毒を喰らわば皿まで

十河

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1巻

1-3

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 淡々とした言葉に三人が落ち着きを取り戻したところで、モリノは先ほどテーブルの上に置いた帳簿の中から一冊を取り上げ、しおりを挟んでいた部分を開いてウィクルムの前に差し出した。

「……これは?」
「過去数年に及ぶ、公務や外交費以外の、王族の日常生活に関わる費用……王室費の帳簿です」

 ずらりと帳簿に並べられた数字は、つくろい物に使う糸など雑務に関する小さな金額のものから、家族で利用するために購入された馬車や貴金属についやされた大きな金額のものまで、様々だ。

「王室費として予算に上げられ議会に承認を受けていた金額と帳簿にしるされている費用の合計を比較すると、大きな差額が生じていることが判明しました」
「何……?」

 ウィクルムの表情が変わる。この数日でモリノが調べた分だけでも、その差額は相当なものだ。

「配分された予算よりも帳簿にしるされた金額のほうがかなり大きいのです。その補填額ほてんがく何処どこから調達していたのか……王宮で浪費された資金の流れを追うと、神殿に辿たどきます」
「……どういうことだ」
「国家運営予算の決定に必要な議会の承認には、宰相の意向が大きく関与します。神殿はその影響を受けがたくするために、予算の承認を王族がつかさどっているんです。それゆえ、神殿の運営にかれるはずの予算が着服されていました……お隠れになった先代の国王陛下御夫婦と近親の方々に」

 王太子と側近達は言葉をなくす。それが本当であるなら、まさかの不祥事だ。ことの次第が明るみに出れば、実子である王太子の身分すら無事ではすまない。

「マラキアが神官長に就任した年より、神殿の運営予算見直しの陳情ちんじょうが神官長名義で何度も提出されていた記録も見つかりました。アンドリムは何とか陳情ちんじょうが通るようにと便宜を図っていたみたいですが……結果的に、全て王族の手で握りつぶされています」
「……何てことだ」

 ウィクルムは、頭を抱える。両親である国王夫婦が存命であった頃は、即位はまだ先の話であるからと統治に関する教育は真面目に受けていたものの実際の運営にはほとんど関与していなかった。
 だからと言って「知らなかった」では済まない。ウィクルムは間違いなく、勇者パルセミスの末裔まつえい、王族の中でも直系の子孫であるのだ。

「睡藻の流出先はほとんどが国外でしたが、いくつか足取りを追えました。その取引先を調べてみたところ、意外な事実が判明しています」
「意外な……?」

 聞き返したリュトラに、彼の過去を知るモリノが逡巡しゅんじゅんする。リュトラは「良いから教えてくれ」と、その先をうながす。

「……いずれも。治療不可能な、俗に言う【不治の病】にかかった者が家族の中にいました」
「不治の、病……」
「睡藻は確かに常用することで身体をむしばみますが、国内で認可されている他の薬と比較して桁違いに高い鎮痛・鎮静効果を示します」

 そこでモリノは一つ、息を吐く。

「それこそ……不治の病に伴う苦痛をやわらげられるほど」

 モリノの説明を聞いたリュトラは、思い出していた。フィオナと同じ家に住んでいた、彼女にとっては叔父に当たる父親の弟が、不治の病に冒されていたことを。彼は、病から来る発作が出る度、見るに耐えないほど苦しんでいた。それを、家族達は我が身のことであるかのように悲しみ、苦痛だけでも取り除いてやりたいと願っていたのだ。

「まさか……」
「えぇ……その、まさかです。睡藻の流出先は、それを真に必要とする者達の所でした。この事実をどうとらえるべきか……僕の頭の中も、ぐちゃぐちゃです」
「でもマラキアが睡藻を不正に販売していたのは間違いないんでしょう? 罪に問えないの?」

 何とかしてメリアを救いたいナーシャが懇願するが、モリノは頭を横に振るしかない。

「確かに罪でしょう。しかし、彼が睡藻の販売で得た資金は、ほぼ神殿運営の資金に回されているんです。彼の罪を告発するならば王族の罪を公表する必要が生じる。下手をしたら王太子の廃嫡もあり得る話です」
「そんな、嘘よ……!」
「こんな状況で、嘘がつけると思いますか?」

 あの時、神官長マラキアはモリノの耳元でささやいたのだ。「王族の帳簿を調べなさい」と。
 モリノは敵であるアンドリムが関与した予算の記録や商会の帳簿は詳しく調べていたが、王太子ウィクルムの身内である王族のものは手付かずだった。悔しいが、マラキアがあの場で大っぴらにしなかったことに感謝すべきなのだ。

