婚約破棄されたばかりの私の手が第三王子のお尻にめり込んでしまった。

さくしゃ

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なぜ?①

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 ロベルトside


「はぁはぁ」

 夕日が沈み、辺りが闇に包まれた。

「はぁはぁ」

 魔導灯の微な光を頼りに

(どこにいるんだキャロル)

 俺は必死にキャロルを探した。






 時は戻りその日の夕方、俺は浮かれていた。

「はぁ、早く来ないかな」

 なぜ浮かれているのか?それはこれからアトリエへとやってくる愛しい人ーーキャロルの絵が描けるからだ。

"デッサンモデルを頼みたい"

 俺は今朝、キャロルに頼んでそのまま即寝してしまった。

 本当は、デッサンモデルをお願いしたかったのではなく、日頃の感謝を込めて『絵』をプレゼントしたいから描かせて欲しいのだ、とお願いするつもりが緊張のあまり素直に言えなかった。

 自分でもなんであんなに緊張したのかわからなかった。でも、キャロルが来たら伝えるから大丈夫だろう。

「キャロル。君と出会えたことで絵だけだった俺の日常は信じられないほどに楽しくなった」

 と。満たされているようで何かが欠けているような日々が嘘のように変わった。

 君がくるーーそう思うだけで胸が踊る。
 君の笑顔ーー次の絵を見たらどんな風に笑ってくれるんだろう。
 君の料理ーーコックが作るよりもおいしくて、そして暖かくて毎食心が満たされる。

 「君」という存在が日を増すごとに俺の中で大きくなっていく。このまま行ったらどこまで君のことを好きになってしまうのか自分でも怖いくらいだ。

(伝えたらどんな表情をするのだろう。待ちきれなくて教えてもらった『掃除』をしてしまった。綺麗になった部屋を見たら驚くかな)

 待ち遠しくてーーさっきからイスから立ち上がっては部屋をウロウロしてまた座ってを繰り返している。そうしてどのくらい待ったのか君がやってきた。

(来た!!)

 俺はノックが聞こえた瞬間にイスから立ち上がってドアへ向かった。待ちきれなかった。ドアを開けたらそこに君がいる。まずは軽いトークから今日はどんな一日だったとか話そう。ワクワクしながらしかしドキドキもしながらドアを開けた。

「待ってた……?」

 しかしドアの前に立っていた君はいつもと違ってその表情は暗く、

「ロベルト殿下……」

 その瞳は僕を見ているようで見ていない。

「ごめんなさい。醜い私はあなたに相応しくありません」

 別の"何か"に謝るように今にも降り出しそうな雨空のような悲しい声で、

「もう二度と関わりません。ごめんなさい」

 謝ると校舎の方へ走り去って行った。

「……え?」
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