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第一章 エレメス・フィーアン
#18 エピローグ
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────神暦38326年1月4日────
「そうですか……」
再び第三部隊のオフィスを訪れたカレンは、俯いてそう答えた。事の顛末を聞いた彼女は当然悲しむものだと思っていたが、意外に冷静で、どこか安堵さえしたような顔をしていた。
「……すみません、こんな結果になってしまって」
エルランがそう言うと、カレンは顔を上げた。
「いえ。兄は────────ずっと、何かに取り憑かれているみたいで、私はその、なんとかして助けてあげたかったんですけど」
言葉を探しながら、カレンは慎重な様子で言葉を紡ぐ。
「あの訪ねて来た兄は────別人みたいで。私の言葉なんか聞いてくれなくて。私の知る兄はもう────その心は、既に死んでしまっていたんだと思うんです」
彼女は目を伏せる。妹という立場の彼女にしか見えないものがあったのだろうと、エルランはその話を静かに聞く。
「だから、ただ今は安らかに休んで欲しくて。それで、少し……安心したというか。もう、兄が復讐に走ることはないんだなって思うと……」
言葉尻がすぼみ、カレンの顔が僅かに曇る。彼女は立ち上がると、口を引き結び、そして深く頭を下げた。
「ありがとうございました。……どうか気に病まないで下さい」
* * *
「……どう思う? エルラン」
カレンが去ったあと、エルザはデスクで物思いに耽っているエルランに向かって声をかけた。
「……僕は君の怪我の方が心配だ」
「俺は大したことない。影で身動き取れなくされて、封神石の手錠掛けられて縄で結ばれただけで……」
エルザは思い出してムカついたのか、口を尖らせる。
「……何であんな手錠持ってたんだあいつら……」
「とにかく、ありがとう。君が時間を稼いでくれたお陰でなんとかなった」
「それはいいが、話を逸らすなよエルラン」
「何の話だっけ?」
くるりと椅子ごと回って振り向いたエルランに、エルザはムッとしながら指を差す。
「カレンさんのことだ! 全く……」
「あぁ……」
エルランは先ほどの彼女の様子を思い起こす。
「複雑な感じだ」
「……読んだのか?」
「いや。でもなんとなくの乱れは分かる。……そうでなくとも、そういう顔だった」
頬杖をつき、エルランは少し考える。考えて、再び口を開いた。
「でも僕らが慮ることじゃない。あとのことは彼女次第だ。彼女は僕たちを責めなかった。それだけでいい」
「…………」
「……というか、君が心配してるのは彼女より僕のことでしょ」
そう言うと、エルザは眉を上げ、そしてうなじを掻いた。
「まぁ……」
「大丈夫だ。それこそ気にしなくていい。こんなの慣れてる」
「なら、いいんだが」
手を降ろし、エルザは眉を下げた。エルランはため息を吐く。
「信じてないね」
「いや。お前が言うなら信じるけど。……無理するなよ」
「してないよ。全く、心配症だな。そういうとこ嫌いじゃないけど」
エルランは笑みを返し、デスクに向かった。
「さて。報告書をまとめないと。手伝ってくれる?」
「ああ」
頷くと、エルザは部屋の隅へパイプ椅子を取りに行くのだった。
* * *
────神暦38326年1月8日────
エレンとアーガイルはとある場所を訪れていた。目の前には古びた洋館。ヘルメルクという田舎町の脇、山奥の廃村にひっそりと、ただひとつ状態を保たれたその建物は実に不気味だった。
不安を覚え、隣に立っているアーガイルにエレンは訊ねる。
「……ここにいるんだよな」
「あらかじめ連絡しておいたから大丈夫だと思うよ」
頷いたアーガイルは先に歩き出す。キイ、と軋んだ音を立てて両開きの扉が開く。
「鍵掛かってねェのかよ」
「いつもだよ」
「不用心だな……」
足を踏み入れようとしたその時、アーガイルがエレンを制止する。その直後、カッ、と音がした。見ると、足元に矢が刺さっている。
「……え?」
「……気を付けて。多分他にもある」
