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プロローグ
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「エリーゼ様。全てからあなたを守ると誓いましたのに守れず申し訳ありません」
ボロボロの服を身に纏った黒髪の少年が、同じくボロボロの服を着たひすい色の髪をした美しい少女に頭を下げる。
「いいえ。あなたは私を無事に守ってくれました。アーク。ありがとう」
エリーゼ姫は、アークに笑いかける。
時は遡り1年前……
「アーク・ブライト。この者を正式にマース小王国エリーゼ王女の騎士と認める!姫様。この者の前へ」
玉座の間で片膝を突く、黒髪の少年アーク・ブライトの前に、彼の主君にたるひすい色の美しい少女エリーゼ・フォン・マースが進む。
アークは姫が前にきたのを確認し、鞘に入った刀を両手で持つ。
「私は、姫様の剣。姫様の前に立ちはだかるもの全てを斬り、姫様をお守りします」
俺は、姫様の前で自分の思いを乗せた誓いを立てる。
姫様は俺の宣言に少し笑いを浮かべる。
「私、エリーゼ・フォン・マースは、この者、アーク・ブライトを騎士として認める!アーク!信じていますよ。これからもよろしくお願いしますね」
「は!」
こうして俺はマース小王国の正式な騎士になった。
その後、騎士任命式はつつがなく終わり、玉座の間を後にする。
王城と言っても、他国からしたら貴族の屋敷と変わらない城の別室で姫様と合流した。
「これでアークも正式な騎士となれましたね」
「はい。いまだに信じられません。夢のようです」
「ふふふ。それは良かった。では、早速畑に作業に行きます。警護……と言っても作業を手伝ってもらうだけなのだけどね」
「もちろんです。ご一緒します」
マース小王国は、王都の他に町が2つと村が1つあるくらいで、そこまで大きな国ではないので税収はほとんど国の運営で使っている。
なので、王家にお金はない。その為、庭園を畑にして、自給自足で暮らしている。
かつては争う国々に平和を説き、大陸統一国家マース王国を築ずき平和な世を作ったが、国ができて200年後、平和に統治していたマース13世の弟が反乱を起こし、国は瓦解した。
その後、マース13世は首を刎ねられたが、その血族は大陸の東の果てへと逃げ延び、50年かけて現在の小王国を作った。
「姫様!二十日大根が食べごろになってきましたよー!」
王都民達が、野菜を持って姫様のところへやってくる。
「本当ですね。私たちも今日は二十日大根を食べることにしましょう」
「姫様にはこの前、お肉をもらったからお礼にふきのとうとたけのこをとってきたんだもらってくれ」
王都民が姫様にカゴいっぱいに入った山菜を渡す。
「こんなに……あなた達の家は大丈夫なのですか?」
「心配いりやせんよ。今年は沢山取れたましたから」
「そうですか。それではありがたく頂きます」
王城の畑は、王都民達も利用しているので、王族関係なくみんなで畑を管理している。
その為、この国は王族も民達と距離が近い。
「アーク!みてください。今夜はタケノコとふきのとうの揚げ物にしましょう」
「それはいいですね。今から夕食が楽しみです」
夕食……
「おお!今日は豪勢だな!」
「はい。民にタケノコをもらったので揚げ物にしてみました」
「こうしちゃおれんな!温かいうちに皆で食べよう!」
立場関係なく家臣も一緒に夕食を食べる。
夕食後は、父であるアッシュ騎士長と手合わせをする。
「さあ。どこからでもかかってきなさい!」
「お願いします」
手合わせは刀による実戦に近い訓練。
ブライト家は古くからマース王家に使える騎士をしている。
その血筋は、今の大陸では珍しい東の果てに存在すると伝承で言われる島国。
その国では刀と呼ばれる湾曲した細い刃をした剣を腰に携えるのが特徴。他にも黒髪というのも東の果ての民の証とされている。
その為、幼い頃から父に刀の扱いを習い、訓練してきた。得意技は居合。
今では、自身で考案した両肩に小太刀、左右の腰に太刀をさした4頭流を使っている。
4頭流のワケは、ブライト流の体術を併用しながらでも瞬時に居合を放てるようにするため。
相手に攻撃を絞らせないためと多人数を相手にした時、刀を両手で持っていては不利になると考えたからだ。
俺は、右腰の刀に手を添え、居合の構えを取る。
父の間合い近くまですり足で近づき、抜足と呼ばれる古武術を使い接近して、刀を一閃。
「良い抜足だ。途中まで近づいているのにも気づかなかった。それに普通の剣士なら目で追うこともできないほどの速さの抜刀だったな。が、私には通用しないな」
父はなんなく構えていた刀で受け止めて弾き返す。
「参りました」
「アーク。忘れるなよ。戦いの中でこそ学ぶことが多い。それに限界を越えるためには発想力というものも大切だ。考えよ。どうすれば良いかを」
「はい!」
手合わせ後は、水浴びで体を清め、姫様のところに向かう。
「今日はどうでした?」
「まだまだでした。ですが、これからも精進していつか父を超えます!どんな事からでも姫様を守れるように」
「信じています」
姫様が笑う。
…………
「おーい!新入り!起きろー」
「おじさんうるさいよ!」
男の声に目を覚ます。
「だってよー。まだ自己紹介してねぇしよ」
「奴隷剣闘士でいつ死ぬかも分からないのに名前なんて知る必要あるの?」
「あるよ!お互いに名前知らねえと呼びづらいじゃねえか」
