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第四章 秩序のカタストロフィ
#58 喚起
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────19時30分 セシリア軍基地9階 訓練室B────
「二人……? 何言って……」
「クリカラ、それフォレンのことか? あれはこいつの兄貴だよ。顔は似てるけど」
エランがそう言うと、クリカラは首を横に振る。
「儂には人の子の顔の違いなど分からん。お前も闇の子も同じに見えるわ」
「まじかよ」
「儂が区別するのは魂の色、気配。それは同じ卵から成した兄弟でもなければ同じ色はしていない」
「……僕たちは双子じゃありません、兄さんは二つ上の兄で……」
ロレンはそう言いながらも、クリカラのさっきの言葉が気になる。
「…………僕が純粋な人間じゃないって?」
「儂が気になるのはそれだ。どうも他の人の子の魂と様子が違う。それはもう一人の方もそうだった。だが…………そうだな。よくよく見ればまったく同じというわけでもなさそうだ。ふむ」
「なんだ、人騒がせな……」
ライナーがそう言ってため息を吐く。しかし彼の言うことは気になる。
「様態はよく似ているが、濃さが違う。おまえの方が少し人寄りだ。だがもう一人の方は、そうさな。焼き尽くしたくなる」
「!」
聖竜クリカラ。彼がその炎で焼きたくなるもの。それは一つしかない。
「酷く邪な魂だ。あれはまるで、魔だ」
* * *
────19時20分 セシリア軍基地10階 指令室────
強烈な思い出ほど、よく残る。表面上は忘れていても、頭のどこかでは必ず覚えている。それが何かのきっかけによって、呼び起こされることもある。
なぜ今まで忘れていたのか不思議なほどに、その記憶は鮮明だった。薬品の匂いや血の匂いすら覚えている。暗く、苦痛と恐怖に怯えた幼い頃の記憶。十年以上前のことだというのに────それは残酷なほどまでに鮮やかに、色濃く残っていた。
────自分に家族はいなかった。
孤児院に行く以前から。父母の姿はその記憶にはなかった。全てを思い出した。自分がどう育ち、どうして孤児院に辿り着いたのかも、どうしてこの記憶を封じていたのかも、そして、ロレンが何なのかも。
目を開ける。視界が安定していた。目の前にたじろいだ様子のイーサイルが見えた。辺りを闇が漂っている。いや、それはある形を成して、フォレンを覆っていた。
「……お前、何だその力は」
「────悪魔の力だ」
黒い翼。それはゼイアのようなものではなく、実体のない黒い靄の塊だった。
立ち上がる。すうと息を吸い込んだ。靄だった翼が鳥の翼のように実体を持つ。額から一本の角が生える。髪が底なしの黒色に染まった。残る左目が赤色に染まる。クザファンの力を憑依させ、フォレンは笑う。それは今までの笑みとは違う────悪魔の笑みだった。
「これが俺の力だ。さっさと見せてやれなくて悪かったよ」
「……薄気味の悪い」
パチ、とイーサイルの手で電気が弾ける。様子の変化にたじろいだだけか。そこに恐れは見えない。
フォレンは軽く床を蹴った。打ち出されたように宙を滑る。体が軽い。見えなかった目がよく見える。右目は潰れたままだが、その痛みすらももう強くは感じない。
左手で殴る。イーサイルは光の粒子となって消える。フォレンは勢いに任せて空中へ回し蹴りを繰り出した。何もなかったそこに手応えがある。
「なっ……」
イーサイルの脇腹に思い切りフォレンの踵が入っている。イーサイルの顔には驚きが満ちている。
「お返しだよ」
強制的なエレメント化の解除。闇の力に覚醒した今のフォレンには容易いことだった。
イーサイルの体が数メートル吹き飛ぶ。翼を使ってフォレンは体勢を立て直す。早くもイーサイルは口元を拭いながら立ち上がっている。
「タフだな」
「お前如きに簡単にやられるほどヤワじゃない……」
立ち上がったイーサイルは剣を向けて来る。そこから放たれたのは稲妻ではなく光の刃だった。それをフォレンは翼で防いだ。