「ええ……」
アーガイルが先に中に入る。エレンは心の中で前言撤回した。これは侵入者を油断させる罠というわけだ。……なんのために。
ともかくここが恐ろしい屋敷であることは理解した。先を行くアーガイルは辺りを警戒しながらもスタスタと進んで行く。その後をトレースするようにエレンはついて行く。
床板が軋む。一度警戒すると全ての音にビクビクしてしまう。それも、相手が相手だというのもある。
エントランスを見回すと、古びてはいるが蜘蛛の巣一つなく綺麗に掃除されているようだった。だが、人の気配が感じられない。
二人はギィギィと不気味な音を立てる階段を登って行った。罠のこともあるが、今にも板が抜けそうで怖い。
廊下に出る。どこのドアも僅かに開いていて、怪しげな雰囲気を放っていた。
「開けたらダメだよ」
エレンの視線に気付いてか、アーガイルが言う。エレンはただコクコクと頷いた。
やがて奥の部屋に辿り着く。そこだけ締め切られている。慎重にアーガイルが扉を開ける。────────その先に、彼はいた。
山積みになった本と何かが書かれた紙の山。それに寄りかかるように仰向けで彼は眠りこけていた。ヨレた白いワイシャツに薄汚れたジーンズ、そして白衣。色の濃い金髪が無造作に後ろで束ねられているが、短いのもあって今にも解けそうだった。
「……相変わらずなだ」
「……ったく。こんなところで寝て……。ねぇ。起きて……」
アーガイルが男に歩み寄り、起こそうと手を伸ばす。その手が触れる直前、突如男の手が跳ね上がり、アーガイルに拳銃が付きつけられた。
「‼」
エレンもアーガイルも伏せたその直後、破裂音がしてドア上の壁が穿たれパラパラとホコリが落ちて来た。
「な……」
「……兄さん‼ いきなり撃つのやめろって言ってるよね⁉」
アーガイルがそう叫びながら立ち上がると、男は寝ぼけまなこでこちらを見て来た。その目が二人を捉えると、拳銃を持った手が降ろされる。
「……なんだ、アーガイルとエレンか…………」
「なんだじゃねェだろユーヤ兄!」
エレンも続いて叫ぶ。まだドクンドクンと心臓が跳ねている。男────ユーヤは目を擦りながら体を起こすと、頭の上にずれていた眼鏡を掛けなおした。
「悪いな、敵かと」
「悪いなで済むか! 弟を殺す気かこのサイコ!」
アーガイルはむんずとユーヤの胸倉を掴むと揺さぶった。
「あーあー、当たんなかったんだからいいだろ………」
弟の手をやんわりと放し、ユーヤは解けかけた髪を結び直した。そして彼は何かに気が付いた顔をすると、二人を交互に見て首を傾げた。
「……お前ら仲直りしたのか」
「したよ。だからこうして一緒にいる」
ムッとしたアーガイル。あまり触れるなという表情だ。
ユーヤ・エウィン。アーガイルの兄で、エレンたち二人の協力者だ。実質、泥棒稼業はこの三人でやっていたということになる。彼は発明家で、技術面で二人を助けてくれていた。
「……で。何の用だ」
「あー……実はね」
「これだ」
アーガイルの視線を受けて、エレンは自身の右肩を指差した。ぺしょんと垂れ下がったコートの袖を見て、ユーヤは目を丸くした。
「何! どうしたんだ!」
「五日前に失くした……影で代用は出来るがずっとそういうわけにもいかないだろ」
「失くしたってお前……鍵落としたとかじゃねェんだから……」
「あ。お前玄関の鍵開いてたぞ」
「お前って言うなタコ。……いや鍵はいいんだ。で、つまり義手を作って欲しいってことだな」
「話が早くて助かるよ」
エレンが息を吐くと、ユーヤはちょいちょいと手招きした。近づくと、ユーヤはエレンのコートの右袖をつかむ。
「……あー。ここからねェのか。……フーン……てかもう治ってんの」
「ああそれは……まぁ」
「早過ぎねぇ? まあいいや。じゃあ採寸とかしないとな」
ユーヤは立ち上がると、白衣のポケットに手をつっこんでスタスタと二人の横を通り過ぎる。
「ついて来な。……罠あるから俺の踏んだとこ通れよ」
* * *
「そういや、あのバカ死んだんだってな」
別の片付いた部屋で採寸している途中、ユーヤが唐突にそう言った。エレンは眉をひそめた。
「……知ってたのか」
