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第二章 unDead
#28 魔神卿サミジナ
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無事に全員揃い、エルフィに案内されてエレンたちは神殿にやってきた。
大理石で出来た古びた神殿。並んだ柱の奥、中から現れたのは、金髪に眼帯をした細身の男だった。手には槍のような杖を持っている。その装いから、彼が神官だということが見て取れる。
「母上。そちらは」
男はエルフィにそう訊ねた。エルフィは頷くと答えた。
「儀式の参加者だ。あとのことはお前に頼むよ、フィン」
「……承知いたしました。では、皆さまこちらへ」
フィンと呼ばれた男は、エレン達を促した。エルフィが頷くのでエレンを先頭に、アーガイルとケレンは進む。
階段を登ったところで、エレンは振り向く。下でイアリがエルフィの隣でぐっと親指を立てている。彼は待機だ。儀式に参加しないが、どうしてもと言ってついて来させてもらったが、それもここまでだ。
「これより皆さまを、魔神サミジナ様の下へご案内します。覚悟は良いですね」
「はい」
エレンは頷いた。その目を見て、神官はエレンが捧げる人間であることを察したようだった。
「よろしい。ではついて来て下さい」
さっと神官は踵を返すと、真っ暗な神殿の中へと入って行く。エレン達もその後に続いた。
狭い通路だ。石で出来た壁にはかがり火が灯されている。壁画のようなものが薄っすらと見えるが、風化して何が描かれているのかははっきりと読み取れなかった。
「申し遅れました。私は神官のフィンディア・エディカと申します」
「……村長さんの……息子さん?」
「ええ」
「じゃあ、リトの父親……?」
「あの子にも会いましたか。いえ。あの子は私の甥に当たります。私の妹の子です」
そう聞いて、エレンはなんとなくしっくり来た。父親というにはあまり似ていない。
「随分な悪童でしょう」
「ええ……まぁ」
フィンディアもリトの街での所業は知っているらしい。彼は仄かに困ったように笑うと、続けた。
「でも、根は心優しい子なのです。姉のために、あの年で自らの脚まで捧げて……」
カツ、カツ、と足音が空間に響いている。ハァ、とフィンディアのため息がそこにこだました。
「この神殿は……数百年前からサミジナ様のものです。我々の一族は、代々かの魔神と契約してきました。そして、生命の理を外れる儀式を……してきたのです」
エレンは黙って聞いている。他の三人も、一言も発さなかった。
「魔神との契約は、一度結べば簡単には破棄できない。初代の契約者が、末代までの契約を結んでしまったが為に……我々はこうして縛られている。でも、きっとここまででしょう。私に子はいませんし、リトやセリア……その姉ももう神官にはなれない」
「どうして?」
「儀式に参加したからです。だから、私が死ねばその時は、契約は終わりです。二度とこの儀式が行われることもないでしょう。その為にも、儀式のことを口外するわけにはいかないのです」
イアリも来てから、口封じの魔術を掛けられた。その真意を今知る。
「結果的に業はここで終わらせられますが、リトにあのようなことをさせてしまったのが心苦しい」
「……儀式は拒めないんですか?」
自分たちが今しようとしているのに、変な質問だと思いながらエレンは訊ねる。
「サミジナ様との契約で。神殿を訪れたものを拒んではならぬという決まりです。儀式はサミジナ様の益になりますから……」
それで、ジリョンがあのような役目を負っているわけだ、とエレンは考え着いた。アーガイルも同じなようで、渋い顔をしている。
やがて、広い空間に出た。そこには魔法陣が二つ、等間隔に描かれていた。
「こちらに、祈りを捧げる者たちは待機してください」
「ここで? 僕たちは何をすれば……」
アーガイルがそう言うと、フィンディアは杖で魔法陣を指した。
「そこに、立って。私が儀式を始めれば、その魔法陣が光ります。そうしたら、祈りを。それだけです」
「……分かりました」
