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ずるいよ……
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私は、アラサー目前のしがない経理事務をしている堀内広美(ほりうちひろみ)28歳
「爽太ぁ!お弁当できたよ!」
「ありがとう!こっちは洗濯物とゴミ集め終わったよ」
毎朝のように私と同じ時間に起きて家事を手伝ってくれる私の旦那様、堀内爽太23歳の工場員。
「助かる!ありがとう!」
私達は昔から家が隣同士だった幼馴染の5歳差の夫婦。
昔から女子にモテるまくる爽太は、なんでか知らないけど、私しか目に入らなかったらしく彼が高校を卒業するタイミングで初めて告白されてから、2年間アプローチを受け続けた。
私は、昔からの弟という認識が外れなくて、告白されるたびに断っていたのだが、社会に出てから、私の元には不倫を迫ってくる男、セクハラをしてくる男ばかりが寄ってきた。
その時期は男を見るだけで怖かった。
でも、そんな時期を過ごす中で爽太だけは違った。
他の男のように、強引に迫ってきたりせず、寄り添ってくれた。
「今日ね。バイト先で先輩が……」
とか、
「友達が、ネズミ花火でバカやらかしてさ」
とか、他愛もない話で笑わせてくれたりと
颯太のおかげで男性への苦手意識が薄れていった。
それから会社の同僚で、
「今日ホテル行こうよ?」
と、付き纏ってくる男性がいることも相談した。
そうしたら、
「俺の彼女に手を出すのやめてもらっていいですか?」
と、その話をした瞬間、その相手に私の携帯で電話をかけて怒ってくれた。
それから、その男性は私に手を出してこなくなった。
やられてしまった。少し前まで泣き虫だった私の弟はいつの間にか立派な男になっていた。
その後、
「しつこくてごめん!何度も何度も……
でも、やっぱり俺の目には「ひろ姉」しか映らなくて……これを最後にするから!俺と付き合って下さい!」
爽太から何度目かわからない告白を受けた。
「本当に物好きだね……」
こんな5歳も年上のおばさん。それに爽太はモテるから、その気になれば可愛い同年代の彼女だってできるだろうに。
「こんな私でよければ。よろしくお願いします」
私は頭を下げた。
「…え?……ええ!ウソ!夢じゃないよね!」
まさか、承諾(しょうだく)されるとは思っていなかった様子の爽太は、顔を上げた私に目を見開いて聞いてきた。
「……夢じゃないよ」
本当に毎回毎回、彼の素直さにはこちらが照れてしまう。
「や、やったー!ずっと!付き合うなら
ひろ姉がいいと思っていたから……
やったぁぁ!」
爽太は感情のままに展望台から街に向かって叫んだ。
「……ちょっ!他にも車が来たから!流石に恥ずかしいからやめて!」
私と付き合えたことをこんなにも喜んでくれる彼をもう少し見ていたいと思う気持ちもあったが、水を差すように別のカップルの乗った車が展望台へとやってきてしまい、慌てて爽太を止める。
「あ、ごめん。つい嬉しくて」
爽太は謝るが、笑顔は健在。込み上げる嬉しさを我慢できないといった様子。
「……私もそんなに喜んでくれるなら、う、嬉しいよ」
照れてしまって最後の方は消え入りそうな声だったけど、ちゃんと聞こえたかな?