『精霊との同調が切れた……訳じゃなさそうだな。俺たちの様子を見て光の方が良いと判断したみたいだ』
「……俺の力の方が強い。そうだろ、クザ」
フォレンは自らの手を見ながらそう言う。胸の中でクザファンが笑う気配がする。
『当たり前だ』
とは言え……肋のひとつやふたつ折れているだろうに眉一つ動かさず立っている姿には、フォレンも内心冷や汗をかく。今の防いだ感じで、自分の方が力が濃いことは分かった。だが、それでもこの男を倒せるビジョンがあまり見えない。何度でも、手足をもがれようが立ち上がってくるような、そんな────……。
「……良いね、潰しがいがある」
フォレンの顔に凶悪な笑みが浮かぶ。
と、その時だった。突如としてモニターの画面が切り替わる。チカチカとするそれに、二人とも気を取られる。
「何だ、どうなってる……」
イーサイルは怪訝な顔をする。
映っているのは外カメラ、各訓練室、そしてエレベーターと階段カメラだった。それを見た二人はそれぞれ別の反応を示す。
「……あいつ……何故生きてる」
「────レイミア!」
さっきの知らない兵士の前で、彼女が倒れているのをフォレンは見る。彼女が負けるなんて。フォレンの中に湧き上がったのは焦燥だった。
と、さらにガチャンと大きな音がした。二人はその音の方を見る。入り口を封鎖していたシャッターが上がり始めている。
「……!」
「……管制室で何かあったのか」
イーサイルがそう呟く。フォレンは開いて行くシャッターを見て、気がつくとイーサイルに背を向けて走り出していた。
「! ……待て、逃げるつもりか!」
イーサイルが剣を向けようとした時、フォレンの姿が黒い塵と共に元に戻って…………すぐ目の前に大きな黒い鳥の脚が現れる。それは剣の上に止まって、黒い前髪の間から覗いた赤い瞳がにやりと笑う。
「残念だ。あいつはもうお前には興味ないってさ。また会おうな雷の」
「……!」
悪魔。そう思った直後にその姿は黒い羽根を残して消えた。フォレンの姿ももうなかった。イーサイルは剣を下ろし、ため息を吐くとモニターを見る。
「……確かに心臓を焼いたはずだが」
睨め付ける先のエレベーターの映像には、もう誰もいない。そして階段の映像の方を見る。長らく見ていなかった見知った顔が、探偵たちの制服の中にあった。
「…………あいつはどういうつもりだ」
やれやれとイーサイルは苦い顔をする。そして彼は壇の端でうずくまっている影に向かって声を掛ける。
「……逃げなかったのか。足は自由だったというのに」
「……どこへ逃げろって言うんだよ。巻き込まれないように身を縮めるので精一杯だったんだけど」
のそりと影が立ち上がる。壇の真ん中まで歩いて来たアーガイルは剣呑な目を父へ向ける。そして入り口の方を見ると呟く。
「────フォレンさん、あんな力を隠してたなんて…………僕にはあんなこと言ってたのに」
「お前が奴と顔見知りだったとはな。引き篭もりが随分と社交的になったものだ」
「何それ、皮肉? 大体はエレンのせいだ。…………あんたは相変わらずだよ。ほんとに」
イーサイルは胸ポケットからタバコを出すと咥えて火をつける。そして壇に座った。背を向けられてアーガイルは目を細める。
「…………僕を無視して一服ってわけ」
「……────お前、いくつになった」
「は? 息子の歳も覚えてないの? ……26だけど、それが何」
「そうか。覚えておく。…………座れ。封神石を付けられてちゃ疲れるだろう」
父は顔を見ないままそんなことを言う。アーガイルは怪訝に思いながらも、距離をとって横に座る。
「……何なの。今まで興味なかったくせに。休憩がてら暇潰しに僕と世間話でもしようって?」
「そうだな。お前のことをほとんど知らない」
タバコの煙を吐き出しながら、イーサイルは淡々としてそう応えた。アーガイルは顔を顰める。
「……臭いんだけど。やめてくれない」
「うるせェガキ」
反射のようにそう言ってから、イーサイルは少しだけバツが悪そうに眉を顰める。そして僅かに体をアーガイルの方へ向けると、再び口を開いた。
「────今からでも遅くない。お前、軍に入る気はないか」
