会計のチャラ男は演技です!

りんか

文字の大きさ
上 下
14 / 35
転校生

12.復活

しおりを挟む
完全に突き放された男は加奈子を追いかけた。

そして思い切って加奈子に尋ねた。
お、俺も戦闘できるように、戦えるように仲間にしてくれませんか?」

加奈子は振り返り、しばし男を見つめた。

『あなたに聞くけど、今の世が変わった事は理解できましたか?』
『そして、これからどう生きていきたいか教えて下さいな』

どうって・・・ 流れに乗りたい?みたいな感じかな?」

『・・・』
『お調子者さんかな?』

だ、駄目ですか?」

加奈子はチラリと小学校の向こう、中学校の校庭を見た。
かなりの人間が校庭で何かをしているのが見える。

多分、戸弩力組が頑張っているんだろう。





『あそこで皆さん、レベルを付けた方ばかりで訓練しているのでそこへ行かれたらよろしいかと』

見ず知らずの男性を仲間にするほど、加奈子の偽善心は高くない。
それよりも、どんな人間性かもわからないのに、仲間にして問題が起きる方が嫌である。

えっ?ここじゃ無理なんですか?」

『・・・』
『出来ない事は無いけれど、私たちはこれからやる事もありますので』

お、俺も手伝いますので、ここで鍛えてもらえませんか?」

加奈子は少しうんざりとしてきた。
基本的に、あんまり男が好きじゃないのかも知れない。
戸弩力や徳太郎は特別なんだろう。

麗菜加奈子さ~ん、どうしたんですか~?」

なかなか来ない加奈子を心配して麗菜と明日桜が近寄ってきた。

『この方がこのパーティに入れて欲しいと言うので、お断りをしている所です』

男に聞こえる様にハッキリと意思表示をしてみる。
明日桜おじさん一人くらい増えた所であんま問題は無いんじゃ~ないっすか?」

麗菜は男の顔をジッと見て尋ねる。
麗菜あなたは何が出来ますか?今のあなた自身の特技を聞かせて下さいな」
お、俺はゲームくらいしか取り柄は無いけど・・・」

『・・・』
面倒くさいので断るつもりが、何やら眷属たちは容認しようとしているようだ。


麗菜どんなゲームがお得意ですか?」
き、基本はRPGやけど、SLGも好きかな」

麗菜課金勢?無課金やり込み勢?それともガチ勢ですか?」
どっちかと言えば、ガチ勢かな~」

麗菜結婚はされてます?ご家族は?」
バ、バツイチで家族は神戸には居ません」

麗菜これからやるとしたら、どんな職業ジョブを目指しますか?」
俺は・・・ 鉾か槍か戦斧か長柄の殴棒メイスかなぁ」

麗菜刀や剣は?体術とか?」
いや、中距離で力任せに戦う方が得意かな?」

(((女3人その身体で?)))

明日桜い、今、身長と体重はどんくらい?」

見るからに細身で力も無さそうなのに、力任せが得意とか?理解出来ない明日桜が聞いた。

えっと~ 178㎝で55㎏くらいかな?」
麗菜ほっそっ!」
だから市販の服やズボンはサイズが合わなくてw」

服もズボンもかなり大きめのサイズを着ているのは、細身を隠すためだと思っていた。
だが、身体廻りを合わせれば、服もズボンも丈が短すぎるようだ。
丈を合わせればブカブカな感じになってしまう。

麗菜加奈子さん、この人をレベル付きにしませんか?」
『ん~まぁいいですけど・・・』

加奈子からの言質を取ったので麗菜はその男を引き連れてマンションの1階エントランスに向かう。
明日桜はジンガの頭を撫でながら加奈子に物申す。

明日桜加奈子さん、あの人を仲間にするのが嫌そうだったけど?」
『ん~まぁ何て言うのか、私って男性不審なのかも知れないですね』

明日桜でも、こんな所で出会うって縁ですよね」
『縁・・・ 縁なのかなぁ?』

明日桜昨日、戸弩力さんと話してるのを聞いちゃってたんだけど、加奈子さんは強い"運"を持ってるって話だったんですよね。
だったらこんな所で偶然出会う縁ってのも、その運に導かれたもんじゃないかなって思う」

『・・・』
明日桜麗菜さんとちょっと前に話してたんです。
自分たちが今ここに居るのも、加奈子さんの運に導かれて集まった人達なんだろうねって」

『・・・』
明日桜だからあんなヒョロポンな男でも何かしら有意義な存在なのかも知れない?かな?」

『わかったわ、でも仲間にするのなら火の地獄を味わってもらわないとねw』
明日桜あはは、あれはなかなか地獄ですw」





レベルが付いた男に、最低限のスキルと、最高の火熱耐性を覚えさせた。
ハァハァハァ・・・ 2度も死ぬ思いをするなんて・・・」
麗菜今、生きてるって事でしょw」



マンションの1階には100や200ではきかないくらいのゴブリンが居た。
老人ホームの方にも数えきれないくらいのゴブリンが居るので、そっちに男と麗菜を引き連れて加奈子は颯爽と臨んでいった。