「……残念ながら打つ手がありません。情報が少なすぎて、今の状況では身動きが取れない」

 神童とうたわれたモリノでも想定できなかった展開だ。静まり返る執務室の中で、ぱんと自分の頬を両手でたたき、勢い良くソファから立ち上がったのは、何かの決意を胸に秘めたリュトラだった。

「情報が少ないなら、こちらから得に行こう。俺が神殿に行く」
「……リュトラ⁉」
「マラキアが去り際に言ってたよな。心配なら、信頼のおける誰かを寄越せって。俺が行って、彼奴らの情報をつかんでくる。そうしたらメリアの様子も確認できるし、一石二鳥だ」
「ダメよリュトラ、危険だわ!」

 大剣を振るうヨルガやシグルドと違って短剣の扱いを得意とするリュトラ。彼はいつものお調子者の笑みを浮かべ、涙をにじませるナーシャの頭をぽんぽんと軽くたたく。

「だーいじょうぶだって。あれだけの貴族達の前で宣言してみせたんだ。俺に何かあった場合は神殿側の落ち度になる、あちらさんも下手なことはしないさ。逐一報告はするし、油断もしない」
「リュトラ……」

 くしてしまった恋心を再び芽吹かせてくれた少女は、敬愛する主君ウィクルムと想い合う間柄になった。だからこの想いは決して表に出さない。生涯、抱えて生きていく。リュトラは自らにそう誓う。

「分かりました……リュトラ、お願いできますか」
うけたまわったぜ宰相閣下。まぁ一つ、小舟に乗ったつもりでいてくれよ」
「……そこは大船じゃないんですね?」
「泥舟じゃないだけ、マシだと思って?」

 片目をつむってみせるリュトラに、王太子の側近達はようやく微笑ほほえみ合うことができた。
 この日が王太子の周りを全ての側近達が囲む最後の日になることなど、想像もせずに。


   † † †


「――部屋の中を覗きたいのに、施錠された扉で視界をはばまれているとする」

 俺はかごの中に置かれていた葡萄ぶどうの房から瑞々みずみずしい一粒をむしり、口に含む。果肉を口内に押し出し唇に挟んだ皮を摘むと、遠巻きにしている神殿の女官達が熱い視線を注いできた。

「当然ながら、鍵は持ち合わせていない。でも注意深く扉を観察すると、把手とっての近くにまれたレリーフの留め金が一部緩んでいることに気づいた」

 葡萄ぶどうの果汁で濡れた指先をゆっくりと舌でぬぐう。中庭の入り口になるアーチの側に控えかぶとの下に表情を隠した神殿騎士の喉仏が上下するのが見て取れる。

「持ち合わせていた工具で、緩んだそれを取り外すことに成功した。扉には穴が開き、部屋の光がその穴から漏れる。片目を押し当て中を盗み見れば、そこには驚くべき秘密があった」

 マラキアの差し出した布で改めて手を清め、俺はにやりと笑う。

「そうやって得た情報を偽物だと疑える者は、そう多くない」
「……成るほど。お人が悪い」

 マラキアの言葉に、俺はクツクツとのどを鳴らした。

「アンドリム様が兼ねてより敷いていた策が、役に立ちましたね」
あらかじめ逃げ道を用意しておくのは悪事のじょうせきだ。無策に狼藉ろうぜきを働けば、足跡を残すだけだからな」

 モリノが必死になって調べあげたであろう王族の帳簿について、【俺】はたいして動いていない。その数字は、神官長マラキアと手を組んだアンドリムが数年にわたって仕込んでいたものだ。不正な金の流れを見つけても、責任の行き着く先は王族。しかも相手がすでに墓の下となれば、王太子への影響をかんがみて、モリノはおいそれと追及ができなくなる。
 さらにマラキアが売りさばく睡藻についても、アンドリムは手を打っていた。快楽を求めて薬を買う客の他に、睡藻の鎮痛効能を必要としそうな重い病をわずらった家族を持つ裕福な家庭を見つけ、苦痛をやわらげる薬として売り渡していたのだ。病に苦しみ続けた患者が穏やかな死を迎え、遺された家族は涙を流してマラキアに感謝した。両方共、足取りは隠したが、家族の苦痛を取り除くために睡藻を手に入れた客への経路については、わずかな手掛かりをえて残したのだ。
 案の定、それに飛びついたモリノの部下は慌てて報告に行き、王族による神殿運営費用の着服に頭を悩ませていた新宰相は、点と点が結びついてしまったとばかりに肩を落としたらしい。
 その裏に、もっと重大な事実が隠されているとも知らずに。