アーガイルはエレンの方を見る。不安そうだった。それは、エレンの身を案じているからだとエレンには分かる。
「大丈夫だ。心配するなよ。ケレンも」
弟にもそう言って笑いかける。ケレンは口をひきむすんで、頷いた。
「ごめんね、兄さん」
「何で謝るんだ。……行きましょう、フィンディアさん」
「ええ」
二人はさらに奥へと進む。灯りの一切ない細い通路を抜けて、その空間に立った時、エレンは思わず身が竦むのを感じた。そこにはただならぬ気配が漂っていた。
「……何だ」
目の前には巨大な扉がある。そこに巨大な魔法陣が描かれている。それに強大な力を感じる。
「冥界の気配が濃いのです。生者には少々きつい場所かと。……耐えられますか」
「……問題ない」
扉へと近付く。突き刺すような気配がする。全身を針の筵で刺されるような、そんな感覚だ。これを、あの少年は乗り越えたのか。
(……負けてられない)
自分が何のためにここにいるのかを思い出す。大きく深呼吸した。
後ろで、フィンディアが杖を構える気配がした。
「“神官フィンディア・エディカの名の下に。扉を開く。冥府の賢者、魂の返還者。汝の名はサミジナ”」
ゴゴゴ、と音を立てて扉が向こうへ開く。冷たい風が吹き込んでくる。エレンが目を上げると、そこには巨大な何かがいた。
「⁈」
幽霊としか形容し得ない。だが、人の形をしていない。十字の仮面と角を持った頭が近づく。深淵のような真っ黒な手が近付いて来た。
「何……」
「サミジナ様の化身です。手を取りなさい。彼が導いてくれます」
恐る恐る、エレンはその巨体の手に触れた。指で転がされて手のひらに載せられる。
「うわっ!」
手が握られる。指の間から、フィンディアの姿が見えたがすぐに真っ暗になって意識があるのかどうかもよく分からなくなった。
「これはこれは。扉が開いたと思えば客人か」
「!」
気が付くと、そこは城のテラスのような場所だった。黒い石で作られた柱と床。向こうには星空のような景色が広がっている。空間がうねっている。
声の主は、その手前に座って本を読んでいる男のようだった。鋭い赤茶色の瞳。左目に片眼鏡をかけている学者風の男だった。若く見えるが、聞こえて来た声は老人のようにしわがれていた。
「何か飲むかね。……いや、君は生者だな。冥界のものは口に出来ないか。…ほら、そんなところに突っ立っていないでこちらに来るが良い」
「……」
男は手でエレンを促した。そこでようやくエレンは、自分がテラスの扉の前に立っていることに気が付いた。
「ええと……」
「儀式でやって来たのだろう。それとも、何かの間違いなら帰りはその扉だが?」
彼はエレンの背後の扉を指差した。エレンは首を横に振ると、男の方へと歩み寄って、空いている向かいに座った。
「私は冥界の魂を統べる魔神卿、序列第四位・大侯爵のガミジンという者だ。……いや、そちらでは“サミジナ”で通っているのかな? どちらでも良い。好きなように呼ぶが良い」
そう言って男────サミジナは優雅にテーブルの茶を飲んだ。よく見ると、彼の耳は尖っている。人でないことは見て明らかだった。
「ほら、こちらが名乗ったのだからそちらも名乗るのが礼儀だろう」
「ああ……エレン・レオノールです」
「ほう、敬語を使うか。弁えているな」
大侯爵、というのだから偉い人……いや、魔神なのだろうとエレンはそう思った。人界で言う爵位とどの程度通じているのかは分からないが。
「ここは、冥界……でいいんですか」
「そうだ。我が居城だ。地獄と天国の間に属している。それで、魂を返して欲しくて来たのだろう。一体誰の魂を所望だ」
「! ……あ、兄です。グレン・レオノール」
「兄……はぁ、なるほど。見覚えのある魂の色をしていると思ったが。奴の兄弟か……なるほど」
「え?」
「いや。特徴のある色だったものでな。……いや、待て。………ふむ。なるほど」
サミジナはじぃとエレンの方を食い入るように見ていた。しかし、エレンの体のどこを見ているというよりかは、その中にあるものを見ているようだった。
エレンは何だか居心地が悪い。
「……何ですか」
