です...