「え? ないけど」
「即答か。エウィンの血が泣くぜ」
「軍は嫌いだ。あんたのことも」
「はっきり言うものだな」
イーサイルは少し傷付いたような顔をする。それがアーガイルには意外で、思わずまごつく。
「……何で? 父さんは僕を軍に入れたいの。家系だから?」
「それもあるが……お前はソフィア譲りの聡明な奴だ。優秀な力を持ってる。戦力にはならずとも……十分活躍出来る。コソ泥なんかじゃなくな」
「は。父さんも僕のこと戦えないって言うんだ」
アーガイルは自虐的な嘲笑を浮かべて顔を逸らす。イーサイルは首を傾げる。
「お前は強くなりたいのか」
「なりたいよ。そりゃなりたい。エレンが真っ先に守ろうとしないくらいにはさ。……まぁ、全然守られなかったけど」
「手本が悪い。軍に来れば俺が一から鍛えてやる。いずれは元帥になれるくらいにはな」
「ふうん。…………ねえ。何でエレンのことは捕まえなかったの」
「あ?」
すぐに明確な答えが帰って来るものだと思っていたが、案外父はその返答に悩んでいるようだった。タバコを持った手で額を抑えて考えている。
「……父さん?」
「────捕まえるつもりだった。最初はな。だが顔を見て気が変わった。……言ってしまえば一時の衝動だ」
「……は?」
意味が分からない。続きを待つ前にアーガイルは詰め寄る。
「衝動だけでエレンのこと殺したってわけ?!」
「死んでないだろあいつ。何故だか知らんが……ったく、奴の血筋はロクなことがねェ」
「え?」
がりがりと頭を掻いている父の言動に、アーガイルは引っ掛かる。
「……奴の血筋?」
「お前は知らんか。まぁ村にもなかなか帰らん奴だったからな。……俺も人のことは言えないが」
そう言うイーサイルの顔はさっきまでの軍人の顔ではなかった。だからか、アーガイルもその話を熱心に聞いてしまう。
「誰?」
「お前の相棒の父親だ」
エレンの父親の話。それはきっと、エレン自身も知らない。それを父は知っているのか。いや、そもそも自分達の家は同じ村の近所だったのだから、当たり前と言えば当たり前だが。しかし父の顔はそういう近所の顔見知りを思い浮かべているようなものではなかった。
「ジェラルド・レオノール。……旧姓ジェラルド・フェリン。俺はこの名の方が馴染みがある。奴はこの国で暗躍する殺し屋だ。俺は何年も追ってる」
「!」
殺し屋。それがエレンの父親。不殺を信条とするエレンとは正反対の存在だ。
「だが未だ捕まっちゃいない。それどころか、何故だか懸賞金を懸けてもいつの間にか指名手配が解除されてる始末だ。おまけに殺しても死なないような化け物ときた」
「それは父さんもだけど……」
「俺は死ぬ。ちゃんとな。だが奴は人間じゃない。そう思わせるような……怪物だ」
アーガイルはさっきまでの父の戦いの様子を見ていた。父も随分と怪物だと思う。そんな彼に、そこまで言わしめる存在とは。気になる。
「それの息子だ、お前の相棒は。今はまだ、目醒めていなくとも、やがては奴の様に牙を見せる。長男が良い例だ。……もっとも、既に死んだようだが」
そのグレンも実は死んでいない……というか生き返っているのだが、というのは流石にアーガイルは言わなかった。
「だからお前、あいつとつるむのはやめておけ。いずれ痛い目を見る」
そう言うイーサイルの目は、どこか遠くを見ていた。そして、どこか寂しそうな────。
「父さん────」
アーガイルが何か言う前に、イーサイルはスッと立ち上がった。ぽとりと落とされたタバコが軍靴で踏み消される。
「さて。お出ましのようだ」
「!」
イーサイルの視線の先を、アーガイルは見る。指令室の入り口。開け放たれたそこに、馴染みのある姿があった。
「─────助けに来たぞ! アル!」
「……エレン!」
アルが呼び返すと、エレンはにこ、と笑う。棒を伸ばした彼は、いつもの癖でカンと床を打つ。
「昨日はやられたが、今日はそうはいかねェからな」
「胸に風穴開けてやったはずだが」
「あんなのへでもねェよ。帰る頃にはほとんど治ってたってェの」
「……なるほど、どうやらお前も既に化け物らしい」