「こんなトコ住んでても、下の町で新聞くらい買って読んでる」
街を大きく破壊したあの戦いは、瞬く間に国中に知れ渡ることとなった。エレメスから離れたここまでもその話は伝わっているということだ。
「お前も巻き込まれたわけか」
「……まぁな」
「そりゃあ災難なこった。どれだけ迷惑な奴だよ。……可哀想にな」
「兄さん」
壁際で椅子に座っていたアーガイルが口を開いた。ユーヤはチラリと振り向いただけで鼻で笑った。
「そりゃあそうだろ。後先考えねェバカだ。昔から短気で短絡的でいけすかない野郎だった。……ざまぁねぇよ」
ユーヤの言葉に、エレンは俯く。
「……兄貴は最期に謝ってた」
「フゥン」
兄のいない現実に、エレンはまだ慣れていなかった。アーガイルも、そしてケレンもそのことはあまり口にしなかった。だから、ユーヤのようにずけずけと踏み込んで来られると現実感が揺らぐ。
「全部俺のせいだって、自分を責めたまま死んでいった。……俺の腕の中で……」
言葉にすると急に重くのしかかって来る。腕のことはもう受け入れた。だが、それよりも重いものを受け入れるには、まだ準備が足りなかった。
「俺は兄貴が不死身なんじゃないかって、どこかで思ってたんだ」
「まぁ、そうだな。殺しても死にそうにない奴だったな」
ユーヤは巻き尺でエレンの腕を測りながら、淡々とそう答えた。
「でも、死んじまった」
まだ目に焼き付いている。死に際のあの顔を、エレンは忘れられない。
兄は変わらずずっと側に居続けると思っていた。カリサとの戦いにも勝って、またいつもの日常に戻ると思っていた。
でも、そうはならなかった。
「……人って簡単にいなくなるんだな」
エレンがそう呟くと、ユーヤは手を止め、そしてその額を指で小突いた。
「いて」
「お前が言うな。アーガイルのもとから先にいなくなったのはお前だろ」
「…………」
「人は簡単にいなくなるし、変わるんだよ。いつまでも同じじゃねェ」
「そうだな……」
でも、とエレンは思う。兄のことはもう、取り戻せない。
「────────二度と離れるなよお前ら。俺も寂しいからな」
ユーヤはそう言って作業を再開した。そして、はたとユーヤは疑問に思ったことを口にした。
「そういやお前ら、どこに住んでんだ」
「あぁ……エレメスにはいられなくなったしな。ケレンも……だし。イヴレストってとこの山に、隠れ家を」
「へえ。俺のとこでも良かったのに」
「こんな危なっかしいとこ住めるか」
壁際のアーガイルもブンブンと首を縦に振っている。
「……まぁ。お前らが元気ならどこでもいいが。……たまには顔出せよ」
「あぁ」
それからは、三人は作業が終わるまで一度も口を開かなかった。
* * *
────神暦38326年1月10日────
眼下にイヴレストの町が広がっている。山道を進んで辿り着く崖。その先に墓標が立っている。白いコートと三つの腕輪がかかっているそこには、『Glen・Leonohle』の名が刻まれていた。
エレンは風を肌に感じながら、そこに座っていた。アーガイルはその後ろでじっと立っている。木々の葉が擦れる音と、鳥の声以外は何も聞こえない。
しばらく目を瞑っていたエレンは、やがて立ち上がると振り向いてアーガイルの方へ歩いて来た。
「もういいの?」
「あぁ。……付き合わせて悪いな」
「いいよ。散歩は好きだし」
帰ろうか、と歩き出そうとしたとき、向かいから人影が三人歩いて来るのが見えた。ケレン以外の人影をこの辺りであまり見ないので、二人は警戒した。
……が、やがてその姿が明らかになってエレンは警戒を解いた。
「……ロレン?」
「わ。本当にいた」
茶色の長髪に、オレンジの瞳をした眼鏡の青年。そして、その隣にはほとんど同じ顔をして少し背の高い男がいた。さらにその後ろには、黄緑の髪をした長身の女性がいる。
「誰?」
アーガイルがエレンに耳打ちしてくるので、エレンは眉を上げた。
「そうか、アルは知らなかったか」
「久しぶり。元気にしてた?」
ロレンがそう言いながら近づいて来る。エレンは笑う。
「あぁ。なんとかな。来てくれてありがとう」
「いや。驚いちゃってさ。……その、ニュースを見て」
そしてロレンはアーガイルの方を見た。
