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1.隠し子
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俺とヨルガが居を構える大樹の森からパルセミス王城までは、馬車を使って半日ほどの距離がある。乗馬の腕に自信があれば抜け道を通ることで移動時間が格段に短縮されるのだが、その行程には間隔が狭いとは言っても峡谷の上を飛び越える箇所があったりと、馬に乗れるだけの俺としてはごめん被りたい。
そこまで急ぐ必要はないのだから舗装された道を往こうと告げた俺の提案はあっさりと却下された上に、有無を言わさず馬の背に押し上げられた。諦めた俺が体勢を整えている間にヨルガはさっさと鎧に足をかけて同じ馬に跨り、大きな腕で俺の腰を引き寄せる。密着した背中から伝わる生地の感触は柔らかい布地のもので、丈夫な軍服や装飾が施されたサッシュを身につけなくなった彼の変化を俺に伝えてきた。俺が肩越しに振り返り、手綱を握るヨルガと軽い口付けを交わしてから馬を走らせ始めるのは二人で暮らすようになってから自然と生まれた習慣で、そんな積み重ねの一つ一つを愛おしく思えるようになったのは、俺自身も少しは変わったからだろうか。
ヨルガの引退と同時に軍馬としての役目を終えた愛馬フルグルは、残念ながら数年前に疝痛を患ってその生涯を終えている。現在俺達の移動手段となってくれているのは、フルグルの孫にあたる青鹿毛のアウロラだ。祖父譲りの屈強な体格と強靭な馬力を兼ね備えた駿馬は、軍馬になれば騎士の良き相棒となってくれたことだろう。しかしアウロラは馬には珍しい双胎妊娠で生まれており、母馬が先に産まれた仔馬だけを我が子と認識してしまった結果、産まれてすぐに育児放棄をされてしまった。
アウロラは母馬に蹴り潰される寸前に出産に立ち会っていたヨルガに救い出され、馬房の職員達と協力してなんとか確保した母馬の初乳を、哺乳瓶を使ってアウロラに飲ませたのは他でもない俺である。そんな事情もあってヨルガと俺にすっかり懐いてしまった仔馬は騎士団で飼育されている軍馬のコミュニティに溶け込むことが難しくなり、一市民が保有するにはやたらとスペックが高い俺達の持ち馬となった。まぁ、二人乗りが多い俺達には悪くない話ではあるが。
アウロラの背に乗ったまま南門を通って王都に入ると、機能的に区画された美しい街並みと活気に溢れる人々の表情が目に入る。俺が計画を残した上下水道の完全整備や、街灯の設置も順調に進んでいるようだ。宰相モリノと協力して新たに創立した学園は古代竜カリスが地底湖から飛び立つ際に抉れた岩盤台地を利用してコロシアムに似た校舎を有しており、奨学金制度を充実させることで国内外から優秀な生徒が集まる人気の学園となっている。
王城の門を潜る前に、上空から大きな影が俺達を追い越した。見上げた先にはあるのは予想通りに、両翼を広げた砂竜の姿だ。城壁を護る衛兵達にとっては既に慣れた日常らしく、挨拶代わりの竜の咆哮にも、手を振って鷹揚に応えている。
「これは、待ち伏せに合うとみて間違いないな」
「情報漏洩が著しいぞ」
苦笑しつつも先に進んだ俺とヨルガが城内に入ったところで、手を繋いだ幼い子供達が中庭の方から駆け寄ってきた。俺達の孫を連れてきた砂竜は城の中庭に降り立ったようなので、そこで城内に住む幼子と合流したのだろう。
「おじいさま!」
「ヨル! アンディ!」
飛びついてきた孫のアルベールを俺が抱き止め、同じように飛びついてきた金髪碧眼の幼子の方は、ヨルガが軽々と抱き上げる。
「ベルジュ。少し会わないうちに、また大きくなったな」
「ふふふ!」
俺がアルベールの頬に口付けると、ヨルガの片腕に座っていた幼子が「ヴィルにも!」と頬を膨らませてヨルガの胸をペチペチと叩く。僅かに片眉を上げたヨルガがわざとまろい額に口付けてやると「ちがうのぉ!」と手足をばたつかせて抗議する姿が面白い。俺はアルベールを腕に捕らえたまま少し背伸びをして、唇を尖らせている幼子の頬にも口付けてやった。途端にふにゃりと表情を緩め、満足そうに笑う少年の名はヴィンセント・ファリ・パルセミス。パルセミス王国の幼い王太子だ。二歳半年上のアルベールと、ほぼ同じ頃に産まれたものの成長が早いディートリッヒのオスヴァイン兄弟から弟扱いで可愛がられた少年は、自己肯定感の強い王子に育ちつつある。それでも程よい傲慢さと狡猾さに加えて、閃きに近い思考回転が既に伺えるこの王太子を、俺は結構気に入っているのだ。
二人と手を繋いで謁見室に向かう途中では、城内の通路に収まらない体躯に育ったディートリッヒが頭だけを回廊の中に突っ込んできて、喉を鳴らして自分のことも撫でろと催促してきた。事情を知らない来賓などが目にしたら悲鳴をあげる光景だろうが、城内を巡回している騎士や文官達は気にもすることもなく、甘えん坊の竜を撫でまわす俺達を微笑ましく見守るのが恒例となっている。
寄り道に時間を割きつつ辿り着いた謁見室には、玉座に腰掛ける国王ウィクルムと側妃ベネロペ、そして宰相モリノが俺達を待っていた。公式な来賓と謁見する際には必ず国王の護衛に就く決まりがある騎士団長シグルドは、謁見対象が俺とヨルガであるために、騎士団の行軍指導を優先させたらしい……息子よ、職務怠慢ではないか?