エレンが床をダンッと蹴る。それと同時に、イーサイルの体から電流が迸った。
────19時40分 エレン・イーサイル戦闘開始────
* * *
────19時30分 セシリア軍基地B1 管制室────
レーヴェンはようやく見つけた指令室の封鎖スイッチを押して、安堵の息を吐いた。……それまでにいくつか余計なスイッチを押したようだが。どうも指令室のモニターの切り替えスイッチだったらしいことを、落ち着いた今知る。
「……あれ。あの人たちも捕まってるのか。ええと……4階の階段の封鎖スイッチはっと……あったあった、これだ」
ぽち、と二つボタンを押すとモニター越しに彼らを捉えている檻が上がっているのが見える。シャッターも上がっているはずだ。
「はあ。管制室に友達がいなくて良かったぜ。……ま、エレンの為なら何でも出来るか……俺は」
そう呟きながら、レーヴェンは部屋の中を見渡す。五人の兵士があちらこちらで倒れている。彼自身の仕業だ。
「悪いな手ぇ出して」
そう謝るが、彼が罪を犯したことは明白だった。軍が正しいとは思わない。でも、これはさすがにいけない。兵士に直接手を下した以上は、自分も立派な反逆者だ。
この後どうしよう、とそう思う。エレンの後を追う? 追ってどうする。副元帥に殺されるのが関の山だ。自分には何も出来ない。何食わぬ顔で兵役に戻ることも……無理だろう。この兵たちは殺していないし、これから殺すことも出来ない。そこまでの覚悟はレーヴェンにはなかった。
「……はは、中途半端…………」
世間を騒がせた大泥棒に憧れた。それは堂々とアウトローに生き、堂々と逃げ延びる彼らの姿に心打たれたからだ。
彼らに会いたかった。しがない青年だったレーヴェンは軍に入った。本当は探偵に入れば良かったんじゃないかって? いや。探偵に入るために必要な勉強が、レーヴェンには出来なかったのだ。だから、体力と身体能力さえあればなんとか入隊出来る軍に入隊した。
本当は何になりたかったのだろう。廊下で襲って来たのが“黒影”だと分かったとき、本気で心が打ち震えた。ここに来て良かったとそう思った。
自分には、正義とかなんだという信念はない。いつの間にか憧れた泥棒二人は世間から姿を消して、目標を失ったレーヴェンはそれでも、どこかで彼らに遭遇する日が来るんじゃないかと、ぼんやりとした気持ちで訓練を続けていた。
そして叶った。叶って、彼に協力することに決めた。それが軍への裏切りだなど、軍を裏切ればどうなるかなど────どうでも良かった。と言うより、それでどうなるかなど考えてすらいなかったのだ。
「……悪者になるって、勇気がいるんだな…………」
そう呟いて、近付いて来た足音にレーヴェンは振り向く。管制室の入り口に、端正な顔立ちの眼帯の男が立っている。アッシュブロンドの髪の間から覗いている静かな目がこちらを見ていた。腕についている腕章はどの階級章とも違う。軍服を着た彼を、レーヴェンは見据える。
「……ベルクマン看守長」
軍基地のさらに地下に位置する監獄。その管理者。クリストハルト・ベルクマン。監獄からは滅多に出て来ない人物。写真で顔と名前くらいは知っていたが、当人を見るのは初めてだ。囚人全てを記憶していると言われるその目が、こちらを捉えていた。
「ハーマン伍長。……これはあなたが?」
疑問系。しかしただ疑いを掛けられているのではなく、確定事項として確認されているだけだと、レーヴェンは悟った。
「はい。……看守長が何故こんなところまで?」
「管制室に襲撃者ありとの報せを受けて。私の管轄が近いので、出向いて来たまでです」
看守長の背には大剣が携えられている。逃げ出した囚人を監獄内で始末する為の断罪の剣。レーヴェンが剣を抜けば、彼もそれを抜くだろう。それはきっと────。
レーヴェンは唇を噛み締めた。覚悟を決めた。逃げ道はない。生き延びる道は一つだけ。看守長を倒して、唯一の出口を突破すること。
その目を見て、看守長は隻眼を細めた。
「あくまで抗いますか。投降して下されば、手間もなく収監出来るのですが」
「牢獄暮らしはゴメンですから」