「はじめまして。僕はロレン。ロレン・レミエルだ。エレンとは孤児院で一緒に育って……まぁ、そういうこと」
「あぁ、なるほど……僕はアーガイル・エウィン。よろしく」
二人はそう言って握手する。エレンはその様子を穏やかに見、そしてさらに近づいて来た二人に声をかけた。
「フォレンさん、レイミアさんも」
「まったく、本当に驚いた……本当に死んだのかあいつ。俺とやる前に? ほんと、信じられないよな……」
ロレンと同じような顔をした男、フォレンはそう言って左手を振った。見た目はほとんど同じだが、口調の違いで別の印象を受ける。
「どうも。君がエレン君の相棒か。俺はフォレン。ロレンの兄だ。こっちは俺の彼女のレイミア」
「こんにちは」
レイミアはそう言ってにこりと笑う。
アーガイルは軽く会釈し、そしてコソッとエレンに耳打ちした。
「……君って意外と友達いるんだね?」
「俺を何だと思ってるんだ。そりゃいる。あと一人……」
そういえば、その“一人”の消息は分からない。元気にしているのだろうか。
「教えてくれてありがとうな、ここの場所」
「いえ、やっぱりフォレンさんには教えておかないとと思って」
フォレンとエレンのその会話に、アーガイルはフォレンは察する。
「……フォレンさんは、グレンさんと親しかったんですか?」
「ん~。まぁ、友人といやそうだが……それよりライバルって言った方がしっくり来る。俺と渡り合える数少ない相手だ」
「え」
不意にフォレンが浮かべた凶悪な笑みにたじろいでいると、フォレンは顔をアーガイルにずいと寄せた。
「な、なんです」
「……名前、エウィンって言ったか? そうか、あの副元帥の息子か」
「………父を知ってるんですか」
「そりゃ。なんせ俺たちは軍人だからな」
「え」
凍り付いた顔でアーガイルはエレンの顔を見る。ん? という顔でエレンが首を傾げるのでアーガイルは目を見開いた。
「知ってて呼んだの⁈」
「大丈夫だ、信頼出来る人だし……」
「あなたたち階級は⁈」
「俺とレイミアが中将、ロレンが曹長だ」
「ばりばり幹部じゃん!」
「あああ落ち着けって」
がくがくと揺すられながらエレンはアーガイルを宥める。
「だから心配いらねェって」
「エレンが言ってるだけでしょ!」
「うん、実際大丈夫だ。俺たちオフだし」
あっけらかんとしてフォレンはそう言い、「ほら、軍服来てないでしょ」と自身のワイシャツの胸元を引っ張って見せる。アーガイルはそれでも警戒した目をフォレンに向ける。彼はさっき“グレンと渡り合える”というようなことを言っていた。もしやり合うことになったら絶対に敵わない。そもそも軍の上層がそういう人間の巣窟であることは、アーガイルもなんとなく知っている。
「ということで、しばらく君らのところに寄せてくれないかな」
「「え?」」
その笑顔から発された言葉の意味を、エレンもアーガイルもすぐに飲み込めなかった。
「何、損はさせない。俺料理とか得意だし……」
「住むってことですか? ここに⁇」
「そう言ってる。わけあって丁度、今まで住んでたところを追われて……」
「あんたが色んな所で女引っ掛けるからでしょ」
レイミアの手がバシ、とフォレンの背中を叩く。なかなかの音がしたがフォレンはちっとも揺らがなかった。
「……ということなんだ。君たちの安全も保証する」
────理由はさておき、正直エレンには心強い申し出だった。だが、先ほどの反応からしてアーガイルが納得するか……。
そう思いながら相棒の顔を見る。アーガイルはそれに気が付いて、少し迷ったあとやれやれと肩を竦めた。
「……エレンが良いって言うなら」
「ほんとか?」
頷くアーガイルに、エレンはフォレンへと視線を戻した。
「じゃあ、それで……」
「本当! 良かった。助かるよ」
フォレンが笑ってそう言うと、ロレンも笑う。
「へへ、僕も嬉しいや」
「またよろしくな」
「うん。あ、戻ったら久しぶりに手合わせしない?」
「お前ら兄弟揃って戦闘狂なのなんなんだよ……」
皆で家に向かって歩き出す。その最後尾で、ちら、とエレンは墓の方を振り向いた。白いコートがたなびいている。それはまるで、手を振ってエレンを送り出しているように見えた。