国王陛下と形ばかりの挨拶を交わした後は、早速本題に入るようだ。さすがにここからは子供達に聞かせて良い話でもないので、城付きのメイド達を呼んで外に連れ出してもらった。王城の中庭にはディートリッヒ専用の桃の木が何本も植えられているので、そこで一緒にお菓子を楽しむらしい。今回の要件に自身が関わっていなければ、俺もそちらに参加したいところなのだが。
気を取り直してモリノが渡してくれた資料を捲ると、そこには見覚えのある校舎の外観と、今回の件に関与していると思しき生徒達の個人情報が纏められていた。
「ことの発端は、キコエドの学園都市で毎年開催されている開発論文コンテストになります」
キコエドはユジンナ大陸の中でも東南端に位置する連合国家だ。七つの州から構成されていて、州の代表の中から宗長を選んで合議を行い、国の方針を定めている。古代竜カリスの恩寵がなければ凍土となるパルセミスとは異なり、年間を通して気候が安定した、穏やかで過ごしやすい国としても有名だ。首都シューシェリは貿易の中心であると同時に学園都市としての側面も併せ持ち、俺達が王立学園を創立する際にも、各部署で参考にさせてもらった。
「学生の開発論文コンテストか。良い催しだな」
「実は僕も、寄稿したことがあるんです。王城の登用試験を受ける前にですが」
「フフッ、宰相閣下の神童ぶりには頭が下がる」
コンテストのシステムそのものはモリノが参加した頃とほぼ変わりがなく、大陸全土から寄せられた学生執筆の開発論文を教授達が精査し、コンテストの本戦に出場する七人を選ぶと言うもの。
そして今年本戦に選出された生徒の中に、キコエドの高等学園に通う生徒の一人がいたのだ。
「彼の書いた論文は資源の再利用に対するもので、かなり高い水準に纏められています。更に彼は在学中にも拘らず、既に製造技術の特許を幾つか得ているとか。将来有望ですね」
「ふむ」
「それだけならば単なる優秀な生徒の話題なのですが……彼の外観が、問題でした」
モリノは一つ呼吸をつき、俺と視線を合わせる。
「コンテストの審査員を務めるゲスト達には、アンドリム様と面識のある国内外の学者達も多く召喚されていました。そこで、彼にーーリン・ラ・シャハルに出会った彼らは、一様にアンドリム様のことを、思い浮かべたそうなのです」
生徒の名は、リン・ラ・シャハル。
白銀の髪と翡翠の瞳を持つ、十七歳の青年。
「ーーあまりにも、アンドリム様によく似ている……との指摘でした」
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ヨルガの引退と同時に軍馬としての役目を終えた愛馬フルグルは、残念ながら数年前に疝痛を患ってその生涯を終えている。現在俺達の移動手段となってくれているのは、フルグルの孫にあたる青鹿毛のアウロラだ。祖父譲りの屈強な体格と強靭な馬力を兼ね備えた駿馬は、軍馬になれば騎士の良き相棒となってくれたことだろう。しかしアウロラは馬には珍しい双胎妊娠で生まれており、母馬が先に産まれた仔馬だけを我が子と認識してしまった結果、産まれてすぐに育児放棄をされてしまった。
アウロラは母馬に蹴り潰される寸前に出産に立ち会っていたヨルガに救い出され、馬房の職員達と協力してなんとか確保した母馬の初乳を、哺乳瓶を使ってアウロラに飲ませたのは他でもない俺である。そんな事情もあってヨルガと俺にすっかり懐いてしまった仔馬は騎士団で飼育されている軍馬のコミュニティに溶け込むことが難しくなり、一市民が保有するにはやたらとスペックが高い俺達の持ち馬となった。まぁ、二人乗りが多い俺達には悪くない話ではあるが。
アウロラの背に乗ったまま南門を通って王都に入ると、機能的に区画された美しい街並みと活気に溢れる人々の表情が目に入る。俺が計画を残した上下水道の完全整備や、街灯の設置も順調に進んでいるようだ。宰相モリノと協力して新たに創立した学園は古代竜カリスが地底湖から飛び立つ際に抉れた岩盤台地を利用してコロシアムに似た校舎を有しており、奨学金制度を充実させることで国内外から優秀な生徒が集まる人気の学園となっている。
王城の門を潜る前に、上空から大きな影が俺達を追い越した。見上げた先にはあるのは予想通りに、両翼を広げた砂竜の姿だ。城壁を護る衛兵達にとっては既に慣れた日常らしく、挨拶代わりの竜の咆哮にも、手を振って鷹揚に応えている。
「これは、待ち伏せに合うとみて間違いないな」
「情報漏洩が著しいぞ」