レーヴェンは剣を抜く。そして、予期した通り看守長の大剣は抜かれた。退路は断たれた。もう、後戻りは出来ない。
#58 END
To be continued…
「二人……? 何言って……」
「クリカラ、それフォレンのことか? あれはこいつの兄貴だよ。顔は似てるけど」
エランがそう言うと、クリカラは首を横に振る。
「儂には人の子の顔の違いなど分からん。お前も闇の子も同じに見えるわ」
「まじかよ」
「儂が区別するのは魂の色、気配。それは同じ卵から成した兄弟でもなければ同じ色はしていない」
「……僕たちは双子じゃありません、兄さんは二つ上の兄で……」
ロレンはそう言いながらも、クリカラのさっきの言葉が気になる。
「…………僕が純粋な人間じゃないって?」
「儂が気になるのはそれだ。どうも他の人の子の魂と様子が違う。それはもう一人の方もそうだった。だが…………そうだな。よくよく見ればまったく同じというわけでもなさそうだ。ふむ」
「なんだ、人騒がせな……」
ライナーがそう言ってため息を吐く。しかし彼の言うことは気になる。
「様態はよく似ているが、濃さが違う。おまえの方が少し人寄りだ。だがもう一人の方は、そうさな。焼き尽くしたくなる」
「!」
聖竜クリカラ。彼がその炎で焼きたくなるもの。それは一つしかない。
「酷く邪な魂だ。あれはまるで、魔だ」
* * *
────19時20分 セシリア軍基地10階 指令室────
強烈な思い出ほど、よく残る。表面上は忘れていても、頭のどこかでは必ず覚えている。それが何かのきっかけによって、呼び起こされることもある。
なぜ今まで忘れていたのか不思議なほどに、その記憶は鮮明だった。薬品の匂いや血の匂いすら覚えている。暗く、苦痛と恐怖に怯えた幼い頃の記憶。十年以上前のことだというのに────それは残酷なほどまでに鮮やかに、色濃く残っていた。
────自分に家族はいなかった。
孤児院に行く以前から。父母の姿はその記憶にはなかった。全てを思い出した。自分がどう育ち、どうして孤児院に辿り着いたのかも、どうしてこの記憶を封じていたのかも、そして、ロレンが何なのかも。
目を開ける。視界が安定していた。目の前にたじろいだ様子のイーサイルが見えた。辺りを闇が漂っている。いや、それはある形を成して、フォレンを覆っていた。
「……お前、何だその力は」
「────悪魔の力だ」
黒い翼。それはゼイアのようなものではなく、実体のない黒い靄の塊だった。
立ち上がる。すうと息を吸い込んだ。靄だった翼が鳥の翼のように実体を持つ。額から一本の角が生える。髪が底なしの黒色に染まった。残る左目が赤色に染まる。クザファンの力を憑依させ、フォレンは笑う。それは今までの笑みとは違う────悪魔の笑みだった。
「これが俺の力だ。さっさと見せてやれなくて悪かったよ」
「……薄気味の悪い」
パチ、とイーサイルの手で電気が弾ける。様子の変化にたじろいだだけか。そこに恐れは見えない。
フォレンは軽く床を蹴った。打ち出されたように宙を滑る。体が軽い。見えなかった目がよく見える。右目は潰れたままだが、その痛みすらももう強くは感じない。
左手で殴る。イーサイルは光の粒子となって消える。フォレンは勢いに任せて空中へ回し蹴りを繰り出した。何もなかったそこに手応えがある。
「なっ……」
イーサイルの脇腹に思い切りフォレンの踵が入っている。イーサイルの顔には驚きが満ちている。
「お返しだよ」
強制的なエレメント化の解除。闇の力に覚醒した今のフォレンには容易いことだった。
イーサイルの体が数メートル吹き飛ぶ。翼を使ってフォレンは体勢を立て直す。早くもイーサイルは口元を拭いながら立ち上がっている。
「タフだな」
「お前如きに簡単にやられるほどヤワじゃない……」
立ち上がったイーサイルは剣を向けて来る。そこから放たれたのは稲妻ではなく光の刃だった。それをフォレンは翼で防いだ。
『精霊との同調が切れた……訳じゃなさそうだな。俺たちの様子を見て光の方が良いと判断したみたいだ』
「……俺の力の方が強い。そうだろ、クザ」
フォレンは自らの手を見ながらそう言う。胸の中でクザファンが笑う気配がする。
『当たり前だ』