#18 END
第一章 エレメスフィーアン編 終わり
第二章へ続く
「そうですか……」
再び第三部隊のオフィスを訪れたカレンは、俯いてそう答えた。事の顛末を聞いた彼女は当然悲しむものだと思っていたが、意外に冷静で、どこか安堵さえしたような顔をしていた。
「……すみません、こんな結果になってしまって」
エルランがそう言うと、カレンは顔を上げた。
「いえ。兄は────────ずっと、何かに取り憑かれているみたいで、私はその、なんとかして助けてあげたかったんですけど」
言葉を探しながら、カレンは慎重な様子で言葉を紡ぐ。
「あの訪ねて来た兄は────別人みたいで。私の言葉なんか聞いてくれなくて。私の知る兄はもう────その心は、既に死んでしまっていたんだと思うんです」
彼女は目を伏せる。妹という立場の彼女にしか見えないものがあったのだろうと、エルランはその話を静かに聞く。
「だから、ただ今は安らかに休んで欲しくて。それで、少し……安心したというか。もう、兄が復讐に走ることはないんだなって思うと……」
言葉尻がすぼみ、カレンの顔が僅かに曇る。彼女は立ち上がると、口を引き結び、そして深く頭を下げた。
「ありがとうございました。……どうか気に病まないで下さい」
* * *
「……どう思う? エルラン」
カレンが去ったあと、エルザはデスクで物思いに耽っているエルランに向かって声をかけた。
「……僕は君の怪我の方が心配だ」
「俺は大したことない。影で身動き取れなくされて、封神石の手錠掛けられて縄で結ばれただけで……」
エルザは思い出してムカついたのか、口を尖らせる。
「……何であんな手錠持ってたんだあいつら……」
「とにかく、ありがとう。君が時間を稼いでくれたお陰でなんとかなった」
「それはいいが、話を逸らすなよエルラン」
「何の話だっけ?」
くるりと椅子ごと回って振り向いたエルランに、エルザはムッとしながら指を差す。
「カレンさんのことだ! 全く……」
「あぁ……」
エルランは先ほどの彼女の様子を思い起こす。
「複雑な感じだ」
「……読んだのか?」
「いや。でもなんとなくの乱れは分かる。……そうでなくとも、そういう顔だった」
頬杖をつき、エルランは少し考える。考えて、再び口を開いた。
「でも僕らが慮ることじゃない。あとのことは彼女次第だ。彼女は僕たちを責めなかった。それだけでいい」
「…………」
「……というか、君が心配してるのは彼女より僕のことでしょ」
そう言うと、エルザは眉を上げ、そしてうなじを掻いた。
「まぁ……」
「大丈夫だ。それこそ気にしなくていい。こんなの慣れてる」
「なら、いいんだが」
手を降ろし、エルザは眉を下げた。エルランはため息を吐く。
「信じてないね」
「いや。お前が言うなら信じるけど。……無理するなよ」
「してないよ。全く、心配症だな。そういうとこ嫌いじゃないけど」
エルランは笑みを返し、デスクに向かった。
「さて。報告書をまとめないと。手伝ってくれる?」
「ああ」
頷くと、エルザは部屋の隅へパイプ椅子を取りに行くのだった。
* * *
────神暦38326年1月8日────
エレンとアーガイルはとある場所を訪れていた。目の前には古びた洋館。ヘルメルクという田舎町の脇、山奥の廃村にひっそりと、ただひとつ状態を保たれたその建物は実に不気味だった。
不安を覚え、隣に立っているアーガイルにエレンは訊ねる。
「……ここにいるんだよな」
「あらかじめ連絡しておいたから大丈夫だと思うよ」
頷いたアーガイルは先に歩き出す。キイ、と軋んだ音を立てて両開きの扉が開く。
「鍵掛かってねェのかよ」
「いつもだよ」
「不用心だな……」
足を踏み入れようとしたその時、アーガイルがエレンを制止する。その直後、カッ、と音がした。見ると、足元に矢が刺さっている。
「……え?」
「……気を付けて。多分他にもある」
「ええ……」
アーガイルが先に中に入る。エレンは心の中で前言撤回した。これは侵入者を油断させる罠というわけだ。……なんのために。
