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プロローグ 始動
車に揺られ
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HACの新入隊員三人は自動運転の車に乗りながら会話をしていた。目的地は作戦本部であるTGOB本社。ロンドンから少し南に行った森の中にある。
試験から数日間、この三人で親睦を深めろと言われたのでご飯を一緒に食べたり、クリケットの観戦をしたり。頑張って仲を深めたはずだ。
これからそこがみんなの家になるわけだし、わだかまりがあってもダメだろうという気遣いだろう。
集合場所のロンドンから車に乗って少し経った後、みんなそれぞれの荷物を抱えながら会話をしていた。
最初はモーガンから喋り始めた。
「なあ、二人。お前どこに住んでんだ?…いやもう住んでたになるのか。」
「…えーっと。僕はローストフトっていうイングランドの東の港町から。」
「あー。あそこか!ローストフトなら俺の親戚が住んでるとこだ!ウォータースポーツがなんか凄かったような…」
「うん、そうそう。うちの親も一回大会に出てさ…」
窓からの眺めは緑が太陽の光を反射させて心地よい空間を作っている。音楽のないただただ人の声をBGM代わりに外を見るこの時間がとても落ち着く。この景色…昔を思い出すな。
父と母。父が運転して母の上に座っていたっけ。ピクニックに行ったあの日を今でも覚えている。
そんなことを思っていると。
「マックスくんはどこ生まれなの?」
…ああ、そうだった。普段は一人で車に乗っているので他に誰かが乗っているのはあまり慣れない。バスかと勘違いしてしまった。
「僕は…ウェールズのトレビル、っていう田舎。父さんがでっかい射撃場家に作ってさ、幼い頃から銃声を聞いて育ったんだよ。」
ヴィクターは微笑みながら
「ははっ。英才教育、ってやつだね?」
モーガンがそれに付け加えるように、
「そうか、道理で射撃が抜群にうまいわけだな?」
「…まあ、そういうこと…なのかな?」
そうやってみんなで談笑していると、ナビが目的地到着を知らせた。
建物の向かい側のガレージのシャッターが自動でゆっくり開き、車が駐車し、またゆっくりと閉まっていく。
モーガンは一つ、ふう、とため息をついて、
「よっし、気合入れていきますか!」
「あ、こういうのは第一印象が大事…だと思うよ。」
とヴィクター。
それに僕が付け足す。
「たしかに。やっぱりそういうの大事だと思うな。」
軽く掛け合いをするがみんな緊張している。それもそうだ。HACは国の最前線といってもいい。おそらくSAS(イギリスの特殊部隊)より厳しいだろう。だからといって逃げ出すわけにはいかない。
ここは自分から行こう。
パンっと手を叩き、扉へと向かう。
「よし、じゃあ開けるよ。」
「...ああ。」
「うん。わかった。」
建物は仰々しい雰囲気ではなく、一般的な三階建ての雑居ビルのような大きさだ。とても訓練するスペースがあるようには思えない。
その横には寮のようなものがある。
コンコンと扉ををノックし、「失礼します」とビルに入っていく。
内装は至って普通の受付といった感じで、カウンターや机と椅子などが並んでいる。
その中に一人椅子に座っている人間がいた...イアンだ。
イアンは椅子から立ち上がりこちらを振り返って喋り始めた。
「やあみんな。待ってたよ。ようこそThe Guardian of Britishへ。改めて、社長兼総司令のイアン・ワトソンだ。…自己紹介は後にして、他の隊員はみんな下で待っている。さあ、行こうか。」
軽い口調で話しかけてきた。…まあこの人は大体こんな感じだと想像はついていたが、もっと厳粛な感じかと思っていたので少し拍子抜けした。
「おはようございます」とそれそれ挨拶をすると、モーガンが口を開いた。
「あの~。下っていうのはどういうことですか?」
イアンは声色を高くして、
「ああ、そうか。たしかに最初はわかんないよね。…じゃあ、着いてきてよ。」
そう言うと、イアンはエレベーターの方に向かっていき、乗り込む。
エレベーターは2つあり、イアンが乗ったのは1と書かれた方だった。
