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頭ではわかってる
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ミリィside
"最近の体たらくは目に余る。僕の婚約者という自覚を今一度持て"
このままでいいはずがない。切り替えなきゃ……そんなことわかってるのに、
"最近ずっと心ここに在らずと言った様子ですが何かあったのですか?"
私のせいで迷惑をかけてしまっている。
「はぁ……何をやっているのでしょうか私は」
情けなくてため息が漏れてしまった。どんな時もきぜんとして他生徒の手本とならなくてはいけない私なのに、最近は授業中にボーッとしていて小テストも赤点ギリギリだった。寝過ごしてしまって遅刻しそうになったこともあって……公爵令嬢としてありえない失態ばかりでついにはレイブン様にも注意されてしまったというのに。
(ロベルト様……)
ロベルト様のことばかり考えてしまう。特に見知らぬ女ーーキャロルという女と楽しそうに過ごされていた、偶然目にしてしまったあの時の光景ばかりが頭をよぎる。そして、
"なんで隣にいるのが私じゃないの"
という想いがあの時の光景を思い出すたびに胸を締め付けて……苦しい。息が詰まってしまう。
「ふぅぅぅ、いけないいけない」
再び思考の沼にハマってしまっていることに気がついた私は落としていた視線を上げて星空を眺め息をはいた。
「はぁ……」
冷たい夜風も相まって徐々に落ち着きを取り戻した。特にいつも以上に輝く一番星にいつの間にか魅了され、しばらく眺めてたら少し前まで私を苦しめていた悩みがいつの間にか消えてしまっていた。
「ふぅぅ……ん?そういえばここって」
それから視線を戻して辺りを見た。どうやら考え事をしてる間に寮とは反対方向に歩いていたようで見慣れぬ林の中にいた。
(どうしよう)
と不安になったけど、それもすぐに消えた。
「ロベルト殿下のアトリエじゃなかったかしら」
噂には聞いていた。学院北の外れのある林の中に朽ちた建物に住んでいるってーーそう取り巻きの令嬢達が話していた。
(はぁ……またやってしまった)
私は昔からたまにやらかして周りから注意される時があった。第二王子の婚約者という立場に相応しい人間であらねばと頑張るあまりのプレッシャー。
周りには、その重圧がどれほどのものなのか理解してくれる人がいなくて一人だった。そんなとき決まって私は周りから何を言われても一人で絵を描き続けるロベルト殿下をこっそりと覗き込んでいた。
(……今でも一人で楽しそうに絵を描くのかしら)
なぜかーー明確な理由があるわけではない。ただひどいことを言われようともたとえ一人だとしてもいつだって笑って絵を描くロベルト殿下の姿を見ていると不思議と勇気をもらえた。
私はアトリエに近づくと光が漏れている窓から中を覗き込んだ。
「絵が完成したぞぉぉ!!」
「き、きゃあ!ちょ、き、急に抱き付かないでください!」
が、窓の向こうにある光景は想像したものと違っていた。それを目にした私は治ったはずの息苦しさが再び襲った。原因は窓の向こうの光景。
「はぁはぁ」
私は息苦しさから逃れるためにその場から走り出した。
「ロベルト様……」
この日の夜は眠れず、ベッドから見える月を眺め続けた。
◇◇◇◇◇
キャロル&ロベルトside
時は戻り、ミリィが走り出した頃のアトリエの中。
「よし!明日!早速生徒用玄関に貼り出すぞ!」
絵の完成という達成感に満たされていたロベルトは興奮のままに飛び跳ねた。
「わかりました!わかりましたから離して下さい!」
抱き付かれたままのキャロルは強制的に飛び跳ねに付き合わされていた。
マリアベルside
ロベルト達が喜びの舞をしている頃、自室で他生徒よりも早くベッドに潜り込んだマリアベルは、
(チャンスがあれば逃すものか!絶対に壊してやる!)