ともかくここが恐ろしい屋敷であることは理解した。先を行くアーガイルは辺りを警戒しながらもスタスタと進んで行く。その後をトレースするようにエレンはついて行く。
床板が軋む。一度警戒すると全ての音にビクビクしてしまう。それも、相手が相手だというのもある。
エントランスを見回すと、古びてはいるが蜘蛛の巣一つなく綺麗に掃除されているようだった。だが、人の気配が感じられない。
二人はギィギィと不気味な音を立てる階段を登って行った。罠のこともあるが、今にも板が抜けそうで怖い。
廊下に出る。どこのドアも僅かに開いていて、怪しげな雰囲気を放っていた。
「開けたらダメだよ」
エレンの視線に気付いてか、アーガイルが言う。エレンはただコクコクと頷いた。
やがて奥の部屋に辿り着く。そこだけ締め切られている。慎重にアーガイルが扉を開ける。────────その先に、彼はいた。
山積みになった本と何かが書かれた紙の山。それに寄りかかるように仰向けで彼は眠りこけていた。ヨレた白いワイシャツに薄汚れたジーンズ、そして白衣。色の濃い金髪が無造作に後ろで束ねられているが、短いのもあって今にも解けそうだった。
「……相変わらずなだ」
「……ったく。こんなところで寝て……。ねぇ。起きて……」
アーガイルが男に歩み寄り、起こそうと手を伸ばす。その手が触れる直前、突如男の手が跳ね上がり、アーガイルに拳銃が付きつけられた。
「‼」
エレンもアーガイルも伏せたその直後、破裂音がしてドア上の壁が穿たれパラパラとホコリが落ちて来た。
「な……」
「……兄さん‼ いきなり撃つのやめろって言ってるよね⁉」
アーガイルがそう叫びながら立ち上がると、男は寝ぼけまなこでこちらを見て来た。その目が二人を捉えると、拳銃を持った手が降ろされる。
「……なんだ、アーガイルとエレンか…………」
「なんだじゃねェだろユーヤ兄!」
エレンも続いて叫ぶ。まだドクンドクンと心臓が跳ねている。男────ユーヤは目を擦りながら体を起こすと、頭の上にずれていた眼鏡を掛けなおした。
「悪いな、敵かと」
「悪いなで済むか! 弟を殺す気かこのサイコ!」
アーガイルはむんずとユーヤの胸倉を掴むと揺さぶった。
「あーあー、当たんなかったんだからいいだろ………」
弟の手をやんわりと放し、ユーヤは解けかけた髪を結び直した。そして彼は何かに気が付いた顔をすると、二人を交互に見て首を傾げた。
「……お前ら仲直りしたのか」
「したよ。だからこうして一緒にいる」
ムッとしたアーガイル。あまり触れるなという表情だ。
ユーヤ・エウィン。アーガイルの兄で、エレンたち二人の協力者だ。実質、泥棒稼業はこの三人でやっていたということになる。彼は発明家で、技術面で二人を助けてくれていた。
「……で。何の用だ」
「あー……実はね」
「これだ」
アーガイルの視線を受けて、エレンは自身の右肩を指差した。ぺしょんと垂れ下がったコートの袖を見て、ユーヤは目を丸くした。
「何! どうしたんだ!」
「五日前に失くした……影で代用は出来るがずっとそういうわけにもいかないだろ」
「失くしたってお前……鍵落としたとかじゃねェんだから……」
「あ。お前玄関の鍵開いてたぞ」
「お前って言うなタコ。……いや鍵はいいんだ。で、つまり義手を作って欲しいってことだな」
「話が早くて助かるよ」
エレンが息を吐くと、ユーヤはちょいちょいと手招きした。近づくと、ユーヤはエレンのコートの右袖をつかむ。
「……あー。ここからねェのか。……フーン……てかもう治ってんの」
「ああそれは……まぁ」
「早過ぎねぇ? まあいいや。じゃあ採寸とかしないとな」
ユーヤは立ち上がると、白衣のポケットに手をつっこんでスタスタと二人の横を通り過ぎる。
「ついて来な。……罠あるから俺の踏んだとこ通れよ」
* * *
「そういや、あのバカ死んだんだってな」
別の片付いた部屋で採寸している途中、ユーヤが唐突にそう言った。エレンは眉をひそめた。
「……知ってたのか」
「こんなトコ住んでても、下の町で新聞くらい買って読んでる」
街を大きく破壊したあの戦いは、瞬く間に国中に知れ渡ることとなった。エレメスから離れたここまでもその話は伝わっているということだ。
「お前も巻き込まれたわけか」