「ジュリエッタ様、お荷物は私達がお運びいたします」
「ありがとう。でも大丈夫よ、少しは動きたいの」
御御足おみあしに傷を負われているのですよ。どうかご無理をなさらず……」

 神殿の中庭に置かれたガーデンテーブルセットでくつろぐ俺とマラキアは、神殿からアスバル家の屋敷に戻るために荷物をまとめているジュリエッタを見守っている。
 つえをついて歩く彼女の周りには女官達が寄り添い、手助けをしたいとしきりに申し出ていた。
 ジュリエッタの足首を下に向け、爪先つまさき立ちになる形に保ったまま石膏で固めたのは、俺の指示によるものだ。アキレス腱の断裂は、正しい固定で完治させられる。腱が無事に繋がったら、今度はストレッチやマッサージで少しずつ足首の関節を柔らかく戻すリハビリをしてやったら良い。これは、前世で妹がアキレス腱を断裂した際、散々その世話をさせられたことで得た知識だ。
 晩餐会ばんさんかいで繰り広げられたあの茶番劇は、あっという間に王都中に広まった。
 それまで『宰相アスバルの我儘わがまま娘』と称されていたジュリエッタの評判は、一転して聖女じみたものになっている。十年もの長い間、愛する王太子を想い、身を引き裂くような苦痛に耐えてきた竜巫女みこジュリエッタ。その役目を終えるまでたったの半年になって王太子は彼女を裏切り、美しいにえ巫女みこと添いげると宣言した。竜巫女みこは傷つくも、にえ巫女みことなることまで受け入れる。
 そんな噂が届き、神殿に仕えていた女官達は、雪崩なだれを打つようにジュリエッタを擁護する側に回った。冷たい床に両手と膝をつき、これまでの非礼をびる女官達の手を取ったジュリエッタは、私のほうこそごめんなさいと逆に頭を下げたのだ。

「私は貴女あなた達を困らせてばかりだったわ。これからはメリア様を支えてさしあげてください」
「ジュリエッタ様……」
「まぁ、ネモ⁉ どうしたの、その頬は……!」

 見知った女官のれた頬に、ジュリエッタは悲鳴をあげる。
 噂の信憑性しんぴょうせいを後押ししたのは、新たな竜巫女みことなったメリアの凶行だ。指輪の効果により錯乱さくらん・凶暴状態となったメリアは、どうして私がと大声でわめき、汚い言葉で女官達をののしり暴力を振るった。
 竜巫女みこの身体を傷つけることが許されない女官達は、黙ってそれを受け入れるしかない。
 これに比べたら、我儘わがままに思えたジュリエッタの行動など、子供の癇癪かんしゃく程度のものだった。しかも彼女はそれを竜巫女みことしての苦痛にさいなまれたゆえの行動だったと広まった後なのに、丁寧に謝罪をしてくれたのだ。

「調子の良い奴らだ……せいぜいメリアの扱いに困り果てると良いさ」

 この距離では、俺とマラキアの会話は届かない。それを良いことに毒を吐く俺に苦笑しつつ、マラキアはふところから小さなガラス瓶を取り出した。瓶の中には丸い花弁を持つ花が沈んだ薄紫色の液体。

「頃合いを見て……使うことにします」
「そうだな。加減はお前のほうが詳しいだろうから、任せるぞ」
「ええ、適度に」
「それと、そろそろ王太子側から監視が来るはずだ。俺の予想だと、騎士団長の息子だな」
「あの少し短気そうな青年ですね」

 ギラついた瞳でにらけてきたリュトラを思い出してか、マラキアは含み笑いをする。

「どうやら個人的に、私に何かしら思うことがありそうでしたからね。……折角の機会です。じっくり親交を深めてみることにします」
「クク、リュトラも可哀想になぁ……まぁ、今度は神官長のお手並み拝見と行こう」
「お任せください。宰相閣下」


 トランクに詰めたジュリエッタの私物を荷台に乗せ、女官達からささげられた花束を抱えた彼女と共に、俺はアスバル家の屋敷に向かう馬車に乗り込んだ。アスバル家の屋敷は、王都の中でも王城から一定の距離を置いた上流貴族の屋敷が集まる住宅街に存在する。宰相職としてはもう少し王城の近辺に居を構えたほうが好ましいのかもしれないが、仕掛けのある地下室を敷設したアスバル家の屋敷は有事の際に王族の避難所を兼ねていた過去があるため、仕方がないのだ。
 屋敷の門が見えてきた頃、御者ぎょしゃが「旦那様、お客様がおいでのようです」と声をかけてくる。
 窓に掛けられたカーテンを広げて見ると、屋敷の入り口に立つ執事トーマスと息子のシグルド、そして騎士団長であるヨルガの姿が見えた。

