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それぞれの想い②
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マリアベルside
「見たか!」
私は見て指をさすキャロルは隣のロベルトと笑い合った。
(くそ!調子にのって!)
二人の姿を見ていても不快でしかなかった。私は人混みを抜けて教室へ向かおうとした。
(絶対にチャンスは巡ってくる。そうなったらお前らの幸せを全部壊してやる)
だけど、
「ロベルト殿下!」
私の背後ーー人混みの向こうから聞いたことのある声がした。
(もしかして……)
立ち止まって振り返った。そして私はその光景を目にした瞬間、思わず笑ってしまった。なぜなら職員用玄関の方に理事長で、この国の女王であるエリザベスが居て、人混みの中心ではキャロル、ロベルトともう1人、
「あなたのことがずっと好きでした!大好きでした!」
ミリィがいた。さらにミリィは衆目の前で第二王子という婚約者がいながら第三王子であるロベルトのことが好きだと言った。それにそのロベルトはキャロルを抱き寄せている。王族という身分に相応しくない男爵令嬢を……。
(くふふ。これは)
そんな光景を前に私は、
(くふふふ)
心の中で盛大に笑った。
◇◇◇
ミリィside
朝日が眩しい。ロベルト殿下とキャロルが抱き合う姿を見た後、全く眠れなかった。だから、今は頭が痛くて、それに加えて女の子の日特有の気だるさで体調は最悪だった。
でも、第二王子の婚約者として学業を疎かにするわけにはいかない。平静を装って登校した。みんないつも通りの私を見てにこやかに挨拶してきた。だから私もいつものように返した。
どうやら体調不良であることは誰も気づいていないようだった。よかった、と一安心した。さらにひどい頭痛のせいで悩む余裕もなくて助かった。
(よかった)
体調不良に感謝しつつ、いつものように生徒用玄関の門を潜って靴を履き替えた。あとはこのまま教室に行って授業を受けて寮へ戻って復習して眠る。それだけのこと。ロベルト殿下を見かけたり、噂を聞いたら目を瞑るなりして逃げる。それだけのこと。
「見たか!」
それだけのことだった。
「おお!言うね!」
だけど、
「はい!」
玄関の門を潜った先にはロベルト殿下とキャロルが笑い合う姿があった。その背後にはあどけないキャロルに似た少女の絵が貼られていた。
"ロベルト殿下の隣にいるのが何で私ではないの"
その光景を見ていたら、ぽっと消えていた想いが浮かび上がって穏やかだった心が一瞬にして支配されて気づいたら人混みをかき分けてロベルト殿下の正面に立っていた。
「ロベルト様!」
言ってはいけない。隠さなければならない。言ってしまったら色んな人たちに迷惑をかけることになってしまう。
「私はずっと……ずっと!幼い頃から」
わかってる。なのに、止められない。だって楽しそうに笑う姿を見たら私の想いを知ってほしいと思ってしまった。
「あなたのことが好きでした!大好きでした!」
もう遅いってわかってる。ただこのまま想いを告げないままでいたくなかった。
◇◇◇
ロベルトside
「幼い頃からあなたのことが好きでした!大好きでした!!」
人混みをかき分けて現れた深い茶色の髪に見覚えのある女性が俺に向かって制服の胸元を握りしめて悲痛な顔で、声で、想いを絞り出すように言った。
(確か兄上の婚約者の……)
名前まではよく覚えていない。だけど、過去に三回くらい顔を合わせてそのうち一度だけ話したことがあった。
どんな内容だったかは覚えていないけど。ただ様子からかなり勇気を振り絞って想いを伝えてくれたのだろうことは伝わった。だから俺は、
「すまん。俺が愛してんのはキャロルなんだわ」
と、俺の隣で事の成り行きを口を開けたまま呆然と見守っていたキャロルを抱き寄せた。そんなキャロルは「え、ちょ……」と頬を赤く染めていた。
「だから、あんたの想いにこたえることはできない」
兄上の婚約者に俺の想いを伝えた。
「っ……!」
兄上の婚約者は俺の答えに下を向くとしばらくプルプル震えた後に、
「ふぅぅ」
と息を吐き出した。そして顔を上げてキャロルに視線を移すと指差して、
「じゃあ、あなたはロベルト殿下の事をどう想ってるの?」
と聞いた。
「えっ、わ、私ですか?!」
聞かれたキャロルは見ていて面白いほどに動揺して目を回していた。顔も夏の18時くらいの夕日のように紅くなっていて、今にも爆発してしまいそうだった。
(おお。面白いくらいに動揺してんな)
キャロルの慌て振りを見て助け舟でも出すかと思ったけど、よくよく考えたら「一緒にいたい」と言われただけでキャロルの口からはっきりとした気持ちを聞いたことがないと思った俺は、
「おお(棒)そういえばキャロルの口から聞いたことなかったなー(棒)キャロルは俺のことどう思ってるんだろうなー(棒)」
ニヤニヤしながらキャロルを見た。
「え、ええええ!!!」
◇◇◇
キャロルside
"ロベルト殿下の事どう想ってるの?"