「いや。以前に見たなと思ってな。まぁよくあることよ」
「?」
どういうことだろう。よく分からないまま、サミジナが右手を宙に掲げるとそこに分厚い本が現れる。
「グレン・レオノールだな。最近やって来た魂だ。帳簿にもある。幸い地獄に落ちているな。引き上げ易くて助かる」
「え……」
そりゃあ兄のして来たことを思えば当然のことかもしれないが、そう言われては複雑な気持ちになる。
「刑期が300年か。早めに来てくれて助かった。浄化がまだ済んでおらんからちゃんと返せるぞ」
「浄化?」
エレンが首を傾げると、ガミジンは答える。
「輪廻転生は知っているか。死した魂は一度冥界にやって来て、そこで幾許かの時を過ごした後、記憶と人格を消去されて再び人界へと生れ落ちる。その消去過程を“浄化”と呼ぶ。善人も罪人も、真っ新な魂となって生まれ変わるというわけだ。肉体寿命がある人界だけの特権だな。……稀に、浄化されきらないまま送り出される魂もおるが……」
パラ、とサミジナは本を捲り、そのページで手を止める。指で一列をなぞると左手を構えた。
「では召喚する」
「!」
パチン、とサミジナが指を鳴らす。すると、ストンとどこからともなく人間が現れて降って来た。
「あいた!」
「兄貴!」
少し髪が伸びて、様相が変わっているがそれは紛れもなくグレンだった。
「……ここは……あれっ」
グレンはエレンに気が付いたようで、すぐに立ち上がる。
「何でお前ここに! 死んだのか⁉」
「違うよ。……迎えに来たんだ」
「え⁉」
訳が分からん、という顔に変わらない兄を感じる。エレンは立ち上がると、にこりと笑う。
「帰ろう」
「帰る……って、どこに」
「人界だ」
サミジナがそう言う。彼は机に頬杖を突くと、続ける。
「我が契約者との約束だ。それで、君は何を私に捧げる」
「……これだ」
エレンは左腕を差し出した。グレンがハッとして立ちはだかるより早く、サミジナが瞬間移動してエレンのすぐ傍に現れた。
エレンの左手を右手で掴み、サミジナは悪魔のような笑みを浮かべた。
「では、駄賃として頂こう」
ふわ、と左手の感覚がなくなるのを感じた。淡く青い光と共に、左腕が消失する。
「てめェ!」
グレンがサミジナに掴みかかろうとするが、それよりずっと前で何かに弾かれて尻もちをついた。
「焦るな。これ一つで君の体を作ってやろうというのに。器なしには帰れんだろう、人界には。まったく……」
サミジナは少しグレンを見つめたあと、人差し指を彼に向けた。すると、一瞬グレンがバチッという音と共に青い光に包まれた。
「イテッ……! 何だ……?」
グレンは自分の体を見る。さっきまでの薄汚れた服とは打って変わり、髪も短くなって見慣れた白コートを彼は身にまとっていた。
「君たちの記憶の中にある姿を転写したぞ。どうだ、よく出来ているだろう」
「元通りだ……」
「うえ、なんだ、体が重い……」
感動しているエレンの一方で、グレンはしんどそうな顔をしていた。
そして、サミジナはエレンの方へ向き直る。
「さて。“冥府の契約”を君と結ばせてもらった。左腕は彼が再び死んだ時に返還しよう。だが君は死んではいけない。冥界への立ち入りを禁じる。よって、いかなる苦痛の下にも君は死ねない」
「分かってる。覚悟の上だ」
「契約の期限は……そうだな。“時が来たその時”だ」
「! どういう意味だ」
「その時が来れば分かる。それまではせいぜい、生に励むが良い」
ニ、とサミジナは笑った。
「君とまた冥界で見える日を楽しみに待っているよ」
* * *
いつの間にか、神殿の中にいた。行きと違うのは、両腕が無いこと。そして、隣にグレンがいることだった。
「……帰って来た」
エレンはぽつりと呟いた。グレンは辺りをキョロキョロと見回し、そして自らの頬を抓った。
「イテ……夢じゃない」
「夢じゃねェよ。……夢じゃねェのか」
エレンもまだ信じられない気持ちだった。隣に立つ兄の温もりを確かめようとして────────腕がないことに気が付いて、そのまま倒れ込んだ。
「うおっ! ちょっ、まだ俺体の感覚に慣れてねェんだけど!」
そう言ってよろけながらグレンは弟の体を抱き止める。その感触に、グレンも現実を徐々に認識し始めたようだった。