とは言え……肋のひとつやふたつ折れているだろうに眉一つ動かさず立っている姿には、フォレンも内心冷や汗をかく。今の防いだ感じで、自分の方が力が濃いことは分かった。だが、それでもこの男を倒せるビジョンがあまり見えない。何度でも、手足をもがれようが立ち上がってくるような、そんな────……。
「……良いね、潰しがいがある」
フォレンの顔に凶悪な笑みが浮かぶ。
と、その時だった。突如としてモニターの画面が切り替わる。チカチカとするそれに、二人とも気を取られる。
「何だ、どうなってる……」
イーサイルは怪訝な顔をする。
映っているのは外カメラ、各訓練室、そしてエレベーターと階段カメラだった。それを見た二人はそれぞれ別の反応を示す。
「……あいつ……何故生きてる」
「────レイミア!」
さっきの知らない兵士の前で、彼女が倒れているのをフォレンは見る。彼女が負けるなんて。フォレンの中に湧き上がったのは焦燥だった。
と、さらにガチャンと大きな音がした。二人はその音の方を見る。入り口を封鎖していたシャッターが上がり始めている。
「……!」
「……管制室で何かあったのか」
イーサイルがそう呟く。フォレンは開いて行くシャッターを見て、気がつくとイーサイルに背を向けて走り出していた。
「! ……待て、逃げるつもりか!」
イーサイルが剣を向けようとした時、フォレンの姿が黒い塵と共に元に戻って…………すぐ目の前に大きな黒い鳥の脚が現れる。それは剣の上に止まって、黒い前髪の間から覗いた赤い瞳がにやりと笑う。
「残念だ。あいつはもうお前には興味ないってさ。また会おうな雷の」
「……!」
悪魔。そう思った直後にその姿は黒い羽根を残して消えた。フォレンの姿ももうなかった。イーサイルは剣を下ろし、ため息を吐くとモニターを見る。
「……確かに心臓を焼いたはずだが」
睨め付ける先のエレベーターの映像には、もう誰もいない。そして階段の映像の方を見る。長らく見ていなかった見知った顔が、探偵たちの制服の中にあった。
「…………あいつはどういうつもりだ」
やれやれとイーサイルは苦い顔をする。そして彼は壇の端でうずくまっている影に向かって声を掛ける。
「……逃げなかったのか。足は自由だったというのに」
「……どこへ逃げろって言うんだよ。巻き込まれないように身を縮めるので精一杯だったんだけど」
のそりと影が立ち上がる。壇の真ん中まで歩いて来たアーガイルは剣呑な目を父へ向ける。そして入り口の方を見ると呟く。
「────フォレンさん、あんな力を隠してたなんて…………僕にはあんなこと言ってたのに」
「お前が奴と顔見知りだったとはな。引き篭もりが随分と社交的になったものだ」
「何それ、皮肉? 大体はエレンのせいだ。…………あんたは相変わらずだよ。ほんとに」
イーサイルは胸ポケットからタバコを出すと咥えて火をつける。そして壇に座った。背を向けられてアーガイルは目を細める。
「…………僕を無視して一服ってわけ」
「……────お前、いくつになった」
「は? 息子の歳も覚えてないの? ……26だけど、それが何」
「そうか。覚えておく。…………座れ。封神石を付けられてちゃ疲れるだろう」
父は顔を見ないままそんなことを言う。アーガイルは怪訝に思いながらも、距離をとって横に座る。
「……何なの。今まで興味なかったくせに。休憩がてら暇潰しに僕と世間話でもしようって?」
「そうだな。お前のことをほとんど知らない」
タバコの煙を吐き出しながら、イーサイルは淡々としてそう応えた。アーガイルは顔を顰める。
「……臭いんだけど。やめてくれない」
「うるせェガキ」
反射のようにそう言ってから、イーサイルは少しだけバツが悪そうに眉を顰める。そして僅かに体をアーガイルの方へ向けると、再び口を開いた。
「────今からでも遅くない。お前、軍に入る気はないか」
「え? ないけど」
「即答か。エウィンの血が泣くぜ」
「軍は嫌いだ。あんたのことも」
「はっきり言うものだな」
イーサイルは少し傷付いたような顔をする。それがアーガイルには意外で、思わずまごつく。