苦笑しつつも先に進んだ俺とヨルガが城内に入ったところで、手を繋いだ幼い子供達が中庭の方から駆け寄ってきた。俺達の孫を連れてきた砂竜は城の中庭に降り立ったようなので、そこで城内に住む幼子と合流したのだろう。
「おじいさま!」
「ヨル! アンディ!」
飛びついてきた孫のアルベールを俺が抱き止め、同じように飛びついてきた金髪碧眼の幼子の方は、ヨルガが軽々と抱き上げる。
「ベルジュ。少し会わないうちに、また大きくなったな」
「ふふふ!」
俺がアルベールの頬に口付けると、ヨルガの片腕に座っていた幼子が「ヴィルにも!」と頬を膨らませてヨルガの胸をペチペチと叩く。僅かに片眉を上げたヨルガがわざとまろい額に口付けてやると「ちがうのぉ!」と手足をばたつかせて抗議する姿が面白い。俺はアルベールを腕に捕らえたまま少し背伸びをして、唇を尖らせている幼子の頬にも口付けてやった。途端にふにゃりと表情を緩め、満足そうに笑う少年の名はヴィンセント・ファリ・パルセミス。パルセミス王国の幼い王太子だ。二歳半年上のアルベールと、ほぼ同じ頃に産まれたものの成長が早いディートリッヒのオスヴァイン兄弟から弟扱いで可愛がられた少年は、自己肯定感の強い王子に育ちつつある。それでも程よい傲慢さと狡猾さに加えて、閃きに近い思考回転が既に伺えるこの王太子を、俺は結構気に入っているのだ。
二人と手を繋いで謁見室に向かう途中では、城内の通路に収まらない体躯に育ったディートリッヒが頭だけを回廊の中に突っ込んできて、喉を鳴らして自分のことも撫でろと催促してきた。事情を知らない来賓などが目にしたら悲鳴をあげる光景だろうが、城内を巡回している騎士や文官達は気にもすることもなく、甘えん坊の竜を撫でまわす俺達を微笑ましく見守るのが恒例となっている。
寄り道に時間を割きつつ辿り着いた謁見室には、玉座に腰掛ける国王ウィクルムと側妃ベネロペ、そして宰相モリノが俺達を待っていた。公式な来賓と謁見する際には必ず国王の護衛に就く決まりがある騎士団長シグルドは、謁見対象が俺とヨルガであるために、騎士団の行軍指導を優先させたらしい……息子よ、職務怠慢ではないか?
国王陛下と形ばかりの挨拶を交わした後は、早速本題に入るようだ。さすがにここからは子供達に聞かせて良い話でもないので、城付きのメイド達を呼んで外に連れ出してもらった。王城の中庭にはディートリッヒ専用の桃の木が何本も植えられているので、そこで一緒にお菓子を楽しむらしい。今回の要件に自身が関わっていなければ、俺もそちらに参加したいところなのだが。
気を取り直してモリノが渡してくれた資料を捲ると、そこには見覚えのある校舎の外観と、今回の件に関与していると思しき生徒達の個人情報が纏められていた。
「ことの発端は、キコエドの学園都市で毎年開催されている開発論文コンテストになります」
キコエドはユジンナ大陸の中でも東南端に位置する連合国家だ。七つの州から構成されていて、州の代表の中から宗長を選んで合議を行い、国の方針を定めている。古代竜カリスの恩寵がなければ凍土となるパルセミスとは異なり、年間を通して気候が安定した、穏やかで過ごしやすい国としても有名だ。首都シューシェリは貿易の中心であると同時に学園都市としての側面も併せ持ち、俺達が王立学園を創立する際にも、各部署で参考にさせてもらった。
「学生の開発論文コンテストか。良い催しだな」
「実は僕も、寄稿したことがあるんです。王城の登用試験を受ける前にですが」
「フフッ、宰相閣下の神童ぶりには頭が下がる」
コンテストのシステムそのものはモリノが参加した頃とほぼ変わりがなく、大陸全土から寄せられた学生執筆の開発論文を教授達が精査し、コンテストの本戦に出場する七人を選ぶと言うもの。
そして今年本戦に選出された生徒の中に、キコエドの高等学園に通う生徒の一人がいたのだ。
「彼の書いた論文は資源の再利用に対するもので、かなり高い水準に纏められています。更に彼は在学中にも拘らず、既に製造技術の特許を幾つか得ているとか。将来有望ですね」
「ふむ」
「それだけならば単なる優秀な生徒の話題なのですが……彼の外観が、問題でした」
モリノは一つ呼吸をつき、俺と視線を合わせる。
「コンテストの審査員を務めるゲスト達には、アンドリム様と面識のある国内外の学者達も多く召喚されていました。そこで、彼にーーリン・ラ・シャハルに出会った彼らは、一様にアンドリム様のことを、思い浮かべたそうなのです」
生徒の名は、リン・ラ・シャハル。
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