「……マジで生き返ったのか俺……」
「そうだ。信じられねェけど」
グレンに支えられて、エレンは姿勢を立て直した。まっすぐに兄の目を見る。
「……全部、覚えてるのか?」
「ああ。……いや、冥界でのことはなんか……記憶に靄がかかってる感じだけど。カリサのことも、全部覚えてる」
「そうか。……本当に兄貴なんだな」
「なんだそれ。俺が偽物だって疑ってるのか? この」
「いてててていてェ!」
こめかみをぐりぐりされてエレンは悲鳴を上げる。この力、まだ慣れてないのか少し弱いが間違いない。
「馬鹿力! 割れるわ!」
「へへ。信じただろ」
と、そこへ静かにフィンディアが歩み寄って来た。
「! 誰だ」
「神官のフィンディアさんだよ。お前が生き返れたのはこの人のお陰ってわけ」
警戒するグレンに、エレンはそう紹介する。グレンは肩の力を抜くと、息を吐いた。
「……そうか。ありがとう」
「礼には及びません。無事に儀式を終えられて良かった」
フィンディアはそう言って目を伏せた。そしてエレンに向かって問う。
「体の調子はいかがですか」
「え? あぁ……バランスが良くなった」
「言ってる場合か。お前……マジでどうするんだその体」
呑気なエレンにグレンは困った顔をする。エレンは笑って見せる。
「問題ない。義手はユーヤ兄に頼んであるし……」
「げ。あいつか。いや、そういう問題じゃないだろ」
ハァ、とグレンはため息を吐いた。
「……いや。まずはありがとうか。ありがとなエレン」
「どういたしまして。もう簡単に死ぬなよ」
「分かってるって」
と、ふとグレンは自分の胸に手を当てた。
「……あれ?」
「何だ」
と、その時突然グレンの胸から光が二つ飛び出してきて人型を取った。
「あれ、じゃねーよ馬鹿! てめェ! どういうつもりだ!」
「ゼイア!」
出てくるなり掴みかかってきたゼイアにグレンは面食らう。翼のあるその姿に、エレンは驚く。
「え……?」
「やっと認知されたと思ったらすーぐ死にやがって! 次の宿主探しながら神界でのんびり過ごしてたら急に引き戻されるし! ふざけんじゃねェぞ!」
「ゼイア落ち着け、まぁ良かったではないか」
「よくねェよ! なんでお前はそんな落ち着いてんだ!」
ゼイアは隣のアレスに向かってびし、と指を差す。グレンはゼイアに圧倒されたまま固まっている。
「……兄貴の精霊?」
エレンはやっと頭が回転して言葉を捻りだす。グレンとアレスが同時に頷いた。
「貴殿のことは知っている。その……まぁ。そういうことだ」
「放棄するな。ったく……こんなの聞いたことねェぞ」
ゼイアはようやくグレンを放すと、やれやれと首を振った。
「これも上に報告案件か……? いや、冥王と冥妃はこのことを知ってるのか……」
ブツブツと何やら考えているゼイア。エレンはその頭に生えた角と、背中の黒い翼に思わず口を開く。
「悪魔……?」
「悪魔じゃねェ。堕天使だ。間違えるな」
「ハイ」
鋭い目で凄まれて、エレンはドキリとして縮こまる。
「ともかく。生き返った以上はまたお前の世話になるぞ。いいな」
「分かった……またよろしく」
グレンは嬉しいような嬉しくないような微妙な表情をしていた。
『賑やかになりそうだな』
(そうだな……)
エレボスの言葉に、エレンは心の内で頷いた。ひとしきりゼイアはぶつくさ言ったあと、また光となってグレンの中へと戻って行った。アレスもやれやれと肩を竦めて戻って行く。グレンは胸を抑えながら顔をしかめる。恐らく中でまだ何か言われている。
「……行こうぜ。ケレンたちも待ってるしさ」
「マジで! 行こう行こう」
グレンはエレンの手を引いて歩き出す。その手を慌ててエレンは引く。
「待て! そっちじゃない!」
「あん⁈」
「なんで一本道なのに間違えるんだ!」
フィンディアがクスクスと笑っている。改めてエレンは目の前の男が正真正銘の兄であることを再認識する。
そして、エレンはケレンとアーガイルと合流すべく、グレンの腕を引いて神殿の出口へと向かうのだった。
#28 END
To be continued...