「これまた、予想通りすぎてひねりがない」
「……お父様、どなたかがおいでなのですか?」
「シグルドと騎士団長だ。ジュリエッタ、兄に甘えてやると良い」

 花束を抱えてクスクスと笑うジュリエッタの笑顔にいやされているうちに、馬車が館の入り口に到着する。トーマスが馬車の扉を開け、お帰りなさいませ旦那様と頭を下げた。俺はうなずかえし、トーマスより先にジュリエッタに手を差し伸べる。俺に抱えられるようにして馬車から降りたジュリエッタの石膏で固められた足に視線を向け、シグルドはわずかに眉根を寄せた。
 自分が片棒をかつぎ、地獄にたたとした娘。伝えられぬ想いを抱いた、ナーシャの天敵。
 しかし毛嫌いしていたとはいえ、妹だ。すでに少し、罪悪感を感じていたりするのか? そんな甘さことでは、この先もっと、後悔する羽目になるぞ。

「ジュリエッタお嬢様、お帰りなさいませ」
「ありがとう、トーマス。ただいま帰りました」

 優しい言葉を返すジュリエッタに、トーマスは一瞬、たじろぐ。しかしそこは流石さすがに先代からアスバル家に仕える執事だ。瞬時に元の穏やかな物腰を取り戻すと、柔らかい笑みを返した。

「お嬢様、お疲れでしょう。お部屋を調ととのえてございますので、まずはお身体をお休めになっては」
「そうなの? ……じゃあ、お言葉に甘えようかしら。お父様、よろしいですか?」
「あぁ、構わんぞ。私にはどうやら、がいるようだからな」

 くつりとのどわらってみせた俺の顔を見据みすえ、苦虫を噛み潰したような表情に変わるシグルドと、騎士団長。どうやら馬車が到着するまでの間に、三人で散々、議論でもしていたらしい。
 老執事、トーマス。アスバル家の執事長であり、アンドリムの嫡男であるシグルドのルートと、シグルドを攻略後に開く隠れ攻略対象、ヨルガのルートで活躍する脇役だ。
 アスバル家が課した重税に苦しむ領民の声になげき、先代の領主やアンドリムに幾度となく上申を繰り返してきたトーマスだが、その願いはことごとく、冷たい視線と共に切り捨てられていた。絶望したトーマスは、父との関係に悩むシグルドの騎士団入りを助ける。そしてシグルドが王太子と親友となり父親と敵対した後はアスバル家の動向を王太子側に流すスパイとなるのだ。
 ……なんて美味おいしい存在だろうな。もちろん、【俺】にとってだが。
 俺はメイドに付き添われて部屋に向かうジュリエッタを見送った後で、シグルドとヨルガをうながし、暖炉のある応接室に向かった。革張りのソファに腰かけると、ヨルガが早速といった様子で、シグルドをジュリエッタの護衛につける許可を求めてくる。名目上は、ジュリエッタの護衛兼監視。その目的は間違いなく、俺の監視と邸内の捜索だろう。

「私とジュリエッタは構わんが、お前は良いのか? 仮にも王太子殿下直属の近衛このえ騎士だろう」
近衛このえの任は王太子の命で一旦取り下げ、王国騎士団に再配属していただいた。心配には及ばん」
「ふむ、良いだろう。ならばしっかりジュリエッタをまもれ。先に言っておくが……お前が思うよりもずっと、ジュリエッタは衰弱している。いたわってやれ」
「……分かった」

 シグルドがうなずくのを待ち、俺は部屋の隅に控えていたトーマスを呼び寄せる。

「ではトーマス、これを渡しておく」

 俺が首に掛けていたネックレスごと差し出したのは、アスバル家の紋章が刻まれた一本の鍵。ヨルガは不思議そうだが、その正体を知るトーマスとシグルドは瞬時に顔色を変えた。

「アスバル殿、それは……?」
「鍵だが?」
「それは、見れば分かる」
「……ヨルガ様。こちらは、当屋敷のマスターキーでございます」
「何……?」

 屋敷のマスターキーは、当主のみが持つものだ。その鍵一本で屋敷内のあらゆる場所に出入りが可能になる。それこそ秘密にされてきた……モリノが調べたいと願う、アスバル家の地下室さえも、だ。驚きに固まるヨルガを他所よそに、俺はマスターキーをトーマスに向かって放り投げる。

