SHADOW

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第三章 精霊の御霊

#42 湖鮫竜

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 腹拵えを済ませた一行は、早速ライナーの居城を目指すことにする。ローフィリアの紹介を皆に済ませると、皆あっさりと受け入れてくれた。リリスと、何よりフェールの後押しもあってのことだろう。エレボスも、「天狼様が言うなら」と納得してくれた。
「おいお前」
 ゼイアは小さな檻を持ち上げ、揺らす。ネズミは慌てて檻に捕まると、応える。
〈何よ〉
「城までの道のり、知ってるんだろ。案内しろ」
〈……良いわよ。ライナー様もそれを望んでる。でも安全は保証しないから、せいぜい着くまでに喰われないことね〉
 フン、とネズミはそう言ってチイチイと鳴く。笑っている様だ。

* * *

 ローフィリアがラフェリアルの檻を手に、先頭を進む。自らの申し出によるものだ。そのすぐ後ろからゼイア、そしてアレスとグレン、エレン、エレボス、カリサ、エエカトルにイアリとグリフが続き、殿しんがりをフェールが務めている。
〈……あなた、本気でこの精霊たちの味方をするの?〉
 ラフェリアルは檻を持っているローフィリアに話しかけた。ローフィリアは視線を手元に落とすと、答える。
「うん」
〈どうして。同族を裏切るの?〉
「うーん……僕は群れの中で生きて来なかったから、あまり同族意識ってものがなくて…………」
〈えぇ?〉
「お父さんは、好きに生きろって言ってたし、お母さんは護りたいものを見つけたら心に従いなさいって言ってた。だからそうしただけ」
〈……白竜族ホワイティールの混ざりものか。どうも相容れないわけね〉
 彼の父である闇竜族ダークラオンも、変な奴だったのかもしれない、とラフェリアルは思った。そしてこの仔竜の姿を思い出す。
〈……奈落竜アビスドラゴン? あぁ……もしかしてヤンデリックの子?〉
「お父さんを知ってるの?」
〈えぇ。一頭で谷で生きるおかしな闇竜族ダークラオンだったわ。そう。白竜族ホワイティールつがいになってたのね〉
 シェレブの森のコミュニティは、狭い。おまけに同族意識の強い闇竜族ダークラオンたちは、ほとんどが互いに面識がある。それに交わる他の竜族も。
〈しばらく見ないけど、竜伐で死んだのかしら〉
「…………うん。お父さんも、お母さんもね」
〈ふぅん〉
 あれはシェレブの土地を守る戦いであったと共に、竜の威信を賭けた戦いでもあった。引きこもりのヤンデリックも、その番いになった母竜も、戦いに出たのだろう。あの戦いで、多くの竜族が死んだ。ラフェリアルは多くの精霊を引き裂き、焼き尽くし、喰らった。そこに感傷はない。暴虐の愉快さと、戦いに敗れた悔しさしかない。
〈……白竜族ホワイティールって、利他主義よね。利己的な闇竜族ダークラオンとは正反対〉
「でも、お父さんとお母さんは仲が良かったよ」
〈そう。私は白竜族ホワイティールって嫌いだけど。他人の為の自己犠牲なんて、馬鹿みたい〉
「でも、ラフェリアルはライナーに仕えてるんでしょ?」
 言われて、ラフェリアルは一瞬動きを止めると、檻を持っているローフィリアの指を噛んだ。
「あいた!」
 檻が落ちて転がる。おい、とゼイアがローフィリアの手を心配する。
〈私は! 自分のためにライナー様に仕えてるのよ!〉
「……攻撃したな。罰を与えるぞ」
 ゼイアがネズミを指差す。ネズミは檻の中を駆け回る。
〈やれるものならやってみなさい! その仔竜が私を侮辱したの!〉
「“Koryan Clad Shalonelphy Balo”」
〈ギャッ〉
 光の輪がネズミの胴を縛り付ける。苦しそうにもがくネズミを、ゼイアは見下ろす。
「体の小ささに免じて一番小さいのにしてやったぞ。……ったく、大人しく道案内だけしてろ」