大理石で出来た古びた神殿。並んだ柱の奥、中から現れたのは、金髪に眼帯をした細身の男だった。手には槍のような杖を持っている。その装いから、彼が神官だということが見て取れる。
「母上。そちらは」
男はエルフィにそう訊ねた。エルフィは頷くと答えた。
「儀式の参加者だ。あとのことはお前に頼むよ、フィン」
「……承知いたしました。では、皆さまこちらへ」
フィンと呼ばれた男は、エレン達を促した。エルフィが頷くのでエレンを先頭に、アーガイルとケレンは進む。
階段を登ったところで、エレンは振り向く。下でイアリがエルフィの隣でぐっと親指を立てている。彼は待機だ。儀式に参加しないが、どうしてもと言ってついて来させてもらったが、それもここまでだ。
「これより皆さまを、魔神サミジナ様の下へご案内します。覚悟は良いですね」
「はい」
エレンは頷いた。その目を見て、神官はエレンが捧げる人間であることを察したようだった。
「よろしい。ではついて来て下さい」
さっと神官は踵を返すと、真っ暗な神殿の中へと入って行く。エレン達もその後に続いた。
狭い通路だ。石で出来た壁にはかがり火が灯されている。壁画のようなものが薄っすらと見えるが、風化して何が描かれているのかははっきりと読み取れなかった。
「申し遅れました。私は神官のフィンディア・エディカと申します」
「……村長さんの……息子さん?」
「ええ」
「じゃあ、リトの父親……?」
「あの子にも会いましたか。いえ。あの子は私の甥に当たります。私の妹の子です」
そう聞いて、エレンはなんとなくしっくり来た。父親というにはあまり似ていない。
「随分な悪童でしょう」
「ええ……まぁ」
フィンディアもリトの街での所業は知っているらしい。彼は仄かに困ったように笑うと、続けた。
「でも、根は心優しい子なのです。姉のために、あの年で自らの脚まで捧げて……」
カツ、カツ、と足音が空間に響いている。ハァ、とフィンディアのため息がそこにこだました。
「この神殿は……数百年前からサミジナ様のものです。我々の一族は、代々かの魔神と契約してきました。そして、生命の理を外れる儀式を……してきたのです」
エレンは黙って聞いている。他の三人も、一言も発さなかった。
「魔神との契約は、一度結べば簡単には破棄できない。初代の契約者が、末代までの契約を結んでしまったが為に……我々はこうして縛られている。でも、きっとここまででしょう。私に子はいませんし、リトやセリア……その姉ももう神官にはなれない」
「どうして?」
「儀式に参加したからです。だから、私が死ねばその時は、契約は終わりです。二度とこの儀式が行われることもないでしょう。その為にも、儀式のことを口外するわけにはいかないのです」
イアリも来てから、口封じの魔術を掛けられた。その真意を今知る。
「結果的に業はここで終わらせられますが、リトにあのようなことをさせてしまったのが心苦しい」
「……儀式は拒めないんですか?」
自分たちが今しようとしているのに、変な質問だと思いながらエレンは訊ねる。
「サミジナ様との契約で。神殿を訪れたものを拒んではならぬという決まりです。儀式はサミジナ様の益になりますから……」
それで、ジリョンがあのような役目を負っているわけだ、とエレンは考え着いた。アーガイルも同じなようで、渋い顔をしている。
やがて、広い空間に出た。そこには魔法陣が二つ、等間隔に描かれていた。
「こちらに、祈りを捧げる者たちは待機してください」
「ここで? 僕たちは何をすれば……」
アーガイルがそう言うと、フィンディアは杖で魔法陣を指した。
「そこに、立って。私が儀式を始めれば、その魔法陣が光ります。そうしたら、祈りを。それだけです」
「……分かりました」
アーガイルはエレンの方を見る。不安そうだった。それは、エレンの身を案じているからだとエレンには分かる。
「大丈夫だ。心配するなよ。ケレンも」
弟にもそう言って笑いかける。ケレンは口をひきむすんで、頷いた。
「ごめんね、兄さん」
「何で謝るんだ。……行きましょう、フィンディアさん」