「……まぁな」
「そりゃあ災難なこった。どれだけ迷惑な奴だよ。……可哀想にな」
「兄さん」
壁際で椅子に座っていたアーガイルが口を開いた。ユーヤはチラリと振り向いただけで鼻で笑った。
「そりゃあそうだろ。後先考えねェバカだ。昔から短気で短絡的でいけすかない野郎だった。……ざまぁねぇよ」
ユーヤの言葉に、エレンは俯く。
「……兄貴は最期に謝ってた」
「フゥン」
兄のいない現実に、エレンはまだ慣れていなかった。アーガイルも、そしてケレンもそのことはあまり口にしなかった。だから、ユーヤのようにずけずけと踏み込んで来られると現実感が揺らぐ。
「全部俺のせいだって、自分を責めたまま死んでいった。……俺の腕の中で……」
言葉にすると急に重くのしかかって来る。腕のことはもう受け入れた。だが、それよりも重いものを受け入れるには、まだ準備が足りなかった。
「俺は兄貴が不死身なんじゃないかって、どこかで思ってたんだ」
「まぁ、そうだな。殺しても死にそうにない奴だったな」
ユーヤは巻き尺でエレンの腕を測りながら、淡々とそう答えた。
「でも、死んじまった」
まだ目に焼き付いている。死に際のあの顔を、エレンは忘れられない。
兄は変わらずずっと側に居続けると思っていた。カリサとの戦いにも勝って、またいつもの日常に戻ると思っていた。
でも、そうはならなかった。
「……人って簡単にいなくなるんだな」
エレンがそう呟くと、ユーヤは手を止め、そしてその額を指で小突いた。
「いて」
「お前が言うな。アーガイルのもとから先にいなくなったのはお前だろ」
「…………」
「人は簡単にいなくなるし、変わるんだよ。いつまでも同じじゃねェ」
「そうだな……」
でも、とエレンは思う。兄のことはもう、取り戻せない。
「────────二度と離れるなよお前ら。俺も寂しいからな」
ユーヤはそう言って作業を再開した。そして、はたとユーヤは疑問に思ったことを口にした。
「そういやお前ら、どこに住んでんだ」
「あぁ……エレメスにはいられなくなったしな。ケレンも……だし。イヴレストってとこの山に、隠れ家を」
「へえ。俺のとこでも良かったのに」
「こんな危なっかしいとこ住めるか」
壁際のアーガイルもブンブンと首を縦に振っている。
「……まぁ。お前らが元気ならどこでもいいが。……たまには顔出せよ」
「あぁ」
それからは、三人は作業が終わるまで一度も口を開かなかった。
* * *
────神暦38326年1月10日────
眼下にイヴレストの町が広がっている。山道を進んで辿り着く崖。その先に墓標が立っている。白いコートと三つの腕輪がかかっているそこには、『Glen・Leonohle』の名が刻まれていた。
エレンは風を肌に感じながら、そこに座っていた。アーガイルはその後ろでじっと立っている。木々の葉が擦れる音と、鳥の声以外は何も聞こえない。
しばらく目を瞑っていたエレンは、やがて立ち上がると振り向いてアーガイルの方へ歩いて来た。
「もういいの?」
「あぁ。……付き合わせて悪いな」
「いいよ。散歩は好きだし」
帰ろうか、と歩き出そうとしたとき、向かいから人影が三人歩いて来るのが見えた。ケレン以外の人影をこの辺りであまり見ないので、二人は警戒した。
……が、やがてその姿が明らかになってエレンは警戒を解いた。
「……ロレン?」
「わ。本当にいた」
茶色の長髪に、オレンジの瞳をした眼鏡の青年。そして、その隣にはほとんど同じ顔をして少し背の高い男がいた。さらにその後ろには、黄緑の髪をした長身の女性がいる。
「誰?」
アーガイルがエレンに耳打ちしてくるので、エレンは眉を上げた。
「そうか、アルは知らなかったか」
「久しぶり。元気にしてた?」
ロレンがそう言いながら近づいて来る。エレンは笑う。
「あぁ。なんとかな。来てくれてありがとう」
「いや。驚いちゃってさ。……その、ニュースを見て」
そしてロレンはアーガイルの方を見た。
「はじめまして。僕はロレン。ロレン・レミエルだ。エレンとは孤児院で一緒に育って……まぁ、そういうこと」
「あぁ、なるほど……僕はアーガイル・エウィン。よろしく」