 やれやれとゼイアは檻を拾い上げる。ローフィリアが指を抑えているので治癒魔法を掛けてやる。
「……ありがとう、悪魔のお兄さん」
「悪魔じゃねェ。堕天使だ。……それからゼイアな。自己紹介したろ。さてと……」
 そこは森の中の湖の側だった。竜族たちの大切な水源なのだろう。透き通った水が美しい空の青を反射していた。
「随分でかい湖だな」
「シェレブ湖ですね。森で唯一の湖です。戦時はここも……凄惨なものでしたが」
 リリスがそう言う。フェールやエレボスもその時の事を思い出しているようだった。
〈……あなた良いのかしら……こんな所でを使って……〉
「あん?」
 ラフェリアルの言葉に、ゼイアは怪訝な顔をする。次の瞬間、湖から水柱が上がった。
「!」
 滝のような飛沫の中から、水流が飛んで来る。皆に直撃するその寸前で、いち早く反応していたフェールがバリアを張る。高圧のそれが、辺りの木々を切断した。
 杖を構えたまま、フェールは見上げながら呟く。
「……これは少々油断したなゼイア」
「うるせェ。……いや、そうだな。すまん」
 飛沫が晴れると、その正体が明らかになる。湖面から鎌首をもたげているのは、細長い体を持った巨大な黒い水竜だった。
「…………淡水棲の蛇鮫竜レヴィアタン……湖鮫竜ラークスレヴィアタンか」
 グリフがそう言った。イアリはそれに反応する。
「え。海にしかいないんじゃないのか」
「現に目の前にいるだろう」
 蛇鮫竜レヴィアタン。それは通常海洋に棲む蛇型の竜だ。人界でもまだ見られる数少ない竜だ。水竜族サーペントながら非常に凶暴な性格で、時折海上で船が襲われる。────確かに、形態は良く似ているがよく見てみると海洋のものよりやや小柄で髭やエラの感じが違う。なんと言うか、っぽい。
〈アラド様!〉
 ラフェリアルがそう叫ぶ。水竜はナマズのような長い髭を揺らしながら、鋭く赤い目をネズミへと向ける。
紅血竜ブラッディの小娘か。何故そのような姿をしておる〉
 老齢の竜なのだろう。年老いた声がする。ラフェリアルは檻に捕まるとアラドと呼んだ水竜に向かって叫ぶ。
〈私こいつらに捕まってるの! 助けて!〉
〈ふむ、良かろう〉
「あっ、おい」
 ゼイアが檻を持ち上げて睨むがもう遅い。アラドがその身をくねらせながら背後に巨大な水弾を生成している。池が一つ落ちて来るような大きさだった。
〈砕け散るが良い!〉
「まずっ」
「任せて!」
 ローフィリアがそう言って竜化する。黒い翼が一瞬にして白に変わると、一声雄々しく鳴く。ローフィリアの目の前に光の盾が現れ、それが落ちて来た水弾を防ぎ切った。ばしゃ、と砕けた水弾が激しく飛び散る。
「……力を使いこなしてる……」
 エレンは驚く。すごい成長だ。
〈おのれ! 闇白竜ホワイトラオンか!〉
〈手は出させないよ。……皆んな、今のうちに逃げて!〉
 ローフィリアは振り向いて言う。が、そこへカリサとグレンが前へ出て来る。
「いや。コイツはここで倒して行く。その方が逃げるより簡単だ」
「お前をここで置いて行く訳にもいかないしな」
 グレンはそう言うとローフィリアの前足をぽんぽんと叩いてさらに前へ出た。そして隣で腕を伸ばしているカリサに言う。
「……行くぞ」
「俺に指図するな。上下関係はナシだって……」
「そういうつもりで言ったんじゃねェし!」
 くわっ、と怒鳴っているグレンの向こうで、アラドは再び体をくねらせる。
〈小さき精霊共が、我を倒すだと! 片腹痛いわ!〉
 開いた顎門あぎとの奥で、水が集まる。そしてたちまち初めのような水流が発射された。
「!」
 二人がいた場所を水が穿つ。だが、そこには既に誰もいなかった。
〈何ッ!〉
「遅いな」
〈!〉
 アラドの顔のすぐ横で、カリサがグレンを片手にぶら下げて浮いている。片手に捕まっているグレンは下を見ながら焦る。
「うわっ、飛んでる」
「暴れるな。……ったく、“エア”」
 カリサが手を離す。グレンはそれでも浮いている自分の体に驚く。
「おっ、すげェ」