モーガンが、
「じゃ、2人とも、行くぞ。」
というと、僕とヴィクターは少し表情を引き締めてエレベーターに乗り込んだ。
試験から数日間、この三人で親睦を深めろと言われたのでご飯を一緒に食べたり、クリケットの観戦をしたり。頑張って仲を深めたはずだ。
これからそこがみんなの家になるわけだし、わだかまりがあってもダメだろうという気遣いだろう。
集合場所のロンドンから車に乗って少し経った後、みんなそれぞれの荷物を抱えながら会話をしていた。
最初はモーガンから喋り始めた。
「なあ、二人。お前どこに住んでんだ?…いやもう住んでたになるのか。」
「…えーっと。僕はローストフトっていうイングランドの東の港町から。」
「あー。あそこか!ローストフトなら俺の親戚が住んでるとこだ!ウォータースポーツがなんか凄かったような…」
「うん、そうそう。うちの親も一回大会に出てさ…」
窓からの眺めは緑が太陽の光を反射させて心地よい空間を作っている。音楽のないただただ人の声をBGM代わりに外を見るこの時間がとても落ち着く。この景色…昔を思い出すな。
父と母。父が運転して母の上に座っていたっけ。ピクニックに行ったあの日を今でも覚えている。
そんなことを思っていると。
「マックスくんはどこ生まれなの?」
…ああ、そうだった。普段は一人で車に乗っているので他に誰かが乗っているのはあまり慣れない。バスかと勘違いしてしまった。
「僕は…ウェールズのトレビル、っていう田舎。父さんがでっかい射撃場家に作ってさ、幼い頃から銃声を聞いて育ったんだよ。」
ヴィクターは微笑みながら
「ははっ。英才教育、ってやつだね?」
モーガンがそれに付け加えるように、
「そうか、道理で射撃が抜群にうまいわけだな?」
「…まあ、そういうこと…なのかな?」
そうやってみんなで談笑していると、ナビが目的地到着を知らせた。
建物の向かい側のガレージのシャッターが自動でゆっくり開き、車が駐車し、またゆっくりと閉まっていく。
モーガンは一つ、ふう、とため息をついて、
「よっし、気合入れていきますか!」
「あ、こういうのは第一印象が大事…だと思うよ。」
とヴィクター。
それに僕が付け足す。
「たしかに。やっぱりそういうの大事だと思うな。」
軽く掛け合いをするがみんな緊張している。それもそうだ。HACは国の最前線といってもいい。おそらくSAS(イギリスの特殊部隊)より厳しいだろう。だからといって逃げ出すわけにはいかない。
ここは自分から行こう。
パンっと手を叩き、扉へと向かう。
「よし、じゃあ開けるよ。」
「...ああ。」
「うん。わかった。」
建物は仰々しい雰囲気ではなく、一般的な三階建ての雑居ビルのような大きさだ。とても訓練するスペースがあるようには思えない。
その横には寮のようなものがある。
コンコンと扉ををノックし、「失礼します」とビルに入っていく。
内装は至って普通の受付といった感じで、カウンターや机と椅子などが並んでいる。
その中に一人椅子に座っている人間がいた...イアンだ。
イアンは椅子から立ち上がりこちらを振り返って喋り始めた。
「やあみんな。待ってたよ。ようこそThe Guardian of Britishへ。改めて、社長兼総司令のイアン・ワトソンだ。…自己紹介は後にして、他の隊員はみんな下で待っている。さあ、行こうか。」
軽い口調で話しかけてきた。…まあこの人は大体こんな感じだと想像はついていたが、もっと厳粛な感じかと思っていたので少し拍子抜けした。
「おはようございます」とそれそれ挨拶をすると、モーガンが口を開いた。
「あの~。下っていうのはどういうことですか?」
イアンは声色を高くして、
「ああ、そうか。たしかに最初はわかんないよね。…じゃあ、着いてきてよ。」
そう言うと、イアンはエレベーターの方に向かっていき、乗り込む。
エレベーターは2つあり、イアンが乗ったのは1と書かれた方だった。
モーガンが、
「じゃ、2人とも、行くぞ。」
というと、僕とヴィクターは少し表情を引き締めてエレベーターに乗り込んだ。
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