無感情な聖女はデリカシーなし男に変えられる。デリカシーなし男も変わる。

ワタルの悩み

俺は今、悩んでいる。

「……再会してからサンに避けられてね」

　西の空でほとんど沈みかけた太陽へ「また明日ー」と手を振る。周りには誰もいない。ハンスは夕食の材料を取りに森に、サンは川へ洗濯に、俺は拠点で1人留守番をしている。

（い、いや。3週間前はそれでも一対一でコミュニケーションが取れていた。だけど、最近はハンスを間に入れないと会話すらままならない）

　例えば俺が料理当番の日に苦手なものがないかと聞くとハンスが俺の話した内容を聞いて背後にいるサンに耳打ちする。それからサンがハンスに耳打ちしてそれを聞いてハンスが頷くと、

「『ない』とのことです。『むしろ大好物』だと仰っております」

　と、背後のサンにも聞こえるように話してお辞儀する。

「お、おう。そうか」

　そこで会話は終了。一対一で話せば5秒で終わることなのに1分もかかる。

　この他にも、俺が軽い世間話に「今日もいい天気だね」と話しかけても間にハンスが入って背後のサンへと通訳し、サンの返答をハンスが俺に通訳する。

「なあ、あの雲う◯こみたいじゃない？」

　とかって気軽に話しかけたりした時も間にハンスが入った。

　毎回思う。

（何だこの状況？）

　と。

「俺はハリウッドスターにインタビューする日本人のリポーターじゃねえぞ！」

　嫌われるようなことを俺は何かしたのか？と頭を悩ませる。

（やはり『デリカシー』なのか！ばあちゃん！俺にはやっぱり『デリカシー』が足りないのか！）