「ええ」
二人はさらに奥へと進む。灯りの一切ない細い通路を抜けて、その空間に立った時、エレンは思わず身が竦むのを感じた。そこにはただならぬ気配が漂っていた。
「……何だ」
目の前には巨大な扉がある。そこに巨大な魔法陣が描かれている。それに強大な力を感じる。
「冥界の気配が濃いのです。生者には少々きつい場所かと。……耐えられますか」
「……問題ない」
扉へと近付く。突き刺すような気配がする。全身を針の筵で刺されるような、そんな感覚だ。これを、あの少年は乗り越えたのか。
(……負けてられない)
自分が何のためにここにいるのかを思い出す。大きく深呼吸した。
後ろで、フィンディアが杖を構える気配がした。
「“神官フィンディア・エディカの名の下に。扉を開く。冥府の賢者、魂の返還者。汝の名はサミジナ”」
ゴゴゴ、と音を立てて扉が向こうへ開く。冷たい風が吹き込んでくる。エレンが目を上げると、そこには巨大な何かがいた。
「⁈」
幽霊としか形容し得ない。だが、人の形をしていない。十字の仮面と角を持った頭が近づく。深淵のような真っ黒な手が近付いて来た。
「何……」
「サミジナ様の化身です。手を取りなさい。彼が導いてくれます」
恐る恐る、エレンはその巨体の手に触れた。指で転がされて手のひらに載せられる。
「うわっ!」
手が握られる。指の間から、フィンディアの姿が見えたがすぐに真っ暗になって意識があるのかどうかもよく分からなくなった。
「これはこれは。扉が開いたと思えば客人か」
「!」
気が付くと、そこは城のテラスのような場所だった。黒い石で作られた柱と床。向こうには星空のような景色が広がっている。空間がうねっている。
声の主は、その手前に座って本を読んでいる男のようだった。鋭い赤茶色の瞳。左目に片眼鏡をかけている学者風の男だった。若く見えるが、聞こえて来た声は老人のようにしわがれていた。
「何か飲むかね。……いや、君は生者だな。冥界のものは口に出来ないか。…ほら、そんなところに突っ立っていないでこちらに来るが良い」
「……」
男は手でエレンを促した。そこでようやくエレンは、自分がテラスの扉の前に立っていることに気が付いた。
「ええと……」
「儀式でやって来たのだろう。それとも、何かの間違いなら帰りはその扉だが?」
彼はエレンの背後の扉を指差した。エレンは首を横に振ると、男の方へと歩み寄って、空いている向かいに座った。
「私は冥界の魂を統べる魔神卿、序列第四位・大侯爵のガミジンという者だ。……いや、そちらでは“サミジナ”で通っているのかな? どちらでも良い。好きなように呼ぶが良い」
そう言って男────サミジナは優雅にテーブルの茶を飲んだ。よく見ると、彼の耳は尖っている。人でないことは見て明らかだった。
「ほら、こちらが名乗ったのだからそちらも名乗るのが礼儀だろう」
「ああ……エレン・レオノールです」
「ほう、敬語を使うか。弁えているな」
大侯爵、というのだから偉い人……いや、魔神なのだろうとエレンはそう思った。人界で言う爵位とどの程度通じているのかは分からないが。
「ここは、冥界……でいいんですか」
「そうだ。我が居城だ。地獄と天国の間に属している。それで、魂を返して欲しくて来たのだろう。一体誰の魂を所望だ」
「! ……あ、兄です。グレン・レオノール」
「兄……はぁ、なるほど。見覚えのある魂の色をしていると思ったが。奴の兄弟か……なるほど」
「え?」
「いや。特徴のある色だったものでな。……いや、待て。………ふむ。なるほど」
サミジナはじぃとエレンの方を食い入るように見ていた。しかし、エレンの体のどこを見ているというよりかは、その中にあるものを見ているようだった。
エレンは何だか居心地が悪い。
「……何ですか」
「いや。以前に見たなと思ってな。まぁよくあることよ」
「?」
どういうことだろう。よく分からないまま、サミジナが右手を宙に掲げるとそこに分厚い本が現れる。
「グレン・レオノールだな。最近やって来た魂だ。帳簿にもある。幸い地獄に落ちているな。引き上げ易くて助かる」
