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それぞれの結末
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「キャロル!アイデアが降りてこない!」
雨季が過ぎた七月中旬、衣替えによって夏服になった私をじっくり描きたいと、長期休暇にも関わらずアトリエにこもって私とロベルトは絵を描いていた。
「ちょっと待って。実家から手紙が来てるから読ませて」
絵が思うように進まなくて必死に私はすがりついてくるロベルトをよそに私は父から送られてきた手紙に目を通していた。でも、その内容は「王子に会わせろ」そして「女王に取り入れされろ」というものでした。
「はぁ……またか」
これで何十回目になるかわからない手紙にこめかみが痛み出した。
あの日ーー絵を張り出した日、エリザベス女王陛下に理事長室へ連れて行かれた私ーーキャロルとロベルト、ミリィ様、マリアベルはそれぞれにサタを言い渡された。
「まずはマリアベル・レバノン」
名前を呼ばれたマリアベルは何で自分がここにいるのか納得がいかないといった顔で話を聞いていた。だけど、その顔はすぐに曇り青ざめることとなった。
「それは嘘にございます!」
「と私に言われましても学園の退学とレバノン家からの追放はあなたのお父様がお決めになったことです。なので、あなたがしたという一方的な婚約破棄、多数の殿方との淫行などについてはそちらへ弁明してください」
「そ、そんな……」
それだけ伝えるとエリザベス女王陛下は、マリアベルを理事長室から退かせた。このあと人伝に聞いた話では、マリアベルは結局家を追放され、貴族の身分も剥奪され、その後は行方不明でどこで何をしてるのかすら知らないという。
しかしあんなにマリアベルを甘やかしていた両親や使用人達が追放という決断をするなんてよっぽど庇いきれなかったのだろう。
「次にミリィ・ブライアン。あなたのブライアン公爵家と我が王家は建国時からの長い付き合いがある。だから、本当は見なかったことにしたいのだが、こうも目撃者がいると何も処分を下さないのは王家の体面としてもよろしくない……」
エリザベス女王陛下はまわりくどく、マリアベルの時のように即座に処断することなくまるで何かを促すように話した。そしてミリィ様は何を察したのか、
「第二王子レイブン・ボルテン殿下との婚約の解消、並びにこの学院を退学をもってこの度の責任を取らせていただきます」
と頭を下げた。
「処罰としては軽いかも知れないが、幼い頃から優秀だったあなたが婚約者ということでレイブンも随分と救われていました。今回はそれに免じて」
エリザベス女王陛下はミリィ様の申し出を受理され、それを聞いたミリィ様は何も言わずに一礼すると
目を伏せたまま理事長室を出ていった。
その後の彼女は初めは領地にある屋敷の自室にこもってしまっていたようだが、それでも気持ちに決着をつけることができたようで今では領地開発に注力し、毎日領地内を馬で駆け回っていると人伝に聞いた。
その姿はお転婆そのもので、体力自慢の兵士たちが付いていけないほど元気よく走り回っているそうだ。
「最後にロベルト、キャロル・レバノン」
最後に私とロベルトの名前が同時に呼ばれた。名前を呼ばれた時ドキッとした。どうなるのか不安だったから。だけど、予想に反して、
「ロベルト。あなたは今のまま進みなさい。キャロル・レバノン。ロベルトのことを頼みます」
私とロベルトの関係は認められた。それから特に何かあるわけではなく、
「お待たせ」
「頼む!俺を罵ってくれぇぇ!」
今もこうして二人で一緒に楽しく過ごしている。
「アイデアが出ないとか……このポンコツ!」
「はっふぅぅぅん!ありがとうございますぅぅ!」
雨季が過ぎた七月中旬、衣替えによって夏服になった私をじっくり描きたいと、長期休暇にも関わらずアトリエにこもって私とロベルトは絵を描いていた。
「ちょっと待って。実家から手紙が来てるから読ませて」
絵が思うように進まなくて必死に私はすがりついてくるロベルトをよそに私は父から送られてきた手紙に目を通していた。でも、その内容は「王子に会わせろ」そして「女王に取り入れされろ」というものでした。
「はぁ……またか」
これで何十回目になるかわからない手紙にこめかみが痛み出した。
あの日ーー絵を張り出した日、エリザベス女王陛下に理事長室へ連れて行かれた私ーーキャロルとロベルト、ミリィ様、マリアベルはそれぞれにサタを言い渡された。
「まずはマリアベル・レバノン」
名前を呼ばれたマリアベルは何で自分がここにいるのか納得がいかないといった顔で話を聞いていた。だけど、その顔はすぐに曇り青ざめることとなった。
「それは嘘にございます!」
「と私に言われましても学園の退学とレバノン家からの追放はあなたのお父様がお決めになったことです。なので、あなたがしたという一方的な婚約破棄、多数の殿方との淫行などについてはそちらへ弁明してください」
「そ、そんな……」
それだけ伝えるとエリザベス女王陛下は、マリアベルを理事長室から退かせた。このあと人伝に聞いた話では、マリアベルは結局家を追放され、貴族の身分も剥奪され、その後は行方不明でどこで何をしてるのかすら知らないという。
しかしあんなにマリアベルを甘やかしていた両親や使用人達が追放という決断をするなんてよっぽど庇いきれなかったのだろう。
「次にミリィ・ブライアン。あなたのブライアン公爵家と我が王家は建国時からの長い付き合いがある。だから、本当は見なかったことにしたいのだが、こうも目撃者がいると何も処分を下さないのは王家の体面としてもよろしくない……」
エリザベス女王陛下はまわりくどく、マリアベルの時のように即座に処断することなくまるで何かを促すように話した。そしてミリィ様は何を察したのか、
「第二王子レイブン・ボルテン殿下との婚約の解消、並びにこの学院を退学をもってこの度の責任を取らせていただきます」
と頭を下げた。
「処罰としては軽いかも知れないが、幼い頃から優秀だったあなたが婚約者ということでレイブンも随分と救われていました。今回はそれに免じて」
エリザベス女王陛下はミリィ様の申し出を受理され、それを聞いたミリィ様は何も言わずに一礼すると
目を伏せたまま理事長室を出ていった。
その後の彼女は初めは領地にある屋敷の自室にこもってしまっていたようだが、それでも気持ちに決着をつけることができたようで今では領地開発に注力し、毎日領地内を馬で駆け回っていると人伝に聞いた。
その姿はお転婆そのもので、体力自慢の兵士たちが付いていけないほど元気よく走り回っているそうだ。
「最後にロベルト、キャロル・レバノン」
最後に私とロベルトの名前が同時に呼ばれた。名前を呼ばれた時ドキッとした。どうなるのか不安だったから。だけど、予想に反して、
「ロベルト。あなたは今のまま進みなさい。キャロル・レバノン。ロベルトのことを頼みます」
私とロベルトの関係は認められた。それから特に何かあるわけではなく、
「お待たせ」
「頼む!俺を罵ってくれぇぇ!」
今もこうして二人で一緒に楽しく過ごしている。
「アイデアが出ないとか……このポンコツ!」
「はっふぅぅぅん!ありがとうございますぅぅ!」
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