「ちょうど良い機会だ、シグルド。ジュリエッタが自室で休んでいる間は、領地運営を学ぶ時間に当てろ。トーマス、鍵の使用を許す。必要な資料をそろえ、指導してやれ」
「……は?」

 間の抜けたシグルドの声。我が息子ながら、驚きを表に出しすぎじゃないだろうか。

「何が『は?』だ。私は近々、ここを去る。この屋敷は現宰相に引き継がねばならんからな。それに伴い、領主の座も降りる。その座は取り急ぎお前に譲る」
「……何を勝手に!」
「アスバル殿、いくら何でも暴論だ。シグルドはここ十年あまり、アスバル家にほとんど近づいていない。そんな状態で領主になれと言われても、混乱するだけだろう」

 ヨルガの指摘を、俺は鼻で笑い飛ばす。

「元凶にさとされるとは皮肉な話なんだが? 騎士団長殿よ」
「……っ」
「はっきり言ってしまえば、私とてお前に領主を継がせるつもりはなかった。だが、事情が変わった。の成長を待つ時間がない。この先ずっとお前に領主を続けろとは言わん。落ち着いたら、王国に返還するか神殿に寄贈するか他の領主を立てるか、好きにしろ」
「……どういうつもりだ」
「どうもこうもない……私はんだ」

 ふと、大きな息を吐き、俺はソファに身体を預けて天井に下がったシャンデリアを見上げる。

「王族のため? 臣民のため? そんなもの、もうクソ喰らえだ。私の愛するジュリエッタをあれほど無下に扱われてまで、尊ぶ価値はない」
「……父上?」
「不敬だぞ、アスバル殿」
「王太子殿下に伝えたければ伝えれば良い。私はもう、痛くもかゆくもない」

 俺が天井から視線を戻して頭を巡らせると、マスターキーを手にして所在なく立つトーマスが視界に入る。シグルドルートでの彼は、アンドリムの隙をついてマスターキーを盗み出し、地下室に隠されていた、数々の不正の証拠を見つけ出す。またヨルガルートでは、アンドリムの最初の妻でシグルドの生母であり、ヨルガの元婚約者であったユリカノとヨルガとの間にあるについての決定的な証拠を処分するのにこのマスターキーが活躍する。どちらのルートでも、トーマスが入手に一番苦労するツールだ。
 それをいきなりぽんと渡されて困惑しただろう。……まあ何はともあれ、行動開始と行くか。

「そうだな。まずは最初に、地下室の開け方を教えておくか」

 俺の言葉にトーマスはさらに固まり、ヨルガとシグルドは信じられないと言わんばかりに顔を見合わせた。アスバル家の地下室に不正の証拠が隠されているのは予想していることだ。それなのに俺があまりにも予想と違う行動ばかりとるものだから、対処方法が分からないのだろうな。

「地下室の扉は、マスターキーがあっても開けるのにコツがいる。錠前に癖があるんでな。実地で教えてやろう、ついてこい」

 その提案に、反論する者はない。俺は燭台しょくだいを手に取り、三人を連れて地下に続く階段に向かった。
 アスバル家がかなりの規模を誇る地下室を備えた屋敷を建設し、そこに住まうようになったのは、今から四百年ほど前にさかのぼる。以降、その場所は王都で【宰相の館】と呼ばれるようになり、代々の当主は屋敷の地下に作られた宝物庫に増やした財産を隠し続けた。
 その全てを、持ち運びがしやすく価値が下落しがたい、金塊に形を変えてだ。

「シグルド。この屋敷が作られた四百年前。パルセミス王国に何が起きたか、知っているか」

 燭台しょくだいかかげ階段を下りながら尋ねると、シグルドはすぐに「ランジート戦役」と答えてみせた。

「その通り。このパルセミス王国はカリス猊下げいか恩寵おんちょうまもられた国。温和な気候が保証され、国内では疫病も流行はやらず、作物の実りも豊かだ。だが、恩寵おんちょうを持たぬ周辺国家は、そうはいかない。パルセミス王国の西方に位置していたランジートは、特に貧しい国だった」
「……四百年前に起きた大寒波が影響していたらしいな。大陸中で作物が冷害を受け、食糧が不足して、当時のランジート国民の三割が餓死したと記録が残っている」