「え……」
そりゃあ兄のして来たことを思えば当然のことかもしれないが、そう言われては複雑な気持ちになる。
「刑期が300年か。早めに来てくれて助かった。浄化がまだ済んでおらんからちゃんと返せるぞ」
「浄化?」
エレンが首を傾げると、ガミジンは答える。
「輪廻転生は知っているか。死した魂は一度冥界にやって来て、そこで幾許かの時を過ごした後、記憶と人格を消去されて再び人界へと生れ落ちる。その消去過程を“浄化”と呼ぶ。善人も罪人も、真っ新な魂となって生まれ変わるというわけだ。肉体寿命がある人界だけの特権だな。……稀に、浄化されきらないまま送り出される魂もおるが……」
パラ、とサミジナは本を捲り、そのページで手を止める。指で一列をなぞると左手を構えた。
「では召喚する」
「!」
パチン、とサミジナが指を鳴らす。すると、ストンとどこからともなく人間が現れて降って来た。
「あいた!」
「兄貴!」
少し髪が伸びて、様相が変わっているがそれは紛れもなくグレンだった。
「……ここは……あれっ」
グレンはエレンに気が付いたようで、すぐに立ち上がる。
「何でお前ここに! 死んだのか⁉」
「違うよ。……迎えに来たんだ」
「え⁉」
訳が分からん、という顔に変わらない兄を感じる。エレンは立ち上がると、にこりと笑う。
「帰ろう」
「帰る……って、どこに」
「人界だ」
サミジナがそう言う。彼は机に頬杖を突くと、続ける。
「我が契約者との約束だ。それで、君は何を私に捧げる」
「……これだ」
エレンは左腕を差し出した。グレンがハッとして立ちはだかるより早く、サミジナが瞬間移動してエレンのすぐ傍に現れた。
エレンの左手を右手で掴み、サミジナは悪魔のような笑みを浮かべた。
「では、駄賃として頂こう」
ふわ、と左手の感覚がなくなるのを感じた。淡く青い光と共に、左腕が消失する。
「てめェ!」
グレンがサミジナに掴みかかろうとするが、それよりずっと前で何かに弾かれて尻もちをついた。
「焦るな。これ一つで君の体を作ってやろうというのに。器なしには帰れんだろう、人界には。まったく……」
サミジナは少しグレンを見つめたあと、人差し指を彼に向けた。すると、一瞬グレンがバチッという音と共に青い光に包まれた。
「イテッ……! 何だ……?」
グレンは自分の体を見る。さっきまでの薄汚れた服とは打って変わり、髪も短くなって見慣れた白コートを彼は身にまとっていた。
「君たちの記憶の中にある姿を転写したぞ。どうだ、よく出来ているだろう」
「元通りだ……」
「うえ、なんだ、体が重い……」
感動しているエレンの一方で、グレンはしんどそうな顔をしていた。
そして、サミジナはエレンの方へ向き直る。
「さて。“冥府の契約”を君と結ばせてもらった。左腕は彼が再び死んだ時に返還しよう。だが君は死んではいけない。冥界への立ち入りを禁じる。よって、いかなる苦痛の下にも君は死ねない」
「分かってる。覚悟の上だ」
「契約の期限は……そうだな。“時が来たその時”だ」
「! どういう意味だ」
「その時が来れば分かる。それまではせいぜい、生に励むが良い」
ニ、とサミジナは笑った。
「君とまた冥界で見える日を楽しみに待っているよ」
* * *
いつの間にか、神殿の中にいた。行きと違うのは、両腕が無いこと。そして、隣にグレンがいることだった。
「……帰って来た」
エレンはぽつりと呟いた。グレンは辺りをキョロキョロと見回し、そして自らの頬を抓った。
「イテ……夢じゃない」
「夢じゃねェよ。……夢じゃねェのか」
エレンもまだ信じられない気持ちだった。隣に立つ兄の温もりを確かめようとして────────腕がないことに気が付いて、そのまま倒れ込んだ。
「うおっ! ちょっ、まだ俺体の感覚に慣れてねェんだけど!」
そう言ってよろけながらグレンは弟の体を抱き止める。その感触に、グレンも現実を徐々に認識し始めたようだった。
「……マジで生き返ったのか俺……」
「そうだ。信じられねェけど」
グレンに支えられて、エレンは姿勢を立て直した。まっすぐに兄の目を見る。