天井を睨みつけ、
「私に恥をかかせたことを後悔させてやる!」
ベッドの中で両拳を握りしめていた。
キャロル、ロベルト、ミリィ、マリアベルーーそれぞれの想いが交差する。
"最近の体たらくは目に余る。僕の婚約者という自覚を今一度持て"
このままでいいはずがない。切り替えなきゃ……そんなことわかってるのに、
"最近ずっと心ここに在らずと言った様子ですが何かあったのですか?"
私のせいで迷惑をかけてしまっている。
「はぁ……何をやっているのでしょうか私は」
情けなくてため息が漏れてしまった。どんな時もきぜんとして他生徒の手本とならなくてはいけない私なのに、最近は授業中にボーッとしていて小テストも赤点ギリギリだった。寝過ごしてしまって遅刻しそうになったこともあって……公爵令嬢としてありえない失態ばかりでついにはレイブン様にも注意されてしまったというのに。
(ロベルト様……)
ロベルト様のことばかり考えてしまう。特に見知らぬ女ーーキャロルという女と楽しそうに過ごされていた、偶然目にしてしまったあの時の光景ばかりが頭をよぎる。そして、
"なんで隣にいるのが私じゃないの"
という想いがあの時の光景を思い出すたびに胸を締め付けて……苦しい。息が詰まってしまう。
「ふぅぅぅ、いけないいけない」
再び思考の沼にハマってしまっていることに気がついた私は落としていた視線を上げて星空を眺め息をはいた。
「はぁ……」
冷たい夜風も相まって徐々に落ち着きを取り戻した。特にいつも以上に輝く一番星にいつの間にか魅了され、しばらく眺めてたら少し前まで私を苦しめていた悩みがいつの間にか消えてしまっていた。
「ふぅぅ……ん?そういえばここって」
それから視線を戻して辺りを見た。どうやら考え事をしてる間に寮とは反対方向に歩いていたようで見慣れぬ林の中にいた。
(どうしよう)
と不安になったけど、それもすぐに消えた。
「ロベルト殿下のアトリエじゃなかったかしら」
噂には聞いていた。学院北の外れのある林の中に朽ちた建物に住んでいるってーーそう取り巻きの令嬢達が話していた。
(はぁ……またやってしまった)
私は昔からたまにやらかして周りから注意される時があった。第二王子の婚約者という立場に相応しい人間であらねばと頑張るあまりのプレッシャー。
周りには、その重圧がどれほどのものなのか理解してくれる人がいなくて一人だった。そんなとき決まって私は周りから何を言われても一人で絵を描き続けるロベルト殿下をこっそりと覗き込んでいた。
(……今でも一人で楽しそうに絵を描くのかしら)
なぜかーー明確な理由があるわけではない。ただひどいことを言われようともたとえ一人だとしてもいつだって笑って絵を描くロベルト殿下の姿を見ていると不思議と勇気をもらえた。
私はアトリエに近づくと光が漏れている窓から中を覗き込んだ。
「絵が完成したぞぉぉ!!」
「き、きゃあ!ちょ、き、急に抱き付かないでください!」
が、窓の向こうにある光景は想像したものと違っていた。それを目にした私は治ったはずの息苦しさが再び襲った。原因は窓の向こうの光景。
「はぁはぁ」
私は息苦しさから逃れるためにその場から走り出した。
「ロベルト様……」
この日の夜は眠れず、ベッドから見える月を眺め続けた。
◇◇◇◇◇
キャロル&ロベルトside
時は戻り、ミリィが走り出した頃のアトリエの中。
「よし!明日!早速生徒用玄関に貼り出すぞ!」
絵の完成という達成感に満たされていたロベルトは興奮のままに飛び跳ねた。
「わかりました!わかりましたから離して下さい!」
抱き付かれたままのキャロルは強制的に飛び跳ねに付き合わされていた。
マリアベルside
ロベルト達が喜びの舞をしている頃、自室で他生徒よりも早くベッドに潜り込んだマリアベルは、
(チャンスがあれば逃すものか!絶対に壊してやる!)
天井を睨みつけ、
「私に恥をかかせたことを後悔させてやる!」
ベッドの中で両拳を握りしめていた。
キャロル、ロベルト、ミリィ、マリアベルーーそれぞれの想いが交差する。
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