私は、つむっていた瞳を開く。
「愛してる」
目を開くと爽太の顔が近くにあって、私にだけ聞こえるように耳元で囁(ささや)かれた。
「……」
15万人都市の夜景、満点の星空、街灯で少しだけ照らされた駐車場……
雰囲気もあったのだろうと思う。けど好きな人から言われる「愛してる」がここまでの威力とは……
周りに他にも人はいたが、爽太の顔しか映らなかった。
そして、現在……
結婚後に2人で買った市街地から少し離れた山の中にある古民家を出る。
私達はいつものように家を出てそれぞれの車に乗り込む前に互いに
「いってらっしゃい」
を、伝えあう。
しかし、いつもなら
「うん!広美も気をつけてね!」
と、言って車に乗り込む爽太なのだが、今日は、私に近づいてきて、
「いってきます。広美も気をつけてね。
ーーーー愛してるよ」
と、爽太は、私の頬にキスをしてから笑う。
「……な、な!」
キスをされた頬を手で撫で、顔を真っ赤に染めて私は固まる。
「それじゃあ!いってきます!」
爽太はいつものように車に乗り込み、出勤していった。
「……不意にくるのは、ずるいわよ……」
ドキドキする胸を両手で押さえる。
「……私だって、愛してるよって言いたいのに!」
遠ざかっていく爽太の車の背に叫ぶ。
「……って!いけない!私も仕事だ!」
それから慌ててわたしは車へと乗り込み、職場へと発進させた。
「爽太ぁ!お弁当できたよ!」
「ありがとう!こっちは洗濯物とゴミ集め終わったよ」
毎朝のように私と同じ時間に起きて家事を手伝ってくれる私の旦那様、堀内爽太23歳の工場員。
「助かる!ありがとう!」
私達は昔から家が隣同士だった幼馴染の5歳差の夫婦。
昔から女子にモテるまくる爽太は、なんでか知らないけど、私しか目に入らなかったらしく彼が高校を卒業するタイミングで初めて告白されてから、2年間アプローチを受け続けた。
私は、昔からの弟という認識が外れなくて、告白されるたびに断っていたのだが、社会に出てから、私の元には不倫を迫ってくる男、セクハラをしてくる男ばかりが寄ってきた。
その時期は男を見るだけで怖かった。
でも、そんな時期を過ごす中で爽太だけは違った。
他の男のように、強引に迫ってきたりせず、寄り添ってくれた。
「今日ね。バイト先で先輩が……」
とか、
「友達が、ネズミ花火でバカやらかしてさ」
とか、他愛もない話で笑わせてくれたりと
颯太のおかげで男性への苦手意識が薄れていった。
それから会社の同僚で、
「今日ホテル行こうよ?」
と、付き纏ってくる男性がいることも相談した。
そうしたら、
「俺の彼女に手を出すのやめてもらっていいですか?」
と、その話をした瞬間、その相手に私の携帯で電話をかけて怒ってくれた。
それから、その男性は私に手を出してこなくなった。
やられてしまった。少し前まで泣き虫だった私の弟はいつの間にか立派な男になっていた。
その後、
「しつこくてごめん!何度も何度も……
でも、やっぱり俺の目には「ひろ姉」しか映らなくて……これを最後にするから!俺と付き合って下さい!」
爽太から何度目かわからない告白を受けた。
「本当に物好きだね……」
こんな5歳も年上のおばさん。それに爽太はモテるから、その気になれば可愛い同年代の彼女だってできるだろうに。
「こんな私でよければ。よろしくお願いします」
私は頭を下げた。
「…え?……ええ!ウソ!夢じゃないよね!」
まさか、承諾(しょうだく)されるとは思っていなかった様子の爽太は、顔を上げた私に目を見開いて聞いてきた。
「……夢じゃないよ」
本当に毎回毎回、彼の素直さにはこちらが照れてしまう。
「や、やったー!ずっと!付き合うなら
ひろ姉がいいと思っていたから……
やったぁぁ!」
爽太は感情のままに展望台から街に向かって叫んだ。
「……ちょっ!他にも車が来たから!流石に恥ずかしいからやめて!」
私と付き合えたことをこんなにも喜んでくれる彼をもう少し見ていたいと思う気持ちもあったが、水を差すように別のカップルの乗った車が展望台へとやってきてしまい、慌てて爽太を止める。
「あ、ごめん。つい嬉しくて」
爽太は謝るが、笑顔は健在。込み上げる嬉しさを我慢できないといった様子。
「……私もそんなに喜んでくれるなら、う、嬉しいよ」
照れてしまって最後の方は消え入りそうな声だったけど、ちゃんと聞こえたかな?
私は、つむっていた瞳を開く。
「愛してる」
目を開くと爽太の顔が近くにあって、私にだけ聞こえるように耳元で囁(ささや)かれた。
「……」
15万人都市の夜景、満点の星空、街灯で少しだけ照らされた駐車場……
雰囲気もあったのだろうと思う。けど好きな人から言われる「愛してる」がここまでの威力とは……
周りに他にも人はいたが、爽太の顔しか映らなかった。
そして、現在……
結婚後に2人で買った市街地から少し離れた山の中にある古民家を出る。
私達はいつものように家を出てそれぞれの車に乗り込む前に互いに
「いってらっしゃい」
を、伝えあう。
しかし、いつもなら
「うん!広美も気をつけてね!」
と、言って車に乗り込む爽太なのだが、今日は、私に近づいてきて、
「いってきます。広美も気をつけてね。
ーーーー愛してるよ」
と、爽太は、私の頬にキスをしてから笑う。
「……な、な!」
キスをされた頬を手で撫で、顔を真っ赤に染めて私は固まる。
「それじゃあ!いってきます!」
爽太はいつものように車に乗り込み、出勤していった。
「……不意にくるのは、ずるいわよ……」
ドキドキする胸を両手で押さえる。
「……私だって、愛してるよって言いたいのに!」
遠ざかっていく爽太の車の背に叫ぶ。
「……って!いけない!私も仕事だ!」
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