「……全部、覚えてるのか?」
「ああ。……いや、冥界でのことはなんか……記憶に靄がかかってる感じだけど。カリサのことも、全部覚えてる」
「そうか。……本当に兄貴なんだな」
「なんだそれ。俺が偽物だって疑ってるのか? この」
「いてててていてェ!」
こめかみをぐりぐりされてエレンは悲鳴を上げる。この力、まだ慣れてないのか少し弱いが間違いない。
「馬鹿力! 割れるわ!」
「へへ。信じただろ」
と、そこへ静かにフィンディアが歩み寄って来た。
「! 誰だ」
「神官のフィンディアさんだよ。お前が生き返れたのはこの人のお陰ってわけ」
警戒するグレンに、エレンはそう紹介する。グレンは肩の力を抜くと、息を吐いた。
「……そうか。ありがとう」
「礼には及びません。無事に儀式を終えられて良かった」
フィンディアはそう言って目を伏せた。そしてエレンに向かって問う。
「体の調子はいかがですか」
「え? あぁ……バランスが良くなった」
「言ってる場合か。お前……マジでどうするんだその体」
呑気なエレンにグレンは困った顔をする。エレンは笑って見せる。
「問題ない。義手はユーヤ兄に頼んであるし……」
「げ。あいつか。いや、そういう問題じゃないだろ」
ハァ、とグレンはため息を吐いた。
「……いや。まずはありがとうか。ありがとなエレン」
「どういたしまして。もう簡単に死ぬなよ」
「分かってるって」
と、ふとグレンは自分の胸に手を当てた。
「……あれ?」
「何だ」
と、その時突然グレンの胸から光が二つ飛び出してきて人型を取った。
「あれ、じゃねーよ馬鹿! てめェ! どういうつもりだ!」
「ゼイア!」
出てくるなり掴みかかってきたゼイアにグレンは面食らう。翼のあるその姿に、エレンは驚く。
「え……?」
「やっと認知されたと思ったらすーぐ死にやがって! 次の宿主探しながら神界でのんびり過ごしてたら急に引き戻されるし! ふざけんじゃねェぞ!」
「ゼイア落ち着け、まぁ良かったではないか」
「よくねェよ! なんでお前はそんな落ち着いてんだ!」
ゼイアは隣のアレスに向かってびし、と指を差す。グレンはゼイアに圧倒されたまま固まっている。
「……兄貴の精霊?」
エレンはやっと頭が回転して言葉を捻りだす。グレンとアレスが同時に頷いた。
「貴殿のことは知っている。その……まぁ。そういうことだ」
「放棄するな。ったく……こんなの聞いたことねェぞ」
ゼイアはようやくグレンを放すと、やれやれと首を振った。
「これも上に報告案件か……? いや、冥王と冥妃はこのことを知ってるのか……」
ブツブツと何やら考えているゼイア。エレンはその頭に生えた角と、背中の黒い翼に思わず口を開く。
「悪魔……?」
「悪魔じゃねェ。堕天使だ。間違えるな」
「ハイ」
鋭い目で凄まれて、エレンはドキリとして縮こまる。
「ともかく。生き返った以上はまたお前の世話になるぞ。いいな」
「分かった……またよろしく」
グレンは嬉しいような嬉しくないような微妙な表情をしていた。
『賑やかになりそうだな』
(そうだな……)
エレボスの言葉に、エレンは心の内で頷いた。ひとしきりゼイアはぶつくさ言ったあと、また光となってグレンの中へと戻って行った。アレスもやれやれと肩を竦めて戻って行く。グレンは胸を抑えながら顔をしかめる。恐らく中でまだ何か言われている。
「……行こうぜ。ケレンたちも待ってるしさ」
「マジで! 行こう行こう」
グレンはエレンの手を引いて歩き出す。その手を慌ててエレンは引く。
「待て! そっちじゃない!」
「あん⁈」
「なんで一本道なのに間違えるんだ!」
フィンディアがクスクスと笑っている。改めてエレンは目の前の男が正真正銘の兄であることを再認識する。
そして、エレンはケレンとアーガイルと合流すべく、グレンの腕を引いて神殿の出口へと向かうのだった。
#28 END
To be continued...
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