二人はそう言って握手する。エレンはその様子を穏やかに見、そしてさらに近づいて来た二人に声をかけた。
「フォレンさん、レイミアさんも」
「まったく、本当に驚いた……本当に死んだのかあいつ。俺とやる前に? ほんと、信じられないよな……」
ロレンと同じような顔をした男、フォレンはそう言って左手を振った。見た目はほとんど同じだが、口調の違いで別の印象を受ける。
「どうも。君がエレン君の相棒か。俺はフォレン。ロレンの兄だ。こっちは俺の彼女のレイミア」
「こんにちは」
レイミアはそう言ってにこりと笑う。
アーガイルは軽く会釈し、そしてコソッとエレンに耳打ちした。
「……君って意外と友達いるんだね?」
「俺を何だと思ってるんだ。そりゃいる。あと一人……」
そういえば、その“一人”の消息は分からない。元気にしているのだろうか。
「教えてくれてありがとうな、ここの場所」
「いえ、やっぱりフォレンさんには教えておかないとと思って」
フォレンとエレンのその会話に、アーガイルはフォレンは察する。
「……フォレンさんは、グレンさんと親しかったんですか?」
「ん~。まぁ、友人といやそうだが……それよりライバルって言った方がしっくり来る。俺と渡り合える数少ない相手だ」
「え」
不意にフォレンが浮かべた凶悪な笑みにたじろいでいると、フォレンは顔をアーガイルにずいと寄せた。
「な、なんです」
「……名前、エウィンって言ったか? そうか、あの副元帥の息子か」
「………父を知ってるんですか」
「そりゃ。なんせ俺たちは軍人だからな」
「え」
凍り付いた顔でアーガイルはエレンの顔を見る。ん? という顔でエレンが首を傾げるのでアーガイルは目を見開いた。
「知ってて呼んだの⁈」
「大丈夫だ、信頼出来る人だし……」
「あなたたち階級は⁈」
「俺とレイミアが中将、ロレンが曹長だ」
「ばりばり幹部じゃん!」
「あああ落ち着けって」
がくがくと揺すられながらエレンはアーガイルを宥める。
「だから心配いらねェって」
「エレンが言ってるだけでしょ!」
「うん、実際大丈夫だ。俺たちオフだし」
あっけらかんとしてフォレンはそう言い、「ほら、軍服来てないでしょ」と自身のワイシャツの胸元を引っ張って見せる。アーガイルはそれでも警戒した目をフォレンに向ける。彼はさっき“グレンと渡り合える”というようなことを言っていた。もしやり合うことになったら絶対に敵わない。そもそも軍の上層がそういう人間の巣窟であることは、アーガイルもなんとなく知っている。
「ということで、しばらく君らのところに寄せてくれないかな」
「「え?」」
その笑顔から発された言葉の意味を、エレンもアーガイルもすぐに飲み込めなかった。
「何、損はさせない。俺料理とか得意だし……」
「住むってことですか? ここに⁇」
「そう言ってる。わけあって丁度、今まで住んでたところを追われて……」
「あんたが色んな所で女引っ掛けるからでしょ」
レイミアの手がバシ、とフォレンの背中を叩く。なかなかの音がしたがフォレンはちっとも揺らがなかった。
「……ということなんだ。君たちの安全も保証する」
────理由はさておき、正直エレンには心強い申し出だった。だが、先ほどの反応からしてアーガイルが納得するか……。
そう思いながら相棒の顔を見る。アーガイルはそれに気が付いて、少し迷ったあとやれやれと肩を竦めた。
「……エレンが良いって言うなら」
「ほんとか?」
頷くアーガイルに、エレンはフォレンへと視線を戻した。
「じゃあ、それで……」
「本当! 良かった。助かるよ」
フォレンが笑ってそう言うと、ロレンも笑う。
「へへ、僕も嬉しいや」
「またよろしくな」
「うん。あ、戻ったら久しぶりに手合わせしない?」
「お前ら兄弟揃って戦闘狂なのなんなんだよ……」
皆で家に向かって歩き出す。その最後尾で、ちら、とエレンは墓の方を振り向いた。白いコートがたなびいている。それはまるで、手を振ってエレンを送り出しているように見えた。
#18 END
第一章 エレメスフィーアン編 終わり
第二章へ続く
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