「…………一瞬でバランス取るなよ。その調子なら動けるな。そら行くぞ。“ブースト”」
 ぽん、とカリサはグレンの肩に触れる。そこへアラドが首をぶん回してカリサとグレンを薙ぎ払おうとする。それを二人は空中でくるりと回りながら回避する。空高く移動したグレンとカリサは、それぞれ左拳と右拳を握った。
「「そぉぉぉら!」」
 風の力で加速した二人が、戻って来たアラドの脳天を殴りつける。水竜の上体が水面へ叩きつけられ、水飛沫が上がる。
「うわっ!」
 エレンたちの元へそれが降り掛かってくるが、ローフィリアが翼を広げて守ってくれる。
「ありがとう、ロー」
〈……あの人たち、強い?〉
「え? あぁ。そりゃ、めちゃくちゃ……」
 ザバ、と再びアラドが水中から現れる。怒った様子で口を開くと、水流を吐き出しながらぐるぐると回る。しかし空中を飛び回るグレンたちには当たらない。
〈ぬぅぅぅ小賢しい!〉
「喰らえ!」
〈ぐあっ〉
 グレンの蹴りがアラドの首を吹っ飛ばす。
「カリサ!」
「!」
 大きく体が逸れたその隙に、グレンが何かをカリサに投げ渡す。カリサが受け取ったそれはアメジストだった。それだけで意図は分かる。
「……仕方ないな」
 フッとカリサの浮遊が解ける。くるくると縦に回転しながら落ちて来たカリサは地面に着地すると手を着き、自身の影を前方へ伸ばした。網目状になったそれがアラドの体を縛り付けた。
〈ぬおっ?!〉
「そら、お前用の特別製だ!」
 一度アラドの頭に着地し、そこを蹴って再び空中へ飛び出したグレンは自身の左腕の袖の影から腕の先へ伸ばすように長い刃を生成する。
「“影の断頭台シャドウギロチン”!」
 ザン、と影の刃が動けない水竜の首を断ち斬った。噴き出した血がグレンとカリサに降り掛かる。バシャンと胴体が先に水中へ倒れ、遅れて飛んだ頭が墜落して行った。
 立ち上がったカリサは顔を顰めながらグレンの方へ手を翳してその体を浮かせる。それから自力で戻って来たグレンはカリサの隣へ着地する。無言でコン、と拳を打ち合わせたあと、カリサはグレンの頭を引っ叩いた。
「痛!」
「ダセェから技名変えろって言ったよな⁈ …………うわっ、めちゃくちゃ臭ェ!」
「ダサくねェし! じゃあお前が考えればいいのに全然提案しねェじゃん! うわ! マジで臭い!」
 浴びた竜の血の臭いに悶絶する二人。しかし徐々についた血がエレメントに還って消えて行く。
「……え? 協力技……?」
 エレンはグレンの方を指差して言う。グレンは弟の方を見ると腕を組む。
「あぁ。コイツと昔やってたやつ。考えたのはコイツだけど」
「名前は考えてない! ったく、こんな所で久々にやらされるとは思わなかった」
「……にやってたのか? あれを?」
「そらそうだろ。他に何に……いや。あんなでかいのはしないけど」