男達が言い合いを始める。
(そうだ……隣国のプロミネンス王国によってマース小王国は滅ぼされたんだ)
ボロボロの服を身に纏った黒髪の少年が、同じくボロボロの服を着たひすい色の髪をした美しい少女に頭を下げる。
「いいえ。あなたは私を無事に守ってくれました。アーク。ありがとう」
エリーゼ姫は、アークに笑いかける。
時は遡り1年前……
「アーク・ブライト。この者を正式にマース小王国エリーゼ王女の騎士と認める!姫様。この者の前へ」
玉座の間で片膝を突く、黒髪の少年アーク・ブライトの前に、彼の主君にたるひすい色の美しい少女エリーゼ・フォン・マースが進む。
アークは姫が前にきたのを確認し、鞘に入った刀を両手で持つ。
「私は、姫様の剣。姫様の前に立ちはだかるもの全てを斬り、姫様をお守りします」
俺は、姫様の前で自分の思いを乗せた誓いを立てる。
姫様は俺の宣言に少し笑いを浮かべる。
「私、エリーゼ・フォン・マースは、この者、アーク・ブライトを騎士として認める!アーク!信じていますよ。これからもよろしくお願いしますね」
「は!」
こうして俺はマース小王国の正式な騎士になった。
その後、騎士任命式はつつがなく終わり、玉座の間を後にする。
王城と言っても、他国からしたら貴族の屋敷と変わらない城の別室で姫様と合流した。
「これでアークも正式な騎士となれましたね」
「はい。いまだに信じられません。夢のようです」
「ふふふ。それは良かった。では、早速畑に作業に行きます。警護……と言っても作業を手伝ってもらうだけなのだけどね」
「もちろんです。ご一緒します」
マース小王国は、王都の他に町が2つと村が1つあるくらいで、そこまで大きな国ではないので税収はほとんど国の運営で使っている。
なので、王家にお金はない。その為、庭園を畑にして、自給自足で暮らしている。
かつては争う国々に平和を説き、大陸統一国家マース王国を築ずき平和な世を作ったが、国ができて200年後、平和に統治していたマース13世の弟が反乱を起こし、国は瓦解した。
その後、マース13世は首を刎ねられたが、その血族は大陸の東の果てへと逃げ延び、50年かけて現在の小王国を作った。
「姫様!二十日大根が食べごろになってきましたよー!」
王都民達が、野菜を持って姫様のところへやってくる。
「本当ですね。私たちも今日は二十日大根を食べることにしましょう」
「姫様にはこの前、お肉をもらったからお礼にふきのとうとたけのこをとってきたんだもらってくれ」
王都民が姫様にカゴいっぱいに入った山菜を渡す。
「こんなに……あなた達の家は大丈夫なのですか?」
「心配いりやせんよ。今年は沢山取れたましたから」
「そうですか。それではありがたく頂きます」
王城の畑は、王都民達も利用しているので、王族関係なくみんなで畑を管理している。
その為、この国は王族も民達と距離が近い。
「アーク!みてください。今夜はタケノコとふきのとうの揚げ物にしましょう」
「それはいいですね。今から夕食が楽しみです」
夕食……
「おお!今日は豪勢だな!」
「はい。民にタケノコをもらったので揚げ物にしてみました」
「こうしちゃおれんな!温かいうちに皆で食べよう!」
立場関係なく家臣も一緒に夕食を食べる。
夕食後は、父であるアッシュ騎士長と手合わせをする。
「さあ。どこからでもかかってきなさい!」
「お願いします」
手合わせは刀による実戦に近い訓練。
ブライト家は古くからマース王家に使える騎士をしている。
その血筋は、今の大陸では珍しい東の果てに存在すると伝承で言われる島国。
その国では刀と呼ばれる湾曲した細い刃をした剣を腰に携えるのが特徴。他にも黒髪というのも東の果ての民の証とされている。
その為、幼い頃から父に刀の扱いを習い、訓練してきた。得意技は居合。
今では、自身で考案した両肩に小太刀、左右の腰に太刀をさした4頭流を使っている。
4頭流のワケは、ブライト流の体術を併用しながらでも瞬時に居合を放てるようにするため。
相手に攻撃を絞らせないためと多人数を相手にした時、刀を両手で持っていては不利になると考えたからだ。
俺は、右腰の刀に手を添え、居合の構えを取る。
父の間合い近くまですり足で近づき、抜足と呼ばれる古武術を使い接近して、刀を一閃。
「良い抜足だ。途中まで近づいているのにも気づかなかった。それに普通の剣士なら目で追うこともできないほどの速さの抜刀だったな。が、私には通用しないな」
父はなんなく構えていた刀で受け止めて弾き返す。
「参りました」
「アーク。忘れるなよ。戦いの中でこそ学ぶことが多い。それに限界を越えるためには発想力というものも大切だ。考えよ。どうすれば良いかを」
「はい!」
手合わせ後は、水浴びで体を清め、姫様のところに向かう。
「今日はどうでした?」
「まだまだでした。ですが、これからも精進していつか父を超えます!どんな事からでも姫様を守れるように」
「信じています」
姫様が笑う。
…………
「おーい!新入り!起きろー」
「おじさんうるさいよ!」
男の声に目を覚ます。
「だってよー。まだ自己紹介してねぇしよ」
「奴隷剣闘士でいつ死ぬかも分からないのに名前なんて知る必要あるの?」
「あるよ!お互いに名前知らねえと呼びづらいじゃねえか」
男達が言い合いを始める。
(そうだ……隣国のプロミネンス王国によってマース小王国は滅ぼされたんだ)
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