そう真剣な眼差しで問われた私はドキッとした。照れるとか恥ずかしいとかの類ではなく、今の私の心の葛藤を見透かされたような気がしたからだった。
"一緒にいたいよぉ"
マリアベルに現実を突きつけられたあの日、私はロベルト殿下に想いを伝えた。
ロベルト殿下との日常はかけがえのないものになっていた。そしてそんな日々の中でロベルト殿下を一人の男性として愛しているのだと気がついた。だから「一緒にいたい」と伝えた。
だけど、一つ伝え忘れてしまったことがあった。
「どうしようもないくらいにロベルト殿下のことが大好きなの!」
という想いだった。「一緒にいたい」と伝えたからこの想いも伝わってるだろうとも思った。でも、本当に言葉にして伝えなくていいの?ロベルト殿下は毎日のようにこんな私のことを、
「美しい」
と言ってくれるというのに。
"キャロルは俺のことどう思ってるんだろなー"
私はギュッと手を握りしめた。
(王子と男爵令嬢だから身分が釣り合わないんじゃ)
関係ない。
(衆目の前で想いを伝えるのは常識的に考えて)
関係ない!
(もっと言葉を選んで考えてから伝えたほうが)
関係ない!!このロベルト殿下を好きって想いをそのまま言葉にすればいい!!
「すぅぅ」
私は息を吸って、
「わ、私は……」
多くの生徒達が見守る中で、
「ロベルト殿下のことが大、大、大好きー!!」
って言った。
「一生!一緒にいたいー!!」
って伝えた。そうしたら、
「ははは!!俺もキャロルのことが大好きだー!」
ロベルト殿下が抱きついてきたので、
「私も!」
って抱きしめ返した。
◇◇◇
マリアベルside
「俺もキャロルのことが大好きだー!!」
「私も!」
抱きしめ合うキャロルとロベルト。
「……」
それを無言で見守るミリィと、
「え……」
「ロベルト殿下とあの娘が」
抱きしめ合う二人。そして、
「ミリィ様……」
「婚約者がいるというのに……信じられないわ」
ミリィを見て絶句する生徒達は次々にそれぞれの想いを口にしていた。中には、ミリィを心配する者や身分差の恋に羨望の眼差しを向ける者もいたけどその大半は、
(チャーンス!!)
三人をよく思わない否定的な者たちがほとんどだった。それを確認した私は人混みの中に紛れ込んだ。
(散々、私のことを馬鹿にしてくれたお礼よ。とくと受け取れ!)