「……何で? 父さんは僕を軍に入れたいの。家系だから?」
「それもあるが……お前はソフィア譲りの聡明な奴だ。優秀な力を持ってる。戦力にはならずとも……十分活躍出来る。コソ泥なんかじゃなくな」
「は。父さんも僕のこと戦えないって言うんだ」
アーガイルは自虐的な嘲笑を浮かべて顔を逸らす。イーサイルは首を傾げる。
「お前は強くなりたいのか」
「なりたいよ。そりゃなりたい。エレンが真っ先に守ろうとしないくらいにはさ。……まぁ、全然守られなかったけど」
「手本が悪い。軍に来れば俺が一から鍛えてやる。いずれは元帥になれるくらいにはな」
「ふうん。…………ねえ。何でエレンのことは捕まえなかったの」
「あ?」
すぐに明確な答えが帰って来るものだと思っていたが、案外父はその返答に悩んでいるようだった。タバコを持った手で額を抑えて考えている。
「……父さん?」
「────捕まえるつもりだった。最初はな。だが顔を見て気が変わった。……言ってしまえば一時の衝動だ」
「……は?」
意味が分からない。続きを待つ前にアーガイルは詰め寄る。
「衝動だけでエレンのこと殺したってわけ?!」
「死んでないだろあいつ。何故だか知らんが……ったく、奴の血筋はロクなことがねェ」
「え?」
がりがりと頭を掻いている父の言動に、アーガイルは引っ掛かる。
「……奴の血筋?」
「お前は知らんか。まぁ村にもなかなか帰らん奴だったからな。……俺も人のことは言えないが」
そう言うイーサイルの顔はさっきまでの軍人の顔ではなかった。だからか、アーガイルもその話を熱心に聞いてしまう。
「誰?」
「お前の相棒の父親だ」
エレンの父親の話。それはきっと、エレン自身も知らない。それを父は知っているのか。いや、そもそも自分達の家は同じ村の近所だったのだから、当たり前と言えば当たり前だが。しかし父の顔はそういう近所の顔見知りを思い浮かべているようなものではなかった。
「ジェラルド・レオノール。……旧姓ジェラルド・フェリン。俺はこの名の方が馴染みがある。奴はこの国で暗躍する殺し屋だ。俺は何年も追ってる」
「!」
殺し屋。それがエレンの父親。不殺を信条とするエレンとは正反対の存在だ。
「だが未だ捕まっちゃいない。それどころか、何故だか懸賞金を懸けてもいつの間にか指名手配が解除されてる始末だ。おまけに殺しても死なないような化け物ときた」
「それは父さんもだけど……」
「俺は死ぬ。ちゃんとな。だが奴は人間じゃない。そう思わせるような……怪物だ」
アーガイルはさっきまでの父の戦いの様子を見ていた。父も随分と怪物だと思う。そんな彼に、そこまで言わしめる存在とは。気になる。
「それの息子だ、お前の相棒は。今はまだ、目醒めていなくとも、やがては奴の様に牙を見せる。長男が良い例だ。……もっとも、既に死んだようだが」
そのグレンも実は死んでいない……というか生き返っているのだが、というのは流石にアーガイルは言わなかった。
「だからお前、あいつとつるむのはやめておけ。いずれ痛い目を見る」
そう言うイーサイルの目は、どこか遠くを見ていた。そして、どこか寂しそうな────。
「父さん────」
アーガイルが何か言う前に、イーサイルはスッと立ち上がった。ぽとりと落とされたタバコが軍靴で踏み消される。
「さて。お出ましのようだ」
「!」
イーサイルの視線の先を、アーガイルは見る。指令室の入り口。開け放たれたそこに、馴染みのある姿があった。
「─────助けに来たぞ! アル!」
「……エレン!」
アルが呼び返すと、エレンはにこ、と笑う。棒を伸ばした彼は、いつもの癖でカンと床を打つ。
「昨日はやられたが、今日はそうはいかねェからな」
「胸に風穴開けてやったはずだが」
「あんなのへでもねェよ。帰る頃にはほとんど治ってたってェの」
「……なるほど、どうやらお前も既に化け物らしい」
エレンが床をダンッと蹴る。それと同時に、イーサイルの体から電流が迸った。
────19時40分 エレン・イーサイル戦闘開始────
* * *
────19時30分 セシリア軍基地B1 管制室────
