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プロローグ 始動
試験、そして入隊 3
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イアンは真剣な面持ちで話し始める。
「これから君たちに話す内容は国の最高機密だ。この部屋には防音構造にジャミング塗装をしてある。盗聴される可能性はない。もし、君たちが今から喋る内容を外部に漏らした場合…」
全員が息を呑む。
「スパイ・テロ防止法に基づいて君たちを処罰する。…場合によっては国家反逆罪になる。」
全員の表情が変わった。明らかに緊張している表情だ。
それほどの機密情報ということは国の根幹に関わるものだろうか。
「本題に入る。今日、私がここにやってきた理由。それは、君たちを"特殊部隊"に勧誘にしにきた。これから先は画面を使って説明する。」
部屋の奥のモニターが光り、映し出していった。
「君たちは現在、イギリス陸軍に入隊しようとしている。その中にも当然特殊部隊は存在する。SASだ。だが、そのSASでも介入したくないような状況が存在する。国の存在が知られてはまずいような状況だ。そこで我々の部隊が存在する。名前は潜伏特殊部隊HAC。PMCという皮を被り特殊部隊としての任務を遂行する。」
そこでヴィクターが質問した。
「あの、たとえPMCだったとしても敵に勘ぐられたりしてしまうのでは…?」
なかなか鋭い質問だ。いくら軍の任務を代行する組織とはいえ、特殊部隊のような潜入、暗殺などを行えば敵国が動いていると気付くのは容易い。
「それに関しては問題ない。我々はPMCだ。国内であれば特殊部隊を動かしていないことを証明できるし、敵国でもそれは同様だ。"契約者"が派遣したにすぎないからだ。…話を戻そう。我々は通常のPMCとしての業務を遂行しながら随時HACとしての任務にあたる。服装を変えてカモフラージュし、少しでも敵にバレる可能性を防ぐ。…どうだ?興味を持ってくれたか?」
かなり危険な仕事になるだろう。特殊部隊でも踏み入れられないような、危険な場所に向かう。それはこの第二次冷戦期の重要なキーとなる。
中華連盟社会主義国を筆頭とした東側とアメリカを筆頭とした西側。第一次冷戦とは変わって情報戦を主体とした中東の石油を巡った覇権争い。サイバー攻撃などの直接的なものはないが代理戦争であったり世論操作はどこも積極的だ。
どういう生活になるかは想像もつかないが、危険ということはよりあの人に近づけるはずだ。憧れのあの人に。…もう決意は固まった。
二人を見ると、どうやら二人も同じようで、勇ましい表情をしている。
三人で深呼吸をして息を合わせる。
「「「入隊します!」」」
「…わかった。これからよろしく頼む。」
イアンは安堵した表情を浮かべた。
「じゃあこの書類にサインしてくれ。」
そうして書類を書いていると、イアンは何かに気づいたようで、
「あ、そうだ。言い忘れていたがモーガンとマックス、お前らは二人とも紅小隊出身だ。」
「えっ」
そうだったのか。紅小隊は二班に分かれて訓練をするのでもう一つの班の方だったのだろう。
イアンが言う。
「これにサインしたら君たちは我々の本社で生活してもらうことになる。もちろん、持ってきたいものは持ってきても構わないし、部屋もちゃんと用意してある。安心してくれ、プライベートはちゃんとあるし、休みも普通の兵士ぐらいはあるさ。」
少し安心した福利厚生がしっかりしているということは国からも支援が受けられるということの証明にもなる。
何はともあれ、これから新しい生活が始まる。血に塗れていようが、闇に埋もれていようが、関係ない。こいつらとならやっていける。直感でしかないが、なんとなくわかる。
前に「仲を深めすぎるな」と教わったが、正直守れる気はしていない。
仲間と一緒に生活して、戦って、生きて。そろそろそんな生活を送ってもいいのではないだろうか。心から親友と呼べるものが自分にも欲しい。あの人にもいたのだからいいだろう。
ボールペンをカチッと鳴らし、ペン先を出す。契約書をしっかり読んで…特に問題はない。マックス・ベルと記入し、指を朱肉につけてしっかりと押し込む。
「よし、ありがとう。これからみんなよろしく頼む。」
これから始まる。特に具体的な目標があるわけではないし、志もない。