 ヨルガの補注に、俺はうなずかえす。

「困窮したランジートに対してパルセミス王国から支援は出ていたが、騎士団長も言っていたように、その年はユジンナ大陸全土を大寒波が襲っていた。困窮は他の国も同じ。それらの国にも支援をしていて、ランジートだけを贔屓ひいきするわけにはいかない。結果的にランジートは、パルセミス王国を奪うことでしか国家として存続する道を見出せなかった」
「それで、パルセミス王国に戦争を仕掛けてきた……有名な話だ。俺でも知っている」
「国力としては、パルセミス王国が全てにおいて格上だ。赤子の手をひねるようないくさになるだろうと予測されていたが、いざ開戦すると予想外の展開が待ち受けていた」
「……死兵の、せいだな」

 ヨルガがぽつりとつぶやく。

「そうだ。生き残るにはそれ以外に方法がない……そんな状態におちいっていたランジートの兵は、恐ろしいほど強かった。最終的には国力として勝るパルセミス王国が勝利しランジートを併呑へいどんすることで国土を広げたが、戦役の爪痕は大きかった」

 千年を数えるパルセミス王国の歴史上、ランジート戦役以外にも他国との小競こぜり合いはコンスタントに勃発ぼっぱつしているが、国家を揺るがす影響を与えたのは、この戦役だけだった。
 そうこうしているうちに、俺達は地下室の前に辿たどく。
 俺はトーマスからマスターキーを受け取り、ヨルガに燭台しょくだいを預けた。トーマスやシグルドに手元がよく見えるように、三ヶ所ある鍵穴に鍵を差し込む順番と鍵を回す角度を教えてやった。

「この錠前は特注品で、マスターキー以外で鍵を開こうと試みると、鍵穴そのものが閉じるようにできている。手順を間違えた場合も同様だ。トーマス、シグルド。よく覚えておけ」
「承知いたしました」
「……分かった」

 二人がうなずくのを待ち、俺は地下室の扉を開く。

「……ここが……地下室」

 三人がまず目にしたのは、地下室の玄関口とも言える空間だ。二人がけのソファとテーブルが置かれただけの正方形の部屋には、四つそれぞれの壁に扉が備え付けてある。俺はシグルドをうながし、右手から反時計回りに扉を一つ一つ開けて中を確かめさせた。
 最初の扉の向こうは縦長の部屋になっていて、ダブルサイズのベッドが三台、白いシーツを掛けた状態で設置してある。

「有事の際に休息場所として使う寝室だ。部屋の奥からは王族用の地下通路と合流できるようになっている。万が一、王族の方をかくまう必要が出た時には有用だろう」
「……実際に使ったことは?」
「私の代ではないな。過去には何度か利用されたと聞く」

 今度はその左の、入り口の扉とちょうど対面にある扉を開く。そこは執務室であり、コロニアルスタイルのデスクが一台と資料の収められた棚が壁一面に備え付けてある。

「今代は言うに及ばす、この地にアスバル家が居を構えてから現在に至るまでの運用記録のほとんどがここにそろっている。地上の屋敷に火事が起きたとしても、影響が少ないからな。……トーマス」
「はい、旦那様」

 早速資料の一部に目を通していたトーマスを呼び寄せ、俺は一冊の冊子を取り出し手渡した。

「旦那様、こちらは……?」
「現在、アスバル家で働いている使用人全員分の個人情報と、その働き方に対する外部評価だ。客をよそおって視察させた人材斡旋業者に作らせたものだ。これを元に全員分の退職金を計算してくれ。他所よその邸宅で使用人として働く希望があれば、推薦状を書くからその要望も集めるように」
「……退職金、で、ございますか」
「そうだ。私はすでに宰相職を辞し、じきにこの屋敷も去る。申し訳ないが、使用人は一旦、全員解雇する。シグルドと宰相閣下の意向次第では、継続勤務もできるだろうから、個別に調整してくれ」
「……承知いたしました」

 この中には、俺が重税をかけて領民からギリギリまでしぼっていたの記録もさり気なく置いてあるのだが、それはモリノが勝手に探してくれるだろう。問題は、次の扉の先だ。

「シグルド、最後の扉を」

 俺に背中を押されたシグルドは、執務室の左側にある、最後の扉を開く。そこには――

「これは……!」
「なんと……」

 三者の驚愕きょうがくの気配。三人の前に姿を見せたのは、まぶしく輝く黄金のきらめき。十畳ほどの広さを持つ部屋の半分近くを埋めるように積み重ねられた、金塊の山だ。
 腕組みをして三人を見守っていた俺の顔を、ぎこちなくも振り返ってにらけたのは、ヨルガだった。流石さすが騎士団長、これだけ動揺していても、行動できるのか。