 いや、そういうことじゃない、とエレンは心の中でツッコむ。……彼らは元々殺し屋だったのだからそれはそうか、と納得はするが何とも恐ろしい技だと思わずドン引きする。
〈嘘……アラド様……〉
 檻の中のラフェリアルは唖然としている。エレンはその様子を見て腕を組む。
「仲間の死は悲しくないんじゃなかったのか」
〈……アラド様はこの森で永く生きる古き竜よ。それを……〉
 このショックの受けようは、悲しみではなく強きものが倒されたことによるものらしい。ラフェリアルは目に見えて元気を失くしている。グレンとカリサが近付いて来ると、その身を縮み上がらせた。
〈ひい!〉
「お前、わざとこの湖の傍を通らせたのか」
 カリサがそう言うと、ネズミはしらーと顔を逸らす。だがその身が震えている。それを見たグレンは言う。
「……そうみたいだな。ゼイア、コイツに道案内はさせない方がいいかも」
「そうだな……となると生かしておく意味もないな。殺すか」
〈ちょ! ちょちょちょっと待って!〉
 堕天使の悪魔のような言葉にラフェリアルは慌てる。左右に忙しなく移動しながら訴えかける。
〈……や! 役に立つわ! 最短ルートを案内する! 出来るだけ安全なね!〉
「急に素直になるな」
〈だ、誰だって死にたくないでしょ!〉
「主君を想うならここで自害でもするところだ。俺ならそうするね。そんな敵に媚びるようなことをするくらいなら……」
〈竜族は! 強い者には従うわ。言ったでしょ、私がライナー様に仕えてるのはだって! 生き延びられるなら何だっていいのよ!〉
 その言葉に確かに矛盾はないが、何とも浅ましい。ゼイアはふむ、と指を顎に当てて目を細める。
「……お前、どこまでならライナーを裏切れる?」
〈え? えー……〉
「じゃあ分かりやすく言う。俺たちの味方につけないのならここで殺す」
〈なっ!〉
「その代わり、味方になるならその姿も元に戻してやる。どうだ?」
「ゼイア、それは……」
 エレンがぎょっとしてゼイアを見ると、ゼイアは黙って顎でグレンとカリサを指す。……確かに、この二人ならあの竜形態でも容易く抑えるかもしれない。
〈それって私に選択肢ないじゃない……〉
「そういうことだな」
 そう言いながらゼイアは指をラフェリアルへと向ける。ネズミの体がびくっとする。完全に彼女は抵抗する気力を失くしている。
〈……分かったわ。あなたたちに協力する〉
「よし。じゃあだ」
〈え〉
 檻が光の粒子となって消える。それと同時にネズミの姿が光に包まれて、みるみるうちに人型に戻った。元の赤髪の女に戻ったラフェリアルは、手首を見て怪訝な顔をする。
「何これ……」
「“裁きの印”だ。今俺と交わした契約を破ればお前は呪いで死ぬ」
「は?!」
 ラフェリアルの手首には獅子の顔のような紋が刻まれていた。
「……あなたって本当悪魔ね……」
「失敬な。堕天使だ」
 そう言うとゼイアは不服そうに目を瞑った。