建物内で火絨毯は拡げられないので、小さめの火弾を撃ち込み殲滅していく。
麗菜は二股の槍で軽くゴブリンをほふって行く。
身長がさらに伸び、やっとそこらの格闘家並みの筋肉が付いたが、撫で肩の為、そんなにガッチリは見えない男は、先言通りにフロアモップの先の房糸部分を取り除いた、さすまたの様な長柄武器で戦っている。
あまり殺傷力は高くないが、麗菜とペア狩りしているため特に問題は無いようである。

加奈子は同じフロアだが、少し離れてソロ狩り状態である。
(ふふふ、また何かドロップしたわ)

ちょこちょこゴブリンからは綺麗な瓶に入った薬を落としていたが、フロアボスだったかも知れない大きくて、明らかに他よりも強いゴブリンを倒した時、オレンジの宝珠を落として逝った。
 (出会った時のよりも何倍も強いこのゴブリンを雑魚みたいにアッサリと倒せた…)
 (今ならあいつとやっても勝てるんじゃないだろうか?…)
 (いや、ヤツがあのままのはずは無いし、慢心は封印しないと…)

加奈子のステータスは、武闘でも魔法でもこんなフロアボスクラスなら敵対も出来ないくらい差が付いてしまっている。
キャリヤと差が付いているのかは、今の所不明である。



加奈子の眷属のオオカミ、フィルは子供達と同じ、マンション部分の1階に居た。
子供達の主である、明日桜と緑と共に戦う。
3匹と2人は、素早さと攻撃力に長けている為、戦い方は必然的に近接戦闘になってしまう。

すぐそばでは、雲国親娘がゴブリンから奪った中刀で迫力のある戦いを繰り広げている。


老人ホームの1階を殲滅した加奈子たちは、2階3階と上がってみたが上にはゴブリンは居なかった。
また1階に降りて、エントランスとは反対側からマンション1階に入りゴブリンを殲滅していく。


加奈子は1階廊下に火の絨毯を拡げながら先行で進んで行った。
麗菜と細男が後始末をしながら進んで行く。

『麗菜さん、ドロップを見かけたら拾って来てくださいな』
麗菜はいっわかりました」
お任せください」



この短時間でこんなにレベルが上がって、なんか夢を見てるようです」
麗菜私も実は、あなたがレベルを付けるほんの少し前にレベル付きになったんですよw」

最初の3~4匹は気持ち悪かったけど、もうゴブリンを殺す事に何も思わなくなりました」
麗菜人としてはどうかと思うけど、こんな世界で生きて行くには慣れていかないとね」


二人共あっという間にレベルも10を超えて余裕も出て来て、話をしながら敵を狩って行く。
だが、何度も加奈子に言われた言葉を思い出し、麗菜は男に告げる。

麗菜常々心に止めておいて欲しいんだけど、慢心だけはしないでね」
慢心ですか・・・」

麗菜あの加奈子さんですら、その慢心で死に掛けたって言ってたからね」
はぁ・・・ やっぱりやられたら死ぬんですよね・・・」

麗菜それはそうと、職業はもう選択したの?」
いえっ、出てるのは【棒術士】【棍術士】【鉾術師】の3つあるんですが、なかなかどれにするか決めきれなくて」

麗菜焦らなくても、また違う職業も発生するしね」



加奈子がグングン先に進んで行くと、もう目の前にフィル達が見えた。
前方に火の絨毯を展開し、暫く戦闘を眺めている。

(みんな、ほんと危なげなくゴブリンくらいなら倒せてるね)

おおよそ1階のゴブリンを掃除し、加奈子はフィルを連れて2階に上がってみたが、やはりそこにはゴブリンの姿は無かった。

(ん~ ゴブリンって1階にしか居ないのかな?)


目に見える範囲にゴブリンが居なくなったので、天使軍はゾロゾロと外に出て行った。

男が一人増えている事に雲国母娘が少し訝し気な雰囲気を見せているので、加奈子が自己紹介をするように男に促した。

今日からパーティに入れて頂いた 棒妻ぼうつま 洋路ひろみちと言います」
以後、宜しくお願いします」

軽く自己紹介が終わり、9番街と8番街の間に座って今の戦闘の感想を言い合う。
明日桜や緑も率先して話の輪に入っている。



とても楽しそうに話す皆の姿を見て、加奈子の心に嬉しい気持ちが溢れて来る。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

処理中です...