「アスバル殿……これがどういうことか、説明してもらおうか」

 明らかに、個人が所有する規模の財産ではない。いくら代々パルセミス王国に仕えてきた宰相の一族とはいえ、ここまで巨額の資産を築き上げるのは至難のわざだ。
 それこそ、でも行わない限り。

「見ての通りだ、騎士団長」

 だから俺は、わらう。勝利を夢想している奴らの確信を打ち砕いてやる瞬間が、今だ。

「父上、これは何ですか。こんな資産は、当家に記録されていないはず」

 シグルドの追及に、俺は肩をすくめることで答える。

「当然だろう」
「……何を、そんなに堂々と……!」

 激昂げっこうするシグルドを見やり、俺は大きな溜息ためいきいてみせる。

「記録がないのは当然だと言っているだろう、馬鹿息子。……まぁ、言っても分からぬか」

 俺は金塊が積み重ねられた部屋の一角にまれた小型金庫の前に立ち、指先を犬歯で小さく噛み切ってダイヤル式の鍵に手をかける。この扉に使われているのは、今ではその技法が失われて久しい、アスバル家の血統を持つ者のみが開けられる仕掛けがほどこされたもの。
 ……シグルドには、これを開くことは敵わない。
 俺は金庫の中から、渋い光沢のある革のホルダーに挟まれた一枚の調印書を取り出す。そのままヨルガに手渡すと、彼はいぶかしみながらもそこにしるされた内容に目を通し、すぐに顔色を変えた。

「……分かっただろう、騎士団長。ここにある金塊の全ては、私の……アスバル家の、資産ではない。国家のものだ」

 驚愕きょうがくするシグルドとトーマスに追い討ちをかけるために、俺は言葉を続ける。

「全ては四百年前に定められたこと。アスバル家――賢者アスバルの末裔まつえいはその身に宿す呪いと共にパルセミス王国の【影】となることを義務付けられた。当時の国王、ミリョーレ・ガカ・パルセミス陛下の指示のもとに、な」

 四百年前に起きたランジート戦役は、パルセミス王国の施政に大きな影を落とした。建国以来、六百年もの長い間、大きな危機に見舞われたことのなかった国家だ。ていに言えば、パルセミス王国は、平和ボケしていた。そんな国に戦が残した災いは、予想をはるかに上回るものだ。
 農耕地と各都市間を繋ぐ道路が破壊され、物資の流通がとどこおり、略奪行為が横行する。敵軍の残した塹壕ざんごうや簡易拠点の処理が追いつかず、治安を維持する国営軍すらも円滑な移動がままならない。商人達は食糧を売り渋り、王都では小麦一袋の値段が戦役前の十倍近くにまで跳ね上がった。貴族達が提案する復興支援策は苦しむ国民達に実益のないものばかり。
 事態を重くとらえた当代の国王、ミリョーレ・ガカ・パルセミスは、親友でもあった宰相オクハ・セムズ・アスバルと、今後の国家運営について、三日三晩に及ぶ激論を戦わせた。
 二人は、ただ人の善なる性質だけを信じた国家運営が本来あってはならないものだと気付いていた。それは美しく理想的でも、竜の恩寵おんちょうを受けるこの土地のみに許された、幻想にすぎない。このままでは近い将来に必ず、国を滅ぼす誘因となる。
 ……そして二人は、ある密約を交わした。
〝アスバルの子らはその心にのみ忠節を残し、白き手を血に染めることをいとわず、パルセミスを陰から支えるべし。パルセミスの子らはアスバルに課した痛みを理解し、その忠信を欠片かけらも疑うことなく、彼らを心でたたえるべし。
 アスバルの子らはあらゆる有事に備え、国民全員が四季をまたぐ間をしのぐ財を蓄えるものとする。
 パルセミスの子らは有事においてアスバルの家を頼り、助力をうものとする。
 王国の未来を守るため、自らを闇のそばに置くと定めた、最良にして親愛なる、我が友。オクハ・セムズ・アスバルとの、永遠の友情に誓って。 ミリョーレ・ガカ・パルセミス〟

