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初めての授業

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 「であるからしてーー」

 食べられる野草とそうでない野草について実物を見せながら黒板に重要な点をまとめていく植物担当「グレース」先生……

 回復士(ヒーラー)として、瀕死の患者を完治させる回復魔法「エクストラヒール」、それ以外にも薬学に精通し、冒険者兼薬剤師として活動するA級冒険者

 悩みは30という年齢なのに12歳の子供と間違えられること。
 「大人の女性なのに」が口癖。

 「く!……zzz」

 なんとか頑張って起きて授業を受けようとするのだが眠ってしまう。
 
 は!殺気……

 前方から強いプレッシャーを感じて、目を開ける。

 「ふふふ」

 グレース先生がとても良い笑顔で笑っていた。
 
 「……あははは」

 とりあえず微笑みを返す。

 めっちゃ怖え!

 「……これが最後ですよ」

 可愛らしい笑顔から真顔で忠告された。

 あれだ。キャベツ!それが一個大銅貨五枚(500円)だったとする!

 おかしい。昨日は大銅貨二枚だったのに、一日で急な値上げ……

 疑問に思う客を見た店主が出てきて理由を説明する。

 それでも納得がいかない客の様子を見て困った様子を見せてから大銅貨三枚まで値段を下げる。

 すると、

 「え!値下げしてくれるの!」

 と、嬉しくなり買ってしまう。

 この時、客は店主に対して誠実な人という印象を持ちながらお得感から買ってしまう。

 そして一連のやり取りを見かけた周りの客達もこぞって店主にいい印象を抱きつつキャベツを購入していく。

 さらにあの人の店ならと印象に残ったいいお店として次も買いに来てくれる。

 あの感じだ!本当は前日にキャベツは大銅貨二枚だったのに理由を述べることでどうしようもないと言う印象を与える。

 そしてあたかもお客のことを思って値下げをしてくれた!と思われるように困ったふりをしてから目の前で値下げをする。

 真実は昨日よりも値上げしているのにそれをうまく利用した営業術!

 あれと同じだ!見た目と普段の優しそうな印象とのギャップによって怒った時、めちゃくちゃ怖い!

 「く!……私としたことが!やられたぜ……だが!勝敗は授業が終わるまで!まだ完全に負けたわけじゃない!」

 黒板にわかりやすく書いて説明している先生に視線を飛ばす。

 私の視線に気がついたグレース先生は振り返って、

 ーーふん!あなたみたいな生徒を何人相手にしてきたと思っているの!勝つのは私よ!

 と、視線で返事をしてくる。

 ーー絶対に眠ってやる!ーー
 ーー絶対に授業に集中させてやる!ーー



 先生と私の戦いが始まる……



 初手は、グレース先生。

 ーーこれならどう!

