魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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帝国編

第2話 罠にかかるは百獣の王

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 緊張で空気が歪む中、まずジョーカーが先制攻撃をする。
 バン!と1発放たれた弾丸は確実に奴の顔面を捉えていた。すると奴は飛んでくる弾丸に手をかざし、手から放つ電撃によって、その弾丸を止めたのだった。呆気なく力尽きた弾丸はカランカランと音を立てて地面に落ちた。


 「ブリザード!」


 「任せろ!」


 そう言ってブリザードが地面を叩き壊し大きく揺らすと、その上を高く飛んでリノが奴に斬り掛かる。


 「パレント・タケミカヅチ、グラディウス。パレント・レオ、ケレリタス・オーグメント。」


 素早く、まるで空気の中を流れるように空中から奴の元へ近付く。奴はまだ地面が割れた影響で体勢が万全ではない。リノは大きく深呼吸すると、渾身のひと振りを奴に目掛けて放つ。
 カキン!と甲高い音を立てる。奴は渾身のひと振りを全力で受け止めている。
 

 「はああああ!!!」


 だがリノの力が圧倒し、奴の受けを弾いた。
 シャキーン!
 飛び散る血しぶき。奴の左腕を斬り落としてみせた。
奴は冷静に落ちた腕を拾い、口を開いた。


 「やっぱり強いね。でもこれじゃ勝てないよ。相手がね。」


 「なんだ、ここに来て負け惜しみか?」


 すると奴は馬鹿にするようにこう言った。


 「負け惜しみ?僕は負けたんだよ。でも、僕を瞬殺できないなら君たちは勝てないよ。」


 一方その頃、ケーレスは教会から出てきた皇帝を追い詰めていた。


 「皇帝さん、みいつけた!」


 ポコが早速奴の首を切り落とそうとした時だった。
 パチンと奴が指を鳴らすと同時に、ゴゴーン!と激しい音を立てて、雷撃がケーレスを襲った。
 瞬時にパックステップを踏み、全員難なく避ける。雷撃が来た方を見ると、そこには赤髪の男がいた。
 そしてその男はビリビリと音を立てる雷を手に持つと、話し始めた。


 「我の名は。貴様らには裁きの時が来た。」


 「こやつかゼウスか。」


 「ゼウス、後は頼んだぞ。私にはやることがあるんでな。」


 そう言ってまた奴は逃げていった。


 「僕が行ってくるよ!」
 

 そう言いポコが奴の後を追おうとするが、雷がそれをさせんと妨害してきた。


 「貴様らの敵は目の前にいるだろう。どこに行こうとしている。」


 ポコは奴を逃がしたことにぷくぅとほっぺたを膨らませイラついていた。


 「ゼウス、貴様には2つ選択肢をやろう。大人しくその首をよこすか、もしくは1つ目を断ったのを後悔しながら死んでいくかだ。」


 ガルムがそう言うと、奴は体から雷を出しながら答えた。


 「無論、3つ目の貴様らを殺すだ。」


 その時、ローズは考え事をしていた。


 (今ここにはゼウスがいて、最重要ターゲットは逃走。その他の敵兵はワシらが全て倒した。ではケルベロスは一体何と戦っておるのだ?応答しない理由が既に殺されているからだとしたらいくらなんでも殺すのが早すぎる。あの人数を短時間で殺すのは無理がある。つまり、あいつらは別の何かと戦っている…)


 「すまんお前ら、ワシはちと別の場所へ行ってくる!」


 そう言って急いで教会へと走って行った。


 「おい!待て馬鹿ババア!ちっ、なんなのよあの女。5人だったのが3人になっちゃったじゃない。」


 そして教会ではトッツォが奴に疑問をぶつけていた。


 「何が言いたい?どういう意味だ。」


 「そのまんまの意味さ。僕はね、弱いんだ。」


 「とうとうイカれちまったんじゃねーか?そいつよぉ。」


 「ではね。」


 その言葉でトッツォは全てを理解した。


 「違う…ゼウスは、ゼウスは!1人じゃない!」


 「せいかーい。」


 どこからともなく声が聞こえたかと思うと、突如光とともに激しい痛みがケルベロス達を襲った。見ると全身血まみれになっていた。
 そして浮遊しながら上から降りてきたのはもう1人のゼウス。


 「こいつもゼウスだけど俺もゼウス。そうだなー、俺はゼウスの中だったら3位くらいかな。」


 皆ただ痛みにもがき屈んで、奴らを見上げることしかできなかった。
 そこへローズが急いで駆けつけてきた。


 「ほーら、やっぱり合ってた。まんまと騙されたのぉ。」


 そのゼウスはローズを見るなり目つきが変わった。


 「君、強いでしょ。相当な魔力だよね。」


 「ま、ワシはケーレスで1番強いからの。」


 「1番なんだ。僕は3位だから、負けちゃうかもね。」


 今、この教会という神聖な場所で神の魔力と悪魔の魔力がぶつかり合う。


 
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