レーヴェンはようやく見つけた指令室の封鎖スイッチを押して、安堵の息を吐いた。……それまでにいくつか余計なスイッチを押したようだが。どうも指令室のモニターの切り替えスイッチだったらしいことを、落ち着いた今知る。
「……あれ。あの人たちも捕まってるのか。ええと……4階の階段の封鎖スイッチはっと……あったあった、これだ」
ぽち、と二つボタンを押すとモニター越しに彼らを捉えている檻が上がっているのが見える。シャッターも上がっているはずだ。
「はあ。管制室に友達がいなくて良かったぜ。……ま、エレンの為なら何でも出来るか……俺は」
そう呟きながら、レーヴェンは部屋の中を見渡す。五人の兵士があちらこちらで倒れている。彼自身の仕業だ。
「悪いな手ぇ出して」
そう謝るが、彼が罪を犯したことは明白だった。軍が正しいとは思わない。でも、これはさすがにいけない。兵士に直接手を下した以上は、自分も立派な反逆者だ。
この後どうしよう、とそう思う。エレンの後を追う? 追ってどうする。副元帥に殺されるのが関の山だ。自分には何も出来ない。何食わぬ顔で兵役に戻ることも……無理だろう。この兵たちは殺していないし、これから殺すことも出来ない。そこまでの覚悟はレーヴェンにはなかった。
「……はは、中途半端…………」
世間を騒がせた大泥棒に憧れた。それは堂々とアウトローに生き、堂々と逃げ延びる彼らの姿に心打たれたからだ。
彼らに会いたかった。しがない青年だったレーヴェンは軍に入った。本当は探偵に入れば良かったんじゃないかって? いや。探偵に入るために必要な勉強が、レーヴェンには出来なかったのだ。だから、体力と身体能力さえあればなんとか入隊出来る軍に入隊した。
本当は何になりたかったのだろう。廊下で襲って来たのが“黒影”だと分かったとき、本気で心が打ち震えた。ここに来て良かったとそう思った。
自分には、正義とかなんだという信念はない。いつの間にか憧れた泥棒二人は世間から姿を消して、目標を失ったレーヴェンはそれでも、どこかで彼らに遭遇する日が来るんじゃないかと、ぼんやりとした気持ちで訓練を続けていた。
そして叶った。叶って、彼に協力することに決めた。それが軍への裏切りだなど、軍を裏切ればどうなるかなど────どうでも良かった。と言うより、それでどうなるかなど考えてすらいなかったのだ。
「……悪者になるって、勇気がいるんだな…………」
そう呟いて、近付いて来た足音にレーヴェンは振り向く。管制室の入り口に、端正な顔立ちの眼帯の男が立っている。アッシュブロンドの髪の間から覗いている静かな目がこちらを見ていた。腕についている腕章はどの階級章とも違う。軍服を着た彼を、レーヴェンは見据える。
「……ベルクマン看守長」
軍基地のさらに地下に位置する監獄。その管理者。クリストハルト・ベルクマン。監獄からは滅多に出て来ない人物。写真で顔と名前くらいは知っていたが、当人を見るのは初めてだ。囚人全てを記憶していると言われるその目が、こちらを捉えていた。
「ハーマン伍長。……これはあなたが?」
疑問系。しかしただ疑いを掛けられているのではなく、確定事項として確認されているだけだと、レーヴェンは悟った。
「はい。……看守長が何故こんなところまで?」
「管制室に襲撃者ありとの報せを受けて。私の管轄が近いので、出向いて来たまでです」
看守長の背には大剣が携えられている。逃げ出した囚人を監獄内で始末する為の断罪の剣。レーヴェンが剣を抜けば、彼もそれを抜くだろう。それはきっと────。
レーヴェンは唇を噛み締めた。覚悟を決めた。逃げ道はない。生き延びる道は一つだけ。看守長を倒して、唯一の出口を突破すること。
その目を見て、看守長は隻眼を細めた。
「あくまで抗いますか。投降して下されば、手間もなく収監出来るのですが」
「牢獄暮らしはゴメンですから」
レーヴェンは剣を抜く。そして、予期した通り看守長の大剣は抜かれた。退路は断たれた。もう、後戻りは出来ない。
#58 END
To be continued…
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