 教卓の下から七色に輝く野華を取り出す。

 「じゃーん!世にも珍しい!「レインボー華」よ!」
 「「おお!」」

 教室に生徒達の驚きの声がこだまする。

 ーーどう?これに目を引かれて授業に興味を持ってくれた生徒は数知れず……

 得意気な顔でクミの方を見る。

 「くぁぁぁ……お!エマの胸が揺れた!」

 全く見ておらず、鼻をほじりながら女子の胸を凝視している。

 ーーふ……そんなのに興味はない。

 チラリとグレースを見て、視線で語る私。

 「くそ!それなら……」

 再び教卓の下に手を突っ込む。

 「……セクシーな女性の香りが染み込んだ牧草よ!」
 
 見た感じどこにでも生えている草を取り出す。

 「「……おお?!」」

 反応に困る生徒達。
 それでも薬学のスペシャリストが取り出した物ならきっと何かあるのだろうと。
 とりあえず声を出す。

 「さっき女の子の胸を凝視していた……つまり敵はセクシーな物に目がない男と同じ思考をしている。それなら私の香りが染み込んだ草なら反応するはず……」

 クミの方に視線を向ける途中……

 「おお!」

 と驚く声がクミの方から聞こえた。

 「ふ……やはり百戦錬磨の私の敵では……」

 内心は花火が打ち上がるほどの大喝采。
新年を祝う時の聖国のように皆で花火を見ながら酒を飲み交わす光景のよう。
 しかし表に出さないのがグレース先生という人物。

 そんな内心ではドンチャン騒ぎの中、勝ち誇った顔でクミを見る。
 

 「……えええ!何してんの!」

 クミの驚きの行動に思わず声に出してしまう。

 「先生!どうかしたんですか!」

 突然のグレースの大声に驚愕する生徒達。みんなを代表してユリが先生に尋ねる。

 「……え?……ああ!大丈夫!学校の外をドラゴンが飛んでたから驚いただけよ」

 グレースは咄嗟に嘘をついてごまかす。

 「先生!ーーーーなんだ。驚かせないでくださいよ」
 「ごめんなさいね」

 ユリは着席し、生徒達も「なんだドラゴンか……」と落ち着きを取り戻す。

 「ふぅ」と一安心したグレースはもう一度クミを見る。

 「おおー!今日もいいおっぱいだ!」
 「あははは!ちょっとくすぐったい」

 先ほど凝視していた胸の女生徒といちゃついていた。

 「はい!金貨一枚ね」
 「ちえ……まあ、賽銭だと思えばいいか……どうか!私の胸も大きくなりますように!」
 「……揉んであげようか?」
 「え?じゃあ、金貨二枚ね」
 「ええーなら、いいや。一生、まな板でいたまえ」
 「はぁ!どこがまな板だよ!78くらいはあんぞ?見るか?ご開帳してやるか?ん?」

 おらおらぁと女子生徒の顔に胸を押し付けていた。

 「うっわ!包丁で魚が捌けそうな板じゃん!」
 「……いったな!脂肪の塊!」
 「ふふん……その通りだよ!だから、このプロポーションを保てているのだよ!」

 腰に手を回して胸を張る。

 「「おお!!」」

 男子達からの好感触の反応……ちゃっかり混ざるそれに混ざる私。

 「お?見たな!よし!1人金貨一枚!分割でも可!お支払いはこの後から受け付けるよー」

 エマのサイドビジネスが展開される。

 「「お、おお……」」

 一気に盛り下がる男子達。しかし、その視線がエマの胸から離れることはない。

 「よっしゃ!じゃあ、払えるやつは後でこいよー」

 エマのビジネスは無事成功。

 「……いや。お前ら授業中……」

 キーンコーンカーンコーン……

 「……よっし!お前ら早く代金持ってきな!」
 「「へーい……」」

 授業の終わりを知らせる鐘とともにエマの元に金が動く。

 「……ははは。終わりまーす」

 教材などを小脇に抱えたグレース先生はひっそりと教室を後にする。

 その際にミニスカからピンクの下着が見えたのを私は見逃さなかった。

 「……先生」

 教室から出ていく先生を尊敬の眼差しで見つめ、鼻から雫が垂れる。

 次の日……

 「え!真面目に授業を聞いてくれている!」

 死んだ目で教室へとやってきたグレース先生。

 彼女は誰よりも綺麗な姿勢で着席してメガネをかけて真面目に取り組もうとするクミを見て感動して涙を流す。

 「ああ……きっと私の熱意が通じたのね」

 ミニスカのポケットからハンカチを取り出して目尻を拭う。

 そんな先生の仕草にクミは反応し、A級冒険者でも反応できない速度で移動し覗き込む。

 「うっひゃあ!今日はワインレッドの紐パンかぁ!……先生……ナイスパンツ!」

 スカートを掴む反対の手でサムズアップする。

 あくまでも下心なし。紳士的に。

 なお、実技は……

 「さあ!初回だからみんなの実力を見たい!そこでこれから組み手を行うから全力で来てほしい!まずは、黒髪の女の子から!」

 実技担当A級冒険者の重戦士「クラウド」は、初っ端からクミとの組み手を希望し、無事に星となりました。
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