* * *

 ラフェリアルに導かれて歩くこと数分。新たに竜とエンカウントすることもなく、やがて古城の前に辿り着いた。所々城壁が欠けている。戦いの後、そのままにされた廃城という感じだった。蔦植物がその傷痕を覆い隠している。堀にかけられた跳ね橋は降りている。城の主は敵を迎え入れるつもりであることの表れだ。谷には橋は掛かっていなかったが、ここには翼のない者でも渡れるようになっている。もしかすると昔はあの谷にも橋が架かっていたのかもしれない。竜の国として機能していた時代には、ここら一体は精霊のように文化的な暮らしを送っていたのだろう。ここへ来るまでに、いくつか民家の痕のようなものを見かけた。
「さぁ、着いたわよ」
 つかつかと、跳ね橋の上をラフェリアルは躊躇ためらいなく進んで行く。そして重そうな城の扉を開けた。ギィィ、と音を立ててゆっくりと両開きの扉は開いた。
「……わぁ」
 エレンは思わず声を上げる。中は普遍的な城だった。正面に階段があり、赤い絨毯が敷かれている。天井には所々壊れてはいながらも立派なシャンデリアがあるし、壁には火の灯った燭台がたくさんかけられている。
「……ここにロレンが……ライナーはどこに?」
 エレンが言うと、ラフェリアルは腕を組んで応える。
「四階の玉座の間に。……この城は複雑な造りになっているから、迷うわよ」
「そうか……兄貴は絶対はぐれるなよ」
「うるせェな!」
 それを見たカリサが笑う。
「方向音痴は相変わらずか」
「昔よりはマシだッ……」
「いや、そんなことないが」
「エレン!」
 からからとカリサは笑っている。何だかんだで二人は元々仲が良いのだろうなとエレンはそんなことを思う。
 と、その時階段の上から足音がした。
「これはこれは。一人勝手に出て行って帰って来たと思ったら、敵に捕まっちゃった系? ラフェさん」
「!」
 男の声。その主は階段の手すりに身を預けて笑っていた。金髪で髪の一部だけが黒い。赤い目が細められ、鋭い歯を見せて彼はにやりと笑みを深めた。
「クッハハ、しかもそっちに付いちゃった感じ?」
「リオンハート……」
 ラフェリアルが険しい顔をして呟いた。それが彼の名前らしい。
「まぁ、仕方ないかァ。これはラフェさん含めて皆殺しだ」
 そうため息混じりに言って手をひらりと振ると、リオンハートは階段を下りて来る。
「……やめておいた方がいいわよリオン。こいつらはあのアラド様を殺したのよ」
「へえ。あのジジイを。それはどうも……血が滾るじゃないか。お前はそれで屈服したわけ。そうだよな、お前は何より命が惜しいタイプだもんな」
「!」
 ラフェリアルはギクリとする。リオンハートは笑いながら続ける。
「俺はお前と違ってライナー様に忠誠を誓ってるからさ! 裏切るとか、あり得ないんだわ。だから死にな? ライナー様のために」
 と、そこへ一歩踏み出したのはカリサだった。
「……お、なんだガキ。やるの?」
「俺が相手だ。他は通してもらう」
「ほぉ? 一人でやれんのかね」
「無論、俺も一緒だ」
 と、エエカトルがカリサに続く。それでもリオンハートはニヤリと笑う。
「はん。ナメられたモンだぜ。たかが平和ボケした精霊二匹、俺の前には小鹿にも等しい」
「言ったな?」
 カリサがそう言った途端、空気が変わる。ピリついたこの感じは、エレンには覚えがある。エレメス城で戦った時のカリサと同じだ。それを何となく、リオンハートも感じたようだった。
「おう? 何だ、お前なかなかヤバい奴か?」
「見る目あるな。早く暴れたくて仕方ねェんだ、相手になれよ」
 ビキ、とリオンハートの額に青筋が浮かぶ。
「爬虫類、だと? ナメやがって!」
 リオンハートが跳んだ。振り上げた右拳を、思い切りカリサへとぶつける。右腕で受けたカリサは空いている左拳をリオンハートに叩きこむ。
「ぐはッ!」
 その隙に、カリサは残りの面々に向かって叫ぶ。
「先に行け! 俺らはコイツを止めておく!」
「か……アスラ! 俺も……」
「馬鹿てめェもだよ! ここは俺とエエカトルで十分だ!」
 グレンはぐ、と言葉を飲み込むと、仲間たちを促した。
「……行くぞ!」
 皆が階段を駆け上がって行く。リオンハートは口元を拭きながら立ち上がる。
「あーあ……二匹だけか……腹の足しにはなるかなぁ」
 ぎらりとした牙の間から、涎が落ちる。肉食獣そのものの顔をしたリオンハートに、カリサは笑う。
「俺も少し喰い足りない。なぁ、教えてくれ。竜の肉って美味いのか?」
「やめておけ。竜は食用には適さん。血を浴びただろう」
「あぁ……臭かったな、すごく」
 エエカトルの言葉にカリサは冷静にさっきのことを思い出す。
「じゃあいーや。代わりに俺の成長の糧になってくれや」
 カリサはそう言って構える。それは、かつて人界で暗躍した殺人鬼の姿と相違なかった。


#42 END


To be continued...
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