ただあの人に近づきたい。その一心で。これから危険に立ち向かっていく。
決意を胸でそっと噛み締めた。
「これから君たちに話す内容は国の最高機密だ。この部屋には防音構造にジャミング塗装をしてある。盗聴される可能性はない。もし、君たちが今から喋る内容を外部に漏らした場合…」
全員が息を呑む。
「スパイ・テロ防止法に基づいて君たちを処罰する。…場合によっては国家反逆罪になる。」
全員の表情が変わった。明らかに緊張している表情だ。
それほどの機密情報ということは国の根幹に関わるものだろうか。
「本題に入る。今日、私がここにやってきた理由。それは、君たちを"特殊部隊"に勧誘にしにきた。これから先は画面を使って説明する。」
部屋の奥のモニターが光り、映し出していった。
「君たちは現在、イギリス陸軍に入隊しようとしている。その中にも当然特殊部隊は存在する。SASだ。だが、そのSASでも介入したくないような状況が存在する。国の存在が知られてはまずいような状況だ。そこで我々の部隊が存在する。名前は潜伏特殊部隊HAC。PMCという皮を被り特殊部隊としての任務を遂行する。」
そこでヴィクターが質問した。
「あの、たとえPMCだったとしても敵に勘ぐられたりしてしまうのでは…?」
なかなか鋭い質問だ。いくら軍の任務を代行する組織とはいえ、特殊部隊のような潜入、暗殺などを行えば敵国が動いていると気付くのは容易い。
「それに関しては問題ない。我々はPMCだ。国内であれば特殊部隊を動かしていないことを証明できるし、敵国でもそれは同様だ。"契約者"が派遣したにすぎないからだ。…話を戻そう。我々は通常のPMCとしての業務を遂行しながら随時HACとしての任務にあたる。服装を変えてカモフラージュし、少しでも敵にバレる可能性を防ぐ。…どうだ?興味を持ってくれたか?」
かなり危険な仕事になるだろう。特殊部隊でも踏み入れられないような、危険な場所に向かう。それはこの第二次冷戦期の重要なキーとなる。
中華連盟社会主義国を筆頭とした東側とアメリカを筆頭とした西側。第一次冷戦とは変わって情報戦を主体とした中東の石油を巡った覇権争い。サイバー攻撃などの直接的なものはないが代理戦争であったり世論操作はどこも積極的だ。
どういう生活になるかは想像もつかないが、危険ということはよりあの人に近づけるはずだ。憧れのあの人に。…もう決意は固まった。
二人を見ると、どうやら二人も同じようで、勇ましい表情をしている。
三人で深呼吸をして息を合わせる。
「「「入隊します!」」」
「…わかった。これからよろしく頼む。」
イアンは安堵した表情を浮かべた。
「じゃあこの書類にサインしてくれ。」
そうして書類を書いていると、イアンは何かに気づいたようで、
「あ、そうだ。言い忘れていたがモーガンとマックス、お前らは二人とも紅小隊出身だ。」
「えっ」
そうだったのか。紅小隊は二班に分かれて訓練をするのでもう一つの班の方だったのだろう。
イアンが言う。
「これにサインしたら君たちは我々の本社で生活してもらうことになる。もちろん、持ってきたいものは持ってきても構わないし、部屋もちゃんと用意してある。安心してくれ、プライベートはちゃんとあるし、休みも普通の兵士ぐらいはあるさ。」
少し安心した福利厚生がしっかりしているということは国からも支援が受けられるということの証明にもなる。
何はともあれ、これから新しい生活が始まる。血に塗れていようが、闇に埋もれていようが、関係ない。こいつらとならやっていける。直感でしかないが、なんとなくわかる。
前に「仲を深めすぎるな」と教わったが、正直守れる気はしていない。
仲間と一緒に生活して、戦って、生きて。そろそろそんな生活を送ってもいいのではないだろうか。心から親友と呼べるものが自分にも欲しい。あの人にもいたのだからいいだろう。
ボールペンをカチッと鳴らし、ペン先を出す。契約書をしっかり読んで…特に問題はない。マックス・ベルと記入し、指を朱肉につけてしっかりと押し込む。
「よし、ありがとう。これからみんなよろしく頼む。」
これから始まる。特に具体的な目標があるわけではないし、志もない。
ただあの人に近づきたい。その一心で。これから危険に立ち向かっていく。
決意を胸でそっと噛み締めた。
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