勝利を確信し、三人の人生がめちゃくちゃになった少し先の未来を想像して胸を踊らせつつ、
「婚約者がいながら他の男に告白するって……人としてどうなんですか?」
みんなの思いを代弁してあげた。すると狙い通り、
「そ、そうだ!」
「そうよ!不潔よ!」
と、私をきっかけとしてそれぞれの思ったことをミリィへとぶつけていった。続けて私は、
「身分差の恋って聞こえはいいけど、本来は王族と結ばれるほとんどの令嬢の身分が侯爵以上であることを考えると……その相手は男爵令嬢ですが身分が釣り合っていないと思うのですが」
キャロルとロベルトに向けてみんなの思いを代弁してやった。案の定、
「そうよ!そんな身分じゃロベルト様に相応しくありませんわ!」
「ロベルト殿下!私なんてどうでしょうか!!」
ミリィの時と同じ結果になった。そして生徒たちの勢いは激しさを増して三人を分断し、それぞれのグループで囲んだ。
「正妻とはいかないが妾にしてやろう」
「俺の愛人枠でメイドになれ」
と、キャロルは伯爵家以上の令息達に迫られ、
「ロベルト殿下!」
「わ、私と結婚してくださいまし!」
と、ロベルトは令嬢達に迫られ、
「見損ないましたわ!」
「令嬢の風上にも置けないわ!」
と、ミリィは責められていた。
(くひひひ!いい気味)
そんな三人を人混みの中から見て私は成就したかった願いを叶えたことで嬉しさが込み上げてきて笑ってしまった。
(あとはこの騒ぎを見て固まっているエリザベスが動けば)
一歩。離れたところで騒ぎを見ているエリザベスへ視線を動かした。一瞬で閃いた計画のラストは、エリザベスが生徒達に教室へ行くように注意するはずだから、注意されて教室へ向かう同級生達に紛れてこの場を去ればいい。
「静かにしなさい!授業の始まりを告げる鐘はとっくに鳴っています!早く教室へ行きなさい!」
エリザベスが近づいてきて生徒達に注意した。すると生徒達は不満気な顔をしつつもこの国の絶対権力者の一言に逆らうわけにいかず渋々といった様子で教室へと歩き出した。
(くひひ。完璧!あとは人の波に紛れて)
人波に合流した。そして流れに逆らわないように後ろへ振り返りエリザベスに呼び止められたキャロル、ロベルト、ミリィを一瞥して今一度笑ってから歩き出した。
「ああ、忘れてました……マリアベル・レバノン!あなたも一緒に理事長室へ来なさい。お話があります」
今日から再び安眠の日々が送れる。とウキウキしていた私は突然、エリザベスに呼び止められてしまった。
(え……え?何で?)
状況が理解できず固まっていたらエリザベスの従者に捕まり、問答無用で理事長室へと連れて行かれた。
「見たか!」
私は見て指をさすキャロルは隣のロベルトと笑い合った。
(くそ!調子にのって!)
二人の姿を見ていても不快でしかなかった。私は人混みを抜けて教室へ向かおうとした。
(絶対にチャンスは巡ってくる。そうなったらお前らの幸せを全部壊してやる)
だけど、
「ロベルト殿下!」
私の背後ーー人混みの向こうから聞いたことのある声がした。
(もしかして……)
立ち止まって振り返った。そして私はその光景を目にした瞬間、思わず笑ってしまった。なぜなら職員用玄関の方に理事長で、この国の女王であるエリザベスが居て、人混みの中心ではキャロル、ロベルトともう1人、
「あなたのことがずっと好きでした!大好きでした!」
ミリィがいた。さらにミリィは衆目の前で第二王子という婚約者がいながら第三王子であるロベルトのことが好きだと言った。それにそのロベルトはキャロルを抱き寄せている。王族という身分に相応しくない男爵令嬢を……。
(くふふ。これは)
そんな光景を前に私は、
(くふふふ)
心の中で盛大に笑った。
◇◇◇
ミリィside
朝日が眩しい。ロベルト殿下とキャロルが抱き合う姿を見た後、全く眠れなかった。だから、今は頭が痛くて、それに加えて女の子の日特有の気だるさで体調は最悪だった。
でも、第二王子の婚約者として学業を疎かにするわけにはいかない。平静を装って登校した。みんないつも通りの私を見てにこやかに挨拶してきた。だから私もいつものように返した。
どうやら体調不良であることは誰も気づいていないようだった。よかった、と一安心した。さらにひどい頭痛のせいで悩む余裕もなくて助かった。