「……ここに交わされた密約が、真実、ならば……」

 絞り出すようなヨルガの台詞せりふの後を、俺は平坦な調子で継ぐ。

「真実に決まっているだろう……アスバル家は代々、この約束を受け継いできた。王国に蔓延はびこる闇を友とし、ヘドロの浮いた水をえて好んで」

 この調印書は、実際にアスバル家に残されていたものだ。王国のため、裏社会に身を投じると決意した当時の宰相に、国王がひそかに与えていたもの。いつの日かアスバルの子孫が身の潔白を訴える必要が出た際に、その手助けになればと用意したらしい。
 そうやってアスバル家が王国の裏社会を牛耳ぎゅうじり始めたのは、ランジート戦役の後辺りから。つまり俺の行動も半分ほどは、先祖代々の約束にのっとったものということになる。ただまぁ、普通に闇におぼれた者のほうが多かっただろうとは、思うけどな。
 そして、この調印書、中身を多少いじってある。
 契約の三文目及び四文目は、俺が古代竜カリスに頼んで付け足してもらったものだ。
 羊皮紙ようひしは先日マラキアがモリノに見せた【竜神哭示録アトリジア】をベースにした手法で調印がほどこされていて、血を介してしるされる文字は魔力をび、本来は他人が文章を追加することなど不可能だ。
 それに、古代竜カリスの力で改竄かいざんした文を追加することで、アスバル家が先祖代々不正を重ねて溜め込んだ金塊が全て国家のためなんて、もっともらしい理由を与えることに成功している。
 意味を正しく読み取れるヨルガだからこそ、その表情は硬い。

「全て、国民を、ひいては王族をまもるため……知っているか、騎士団長。王太子殿下の名付け親は、先王陛下ではなく、私だ。ウィクルム殿下が御生誕された夜、先王陛下がひそかに私を王宮に呼び、生まれたばかりの殿下をこの腕に抱かせてくださったんだ」

 俺は両手に視線を落とす。そこにあったものを。両腕に抱き上げいつくしんだものを、思い出しているかのように。

「名付けをとわれ、ウィクルムの名を贈らせていただいた。ただ、体面上、私は間違っても名付け親とは名乗れぬ。それでも国民達が殿下の名をたたえ、その治世を心待ちにする姿を目にする度に、心底誇らしかった」
「……アスバル殿」
「今となっては、懐かしむべくもないが、な」

 俺はヨルガの手から一度ホルダーを取り上げ、調印書の位置を整えて表紙を閉じ、改めて彼に手渡した。俺の意向を察したヨルガは、確かめるように俺の目を正面から見つめてくる。

「良いのか」
「構わん、持っていけ。宰相閣下に渡せば、真偽を確かめてくれるだろう」
「私がこの重要な証拠をひそかに処分する可能性を考えたりはしないのか」
「ハッ。善の権化ごんげであられる騎士団長殿が、かような愚行を働くとは思えませんがなぁ?」
「感謝する」

 ……折角両腕を広げて挑発してやったのに、素直に頭を下げやがった。面白くない。

「私は一旦王城に戻り、アスバル殿からお借りしたこちらの調印書を宰相殿に預けてくる。シグルド、お前は当初の予定通り、ジュリエッタ様の護衛にけ」
「はい」
「ああ、騎士団長。少しだけ待て」

 俺は一旦隣の執務室に戻り、机の上に置いていた資料を手に取り、待っていたヨルガに渡す。

「私の予想では、そろそろ頃だ」
「何……?」
「今調印書を目にしたばかりだろう、騎士団長。アスバル家は闇に身を置き、その権力を用いることで裏社会に生きる者達を。言うなれば、防波堤ストッパーの役割を果たしていたんだ。それが機能しなくなると知れ渡った今、奴らがどう動くか……大凡おおよその予想は付けておいたが、細かい調整は必要だろう。すぐに騎士団を動かせるようにしておけ」

 その『大凡おおよその予想』が、俺が手渡した資料だ。上手うまく暴れてくれると良いが。

「……かたじけない。御前、失礼」
「その言葉遣いは、もう不要だ」

 堅苦しい挨拶あいさつに俺は苦言をていす。それには小さく笑うだけで返事をせず、資料と革張りのホルダーをたずさえたヨルガは、地上に続く階段を足早に駆け上がっていく。

「……シグルド、そろそろ、ジュリエッタが目を覚ます」

 俺が声をかけると、うつむいていたシグルドはそろそろと顔を上げ、俺と視線を合わせて唇を噛んだ。

「……父上」

 迷いとうれいの入り混じったその視線は、問い質したいことが山ほどあると切に訴えている。

「積もる話はまた後だ。今は、ジュリエッタをまもることに集中しろ、シグルド」
「……はい」

 項垂うなだれるシグルドの肩を軽くたたき、俺はトーマスをうながして地下室を後にした。
 ……そう、話はまた今度が良いだろうさ。
 わらい話を披露するには、観客が多くなければつまらないからな。


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