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第五十四話 東都

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 国境の関所はそれなりにピリピリしていたけれど、まあなんとかなった。
 それよりも峠の一番上が関所なのかと勝手に思っていたが、随分とこちら側でやるのだな、とは少し思った。
 そして峠を登り終えると……確かにすぐだ。峠の上から一望が見渡せた。
「ここが東都、旧リップハイツァー王国王都、ダスミューンだ!」
 凄い。何がと言われると……音と煙だ。
 ゴウンゴウンという機械のような音、もうもうと立ち上る煙、カンカンカンと響く鉄の音。いや槌の音なのか?
「なんだ……ここ……」
「ここは鉱山、炭鉱の町さ。そういうの分かるか?」
 アシンさんにお馬鹿さん扱いされてる。それくらい分からぁ!
「鉄とか胴とか掘り出すんでしょ!? 流石に分かるよ!」
「いやエリィの常識は俺達には判別出来ないからな……」
「あくまでも異世界、こちらの常識が無いだけで、そういう常識はあるの!」
「だーから、そのこっちの世界とエリィが元いた世界と何が違うのかが分からないから困るんだって」
 あー……そっか。それはそうかも。
 思わず納得してしまった。常識が違うって難しいよね。
 食べる前に頂きますって言って食べた後にごちそうさまって言うのか、あるいは食べる前にごちそうさまって言って食べた後に頂きますって言うのか。
 同じ意味と言葉でも、常識が違ったらこうなるかもしれない。
 怖いねぇ。
「まあそんな訳で、ここではそういう風に鉱物を掘り出して、炉に放り込んで精製して、そんで精製されて出来たもんを加工して、っていう工程を全部やっちまうのさ。だから鍛冶屋とかも結構あると思うぜ」
「へぇ……面白そう。なんか魔法に便利な剣とか武器とか無いかなぁ」
と私が言うと。
「エリィにはそんなもの必要なかろう。魔法でなんでも出来るではないか」
「そうですぅ今更そんな武器なんて」
 そんな言葉をギンシュとミレイからぶつけられてしまった。
「確かに魔法で割となんでも出来るんだけど、万が一魔法が使えなくなった時とか、あるいは魔法の威力を増強してくれる武器とかあったら強いかなぁって」
「これ以上増強して一体何と戦うというのか……勇者は倒して賢者は味方で、最大の敵に思える魔王こそがそなたなのだぞ……」
 確かに。何と戦うんだろう。
 でもまあ武器って憧れるでしょ!?
 そんなこと言ったら微妙な顔された。ハジメ君はめっちゃ頷いてたけど。
「ま、まあとりあえずギルドに顔出して獲物を金に換えて、宿探しでもするか」
「はーい」
 私達はギルドへと向かった。