(よかった)
体調不良に感謝しつつ、いつものように生徒用玄関の門を潜って靴を履き替えた。あとはこのまま教室に行って授業を受けて寮へ戻って復習して眠る。それだけのこと。ロベルト殿下を見かけたり、噂を聞いたら目を瞑るなりして逃げる。それだけのこと。
「見たか!」
それだけのことだった。
「おお!言うね!」
だけど、
「はい!」
玄関の門を潜った先にはロベルト殿下とキャロルが笑い合う姿があった。その背後にはあどけないキャロルに似た少女の絵が貼られていた。
"ロベルト殿下の隣にいるのが何で私ではないの"
その光景を見ていたら、ぽっと消えていた想いが浮かび上がって穏やかだった心が一瞬にして支配されて気づいたら人混みをかき分けてロベルト殿下の正面に立っていた。
「ロベルト様!」
言ってはいけない。隠さなければならない。言ってしまったら色んな人たちに迷惑をかけることになってしまう。
「私はずっと……ずっと!幼い頃から」
わかってる。なのに、止められない。だって楽しそうに笑う姿を見たら私の想いを知ってほしいと思ってしまった。
「あなたのことが好きでした!大好きでした!」
もう遅いってわかってる。ただこのまま想いを告げないままでいたくなかった。
◇◇◇
ロベルトside
「幼い頃からあなたのことが好きでした!大好きでした!!」
人混みをかき分けて現れた深い茶色の髪に見覚えのある女性が俺に向かって制服の胸元を握りしめて悲痛な顔で、声で、想いを絞り出すように言った。
(確か兄上の婚約者の……)
名前まではよく覚えていない。だけど、過去に三回くらい顔を合わせてそのうち一度だけ話したことがあった。
どんな内容だったかは覚えていないけど。ただ様子からかなり勇気を振り絞って想いを伝えてくれたのだろうことは伝わった。だから俺は、
「すまん。俺が愛してんのはキャロルなんだわ」
と、俺の隣で事の成り行きを口を開けたまま呆然と見守っていたキャロルを抱き寄せた。そんなキャロルは「え、ちょ……」と頬を赤く染めていた。
「だから、あんたの想いにこたえることはできない」
兄上の婚約者に俺の想いを伝えた。
「っ……!」
兄上の婚約者は俺の答えに下を向くとしばらくプルプル震えた後に、
「ふぅぅ」
と息を吐き出した。そして顔を上げてキャロルに視線を移すと指差して、
「じゃあ、あなたはロベルト殿下の事をどう想ってるの?」
と聞いた。
「えっ、わ、私ですか?!」
聞かれたキャロルは見ていて面白いほどに動揺して目を回していた。顔も夏の18時くらいの夕日のように紅くなっていて、今にも爆発してしまいそうだった。
(おお。面白いくらいに動揺してんな)
キャロルの慌て振りを見て助け舟でも出すかと思ったけど、よくよく考えたら「一緒にいたい」と言われただけでキャロルの口からはっきりとした気持ちを聞いたことがないと思った俺は、
「おお(棒)そういえばキャロルの口から聞いたことなかったなー(棒)キャロルは俺のことどう思ってるんだろうなー(棒)」
ニヤニヤしながらキャロルを見た。
「え、ええええ!!!」
◇◇◇
キャロルside
"ロベルト殿下の事どう想ってるの?"
そう真剣な眼差しで問われた私はドキッとした。照れるとか恥ずかしいとかの類ではなく、今の私の心の葛藤を見透かされたような気がしたからだった。
"一緒にいたいよぉ"
マリアベルに現実を突きつけられたあの日、私はロベルト殿下に想いを伝えた。
ロベルト殿下との日常はかけがえのないものになっていた。そしてそんな日々の中でロベルト殿下を一人の男性として愛しているのだと気がついた。だから「一緒にいたい」と伝えた。
だけど、一つ伝え忘れてしまったことがあった。
「どうしようもないくらいにロベルト殿下のことが大好きなの!」
という想いだった。「一緒にいたい」と伝えたからこの想いも伝わってるだろうとも思った。でも、本当に言葉にして伝えなくていいの?ロベルト殿下は毎日のようにこんな私のことを、
「美しい」
と言ってくれるというのに。
"キャロルは俺のことどう思ってるんだろなー"
私はギュッと手を握りしめた。
(王子と男爵令嬢だから身分が釣り合わないんじゃ)
関係ない。
(衆目の前で想いを伝えるのは常識的に考えて)
関係ない!