 ギルドって国を跨いでも変わらないのね。
 って思ったけどよく考えたら運営元は一緒だった。じゃあしょうがないか。
「そういえばギルドにもやっぱり本部とか総本部とかあるの?」
「あるぞ?」
 流石のギンシュ。
「ちなみにどこに?」
 この返事に答えてくれたのはシグさんである。なんと珍しい。
「ギケー皇国の都だ。今はあそこが一番古いし、なにより国が安定しているからな。戦乱期以前から変わらん」
「へーっ。やっぱり行ってみたいなぁ」
「でも今はとりあえず海を目指して西なんだろ」
「そうだね。西。本当は大陸中を回ってみたいんだけどね」
 そんな会話をしていると、唐突に足がもつれて思いっきり顔を打ち付けて転んでしまった。
 ドタンッ! っという恥ずかしい音が聞こえる。
「あいたたた……」
「おうどうしたエルフの嬢ちゃん!? ひ弱すぎてマトモに歩けねぇってか!?」
「やっぱしだぜ! エルフってぇのは軟弱でいけねぇよなぁ! ぎゃははは!!」
 どうやらこいつらが私に足をひっかけたらしい。前を見ていない私も良くなかったけれど、流石にどうなのさ。
 私の後ろにいた面子は凄くピリピリしてる。一触即発だ。
 なお、ハジメ君だけは「師匠もついにテンプレっすね!」とワクワクしている。このやろう他人事だと思って。
 私は後ろの人にさっと手を上げて、『大丈夫、私が何とかするから』と合図を送る。
「私を転ばして、何か用?」
「そうだなぁ、随分と女ばっかりの面子だからよ、俺達と一緒に『色々』しねぇかと思ってよぉ」
「お断り」
「そう邪険にすんなって」
 無理矢理腕を掴まれそうになるので、さっと後ろに下がる。
「おいおい待てよぉ」
 相手はにやにやしながら私に近付こうとしてくる。
 既に転ばされたし、多少色々やってもいいよね。
 とゆーことで魔法発動。
「えいっ、えいっ、えいっ」
 私は最初の『えいっ』で闇魔法を彼の両手首に放ち、硬化させて両腕を手錠のように胸の前にくっつける。次の『えいっ』では両足を同じように。そして両手両足を繋がれた彼は、全面に倒れ伏すようにして……最後の『えいっ』で頭を踏みつけながら股間に電撃を落としてやった。
「あんぎゃああああああああ!!」
「……さて、次をご指名の方はどちら?」
 回りを見渡すと、皆ぶるぶると震えながら股間を抑えていた。
 私は今踏みつけた彼を蹴飛ばして、うつ伏せからあおむけにさせる。
 彼は涙を流してびくびくとしていたが。
「ご指名がいないって。じゃあもう一度あなたにするわね」
 彼は震えながら
「わ、わるかったおれがわるかったからおねがいしますいまのだけは」
「あんたみたいなのが世の中の女を困らせてるんだから、もうそこ一生使えなくてもいいわよね?」
「おねがいしますごめんなさいほんとすみませんでした」
「反省するならそこもう要らないわよね」
「すみませんすみませんすみません」
「後悔するのが遅いのよ」
 私は再度電撃を食らわす。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
 ……ふぅ、満足。
 流石に本気でどうこうはしていないけど、まあ当分はちょっかい出さないようになるでしょ。
 私は再度周りを見渡すと、皆一斉に私から視線を逸らした。
 そして最初にこの倒れた彼と一緒に騒いでたやつは、顔をぶるぶるとさせながら慌てて土下座をしていたので、頭を踏んづけただけで許してやった。
 もう二度とちょっかいかけないというので。でも次にもしちょっかいかけたらアンタの股間も同じようになるという呪いを股間に印してやった。
 ふぅ、満足。
 そんなことしてるとギンシュから
「エリィ……そなたこれで有名になってしまうぞ」
「えぇ……嫌だなぁ」
 変なあだ名とか二つ名とか付くの嫌なんですけど。『股間撃退エルフ』とか。
 ハジメ君だけは相変わらず「二つ名かっこいいじゃないですか!」とか言ってたけど。おいおい。
 とかやってたらアシンさんがきっちりと任務を果たしてくれた。
「おすすめの宿と鍛冶屋を聞いておいたぜ。お前ら遊んでないでさっさと獲物売ってこいよ」
「はーい」
 私達は売却場の方へと向かった。
 ちなみに最近は解体場に行かなくても、『アイテムボックス』に入れるだけで勝手に解体されてくれる。めっちゃ便利。これは【ステータス】のスキルレベルが上がったからなのかな? 称号のレベルとかは上がらないっぽいからね。多分そういうことだと勝手に認識している。

 という訳で当分の路銀も確保したし、宿へれっつらごー!
 ……いやお金はそれなりに持ってるんだけどね、やっぱりなんかあった時の為にそれなりに持ってても損はないかなって。
 とゆー訳で宿へ。いっちゃんええとこやーって感じのトコでした。
 いやだって明らかに他の宿より大きいし綺麗なんだもん。そしてそこの最上階を確保。よしよし。
 無駄遣い? いえいえそんなことは。お金あるんだし使わないとね!
 ……さっきと言ってること全然違う気がしなくもないけどー、気にしなーい!
 また稼げばよいのだ! この面子だと何やっても稼げそうな気がする。
 冒険者系の採取や討伐は勿論、ハジメ君の料理スキルとかでもなんとかなりそうだし。
 そして本日の最上階。前のホテル程ではないけれど、やっぱりここもとても綺麗だった。
 とゆー訳でごはんたべて、お風呂入ってー、そしてくんずほぐれつ。
 今日はついにシグさんの初日である。皆が期待してくれているので、私も頑張るつもりだ。
 シグさんは「どうしてアンタ達に見せないといけないんだい!?」と言っていたけれど、私が「私が見て貰いたいの。可愛いシグさんが乱れるところを」なーんて言っちゃったから、シグさんくねくねしながら了承してくれた。ああもうそういうとこだよホントかわええな。
 とゆーわけで。いただきまーす。

「あっ……その……はじめてだからぁ……」
「ぅんっ……いやだぁ……見られちゃうぅ……」
「ダメだってばぁ……そんなのぉ……」
「ふぇぇっ!? そんなことしたら……まるみえぇ……」
「はあんっ!? うそっ……へんなこえでちゃう……」
「だめだめそこ触っちゃだっっっ!? めっっ!?!?!? あぁっ!?!?」
「出ちゃうよぉ出ちゃうよぉ出ちゃ……ふぁああああんっっ!!」
「ふぅ……ふぅ……これで……えっまだまだ!? しょんなぁ……」

 ふぅ。堪能させていただきましたよ。ぺろりんちょですな。
 ってかなんでベッドの時だけ喋り方が女の子になるの? シグさん、それは反則でしょ。
 おまけに獣人がベースの肉体だから耳とか尻尾とか触ると反応が劇的に変わって、実にようございました。
 そして皆は見るだけだったのでぐずぐずでありますから、第二ラウンドです。
 こっちも堪能したぞい。満足。
 【クリーン】かけてもう一度お風呂入って、すやすーや。
 明日は鍛冶屋かな。きっと。
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