(もっと言葉を選んで考えてから伝えたほうが)
関係ない!!このロベルト殿下を好きって想いをそのまま言葉にすればいい!!
「すぅぅ」
私は息を吸って、
「わ、私は……」
多くの生徒達が見守る中で、
「ロベルト殿下のことが大、大、大好きー!!」
って言った。
「一生!一緒にいたいー!!」
って伝えた。そうしたら、
「ははは!!俺もキャロルのことが大好きだー!」
ロベルト殿下が抱きついてきたので、
「私も!」
って抱きしめ返した。
◇◇◇
マリアベルside
「俺もキャロルのことが大好きだー!!」
「私も!」
抱きしめ合うキャロルとロベルト。
「……」
それを無言で見守るミリィと、
「え……」
「ロベルト殿下とあの娘が」
抱きしめ合う二人。そして、
「ミリィ様……」
「婚約者がいるというのに……信じられないわ」
ミリィを見て絶句する生徒達は次々にそれぞれの想いを口にしていた。中には、ミリィを心配する者や身分差の恋に羨望の眼差しを向ける者もいたけどその大半は、
(チャーンス!!)
三人をよく思わない否定的な者たちがほとんどだった。それを確認した私は人混みの中に紛れ込んだ。
(散々、私のことを馬鹿にしてくれたお礼よ。とくと受け取れ!)
勝利を確信し、三人の人生がめちゃくちゃになった少し先の未来を想像して胸を踊らせつつ、
「婚約者がいながら他の男に告白するって……人としてどうなんですか?」
みんなの思いを代弁してあげた。すると狙い通り、
「そ、そうだ!」
「そうよ!不潔よ!」
と、私をきっかけとしてそれぞれの思ったことをミリィへとぶつけていった。続けて私は、
「身分差の恋って聞こえはいいけど、本来は王族と結ばれるほとんどの令嬢の身分が侯爵以上であることを考えると……その相手は男爵令嬢ですが身分が釣り合っていないと思うのですが」
キャロルとロベルトに向けてみんなの思いを代弁してやった。案の定、
「そうよ!そんな身分じゃロベルト様に相応しくありませんわ!」
「ロベルト殿下!私なんてどうでしょうか!!」
ミリィの時と同じ結果になった。そして生徒たちの勢いは激しさを増して三人を分断し、それぞれのグループで囲んだ。
「正妻とはいかないが妾にしてやろう」
「俺の愛人枠でメイドになれ」
と、キャロルは伯爵家以上の令息達に迫られ、
「ロベルト殿下!」
「わ、私と結婚してくださいまし!」
と、ロベルトは令嬢達に迫られ、
「見損ないましたわ!」
「令嬢の風上にも置けないわ!」
と、ミリィは責められていた。
(くひひひ!いい気味)
そんな三人を人混みの中から見て私は成就したかった願いを叶えたことで嬉しさが込み上げてきて笑ってしまった。
(あとはこの騒ぎを見て固まっているエリザベスが動けば)
一歩。離れたところで騒ぎを見ているエリザベスへ視線を動かした。一瞬で閃いた計画のラストは、エリザベスが生徒達に教室へ行くように注意するはずだから、注意されて教室へ向かう同級生達に紛れてこの場を去ればいい。
「静かにしなさい!授業の始まりを告げる鐘はとっくに鳴っています!早く教室へ行きなさい!」
エリザベスが近づいてきて生徒達に注意した。すると生徒達は不満気な顔をしつつもこの国の絶対権力者の一言に逆らうわけにいかず渋々といった様子で教室へと歩き出した。
(くひひ。完璧!あとは人の波に紛れて)
人波に合流した。そして流れに逆らわないように後ろへ振り返りエリザベスに呼び止められたキャロル、ロベルト、ミリィを一瞥して今一度笑ってから歩き出した。
「ああ、忘れてました……マリアベル・レバノン!あなたも一緒に理事長室へ来なさい。お話があります」
今日から再び安眠の日々が送れる。とウキウキしていた私は突然、エリザベスに呼び止められてしまった。
(え……え?何で?)
状況が理解できず固まっていたらエリザベスの従者に捕まり、問答無用で理事長室へと連れて行かれた。
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